情報処理安全確保支援士試験 2010年 秋期 午前225


請負契約でシステム開発を委託している案件について、委託元のシステム監査人の指摘事項に該当するものはどれか。
委託した開発案件の品質を委託元の管理者が定期的にモニタリングしている。
委託元の管理者が委託先の開発担当者を指揮命令している。(正解)
契約書に機密保持のための必要事項が盛り込まれている。
特定の委託先との契約が長期化しているので、その妥当性を確認している。

解説

請負契約でシステム開発を委託している案件についてのシステム監査人の指摘事項【午前2 解説】

要点まとめ

  • 結論:委託元が委託先の開発担当者を直接指揮命令することは請負契約の本質に反し、システム監査人の指摘対象となる。
  • 根拠:請負契約は成果物の完成を目的とし、委託先の独立性が保たれるべきであるため、指揮命令権は委託元にない。
  • 差がつくポイント:契約形態ごとの権限関係を理解し、監査人の視点で「指揮命令の有無」を正確に判断することが重要。

正解の理由

イ: 委託元の管理者が委託先の開発担当者を指揮命令している。は請負契約の基本原則に反します。請負契約では委託先が独立して業務を遂行し、成果物の完成責任を負います。委託元が直接指揮命令を行うと、実質的に労働者派遣や準委任契約のような関係となり、契約違反やリスクの増大を招くため、システム監査人が指摘すべき事項です。

よくある誤解

請負契約でも委託元が細かく指示を出してよいと誤解されがちですが、これは契約形態の混同であり監査上問題となります。
品質管理や契約内容の確認は必要ですが、指揮命令権とは別の話です。

解法ステップ

  1. 請負契約の基本的な特徴を確認する(成果物完成責任、独立性)。
  2. 各選択肢が契約の原則に合致しているかを検討する。
  3. 指揮命令権の所在に注目し、請負契約で許されるか判断する。
  4. システム監査人の視点で「契約違反やリスクとなる行為」を特定する。
  5. 最も問題となる選択肢を正解とする。

選択肢別の誤答解説

  • ア: 品質を委託元が定期的にモニタリングすることは、請負契約でも適切な管理行為であり指摘事項ではない。
  • イ: 委託元が委託先の担当者を指揮命令することは請負契約の独立性を損ない、監査指摘の対象となる。
  • ウ: 契約書に機密保持条項を盛り込むことは契約上の適切な措置であり、指摘事項ではない。
  • エ: 長期契約の妥当性確認は監査上重要な管理行為であり、指摘事項とはならない。

補足コラム

請負契約は「成果物の完成」を目的とし、委託先が独立して業務を遂行する契約形態です。これに対し、準委任契約や労働者派遣契約は「業務の遂行」を目的とし、委託元が指揮命令権を持つ場合があります。システム監査では契約形態の適正運用が重要視され、契約違反はリスク管理上の重大な問題となります。

FAQ

Q: 請負契約で委託元がどこまで指示できるのですか?
A: 成果物の仕様や納期など大枠の要件は指示可能ですが、具体的な作業指揮や担当者への直接命令はできません。
Q: 準委任契約と請負契約の違いは何ですか?
A: 請負契約は成果物の完成が目的で独立性が高いのに対し、準委任契約は業務の遂行が目的で委託元の指揮命令が認められます。

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