情報処理安全確保支援士試験 2022年 春期 午前206


量子暗号の特徴として、適切なものはどれか。
暗号化と復号の処理を量子コンピュータを用いて瞬時に行うことができるので、従来のコンピュータでの処理に比べて、大量のデータの秘匿を短時間で実現できる。
共通鍵暗号方式であり従来の情報の取扱量の最小単位であるビットの代わりに量子ビットを用いることによって、瞬時のデータ送受信が実現できる。
量子雑音を用いて疑似乱数を発生させて共通鍵を生成し、公開鍵暗号方式で共有することによって、解読が困難な秘匿通信が実現できる。
量子通信路を用いて安全に共有した乱数列を使い捨ての暗号鍵として用いることによって、原理的に第三者に解読されない秘匿通信が実現できる。(正解)

解説

量子暗号の特徴として、適切なものはどれか【午前2 解説】

要点まとめ

  • 結論:量子暗号は量子通信路で安全に共有した乱数列を使い捨て鍵として用い、原理的に解読不可能な秘匿通信を実現します。
  • 根拠:量子力学の原理により、盗聴があれば通信状態が変化し検知可能なため、第三者による解読が理論上不可能です。
  • 差がつくポイント:量子暗号は量子コンピュータの高速処理や疑似乱数生成ではなく、量子通信路を利用した鍵配送の安全性に特徴があります。

正解の理由

選択肢エは「量子通信路を用いて安全に共有した乱数列を使い捨ての暗号鍵として用いることによって、原理的に第三者に解読されない秘匿通信が実現できる」と述べています。これは量子鍵配送(Quantum Key Distribution, QKD)の本質を正確に表現しています。QKDは量子力学の不確定性原理を利用し、盗聴があれば通信に影響が出るため安全な鍵共有が可能です。共有した鍵はワンタイムパッドのように使い捨てることで、理論上完全な安全性を保証します。

よくある誤解

量子暗号は量子コンピュータの高速処理を使った暗号化技術ではありません。量子ビットを使った瞬時通信や疑似乱数生成による公開鍵暗号方式とも異なります。

解法ステップ

  1. 問題文の「量子暗号の特徴」を正確に理解する。
  2. 各選択肢が量子暗号のどの技術や原理に基づくかを検討する。
  3. 量子鍵配送の特徴(盗聴検知、使い捨て鍵、原理的安全性)と照合する。
  4. 量子コンピュータの高速処理や疑似乱数生成など誤った説明を除外する。
  5. 最も正確に量子暗号の本質を表す選択肢を選ぶ。

選択肢別の誤答解説

  • ア: 量子コンピュータを用いて暗号化・復号を瞬時に行うという説明は誤り。量子暗号は鍵配送の安全性に関する技術であり、暗号処理の高速化とは無関係です。
  • イ: 量子ビットを使った瞬時のデータ送受信は量子通信の研究分野ですが、量子暗号の特徴としては誤り。共通鍵暗号方式とは異なり、量子暗号は鍵配送の安全性に注目します。
  • ウ: 量子雑音を用いた疑似乱数生成や公開鍵暗号方式の説明は混同であり、量子暗号の本質を表していません。公開鍵暗号とは別の技術です。
  • : 量子通信路を用いた安全な乱数列共有と使い捨て鍵の利用により、理論上解読不可能な秘匿通信を実現する点が正しい説明です。

補足コラム

量子暗号の代表的な技術はBB84プロトコルで、量子ビットの偏光状態を利用して鍵を共有します。盗聴者が介入すると量子状態が変化し、通信者はそれを検知可能です。これにより、盗聴の有無を確認し安全な鍵を生成できます。量子暗号は将来的に量子コンピュータによる解読耐性を持つ通信手段として期待されています。

FAQ

Q: 量子暗号と量子コンピュータは同じ技術ですか?
A: いいえ。量子暗号は量子力学の原理を利用した安全な鍵配送技術であり、量子コンピュータは計算処理を行う装置です。役割が異なります。
Q: 量子暗号はなぜ安全なのですか?
A: 量子力学の不確定性原理により、盗聴があれば通信状態が変化し検知できるため、第三者による秘密鍵の取得が理論上不可能です。

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