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データベーススペシャリスト試験 2016年 午前2 問20
従量課金制のクラウドサービスにおける, EDoS(Economic Denial of Service, Economic Denial of Sustainability)攻撃の説明はどれか。
ア:カード情報の取得を目的に, 金融機関が利用しているクラウドサービスに侵入する攻撃
イ:課金回避を目的に、同じハードウェア上に構築された別の仮想マシンに侵入し, 課金機能を利用不可にする攻撃
ウ:クラウドサービス利用者の経済的な損失を目的に, リソースを大量消費させる攻撃(正解)
エ:パスワード解析を目的に、クラウド環境のリソースを悪用する攻撃
解説
EDoS攻撃(Economic Denial of Service, Economic Denial of Sustainability)についての解説
1. EDoS攻撃とは?
EDoS攻撃は、クラウドサービスの「従量課金制」という特徴を悪用した攻撃の一種です。クラウドサービスでは利用したリソース(CPU時間、データ転送量、ストレージ容量など)に応じて料金が発生します。この仕組みを利用して、攻撃者は大量のリクエストや負荷をクラウドサービスに送り込み、利用者に過剰な課金を発生させることを狙います。
その結果、被害者は経済的な損失を被るため、「経済的なサービス拒否攻撃」「持続不可能な経済負担を強いる攻撃」とも呼ばれます。
2. EDoS攻撃の特徴
- 通常のDDoS攻撃と異なり、ネットワークの機能停止を狙うのではなく、利用料金の増加を狙う。
- クラウドの「使った分だけ課金される」という課金モデルをターゲットにする。
- 被害者がサービスを継続できないほどの経済的損失を与えることを目的とする。
3. 選択肢の検討
- ア:「カード情報の取得を目的に…」は、不正アクセスや個人情報窃取の典型であり、EDoS攻撃とは異なる。
- イ:「課金回避を目的に…」は、課金システムの妨害を狙う攻撃で、EDoS攻撃の目的とは異なる。
- ウ:「クラウドサービス利用者の経済的な損失を目的に、リソースを大量消費させる攻撃」は、まさにEDoS攻撃の定義に合致する。
- エ:「パスワード解析を目的にリソースを悪用する攻撃」はリソースの不正利用であるが、経済的損失を主目的としていない。
したがって、正しい選択肢は ウ です。
4. 数式的なイメージ
例えば、クラウドサービスの利用料金が時間あたりの消費リソース量 に比例して発生するとすると、
ここで、
- (C):期間 (T) における総料金
- (p):単位リソースあたりの単価
- (R(t)):時間 (t) におけるリソース消費量
EDoS攻撃はこの (R(t)) を攻撃者が意図的に増大させ、被害者のコスト (C) を異常に高くさせることで損失を与えることになります。
まとめ
- EDoS攻撃は従量課金制のクラウドサービスの料金モデルを悪用し、経済的負担を引き起こす攻撃。
- 目的はネットワーク停止ではなく、利用料金の増大および経済的損失の発生。
- 正解は「ウ: クラウドサービス利用者の経済的な損失を目的に、リソースを大量消費させる攻撃」。