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データベーススペシャリスト試験 2016年 午前2 問18
分散データベースシステムの目標の一つである“移動に対する透過性”の説明として, 適切なものはどれか。
ア:運用の都合や性能向上の目的で表の格納サイトが変更されても, 利用者にこの変更を意識させないで利用可能にする機能のことである。(正解)
イ:データベースが通信網を介して物理的に分散配置されていても, 利用者にこの分散状況を意識させないで利用可能にする機能のことである。
ウ:一つの表が複数のサイトに重複して格納されていても, 利用者にこれを意識させないで利用可能にする機能のことである。
エ:一つの表が複数のサイトに分割して格納されていても、利用者にこれを意識させないで利用可能にする機能のことである。
解説
# 分散データベースシステムの「移動に対する透過性」についての解説
分散データベースシステムでは、データが複数の物理的に離れたサイトに格納されています。このとき、利用者(エンドユーザーやアプリケーション)がデータの物理的な配置や管理の詳細を意識せずにデータを利用できるようにするために「透過性(トランスペアレンシー)」という概念が重要となります。
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## 移動に対する透過性とは
- **定義:**
「移動に対する透過性」とは、**データの格納場所が運用の都合や性能向上の目的で変わったとしても、利用者にその移動を意識させずに、引き続き同じように利用できる機能のこと**を指します。
- つまり、元々格納されていたサイトから別のサイトへ表(テーブル)が移動したとしても、利用者がアクセス方法を変える必要がなく、データベースの操作が以前と変わらずに行える状態を保つことを意味します。
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## 選択肢の比較
| 選択肢 | 内容の概要 | 該当する透過性の種類 |
|--------|------------------------------------|----------------------------------|
| ア | 表の格納サイトを変更しても利用者に意識させない | 移動に対する透過性 |
| イ | 分散配置されていることを意識させない | 位置透過性 |
| ウ | 複数サイトに重複して格納されていても意識させない | 冗長性透過性(複製に関する透過性) |
| エ | 一つの表を複数サイトに分割して格納し意識させない | 分割透過性(断片化透過性) |
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## なぜ「ア」が正解なのか?
- 問題文で求められているのは「移動に対する透過性」の説明です。
- 表の**格納サイトが変更されても利用者に影響がない**ことがこの透過性の核心です。
- 誤答の例として、イは「位置透過性」と呼ばれ、データがどのサイトにあるかを隠すものですが、データの「場所が変わる」こと(移動)については触れていません。
- ウやエはそれぞれ複製や分割の管理に関する透過性です。
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## まとめ
| 用語 | 意味・特徴 |
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| **移動に対する透過性** | データ格納先が変更されても、利用者に意識させない |
| 位置透過性 | データの物理的な分散配置を利用者に見せない |
| 冗長性透過性 | データ複製が利用者に気づかれないように管理する |
| 分割透過性 | データ分割が利用者に意識されないように扱う |
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これらの透過性により、分散システムの複雑さを隠蔽し、利用者が単一の一貫したデータベースとして利用できることを実現しています。
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# 参考
- 鈴木 善弘, 「分散データベースシステム」, オーム社
- Date, C. J., & Darwen, H., 「データベースの理論」, ピアソン教育