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データベーススペシャリスト試験 2013年 午後1 問01
データベースの基礎理論に関する次の記述を読んで、設問1〜3に答えよ。
M社は,Web上のSNS, ブログなど (以下, Web サービスという)のアクセスログデータを分析するサービスを提供している。M 社では,契約している Web サービスのサービスプロバイダ(以下,プロバイダという)に登録された利用者を対象として,Web サービスのアクセスログをとり、様々な観点から分析する情報システム(以下,本システムという)を,新たに構築することになった。
本システムは,Web サービスのリソース (SNS, ブログなどのページ)にアクセスした利用者の情報を収集する。具体的には,利用者のプロフィール情報の収集,利用時の位置情報の収集などである。 M 社では,これらの機能によって、利用者の行動傾向などを時間的・空間的に分析することを目指している。 本システムを構築するに当たって,具体例を用いて検討しながら,関係スキーマを設計することにした。本システムのデータモデルで検討した関係スキーマは,図1のとおりである。
図3〜5 は,図2の関数従属性の表記法に従って,属性間の関数従属性を表したものである。図1,図3〜5の属性とその意味及び制約を,表1に示す。







〔利用者の行動傾向分析〕
利用者の行動傾向分析を行うために,関係“所属” 及び関係 “アクセスログ”に対して内自然結合演算及び射影演算を行い,関係 “利用実績” を作成した。 表 2, 3 は,関係 “所属”及び関係 “アクセスログ” の具体例である。 表4は, 表2及び表3に対する演算結果の関係 “利用実績” の具体例である。



設問1(1):関係“名寄せ”, “利用者” 及び図 3, 4について,(1)〜(3)に答えよ。
図3の関係 “名寄せ” の候補キーを全て答えよ。
模範解答
{プロバイダID,利用者ID}
解説
キーワード・論点整理
-
関係“名寄せ”のリレーション定義
名寄せ(プロバイダID,利用者ID,名寄せID) -
関数従属性(FD)の図示(図3)
- {プロバイダID, 利用者ID} → 名寄せID
-
候補キー
関係内の全属性を一意に決定し、かつ最小性を満たす属性の組み合わせ
解答の根拠
-
リレーション“名寄せ”の属性を整理すると、以下の3つです。
-
図3より、関数従属性(FD)は次のように示されています。中央矩形(プロバイダID+利用者ID) → 上側小矩形(名寄せID)
すなわち{プロバイダID, 利用者ID} → 名寄せID
-
【候補キーの定義】に照らすと、
- {プロバイダID, 利用者ID} からリレーションの全属性(プロバイダID, 利用者ID, 名寄せID)を決定できる。
- また,プロバイダID 単独でも,利用者ID 単独でも名寄せID を一意に決定できないため,最小性を満たす。
したがって,「{プロバイダID, 利用者ID}」が候補キーとなります。
受験者が誤りやすいポイント
-
名寄せID をキーと勘違いしやすい
- 属性の意味として「本システム内で利用者を一意に識別するID」とあるため、一見「名寄せID 単独」がキーに思える。しかし図3の FD では名寄せID から他の属性を決定する矢印が描かれておらず、逆方向(名寄せID → {プロバイダID, 利用者ID})は成り立たない。
-
最小性を見落とす
- {プロバイダID, 利用者ID, 名寄せID} も全属性を決定するため「スーパーキー」ではあるが,「最小性」を満たさないので候補キーではない。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
候補キーの要件
- 全属性を関数従属(決定)する
- 最小性を満たす(不要な属性を含まない)
-
関数従属性図の読み方
- 矢印の根元が「決定側(左辺)」,矢印先が「被決定側(右辺)」であることを確認する。
- 矢印の向きがない場合や逆向きの FD は成立しない。
-
属性の「意味」と FD は区別する
- 属性の説明文だけでキーを決めず,必ず与えられた関数従属性図(または表記法)からキー候補を導出する。
設問1(2):関係“名寄せ”, “利用者” 及び図 3, 4について,(1)〜(3)に答えよ。
図3の関係 “利用者” は, タプル挿入に関してどのような問題があるか。 その内容を, 35 字以内で具体的に述べよ。 また, 第3正規形に分解した関係スキーマを示せ。なお,分解した関係スキーマの関係名は任意とし, 主キーは実線の下線で示すこと。
模範解答
内容:
・利用者ごとに,特性名,特性タイプが重複して登録される。
・特性値ごとに,生年月日,性別,郵便番号が重複して登録される。
・事前に特性 ID,特性名,特性タイプを登録しておくことができない。
関係スキーマ:
利用者(プロバイダID,利用者ID,生年月日,性別,郵便番号)
利用者特性(特性ID,特性名,特性タイプ)
利用者特性値(プロバイダID,利用者ID,特性ID,特性値)
解説
1. キーワード/論点整理
- タプル挿入の異常(Insertion Anomaly)
- データの重複登録(冗長性)
- 関数従属性
- {プロバイダID, 利用者ID} → {生年月日, 性別, 郵便番号}
- 特性ID → {特性名, 特性タイプ, 特性値}
- 第3正規形(3NF)への分解
2. 解答の論理的説明
図3に示される関係“利用者”は,スキーマ
利用者(プロバイダID,利用者ID,生年月日,性別,郵便番号,
特性ID,特性名,特性タイプ,特性値)
を持ち,関数従属性として
- {プロバイダID, 利用者ID} → {生年月日, 性別, 郵便番号}
- 特性ID → {特性名, 特性タイプ}
- 特性ID → 特性値
が成り立ちます。
このままでは,特性値を追加するたびに「生年月日」「性別」「郵便番号」が何度も繰り返し登録されるため,タプル挿入時に以下のような問題が生じます。
- 利用者ごとに,特性名,特性タイプが重複して登録される。
- 特性値ごとに,生年月日,性別,郵便番号が重複して登録される。
- 事前に特性ID,特性名,特性タイプを登録しておくことができない。
このような冗長性と挿入異常を解消するには,第3正規形に分解します。
3. 第3正規形への分解後スキーマ
以下の3つの関係に分解することで,部分従属性・推移従属性を解消します。
- 「利用者」:利用者固有のプロフィール情報を管理
- 「利用者特性」:特性IDごとに名称・タイプを管理
- 「利用者特性値」:利用者×特性の組み合わせで値を登録
これにより,各関係はすべて第3正規形を満たし,重複登録や挿入異常が解消されます。
4. 受験上の注意ポイント
- 主キーの誤認
図3の主キーは「プロバイダID+利用者ID+特性ID」です。部分キーだけで考えると冗長性を見落としやすいので注意してください。 - 関数従属性の整理
・候補キー→非キー属性の従属性をすべて把握
・非キー属性同士の推移従属性を見逃さない - 正規化の目的
挿入・更新・削除の各異常を防ぎ,冗長性を排除する - 3NFの定義
すべての非キー属性は「候補キーに対して直接従属し,かつ他の非キー属性に従属していない」こと
これらを踏まえ,関数従属性を正確に読み取り,第3正規形への分解スキルを習得してください。
設問1(3):関係“名寄せ”, “利用者” 及び図 3, 4について,(1)〜(3)に答えよ。
図4の関数従属性を,□ には属性名を記入し、図2中の凡例の欄に示した表記法に従って完成させよ。
模範解答

解説
キーワード・論点整理
- 関数従属性(FD)
「X → Y」とは,「同じXに対しては必ず同じYが対応する」性質を表します。 - 決定項(決定側)と従属項(従属側)
決定項が従属項を一意に決定する組み合わせです。 - 主キー(候補キー)
履歴管理がある場合は,日付やタイムスタンプもキーに含める必要があります。 - 図2 の表記法
- A → B
- {A, B} → C
- C → {A, B}
解答の論拠と手順
-
関係「組織」
- 表1 より「組織情報(組織名称、郵便番号)は、履歴が管理される」(「組織登録日時」)
- よって主キーは {組織ID, 組織登録日付}
- この主キーが「組織名称」「郵便番号」を一意に決定する
-
関係「所属」
- 表1 より「利用者の所属する組織及び職種は、履歴が管理される」(「所属登録日時」)
- よって主キーは {プロバイダID, 利用者ID, 所属登録日付}
- この主キーが「組織ID」「職種」を一意に決定する
-
図2 の表記法 に従って記述
- {組織ID, 組織登録日付} → 組織名称
- {組織ID, 組織登録日付} → 郵便番号
- {プロバイダID, 利用者ID, 所属登録日付} → 組織ID
- {プロバイダID, 利用者ID, 所属登録日付} → 職種
関数従属性一覧
受験者が誤りやすいポイント
- 履歴管理の有無を見落とす
- 「組織登録日付」「所属登録日付」をキーに含めず,主キーを誤認しやすい
- 決定項と従属項の混同
- 「組織ID → 組織名称」だけと書いてしまい,日付を抜かす誤り
- 複数従属属性の書き方
- 図では属性ごとに矢印を描くが,まとめて記述してもOK(表記法に注意)
覚えておくべきポイント
- 関数従属性の定義:X → Y は「X が同じなら Y も同じ」
- 履歴管理時の主キー設定:履歴日付やタイムスタンプを必ず含める
- 正規化と FD:第1~第3正規形,BCNF では「すべてのFD の決定項が候補キーであること」がポイント
- 図2 の表記法を使いこなす
- 単一属性のFD:A → B
- 複数属性のFD:{A, B} → C
- 逆多値FD:C → {A, B} など
これらを押さえれば,関係スキーマから主キーを正しく見抜き,FD を正確に図示できます。
設問2(1):関係 “サービス提供リソース”及び図5について,(1),(2)に答えよ。
図5の関係 “サービス提供リソース” の候補キーを全て答えよ。 また, 部分関数従属性,推移的関数従属性の有無を, “あり” 又は “なし” で答えよ。“あり”の場合は,その関数従属性の具体例を、図2 中の意味の欄に示した表記法に従って示せ。
模範解答
候補キー:{ プロバイダID,サービス機能ID,利用者ID }
部分関数従属性の有無:なし
推移的関数従属性の有無:あり
部分関数従属性:
推移的関数従属性:
・{プロバイダID,サービス機能ID,利用者ID} →
リソースID
・{リソース名称,リソース種別,配信スキーマ}
・{プロバイダID,サービス機能ID,利用者ID} →
URI →
{リソース名称,リソース種別,配信スキーマ}
解説
キーワードと論点整理
- 関係“サービス提供リソース”の属性
「プロバイダID」「サービス機能ID」「利用者ID」「利用者登録日時」「リソースID」「URI」「リソース種別」「リソース名称」「配信スキーマ」 - 候補キー
最小の属性集合で、関係内の全タプルを一意に識別できるもの - 部分関数従属性
候補キーの一部の属性で決定できる属性がある場合 - 推移的関数従属性
候補キー → A → B のように、候補キーからある属性 A を経由して別の属性 B が決まる場合
解答の論理的根拠
-
候補キーの決定
- 問題文より,関係“サービス提供リソース”の主キーは
「プロバイダID」「サービス機能ID」「利用者ID」「利用者登録日時」「リソースID」
と定義されるが,
「利用者登録日時」は利用者とリソース紐付けの履歴管理用時刻,
「リソースID」はリソース自体を一意に識別するIDです。 - しかし,同一の利用者が同一サービス機能IDに対して複数のリソースを所有できることから,
「プロバイダID」「サービス機能ID」「利用者ID」「リソースID」の4属性で一意にタプル識別が可能です。 - さらに「利用者登録日時」は履歴管理のための附属属性であり,一意性判定には不要なので,
最小性を考慮すると候補キーは
{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID, リソースID}
がまず考えられます。 - しかし図5の関数従属性表示から,
中央の5属性(サービス機能ID, プロバイダID, 利用者ID, リソースID, タイムスタンプ)
のうち「タイムスタンプ」(利用者登録日時)は一意性に寄与せず,
実際は{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID}
だけで「リソースID」も一意に決定できると読み取れます。 - よって最小性をみたす候補キーは
{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID}
と判定します。
- 問題文より,関係“サービス提供リソース”の主キーは
-
部分関数従属性の有無
- 「候補キーの一部」だけで決まる属性があるかを見ると,
- 例えば
{プロバイダID, サービス機能ID}
や{サービス機能ID, 利用者ID}
など部分集合では,
「リソースID」も「URI」も決まりません。
- 例えば
- よって 部分関数従属性は「なし」。
- 「候補キーの一部」だけで決まる属性があるかを見ると,
-
推移的関数従属性の検出
- 図5より,
が読み取れます。{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID} → リソースID → {リソース名称, リソース種別, 配信スキーマ}
- また「URI」を介しても同様に
{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID} → URI → {リソース名称, リソース種別, 配信スキーマ}
- これらはいずれも,候補キー → A → B の形をしており,**推移的関数従属性「あり」**です。
- 図5より,
関係“サービス提供リソース”のまとめ
推移的関数従属性の具体例
{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID}
→ リソースID
→ {リソース名称, リソース種別, 配信スキーマ}
{プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID}
→ URI
→ {リソース名称, リソース種別, 配信スキーマ}
誤りやすいポイント
- 「利用者登録日時(タイムスタンプ)」をキーに含めてしまう
→ 履歴管理用の属性で,リソースを決定するためには不要 - 「リソースID」と「URI」どちらを主キーに含めるか迷う
→ 図5の矢印関係から,まずリソースIDが候補キーで決まり,さらに URI⇔リソース名称らを推移的に決定する構造になっている - 部分従属性と推移的従属性を混同する
→ 部分従属性はキーの一部で直接決定,推移的従属性はキー→中間属性→最終属性の2段階
試験対策として覚えておくべきポイント
- 候補キーは最小性が重要:不要な属性は除外する
- 部分関数従属性=「キーの一部→属性」の関係。これがあれば第2正規形違反
- 推移的関数従属性=「キー→A→B」の二段階決定。これがあれば第3正規形違反
- 図などで関数従属性を示す場合、矢印の向きと階層構造を正確に読み取る
- 正規化の流れ:
- 重複排除 → 2NF(部分従属性解消) → 3NF(推移的従属性解消) → BCNF…
設問2(2):関係 “サービス提供リソース”及び図5について,(1),(2)に答えよ。
図5の関係 “サービス提供リソース”は,第1正規形,第2正規形, 第3正規形のうち、どこまで正規化されているかを答えよ。 また, 第3 正規形でない場合は,第3正規形に分解した関係スキーマを示せ。
なお,分解した関係スキーマの関係名は任意とし、主キーは実線の下線で示すこと。
模範解答
正規形:第2正規形
サービス提供(プロバイダID,サービス機能ID,利用者ID,リソースID,利用者登録日付)
関係スキーマ:リソース(リソースID,リソース名称,URI,リソース種別,配信スキーマ)
解説
1. キーワード・論点整理
- 正規形(第1正規形/第2正規形/第3正規形)
- 主キー(候補キー)と非キー属性
- 部分関数従属性(部分的にキーに依存する関数従属性)
- 推移的関数従属性(非キー属性を介した関数従属性)
- 分解後の関係スキーマ設計
2. 解答の要点
問:
図5の関係 “サービス提供リソース” は, 第1正規形, 第2正規形, 第3正規形のうちどこまで正規化されているか。
また, 第3正規形でない場合は, 第3正規形に分解した関係スキーマを示せ。
図5の関係 “サービス提供リソース” は, 第1正規形, 第2正規形, 第3正規形のうちどこまで正規化されているか。
また, 第3正規形でない場合は, 第3正規形に分解した関係スキーマを示せ。
模範解答の結論:
- 正規形:第2正規形
- 分解後の関係スキーマ:
- サービス提供(プロバイダID,サービス機能ID,利用者ID,利用者登録日付,リソースID)
- リソース (リソースID,リソース名称,URI,リソース種別,配信スキーマ)
3. なぜ第2正規形なのか
3.1 関係スキーマと主キー
図5より,元の関係“サービス提供リソース”の属性は以下のとおりです。
サービス提供リソース
(プロバイダID,サービス機能ID,利用者ID,利用者登録日付,リソースID,URI,リソース種別,リソース名称,配信スキーマ)
これを見て,「サービス提供リソース」を一意に識別する属性群(主キー)を考えると,プロバイダID+サービス機能ID+利用者ID+利用者登録日付の組み合わせで,一意に登録の履歴を保持できる設計と解釈します。
- 主キー(複合キー)= {プロバイダID, サービス機能ID, 利用者ID, 利用者登録日付}
- 非キー属性= {リソースID, URI, リソース種別, リソース名称, 配信スキーマ}
3.2 部分関数従属性の有無 → 第2正規形判定
第2正規形の要件は,「第1正規形を満たし,かつ主キーの一部ではなくすべてに完全関数従属している」ということです。
- 「サービス提供リソース」では,リソースIDや URI などは,主キーの一部(例えばプロバイダIDだけではなく,利用者IDだけでもない)で決まるものではなく,主キー全体に依存しているように設計されています。
- 従って,部分関数従属性(主キーの一部分だけに依存するケース)は存在せず,第2正規形の条件を満たします。
3.3 推移的関数従属性の存在 → 第3正規形でない理由
一方で,「リソース名称」「URI」「リソース種別」「配信スキーマ」は,次のような関数従属性を持っています(図5の矢印から読み取れる):
リソースID → {リソース名称, URI, リソース種別, 配信スキーマ}
しかし,リソースID はこの関係スキーマの非キー属性です。
- 主キー全体 → リソースID
- リソースID → リソース名称 ・・・
というように,非キー属性を介して他の非キー属性を決定している状態です。
これは 推移的関数従属性 に該当し,第3正規形の要件を満たしません。
これは 推移的関数従属性 に該当し,第3正規形の要件を満たしません。
4. 第3正規形への分解
推移的関数従属性を解消するために,以下のように関係を分解します。
- サービス提供:主キーに完全関数従属し,非キー属性(リソースID)だけが残っています。
- リソース :リソースID を主キーとして,その属性群を管理します。
これにより「リソースID → リソース名称, URI, …」の依存はリソース関係内に閉じ,推移的関数従属を解消して第3正規形を達成します。
5. 受験者が誤りやすいポイント
-
主キーの特定ミス
サービス提供リソースの主キーを「リソースID を含めるか否か」で混乱しやすいですが,履歴管理の「利用者登録日付」を主キーに含める設計として整理すると,リソースID は非キー属性と見なせます。 -
部分従属性 vs 推移的従属性の取り違え
- 部分従属:キーの一部に依存
- 推移:キー → 非キーA → 非キーB
本設問では「リソースID → リソース名称…」は後者です。
-
第2正規形なのか第3正規形なのかの判断
推移的従属が残っているかどうかをまず確認し,「第3正規形ではない」結論を導く点を押さえてください。
6. 試験対策まとめ
- 第2正規形:主キーのすべての属性に完全関数従属しているかを確認。
- 第3正規形:推移的関数従属の有無を確認。非キー→非キーの依存を残さない。
- 分解後の設計:
- 非キー属性間の関数従属は,別関係に分離することで解消
- 各関係の主キーを明確にし,外部キーで関連付けを行う
- 図の読み取り練習:属性間の矢印(FD)が何を意味しているか,主キー/非キー属性は何かを即座に判断できるよう演習を重ねましょう。
設問3(1):表2〜4 について(1)〜(3)に答えよ。
表 4 の関係 “利用実績”には,アクセスした時点の利用者の所属を前提にした場合に現れてはならないタプルがある。 そのタプルの番号を全て答えよ。
模範解答
②
解説
キーワードと論点整理
- 関係“所属”と関係“アクセスログ”を自然結合し、さらに射影して関係“利用実績”を作成
- 所属登録日付とタイムスタンプの時系列的な整合性
- アクセス時点の所属情報は,「当該タイムスタンプが所属登録日付以降」でかつ「次の所属登録日付より前」であること
解答の導出過程
-
【問題文】より,関係“利用実績” は
- 関係“所属”と関係“アクセスログ”の内自然結合
- その後の射影
により作成されています。
-
自然結合はプロバイダID/利用者IDが一致するタプル同士をすべて組み合わせますが,本来必要なのは「アクセス時点に実際に適用されている所属」を結合する条件です。
-
関係“所属” の例(表2)と関係“アクセスログ” の例(表3)を示します。表2 関係“所属” の具体例表3 関係“アクセスログ” の具体例
-
自然結合のみ行うと,プロバイダID=A, 利用者ID=1 の組み合わせでは所属タプルが2行(「事務」「営業」)あるため,アクセスログの1行と掛け合わせて2行の出力が生じます。
-
表4 の関係“利用実績”には次のように現れます。表4 関係“利用実績” の具体例
-
番号②のタプルは,職種が「営業」となっていますが,【問題文】のタイムスタンプは「利用者の所属する組織及び職種は,履歴が管理される。」
「所属登録日時」
とあるように,職種「営業」の登録日付 2013-04-15 より前の 2013-04-10 12:00:00 のアクセスに適用できません。 -
よって,現れてはならないタプルは ② だけです。
誤りやすいポイント
- 自然結合だけしてしまい,「所属登録日付」と「アクセス時刻」の比較条件を入れ忘れる
- 履歴管理される属性では,「開始日時」と「終了日時」の間に含まれるかを必ず考慮する
- アクセスログが1行でも,所属タプルが複数行あると組み合わせ爆発と不整合を招く
試験対策としてのポイント
- 履歴管理(タイムスタンプ管理)のある関係を結合する際は,開始~終了の時制制約を明示的に確認する
- 自然結合で済ませず,**条件付き結合(non-equijoin)**が必要なケースを見極める
- モデル設計・SQL記述では,必ず「いつから」「いつまで」の条件をWHERE句やON句に盛り込む習慣をつける
設問3(2):表2〜4 について(1)〜(3)に答えよ。
表4の関係 “利用実績” のタプルに現れない利用者がある。 どのような条件に当てはまる利用者か。 25字以内で述べよ。
模範解答
・関係“アクセスログ”にタプルがない利用者
・まだアクセスしていない利用者
解説
キーワード整理
- 関係“利用実績”:
「関係“所属”」と「関係“アクセスログ”」を内自然結合し、必要な属性を射影して得られる関係。 - 内自然結合:
両方の関係に共通するタプルのみを結合する。 - アクセスログにタプルがない利用者=まだアクセスしていない利用者
解答の理由
- 問題文には次のようにあるため、
「利用者の行動傾向分析を行うために,関係“所属” 及び関係 “アクセスログ”に対して内自然結合演算及び射影演算を行い,関係 “利用実績” を作成した。」
- 内自然結合の性質上、どちらか一方に存在しない利用者(タプル)は結果に現れない。
- 表2(所属)では利用者 B-2(プロバイダID=B, 利用者ID=2)も存在するが、
表3(アクセスログ)には B-2 のタプルがないため、
表4(利用実績)にも現れていないことから、
「アクセスログに記録がない=まだアクセスしていない利用者」であると判断できる。
誤りやすいポイント
試験対策として覚えておくべきポイント
- 内自然結合(inner join)
- 両側にマッチするキー値を持つタプルだけが残る。
- 一方にしか存在しない行は結果に登場しない。
- 射影(projection)
- 必要な列だけを取り出し、残りは捨てる操作。
- 結合演算の前後で欠損するタプルの意味を正しく把握する。
- 結合元に「ログ記録がない」ケースは結果に含まれないことを意識する。
設問3(3):表2〜4 について(1)〜(3)に答えよ。
(2)の現れない利用者も表 4 の関係 “利用実績” のタプルに現れるようにするためには,内自然結合演算をどのような演算に変更すればよいか。 30 字以内で述べよ。
模範解答
・関係“所属”を左とする左外自然結合演算
・関係“所属”のタプルを全て出力する外自然結合演算
解説
キーワード・論点整理
- 自然結合(inner join)
共通属性をキーにして,両リレーションに共に存在するタプルのみを結合する演算。 - 外自然結合(outer join)
左外/右外のいずれかを指定し,一方にしかないタプルも結果に残す自然結合。- 左外自然結合:左側リレーションのすべてのタプルを保持
- 右外自然結合:右側リレーションのすべてのタプルを保持
- 本問の論点
「関係“所属”のタプルをすべて出力し,アクセスログに対応する行がない場合も残す」ために,内自然結合ではなく左外自然結合を用いる。
解答説明
問題文では,まず次のように述べられています。
〔利用者の行動傾向分析〕
利用者の行動傾向分析を行うために,関係“所属” 及び関係 “アクセスログ”に対して内自然結合演算及び射影演算を行い,関係 “利用実績” を作成した。
このとき,「(2)の現れない利用者も表4の関係 “利用実績” のタプルに現れるようにする」には,両方に一致するタプルのみを取る内自然結合ではなく,関係“所属”のタプルをすべて残す結合が必要です。
関係代数ではこれを左外自然結合演算(left outer natural join)と呼びます。
関係代数ではこれを左外自然結合演算(left outer natural join)と呼びます。
SQLで書くと例えば:
SELECT …
FROM 所属
LEFT OUTER JOIN アクセスログ USING (プロバイダID, 利用者ID);
のように記述します。
誤りやすいポイント
- 「外自然結合」とだけ書くと左右の指定が不明瞭になる
→ 必ず左外か右外を明示する - 「完全外結合(full outer join)」を選ぶと,アクセスログにも存在しない“利用”が含まれすぎる
→ 本問では「所属側のみすべて」を残せばよく,完全外結合は不要 - SQL用語の
LEFT JOIN
と関係代数の「左外自然結合」が一対一対応することを押さえる
試験対策ポイント
- 自然結合(inner join) vs. 外自然結合(outer join)の違いを明確に
- 左外結合・右外結合・完全外結合の使い分け
- 関係代数で「左外自然結合演算」と表現する点を覚える
- SQLでは
LEFT OUTER JOIN
,RIGHT OUTER JOIN
,FULL OUTER JOIN
のキーワード対応を正確に - 「保持すべきリレーション(左か右か)」を問題文でしっかり読み取るクセをつける