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データベーススペシャリスト試験 2009年 午後1 問02
データベースの設計に関する次の記述を読んで、 設問1〜3に答えよ。
J社は,完成品を組み立てる製造業者に部品を供給する部品製造業者である。 J社では、生産管理のための新システムを開発する予定である。 そこで, システム部のK部長の下にプロジェクトチームを編成し, L君がデータベースの設計を担当することになった。
〔業務概要〕
1.部品管理
部品は,一つ又は複数の部品から構成され,図1に示すような階層構造で管理されている。

図1において,各階層の上位から見た下位の部品を子部品, 下位から見た上位の部品を親部品と呼ぶ。 子部品を組み立てて親部品を作る。 図1では,部品 A は部品 B, C及びDの親部品であり,部品 B, C及びDは部品 A の子部品である。部品Bは部品 E, Dの親部品であり、逆に部品Dから見ると, 部品 A, B はともに親部品である。
親部品と子部品は,ともに部品として管理する。 部品は,部品番号によって,J社内で一意に識別される。
(1) 部品の区分
部品は次の三つの観点で区分されている。
(a) 調達区分
部品には,社外から調達するものとJ社で製造するものがあり, 調達区分はこの観点から分類する場合の区分である。 前者を調達品, 後者を製造品と呼ぶ。調達品か製造品かは,部品ごとに決められている。 図1で,部品 A, B は製造品、部品 CD及びEは調達品である。 同じ調達品でも多くの場合、複数の調達先から仕入れている。
(b) 販売区分
部品には,販売するものと販売しないものがあり, 販売区分はこの観点から分類する場合の区分である。 前者を製品と呼ぶ。 製品は、 部品番号とは別に、製品番号によってJ 社内で一意に識別される。 製造品だけが製品として販売され,調達品はそのまま製品として販売されることはない。
(c) 顧客仕様区分
部品には, J社が顧客の設計仕様に従って製造又は調達するものとそれ以外のものがあり、顧客仕様区分はこの観点から分類する場合の区分である。 前者を顧客仕様部品と呼ぶ。 顧客仕様部品の中で、顧客に販売するものを顧客仕様製品と呼ぶ。顧客仕様製品を構成する子部品には, 顧客仕様部品以外の部品が含まれることがある。
(2) リードタイム
部品には、部品ごとにリードタイム (以下, LT という) が決められている。LTには, 1階層 LT と全階層 LT がある。
(a) 1階層LT
製造品の場合は製造 LT と呼び, 子部品がすべてそろっている状態での親部品の組立期間である。 調達品の場合は調達 LT と呼び, 社外から調達するのに必要な期間で, 調達先ごとに設定される。
(b) 全階層 LT
全階層 LT はすべての子部品をそろえるための期間に親部品の組立期間を加えたものである。 部品の全階層 LT を算出するときに, 子部品に調達品がある場合は,同じ調達品の中で,最大の調達 LT が用いられる。 全階層 LT は,構成部品が変更になるたびに一括して再計算される。
図1で示した部品の調達 LT, 製造LT 及び全階層 LT を, 表1に示す。

(3) 部品使用開始日・部品使用終了日と部品販売開始日・部品販売終了日
一つの部品は,子部品として使用されたり,製品として販売されたりする。部品が,子部品として使用される日, 又は製品として出荷される日を、使用日と呼ぶ。新規部品の最初の使用日を部品使用開始日、最後の使用日を部品使用終了日と呼ぶ。部品は、製造又は調達された日の翌日から使用可能になる。新規部品の注文受付を開始する日を部品販売開始日と呼び, 部品の注文受付を終了する日を部品販売終了日と呼ぶ。
(4) 製品番号の付与
製品には,通常、一つの製品番号を付与するが,複数の製品番号を付与する場合もある。後者は, 量産効果によってコストを抑えるため, 性能の高い部品を集中製造し、性能の低い製品として転用する場合である。 このため、部品,製品に対して,それぞれ部品仕様, 製品仕様を分けて定義する。
(5) 部品構成の管理
(a) 構成管理
一つの親部品を製造するときの, 子部品の種類とその使用数量を表したものを部品構成表と呼ぶ。 表2に部品構成表の例を示す。 構成適用開始日,構成適用終了日は,部品構成表の各子部品に関する情報の有効期間を規定するものである。ここで,構成適用終了日の初期値には, 9999-12-31 が設定されている。
部品構成表は,新規の親部品の製造時に新規作成され、 子部品の変更時に変更される。 表2では,部品 A について,次の新規作成・変更が行われたことを表している。
① 2007年9月1日に, 部品 B, C及びD を使用して,部品 A を新規に製造開始。
② 2008年9月30日に、 部品 C の使用を終了。 2008年10月1日から部品 Fの使用を開始。
③ 2008年10月1日から、部品Dの使用数量を8個から4個に変更。

(b) 登録日付のチェック
部品構成表の新規作成・変更に伴い, 子部品の手配計画も変更される。構成適用開始日に当該子部品をそろえられるよう手配する日を, 部品手配開始日と呼ぶ。また,当該子部品の手配を終了する日を,部品手配終了日と呼ぶ。 部品手配開始日を設定する際には,構成適用開始日と部品の各 LT とを比較し,実現性をチェックする。
2.顧客管理
(1) 顧客と企業の登録
顧客とは, J社が取引を行う事業所の単位である。 複数の事業所を有するような企業では、一つの企業で複数の顧客が登録されることがある。 顧客に対しては,J 社内で一意な顧客番号を付与し, 顧客番号とは別に企業に対しては, J 社内で一意な企業コードを付与する。 顧客単位に取引の開始 終了を管理し, 一度取引が終了した顧客と取引を再開する場合は, 新たな顧客番号を付与する。
(2) 顧客と営業担当者との関係
1顧客に対して, 1人の営業担当者が割り当てられる。 1人の営業担当者は複数の顧客を担当することができる。 組織変更によって,営業担当者が変わることがあるが,契約内容の問合せなどに備えて, 過去の営業担当者を特定する仕組みが必要である。 1人の営業担当者がある顧客の担当から外れた後,再度同じ顧客を担当することがある。
3.顧客仕様製品の新システムへの登録
顧客仕様製品を新規に受注する場合には, J社側で顧客仕様製品を新システムに登録する。 その場合, 顧客から指定された顧客仕様製品名と顧客ごとに一意な顧客仕様製品コードを登録し, 対応する部品番号は新システムで一意な値が自動採番される。ただし,受注したときに顧客仕様製品名と顧客仕様製品コードが未定の場合,顧客仕様製品名と顧客仕様製品コードは空値(NULL)のままで新システムに登録される。 その後, 顧客仕様製品名と顧客仕様製品コードが決定した時点で、それぞれ登録する。
〔テーブル設計〕
L君はデータベースの設計に当たり,まず図2に示すテーブルを設計した。 これに対し,K部長からは次のような指摘があった。
[指摘事項]
① 主キー, 外部キーが設定されていないテーブルがある。
② “顧客担当” テーブルは第3正規形にした方がよい。
③ “部品構成” テーブルの日付は、実現性の面から矛盾しない日付となるように制約を整理する必要がある。
④ “部品” テーブルは主キーの設定に誤りがあるので、 再設計する必要がある。

解答に当たっては、巻頭の表記ルールに従うこと。
なお、テーブル構造の表記は, “関係データベースのテーブル (表)構造の表記ルール” を用いること。 さらに, 主キー及び外部キーを明記せよ。
設問1(1):〔テーブル設計〕におけるK部長の指摘事項①,②について、(1)~(3)に答えよ。
“顧客担当” テーブルは,第1正規形である。 第2正規形でない理由を、列名を用いて具体的に 60字以内で述べよ。
模範解答
非キー列である顧客名が,候補キー{顧客番号,顧客担当開始日}の一部である顧客番号に部分関数従属するから
解説
キーワード・論点の整理
- 2NF(第2正規形):
- 「非キー属性(非キー列)が候補キーの一部にのみ関数従属してはいけない」
- 顧客担当テーブルの候補キー:
{顧客番号, 顧客担当開始日}
- 部分関数従属の関係:
- 非キー列「顧客名」が候補キーの一部「顧客番号」にのみ関数従属
解答の論理的説明
-
顧客担当テーブルの構造(主キー下線)
-
候補キーは
{顧客番号, 顧客担当開始日}
これは「同一顧客が過去に再度担当される」場合を扱うために必要です。 -
非キー列「顧客名」は 顧客番号 のみから一意に決まる情報
→{顧客番号, 顧客担当開始日}
の一部である「顧客番号」に 部分関数従属 -
したがって第2正規形の要件(非キー列は候補キー全体に完全関数従属)が満たされず,2NF ではありません。
【引用】
「1顧客に対して, 1人の営業担当者が割り当てられる。… 1度取引が終了した顧客と取引を再開する場合は, 新たな顧客番号を付与する。」
「1顧客に対して, 1人の営業担当者が割り当てられる。… 1度取引が終了した顧客と取引を再開する場合は, 新たな顧客番号を付与する。」
受験者が誤りやすいポイント
- 候補キーを
{顧客番号, 顧客担当開始日}
と正しく認識できない - 「顧客名」はキー列か非キー列か混同し、関数従属の方向を誤る
- 2NF の定義を「部分従属があれば ×」とだけで覚え、具体例に結び付けられない
試験対策ポイント
- 【第2正規形】の定義を正確に復習
- 非キー属性は「候補キーの全部に」完全関数従属
- 関数従属の表し方
- A→B:「A が決まれば B が一意に定まる」
- テーブル設計例で
- 候補キーの決定理由を問い、キー/非キーを明確化
- 演習問題で「部分従属」を探す訓練
- 履歴管理のように複数キーを持つパターンに慣れること
設問1(2):〔テーブル設計〕におけるK部長の指摘事項①,②について、(1)~(3)に答えよ。
“顧客担当” テーブルを第3正規形に分割し、分割後の “顧客担当” デーブル及び新たなテーブルの主キー及び外部キーも併せて答えよ。 ここで, 新たに作成するテーブルについては,内容を表す適切なテーブル名として本文中の用語を用いること。
模範解答
顧客(顧客番号,顧客名,企業コード,顧客取引開始日,顧客取引終了日)
企業(企業コード,企業名)
顧客担当(顧客番号,顧客担当開始日,顧客担当終了日,担当社員番号)
解説
核心となるキーワードや論点整理
- 第3正規形(3NF)
「非キー属性が主キー以外の属性に従属してはならない」という規則 - 主キー・外部キーの明確化
- 「顧客担当」テーブルに含まれていた「顧客」「企業」の属性を切り分ける必要性
なぜこの解答になるか――論理的説明
-
【問題文】には次のようにあります。
「顧客に対しては,J社内で一意な顧客番号を付与し,顧客番号とは別に企業に対しては,J社内で一意な企業コードを付与する。」
つまり,顧客と企業は別個の実体(エンティティ)であり,それぞれ固有の主キーを持つべきです。 -
オリジナルの「顧客担当」テーブルには以下のように列が含まれていました。
顧客番号, 顧客名, 企業コード, 企業名, 顧客取引開始日, 顧客取引終了日, 顧客担当開始日, 顧客担当終了日, 担当社員番号 -
ここで,非キー属性の「顧客名」「企業名」「顧客取引開始日」「顧客取引終了日」は
顧客番号だけで決まる属性であり,さらに「企業名」は企業コードだけで決まる属性です。
これでは第3正規形の要件を満たせません(非キー→非キーの従属=推移的従属が存在)。 -
解決策として
- 「顧客」を管理する 顧客テーブル を用意
- 「企業」を管理する 企業テーブル を用意
- 「誰がいつからいつまで担当したか」という関係のみを持つ 顧客担当テーブル を残す
ことで,第3正規形を満たします。
正規化後のテーブル構造
顧客テーブル
企業テーブル
顧客担当テーブル
- 顧客担当テーブルの主キーは「顧客番号+顧客担当開始日」で重複を防止しています。
- 外部キーにより「顧客」「企業」「社員」の参照整合性を確保します。
受験者が誤りやすいポイント
- 「企業名」を残したままにすると,顧客担当テーブルに推移的従属が残り,第3正規形を満たさないままになる
- 顧客担当の期間管理(日付)を主キーに含めないと,履歴を複数登録できず担当変更のトラッキングができない
- 外部キーを指定し忘れると,整合性制約が担保されず,参照データの不整合が起こりうる
試験対策として覚えておくべきポイント
- 第3正規形の判定:
「非キー属性が主キー以外の属性に従属していないか」を常にチェックする - 正規化の手順:
1NF→2NF→3NF…の流れを理解し,どの段階でどのようなデータ分割が必要かを整理 - 主キー・候補キー・外部キーの役割:
- 主キー:行を一意に識別
- 外部キー:他テーブルとの参照整合性を担保
- 履歴管理設計:
期間(開始日/終了日)をキーに含めることで,過去の状態を保持できることを意識する
設問1(3):〔テーブル設計〕におけるK部長の指摘事項①,②について、(1)~(3)に答えよ。
“顧客仕様製品” テーブルには二つの候補キーがある。 これらの候補キーに関して,(a),(b)に答えよ。
(a)二つの候補キーのうち、適切な主キーを答えよ。
(b)もう一方の候補キーが主キーとして不適切な理由を、候補キーを具体的に示し,60字以内で述べよ。
模範解答
(a):部品番号
(b):候補キーである顧客番号,顧客仕様製品コードのうち,顧客仕様製品コードが空値のままで登録する場合があるか
解説
キーワード・論点整理
- 候補キー
- 部品番号
- 顧客番号+顧客仕様製品コード
- 主キーの要件
- 一意性
- 非NULL制約(NULLを許容しない)
- 試験文の該当箇所
「顧客仕様製品コードは空値(NULL)のままで新システムに登録される。」
解答の論理的説明
-
「顧客仕様製品」テーブルの候補キーとして
-
主キーには 非NULL制約 があるため,NULLを含む可能性のある「顧客仕様製品コード」を含む候補キーは不適切です。
-
一方,部品番号は常に自動採番され,NULLにならないため,主キー要件を満たします。
受験者が誤りやすいポイント
- 「顧客番号+顧客仕様製品コード」は一意性の観点だけ見ると妥当に思えるが,試験文中に「顧客仕様製品コードは空値(NULL)のままで登録される」ケースが明示されているため,NULL非許容の主キーにはできません。
- 自動採番のキーはNULLにならず,一意性も保証されるため,データベース設計では主キーに適していることを押さえておきましょう。
試験対策ポイント
- 主キー候補を選ぶ際は「一意性」だけでなく「非NULL性」を必ず確認する。
- 仕様書に「NULL登録される」とあるフィールドは主キーにできない。
- 自動採番キー(サロゲートキー)は主キーとして利用しやすい。
設問2(1):〔テーブル設計〕におけるK部長の指摘事項③について、(1),(2)に答えよ。なお、解答に当たっては、本文中の用語を用いて、具体的に述べること。
子部品の種類が変更される場合、変更後の子部品の、部品手配開始日,構成適用開始日,全階層 LT との間に生じる制約を, 50字以内で述べよ。
模範解答
変更後の子部品の構成適用開始日から部品手配開始日を引いた日数が,全階層LT よりも大きいこと
解説
解答の論点整理
- キーワード:
- 「構成適用開始日」
- 「部品手配開始日」
- 「全階層 LT」
- 日数差
- 実現性のチェック
解答が成り立つ理由
- 【問題文】には、
「構成適用開始日に当該子部品をそろえられるよう手配する日を, 部品手配開始日と呼ぶ。」
「部品手配開始日を設定する際には,構成適用開始日と部品の各 LT とを比較し, 実現性をチェックする。」
とあります。 - また、全階層 LT は
「全階層 LT はすべての子部品をそろえるための期間に親部品の組立期間を加えたもの」
と定義されており、子部品手配の実現可能性はこの期間で判断します。 - したがって、子部品の「構成適用開始日」から「部品手配開始日」を差し引いた日数が、必要な全階層 LT 以上でなければ、期日に間に合わないことになります。
- これを簡潔に表現したのが、模範解答の
変更後の子部品の構成適用開始日から部品手配開始日を引いた日数が,全階層 LT よりも大きいこと
です。
受験者が誤りやすいポイント
- 「1階層 LT(製造 LT/調達 LT)」と「全階層 LT」を取り違える。
- 「構成適用開始日」と「構成適用終了日」を混同して制約を誤る。
- 日数差の向き(どちらを引くか)を逆にし、誤った式にしてしまう。
試験対策:覚えておくべきポイント
- 部品手配の「実現性チェック」は必ず 全階層 LT を基準に行う。
- 制約条件は「構成適用開始日-部品手配開始日 ≥ 全階層 LT」で表現できる。
- 問題文の用語(構成適用開始日、部品手配開始日、全階層 LT)は正確に使う。
設問2(2):〔テーブル設計〕におけるK部長の指摘事項③について、(1),(2)に答えよ。なお、解答に当たっては、本文中の用語を用いて、具体的に述べること。
親部品が新規に製造される場合, 新規作成された部品構成表の構成適用開始日と,親部品の、部品使用開始日と製造 LT との間に生じる制約を,60字以内で述べよ。
模範解答
親部品の部品使用開始日から製造 LT を引いた日付が,新規作成された部品構成表の構成適用開始日よりも後であること
解説
キーワード・論点整理
- 「部品使用開始日」:新規部品の最初の使用日
- 「製造 LT」:製造品の子部品がそろっている状態での親部品の組立期間
- 「構成適用開始日」:部品構成表の各子部品情報の有効開始日
- 制約の論点:親部品を予定通り使用するために、構成適用開始日と部品使用開始日‐製造 LTとの関係性
解答論拠の説明
- 「部品は、製造又は調達された日の翌日から使用可能になる。新規部品の最初の使用日を部品使用開始日と呼ぶ。」
――ここから、部品使用開始日は親部品を初めて使える日と定義される。 - 「製造品の場合は製造 LTと呼び, 子部品がすべてそろっている状態での親部品の組立期間である。」
――製造 LTは親部品の組立に必要な日数を表す。 - 「部品手配開始日を設定する際には, 構成適用開始日と部品の各 LT とを比較し, 実現性をチェックする。」
――子部品の手配が遅れると親部品の使用に間に合わないため、
構成適用開始日+製造 LT ≤ 部品使用開始日(使用可能日に間に合う)
を満たす必要がある。 - 上記を変形すると、
部品使用開始日 − 製造 LT ≥ 構成適用開始日
すなわち、「親部品の部品使用開始日から製造 LTを引いた日付が,
構成適用開始日よりも後であること」が制約となる。
誤りやすいポイント
- 全階層 LTと混同し、「全階層 LT」を使って計算してしまう
- 「調達 LT」を用いる誤り(製造品では調達 LT は定義されない)
- 関係式の不等号方向を逆にして、「前である」などと書いてしまう
試験対策ポイント
- LTの種類(調達 LT/製造 LT/全階層 LT)と用途を明確に区別する
- 日付制約は「+」「−」「≤」などの式で整理し、文章化すると正確になる
- 要件定義句の「前」「後」「以上」「より後である」などの表現を正しく把握すること
設問3(1):〔テーブル設計)におけるK部長の指摘事項④について、(1)(2)に答えよ。
“部品”テーブルを第3正規形に再設計し、 主キー及び外部キーを正しく設定せよ。 ここで, 再設計したテーブルについては,内容を表す適切なテーブル名として,本文中の用語を用いること。
模範解答
部品(部品番号,部品名,部品使用開始日,部品使用終了日,部品仕様,製造LT,全階層LT)
製品(製品番号,製品名,部品販売開始日,部品販売終了日,製品仕様,部品番号)
調達品(部品番号,調達先コード,調達LT)
解説
1. キーワード・論点整理
- 第3正規形(3NF)
・主キーへの完全関数従属を満たし,非キー属性間に推移的関数従属がない状態 - サブタイプ化(部分集合化)
・「製品」は「製造品」のサブタイプ
・「調達品」は「部品」のサブタイプ - 多対多関係の解消
・同じ調達品を「複数の調達先から仕入れる」という要件から,部品–調達先は多対多 - 主キー(PK)/外部キー(FK)
・各テーブルでの主キー設定と,参照整合性を保つための外部キー設定
2. 論理的解説
-
「部品」テーブルの肥大化と非キー属性の混在
問題文では,「部品」テーブルに次のような属性が混在していました。- 製品番号/製品名/部品販売開始日/部品販売終了日/製品仕様
- 調達先コード/調達LT
しかし「製造品だけが製品として販売される」(問題文中の「製造品だけが製品として販売され,調達品はそのまま製品として販売されることはない」)こと,「同じ調達品でも多くの場合、複数の調達先から仕入れている」ことから,これらは部品の属性ではなくサブタイプの属性ととらえ,別テーブル化すべきです。
-
3NFへの分割
- 部品共通の属性(部品番号,部品名,部品使用開始日,部品使用終了日,部品仕様,製造LT,全階層LT)は「部品」テーブルに残す
- 製造品のうち,販売に関わる属性(製品番号,製品名,部品販売開始日,部品販売終了日,製品仕様)は「製品」テーブルへ移動し,部品番号を外部キーで参照
- 調達品の属性(調達先コード,調達LT)は「調達品」テーブルへ移動し,部品番号と調達先コードの複合主キー+外部キーとする
-
外部キー参照
- 「製品」テーブルの部品番号 → 部品(部品番号)
- 「調達品」テーブルの部品番号 → 部品(部品番号)
- 「調達品」テーブルの調達先コード → 調達先(調達先コード)
これによって,
- 部品テーブルは部品固有の情報のみを持ち,
- 製品テーブルは製品販売に関する情報のみを持ち,
- 調達品テーブルは調達に関する情報のみを持つ,
という第3正規形を満たす構造になります。
3. 再設計後のテーブル定義
部品
製品
調達品
4. 受験者が誤りやすいポイント
- 「製品仕様」を部品テーブルに残したままにし,製品テーブルと重複させてしまう
- 調達品の「調達LT」を部品テーブルに残してしまい,第3正規形が崩れる
- 調達先コードを単独の外部キーにせず,多対多のキー構成を誤る
- 製品テーブルの部品番号を主キーに誤って設定し,1対1関係なのか1対多関係なのかを取り違える
5. 試験対策として覚えておくポイント
- 第3正規形:主キーに対する完全関数従属+非キー属性間の推移的従属排除
- サブタイプ・スーパタイプ分割:全体集合に属する共通属性と,部分集合固有の属性を分離
- 多対多関係の解消:中間テーブルを設け,複合主キーを定義
- 外部キーは必ず参照先テーブルの主キーを指すように設定
- 問題文中の業務要件(「製造品だけが製品」「複数の調達先」等)を正確にリレーション設計に反映すること
設問3(2):〔テーブル設計)におけるK部長の指摘事項④について、(1)(2)に答えよ。
“部品” テーブルの列の値が設定されるかどうかは、部品によって異なる。これを表すために、 図2の “部品” テーブルに、部品区分を表す列を追加する。 そこで,部品区分とその組合せを,表3のように整理した。 表3中のY, Nの意味を、本文中の用語を用いて述べよ。 ここで,組合せ 3(部品区分 1〜3 がそれぞれY, N, Yである部品)は顧客仕様製品を表す。


模範解答

解説
核心となるキーワードと論点整理
以下は,表3の「Y」「N」がそれぞれ何を表しているか,モデル解答の要点です。
- 「部品区分1」は 販売区分 に対応し,Yは「製品」,Nは「製品以外」を示す。
- 「部品区分2」は 調達区分 に対応し,Yは「調達品」,Nは「製造品」を示す。
- 「部品区分3」は 顧客仕様区分 に対応し,Yは「顧客仕様部品」,Nは「顧客仕様部品以外」を示す。
組合せ3(Y, N, Y)は「製品かつ製造品かつ顧客仕様部品」であり,本文中の定義から「顧客仕様製品」に該当します。
解答の論理的説明
-
部品区分1(販売区分)
問題文では次のように定義されています。「部品には, 販売するものと販売しないものがあり, 販売区分はこの観点から分類する場合の区分である。 前者を製品と呼ぶ。」
└─ よって,部品区分1がYであれば「製品」,Nであれば「製品以外」です。 -
部品区分2(調達区分)
問題文には以下の記述があります。「部品には, 社外から調達するものとJ社で製造するものがあり, 調達区分はこの観点から分類する場合の区分である。 前者を調達品, 後者を製造品と呼ぶ。」
└─ よって,部品区分2がYであれば「調達品」,Nであれば「製造品」です。 -
部品区分3(顧客仕様区分)
以下の記述を参照します。「部品には, J社が顧客の設計仕様に従って製造又は調達するものとそれ以外のものがあり, 顧客仕様区分はこの観点から分類… 前者を顧客仕様部品と呼ぶ。」
└─ よって,部品区分3がYであれば「顧客仕様部品」,Nであれば「顧客仕様部品以外」です。
組合せ3は (部品区分1=Y, 部品区分2=N, 部品区分3=Y) すなわち「製品かつ製造品かつ顧客仕様部品」であり,本文中で
「顧客仕様部品の中で, 顧客に販売するものを顧客仕様製品と呼ぶ。」
とあることから,これは「顧客仕様製品」にあたると判断できます。
受験者が誤りやすいポイント
- 「調達品」「製造品」と「製品」「製品以外」を取り違える
→ 調達区分=調達品/製造品,販売区分=製品/製品以外を混同しないこと。 - 顧客仕様区分と販売区分の重複
→ 顧客仕様部品であっても,必ず製品になるわけではない(組合せ2や6など)。 - 組合せ3だけが「顧客仕様製品」になる理由
→ 製品(区分1=Y)でないと販売できず,かつ調達品(区分2=Y)は販売しないため,製造品(区分2=N)である必要がある。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
部品の3つの区分
- 調達区分:調達品/製造品
- 販売区分:製品/製品以外
- 顧客仕様区分:顧客仕様部品/顧客仕様部品以外
-
「製品」とは販売区分でYの部品のみを指し,調達品は「製品」にはならない。
-
「顧客仕様製品」は
- 顧客仕様部品(区分3=Y)
- かつ製品(区分1=Y)
- かつ製造品(区分2=N)
の組合せであること。
-
表形式で整理すると,論点が明確になりミスを防げます。