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情報処理安全確保支援士試験 2021年 秋期 午前2 問03
PQC(Post-Quantum Cryptography)はどれか。
ア:量子アニーリングマシンを用いて,回路サイズ,消費電力,処理速度を飛躍的に向上させた実装性能をもつ暗号方式
イ:量子コンピュータを用いた攻撃に対しても,安全性を保つことができる暗号方式(正解)
ウ:量子コンピュータを用いて効率的に素因数分解を行うアルゴリズムによって,暗号を解読する技術
エ:量子通信路を用いた鍵配送システムを利用し,大容量のデータを高速に送受信する技術
解説
PQC(Post-Quantum Cryptography、ポスト量子暗号)は、将来の量子コンピュータによる攻撃に耐えうる暗号技術のことを指します。具体的には、現在広く用いられているRSA暗号や楕円曲線暗号(ECC)などは、量子コンピュータのショアのアルゴリズムによって高速に解読されるリスクがあります。そこで、量子コンピュータの攻撃にも安全な暗号方式の研究・開発が進められており、それが「ポスト量子暗号」です。
問題の選択肢の説明
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ア:量子アニーリングマシンを用いて、回路サイズ・消費電力・処理速度を向上させた暗号方式
これは暗号の性質や安全性に関するものではなく、「計算性能を向上させた実装技術」に関する記述です。PQCの定義からは外れます。 -
イ:量子コンピュータを用いた攻撃に対しても安全性を保つことができる暗号方式
これはPQCの本質を正しく表しています。PQCは量子コンピュータの解析技術に対抗できる暗号方式です。 -
ウ:量子コンピュータを用いて効率的に素因数分解を行い暗号を解読する技術
これは量子コンピュータが持つ潜在的な「攻撃技術」、つまりショアのアルゴリズムのことを示しています。PQCではなく、量子コンピュータの持つ脅威の側面です。 -
エ:量子通信路を用いた鍵配送システムを利用し、大容量データを高速に送受信する技術
これは量子鍵配送(QKD: Quantum Key Distribution)に関する技術であり、PQCとは異なります。QKDは量子力学の原理を使った安全な鍵配布方式です。
ポスト量子暗号の主な種類
PQCには以下のような暗号方式が含まれます:
- 格子暗号(Lattice-based cryptography)
- 符号理論に基づく暗号(Code-based cryptography)
- 多変数多項式暗号(Multivariate cryptography)
- ハッシュベース署名(Hash-based signatures)
これらは量子コンピュータによる攻撃でも安全性を保てるよう設計されています。
まとめ
- PQCとは「量子コンピュータの攻撃に対抗可能な暗号方式」です。
- それ以外は「量子コンピュータの攻撃技術」「性能改善技術」「量子通信技術」など、PQCの定義とは異なります。
- 問題の正解は「イ」です。
この知識は、今後の情報セキュリティ分野で非常に重要となるため、しっかり理解しておきましょう。