ホーム > 情報処理安全確保支援士試験 > 2024年 秋期

情報処理安全確保支援士試験 2024年 秋期 午前209


量子暗号の特徴として、適切なものはどれか。
暗号化と復号の処理を量子コンピュータを用いて行うことができるので従来のコンピュータでの処理に比べて大量のデータの秘匿を短時間で実現できる。
共通鍵暗号方式であり従来の情報の取扱量の最小単位であるビットの代わりに量子ビットを用いることによって高速なデータ送受信が実現できる。
量子雑音を用いて共通鍵を生成し公開鍵暗号方式で共有することによって解読が困難な秘匿通信が実現できる。
量子通信路を用いて安全に共有した乱数列を使い捨ての暗号鍵として用いることによって原理的に第三者に解読されない秘匿通信が実現できる。(正解)

解説

量子暗号の特徴について、問題の選択肢を踏まえてわかりやすく解説します。

量子暗号の基本的な特徴

量子暗号は、量子力学の原理を利用して通信の安全性を確保する技術です。特に注目されるのは「量子通信路を使って安全に鍵(乱数列)を共有すること」によって、解読が原理的に不可能な通信を実現できる点です。

選択肢の解説

ア: 「量子コンピュータを用いて処理を行い、大量のデータの秘匿を短時間で実現」

これは量子コンピュータの高速計算能力とは関係がありますが、量子暗号の定義とは異なります。量子暗号は量子コンピュータで暗号処理を高速化する技術ではなく、通信の安全性に焦点を当てています。したがって誤りです。

イ: 「共通鍵暗号方式で量子ビットを使い高速なデータ送受信ができる」

量子暗号は共通鍵暗号方式の一種とは言い切れません。また、量子ビット(qubit)は情報を表す単位ですが、それによって単純に高速な通信が実現するわけではありません。量子通信の目的は速度向上ではなく安全性確保です。誤りです。

ウ: 「量子雑音を使って共通鍵を生成し公開鍵暗号で共有する」

量子暗号においては「公開鍵暗号方式で鍵を共有する」ことは基本的に行いません。量子キーディストリビューション(QKD)では、量子通信路を通じて安全に鍵を共有し、その後の通信で使い捨ての鍵を使うことが特徴です。従ってこの説明も誤りです。

エ: 「量子通信路を用いて安全に共有した乱数列(鍵)を使い捨ての暗号鍵として使うことにより、第三者に解読されない秘匿通信を実現できる」

これが量子暗号の代表的な特徴です。具体的には、量子キーディストリビューション(QKD)という技術があり、量子ビットを送受信する過程で盗聴が検知されるため、通信の安全性が理論的に裏付けられています。そして、得られた鍵を一度きり(使い捨て)で使うため、第三者が解読することがほぼ不可能になります。

まとめ

量子暗号の最大の特徴は「量子力学の原理を利用して安全に鍵を共有し、その使い捨て鍵を用いることで理論的に安全な秘密通信を行う」ことです。よって正解は となります。

数式での理解(オプション)

例えば、量子通信では単一光子の状態を0|0\rangle1|1\rangleのような量子ビットで送信します。この状態は観測すると変化するため、不正に読み取ろうとすると通信相手に検知されます。
これにより安全に共有した鍵 KK を使い、
暗号文=平文K\text{暗号文} = \text{平文} \oplus K
のようにワンタイムパッド(使い捨て鍵暗号)を実現し、完全な秘匿通信を保てます。

このしくみが量子暗号技術の根本です。
← 前の問題へ次の問題へ →

©︎2025 情報処理技術者試験対策アプリ