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システムアーキテクト試験 2009年 午後1 問02
物流システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
B社は、大手食品メーカX社の関連会社で倉庫業を中心に事業を展開してきたが、総合物流会社を目指し、配送業中心のC社を吸収合併することになった。それに伴い。B社とC社のシステムを統合再構築することになり、システム再構築の企画プロジェクトを立ち上げた。B社情報システム部のD課長がプロジェクトチームのリーダとなり、メンバにはB社及びC社から業務担当の中核となる人材が任命された。
〔B社の現行業務システム概要〕
(1)B社は、関東に2か所あるX社の工場で生産された製品を保管し、X社の顧客である食品卸会社及び量販店に出荷するための仕分・包装を行っている。B社倉庫に入荷する製品の配送及びX社顧客に納品する製品の配送は、X社が手配した車両で行っている。
(2)X社の製品は、冷凍品、冷蔵品。常温品と温度帯別に管理する必要があり、倉庫は温度帯別に複数の保管庫に分かれている。
(3)現行のシステムにおいて、X社とのオーダの授受、保管・荷役などの実送付、請求及び月次決算情報の送付などは、EDIで行っている。
(4)倉庫業務のシステムには、ソフトウェアパッケージを利用しており、主に在庫管理と倉庫作業の実績収集を行っている。倉庫全体の在庫状況は把握できるが、保管庫ごとの在庫は把握できない。
(5)会計システム及び給与計算システムには、X社が利用しているソフトウェアパッケージと同じペンダのソフトウェアパッケージを利用している。会計処理では、仕訳伝票の入力から月次決算までを会計システムで行っている。
(6)現在、X社の物流部門と共同で、倉庫業務に関連する物流コストの管理方式の見直しを進めている。
〔C社の現行業務システム概要〕
(1)C社は、関東圏の食品メーカや食品卸会社を主な荷主とし、荷主の顧客に商品を 配送している。配送は、冷凍品、冷蔵品、常温品を対象とし、温度帯別に対応できる自社保有車で行っている。
(2)荷主から配送オーダを話又はファクシミリで受け、受けたオーダに基づき配車計画を立て、車両及び運転手の手配を行う。
(3)現行の配送連システムは、車両の運行状況の管理を行っており、車両にはすべて、GPS対応車載端末を搭載している。これによって道路混雑時に達回路を指示して納品遅れを回避する効果を上げている。配送実績を収集し、運賃計算を行い、荷主に対して配送料を請求する業務も配送関連システムで行っている。
(4)会計システム及び給与計算システムには、ソフトウェアパッケージを利用している。会計処理では、仕訳伝票の入力から月次決算までを会計システムで行っている。
(5)配送コストは、人件費。燃料費など費目別に月単位で把握している。
〔合併後のビジネス概要〕
合併後のB社は、倉庫事業と配送事業を営む総合物流会社へ変身を図る。倉庫事業においては、C社の顧客である食品メーカや食品卸会社を中心に在庫・保管ビジネスへの拡大を図る。配送事業においては、X社製品の入荷・出荷配送も取り込んでいく予定である。
〔システム再構築の基本方針〕
合併に向けて、プロジェクトチームに示されたシステム再構築の基本方針は、次のとおりである。
(1)B社が利用しているソフトウェアパッケージが倉庫管理システムのほかに配送管理システムも備えていることから、B社が利用しているソフトウェアパッケージを合併後の業務プロセスに適用し、課題と要望を取り込んで新たな業務プロセスとする。
(2)現在X社の物流部門と共同で進めている物流コストの管理方式の見直しを、配送業務領域まで拡大し、その結果を踏まえて物流コスト管理システムにソフトウェアパッケージを利用するか否かを検討する。
〔合併に向けての業務システムへの課題と要望〕
プロジェクトチームは、合併に向けた課題と要望の洗い出しを行った。課題と要望を表に示す。

〔合併後の全体業務構成〕
D課長は、合併後の全体業務構成を理した。合併後の全体業務構成を図に示す。

また、各業務のシステムでの対応方針を、次のように考えた。 (1)倉庫業務(倉庫管理システム) ①在庫管理において、温度帯別管理の強化を基本に在庫管理精度の向上を図る。 ②倉庫作業管理において、棚入れ、ピッキング、仕分、包装、棚卸しの作業指示と作業実績収集を強化する。 ③入荷管理において、荷降しから棚入れの準備までを配送の入荷オーダと連動させる。 ④出荷管理において、車両の運行方面や積載量を考慮して、配送品の積込みを効率よく行えるように、倉庫作業管理での作業指示の時点からシステムで対応できるようにする。 (2)配送業務(配送管理システム) ①配車管理において、配送ルート及び車両1台当たりの積載率の最適化を行う。 ②運行管理において、車両位置管理の機能は、B社が利用しているソフトウェアパッケージにはなく、今後X社からの配送をけ負うことの強みになるので、C社のシステムを組み込むこととする。 ③車両管理において、車両の安全確保を意識した、点検・整備状況の管理を行う。 (3)共通業務 ①トレーサビリティへの対応として、荷主からの入荷から、商品の保管、仕分、包装、配送先への納品まで、倉庫管理システム及び配送管理システムで追跡できるようにする。 ②X社の物流部門と共同で検討している、倉庫業務及び配送業務の活動要素別の原価計算を前提に、物流コスト管理のシステム化を図る。 ③財務管理の一般会計処理へは、会計上の取引発生元の業務システムから、自動仕訳で仕訳データを渡す。 ④受注管理において、荷主からの入荷オーダ、出荷オーダ、配送オーダを一元的 に受け取り、倉庫業務及び配送業務に必要な指示が出せるようにする。 ⑤売上請求管理において、保管料、荷役料、運賃などの計算、売上処理、請求処 理までを、合併後のすべての請求先に対して行う。 ⑥労務管理において、運転手及び倉庫作業者のシフト管理及び勤怠管理を行う。給与計算は、B社で利用しているソフトウェアパッケージに統一する。
設問1(1):表の課題と要望について、(1),(2)に答えよ
配送業務で、車両の有効活用の観点から解決すべき業務課題を二つ挙げよ。また,各課題に対してシステムでどのような対応策が考えられるか。それぞれ40字以内で述べよ。
模範解答
①:
業務課題:帰り便の空車の活用
対応策:出荷配送後の車両を入荷配送に回せる最適配送ルート計画をシステムで行う。,
②:
業務課題:積載率の向上, 小口化, 多様化
対応策:納品物の容量と配送先から見て, 最適な積載率になる混載計画をシステムで行う。
解説
模範解答のキーワードと論点整理
なぜその解答になるのか—問題文の根拠と論理的説明
【帰り便の空車の活用】
- 記述:「納品後の車両が空車で帰るのはもったいない。帰り便をうまく活用した配車計画が必要だ。」
- 意味:配送が終わったあと、車両が空のまま帰ってくる非効率がある。空のままで帰るのはコストがかかるため、帰りの便でも荷物を積んで効率的に配送業務を行いたいという課題。
- 対応策としては、システムで「出荷配送後の車両を入荷配送に回す最適配送ルート計画」を立てることで、この帰り便の空車問題を解決できる。
- システム的には、「どの車両がどの荷物を運ぶのか」、「どの配送ルートを走るのが効率的か」を複合的に考慮して計画を立案することが必要。
【積載率の向上、小口化、多様化への対応】
- 記述:「最近の傾向として配送が小口化しており、配送品の重量及び容積を勘案した配車や混載を考慮した車両1台当たりの積載効率を上げる仕組みが必要だ。」
- 意味:荷物が細分化(小口化)し、多様化しているため、積載効率が悪くなりやすいという課題がある。
- そのため、配送品の重量や容積をシステム上で管理し、「最適な混載計画」を作ることで、車両の積載率を最大限に引き上げることが必要。
- この対応により、効率的な配車と混載が可能になり、コスト削減や作業効率向上につながる。
受験者が誤りやすいポイント・注意すべき点
-
帰り便の意味を正確に理解すること
「帰り便の空車」を単に「配車計画」と誤認してしまうケースがありますが、ここで問われているのは「配達後の空車での帰路の活用」です。単なるルート管理ではなく、空荷の活用が目的である点に注意しましょう。 -
「小口化」や「多様化」を単に「積載率」とだけ結びつける誤解
小口化や多様化は積載率に影響しますが、それらをカバーするためには「混載計画」や「容量・重量管理」といった具体的なシステム機能が必要です。単に「配車最適化」と答えるだけでは不十分です。 -
出荷品の物理的な特性(温度帯別、重量、容積など)に言及がない回答は弱い
問題文に「冷凍品、冷蔵品、常温品」や「重量及び容積」を管理する必要性が示されているため、システム対応も単なる「配車計画」以上の細かな管理が求められています。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
車両の有効活用に関する課題の典型例
- 「帰り便の空車を減らすこと(往復効率化)」
- 「積載率向上のため配送品の混載化計画」
-
システムが担うべき役割
- 配送ルートの最適化
- 配車計画と積載計画の連携
- 小口配送や多品種配送に対応した配送計画の柔軟性
- 配送品の重量・容積・温度帯管理
-
業務課題とシステム対応の連動性を意識する
- 課題を正確に読み取り、それに対応するシステム機能を紐づけることが重要
- 回答は簡潔にしつつも、課題の重要キーワードを確実に含める
-
全体構成図(業務とシステムの構成)を把握しておく
- 配送業務の「配車管理」「運行管理」などの業務区分
- 複合配送の必要性や配送効率改善に関する機能がどの業務に対応するか
まとめ
この問題は、配送業務における車両の効率的な活用がテーマです。
「帰り便の空車の活用」と「積載率向上」という2つの課題を正確に回答し、それぞれに対して「最適配送ルートの計画」や「混載計画」をシステム的に行うことで解決できることを示すことがポイントです。
「帰り便の空車の活用」と「積載率向上」という2つの課題を正確に回答し、それぞれに対して「最適配送ルートの計画」や「混載計画」をシステム的に行うことで解決できることを示すことがポイントです。
特にキーワードの「帰り便の空車」「混載計画」「小口化」などは、配送業務に関する基本知識として押さえておきましょう。解答時はこれらの論点を漏れなく、簡潔にまとめることが評価につながります。
設問1(2):表の課題と要望について、(1),(2)に答えよ
温度帯別管理の現状、課題と要望から見て、現状の倉庫管理システムにどのような機能の追加が必要か。15字以内で述べよ。
模範解答
保管庫ごとの在庫管理機能
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 保管庫ごとの在庫管理機能
- 温度帯別管理の強化に関連する機能追加
- 「倉庫全体の在庫状況は把握できるが、保管庫ごとの在庫は把握できない」という現状の課題解消
- 課題と要望の中で特に「保管庫ごとの在庫をシステムで把握できる」ことの要望
なぜ「保管庫ごとの在庫管理機能」なのか?論理的解説
【問題文】の内容から以下の点が重要です。
- 現状の課題
「倉庫全体の在庫状況はシステムで把握しているが、保管庫ごとの在庫もシステムで把握できるようにしたい。」(倉庫業務の課題と要望)
この記述は、現行倉庫管理システムの大きな課題であり、倉庫全体は見えるものの、温度帯別に分かれた複数の保管庫単位での詳細な在庫管理ができていないことを意味します。
- 温度帯別管理の重要性
「温度帯別に管理する必要があり、倉庫は温度帯別に複数の保管庫に分かれている。」(B社現行業務システム概要)
温度帯別の在庫正確な管理は品質保持に不可欠です。温度帯別管理のために「保管庫ごとの在庫管理」が求められます。
- システム再構築の対応方針
「①在庫管理において、温度帯別管理の強化を基本に在庫管理精度の向上を図る。」(倉庫業務(倉庫管理システム)の対応方針)
このため、保管庫ごとの在庫管理機能を追加し、温度帯や保管状況により細かい在庫把握が可能なシステムに改良することが必要です。
まとめると、現状の課題と要望、温度帯別管理の必要性、そして再構築方針の三者の整合性から、「保管庫ごとの在庫管理機能」の追加が求められます。
受験者が誤りやすいポイントとひっかけ
-
「温度帯管理機能」ではない理由温度帯管理は既に倉庫物理的に複数の保管庫に分かれて行われているため、温度帯別管理自体は存在しています。しかし「システム的に保管庫ごとの在庫を管理できていない」ことが課題です。単に「温度帯管理」だけを答えると不十分で、「どこに庫別(物理空間別)在庫があるか」を管理できる仕組みが必要です。
-
「在庫管理機能の強化」など漠然とした表現は避ける問題文は「保管庫ごとの在庫管理ができるように」という具体的な要望があり、抽象的すぎると減点されやすいです。
-
「入荷管理機能」や「棚卸し機能」などの作業系機能と混同しやすい今回の設問は「温度帯別管理の現状・課題」に対する機能追加なので、作業計画や荷姿の効率化など別論点の機能追加とは区別する必要があります。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
以上を踏まえ、設問で求められているのは「保管庫ごとの在庫管理機能」の追加です。これにより、温度帯別などの細分化された単位で在庫状況を正確に把握・管理できるようになり、品質・業務効率の向上が期待されます。
設問2
倉庫管理システム及び配送管理システムにおいて、トレーサビリティを一貫して確保するために、システムでどのような対応をすべきか。35字以内で述べよ
模範解答
自由記述(トレース対象品に識別子を割り当て,トレース対象品の動きを記録し関連付けることを,適切に記述していれば高得点)
解説
模範解答の核心キーワードと論点整理
- トレーサビリティの対象品に「識別子を割り当てる」こと
- トレーサビリティ対象品の「動きを記録する」こと
- 「倉庫管理システム」と「配送管理システム」で情報を「一貫して関連付ける」こと
これらの要素を簡潔に表現し、トレーサビリティをシステムで実現するためのポイントとしています。
なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えながら)
トレーサビリティ確保の必要性
問題文の「合併に向けての業務システムへの課題と要望」から、
「トレーサビリティの確保は今後の必須課題である。荷主からの入荷から、商品の保管、仕分、包装、配送先への納品まで、トレース対象品を追跡できるようにしたい。」
と明記されています。これは、物流全体の各段階で製品の状態や場所を正確に追跡し、万一の問題発生時に原因を迅速に特定できるようにすることが目的です。
システムでの対応方針
さらに「合併後の業務構成」において、
【共通業務】
└── トレーサビリティ管理
【倉庫業務】
├── 在庫管理
│ ├── 保管庫別在庫管理
│ └── 鮮度管理
【配送業務】
└── 運行管理
├── 車両位置管理
└── 配送実績管理
とされ、トレーサビリティに関わる複数業務の役割分担が示されています。
また、「各業務のシステムでの対応方針」では、
「トレーサビリティへの対応として、荷主からの入荷から、商品の保管、仕分、包装、配送先への納品まで、倉庫管理システム及び配送管理システムで追跡できるようにする。」
と具体的に述べています。
トレーサビリティの実現方法
トレーサビリティを一貫して確保するためには、単にシステム間で情報が連携されるだけでは不十分です。対象品ごとに一意の「識別子」(たとえばバーコードやRFIDタグ)を付与し、その識別子をもとに倉庫内の「保管場所」や「作業実績」、配送の「配送ルート」や「納品状況」までの動きを「記録」し、両システムで情報を「関連付けて管理」する必要があります。
この「識別子の割当て」と「動きの記録」「関連付け」が、トレーサビリティをシステム化する根幹であり、模範解答が重視するポイントです。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの例
こうした誤解を避けるために、トレーサビリティは「識別子の付与」と「システム間連携による動きの記録と関連付け」で「一貫して確保」することを理解しましょう。
試験対策として覚えておくべきポイント
- トレーサビリティとは、対象品の識別子を割り当て、一連の動きを追跡管理する仕組みであること。
- 倉庫管理システムと配送管理システムの両方で情報を一貫して管理・連携し、各段階の記録を関連付けることが重要。
- 識別子はバーコードやRFIDタグなど、電子的に読み取り可能な形式が主流であり、これにより作業の効率化と正確な追跡ができる。
- トレーサビリティの目的は、商品の安全・品質確保、不具合時の迅速な原因特定、顧客信頼の向上など多方面にわたる。
- 情報処理技術者試験では、「識別子の付与」「動きの記録」「関連付け」などトレーサビリティの基本的要素を短く明確に表現することが求められる。
このように、問題文の要望・システム概要・対応方針を踏まえ、トレーサビリティシステムの本質を押さえて解答してください。
設問3(1):D課長が考えたシステムでの対応方針について,(1),(2)に答えよ
運行管理においてC社のシステムを活用することが、今後X社から配送を請け負うことの強みになる理由は何か。30字以内で述べよ。
模範解答
X社の要請である,納品時間遅れ解消に対応できるから
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- X社の要請に対応すること
- 納品時間遅れの解消がポイント
- C社の運行管理システムの特徴:
- GPS対応車載端末を搭載し、
- 道路混雑時に迂回路を指示できること
- 配送の効率化と納品遅延予防機能
- これにより、X社からの配送受託における競争力強化
なぜこの解答になるのか — 論理的な説明
問題文のC社の現行システム概要には「(3) 現行の配送管理システムは、車両の運行状況の管理を行っており、車両にはすべて、GPS対応車載端末を搭載している。これにより道路混雑時に迂回路を指示し、納品遅れを回避する効果を上げている。」と明記されています。
- つまり、C社の配送管理システムはリアルタイムに車両の位置を把握し、道路状況に応じて最適な迂回ルートを指示できる機能を持つため、納品遅延を防ぐことが可能です。
- 合併後、X社の物流も引き受けるため、X社から「道路混雑などによる納品遅れの解消」が強く求められています(課題と要望の配送業務欄)。
- B社が利用する倉庫管理システムのパッケージには車両位置管理機能がなく、C社システムの持つ運行管理機能を組み込むことが「今後の強みになる」との基本方針が示されています。
以上より、
「X社の要請である納品時間遅れ解消に対応できるから」
という解答が正解となります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
「運賃計算や配送実績管理が強み」と誤認する点
→ 運賃計算は重要ですが、問題文では「納品遅れ解消」がX社の具体的な要請です。運賃計算は直接的な強みにはなりません。 -
「配車計画の最適化」だけを強みと考える誤り
→ 配車計画は配送業務の重要課題ですが、C社システムの特長に関しては「車両位置管理」「迂回路指示」にフォーカスされています。 -
B社の倉庫パッケージに配送管理機能がある点と混同する
→ B社のパッケージには配送管理もありますが、車両位置管理機能はありません。ここがC社システムの差別化ポイントです。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
合併やシステム統合において、それぞれの現行システムの強み・特長を理解することが重要
→ どの機能を生かすか、またどの機能が合併後の競争力につながるかを考える視点が必要。 -
物流関連システムの代表的な機能例
-
納品遅延の原因対策としての「車両位置管理」と「リアルタイム迂回路指示」の重要性を押さえること。
-
問題文の「課題と要望」や「基本方針」を丁寧に読み取り、課題解決に直結する機能を特定する訓練を行うこと。
この解説を踏まえれば、合併によるシステム統合の狙いや、配送業務におけるシステムの特長を正しく理解し、試験問題に対して的確に答えられるようになります。
設問3(2):D課長が考えたシステムでの対応方針について,(1),(2)に答えよ
合併後の物流コスト管理システムの構築にたって、システムで重点的に対応すべき機能を二つ挙げ、それぞれ15字以内で述べよ。
模範解答
①:活動要素別の原価実績把握
②:活動要素別の原価差異分析
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
この2つのキーワードが模範解答の核心です。
「活動要素別」という点が物流コスト管理システムで特に重視されているポイントであり、「原価実績の把握」と「原価差異の分析」の両方がコスト管理の主要機能となります。
「活動要素別」という点が物流コスト管理システムで特に重視されているポイントであり、「原価実績の把握」と「原価差異の分析」の両方がコスト管理の主要機能となります。
なぜこの解答になるのか(問題文からの論理的説明)
問題文の「合併に向けての業務システムへの課題と要望」の「共通業務」欄には、次のように記述があります。
「物流コスト管理においては、原価が手作業での集計のため、きめ細かい管理ができていない。配送、保管、荷役などの活動業務別の原価実績把握と、活動要素別の原価差異が分析できるようにしたい。」
ここから、物流コストを「活動業務別に(=例えば配送、保管、荷役など)、さらに活動要素別に」細かく管理し、
- 実績原価を正確に把握し、
- 原価差異(計画と実績の違い)を分析できるシステム機能が求められていることがわかります。
また、基本方針にも
「現在X社の物流部門と共同で進めている物流コストの管理方式の見直しを、配送業務領域まで拡大し、その結果を踏まえて物流コスト管理システムにソフトウェアパッケージを利用するか否かを検討する。」
という記述があり、
合併後はより詳細かつ包括的な物流コスト管理が重要課題になることが示されています。
合併後はより詳細かつ包括的な物流コスト管理が重要課題になることが示されています。
以上より、
- 「活動要素別の原価実績把握」
- 「活動要素別の原価差異分析」
を重点的に対応することで、現状の手作業による粗い管理を改善し、経営判断に資する物流コスト管理システムを実現できると判断できます。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの解説
-
「活動要素別」に注目できない場合
物流コスト管理全般や「原価管理」だけを答えると不十分です。問題文で特に強調されているのは「活動要素別」(=配送、保管、荷役など業務要素ごとに細かく分ける)管理です。
漠然と「原価管理」や「コスト管理」と答えてしまうと部分点となる可能性があります。 -
「原価実績の把握」か「原価差異分析」のどちらか片方だけしか答えないこと
原価管理で重要なのは「実績を把握する」だけでなく、「差異分析」も合わせて行うことです。
差異分析によって無駄の削減や改善施策の検討が可能になるため、両方記述するのが模範解答です。 -
他の物流コスト関連用語と混同する落とし穴
例えば、「配車計画の効率化」「積載率の最適化」「システム化」などの指摘はあるものの、これらは配送業務の運用面や効率面の話であり、「物流コスト管理システム」の重点機能とは直接一致しません。
試験対策ポイント・覚えておくべき知識
-
【物流コスト管理のポイント】
物流コスト管理は「活動基準原価計算(ABC:Activity-Based Costing)」の考え方を元に、配送や荷役のような「活動(要素)」ごとに原価を正確に把握し、分析することが重要です。
これにより、どの活動がコストを多く消費しているか明確になり、改善策や効率化策を導きやすくなります。 -
【原価管理の2大要素】
- 「原価実績把握」:実際にかかったコストを正確に計測・記録すること
- 「原価差異分析」:計画や標準原価と実績の差を分析することで、原因を調査し改善策を検討すること
-
【設問の字数制限に注意】
問題文にある「15字以内」で、端的に業務用語をまとめる練習も大事です。 -
【業務の垣根を超えたコスト管理】
物流管理システムでは「倉庫管理」「配送管理」など個別業務に加えて「共通業務」としてのコスト管理をどう統合するかがポイント。
まとめ
- 物流コストの詳細な「活動要素別」の管理が合併後の課題
- 「原価実績把握」と「原価差異分析」を両立するシステム機能が必要
- 漠然と「コスト管理」だけでなく、「活動要素」に着目することが重要
- 原価管理の基本となる「実績把握」と「差異分析」の両面を覚えて対応
- 設問の字数制限に合わせて簡潔に表現できる練習をしておくこと
このようなポイントを押さえれば、問題で問われた「物流コスト管理システムの重点機能」について的確に答えられるようになります。
設問4
会計システムに関して、合併後の一般会計処理で、自動仕訳データとして図の“財務管理”に渡すべき会計上の取引が発生している業務は何か。図の“財務管理”と同一レベルの業務名で、三つ挙げよ。
模範解答
①:売上請求管理
②:物流コスト管理
③:労務管理
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 会計上の取引発生元として「自動仕訳データ」を出す業務は、実際に取引がお金の流れや費用・収益として計上される業務であること。
- 「財務管理」と同じ階層の業務名であること。
- 問題文中で「取引発生元の業務システムから、会計システムの一般会計処理に自動仕訳データを渡す」と明記されている業務が対象。
- 金銭授受や費用発生に関係する業務:売上・請求、物流コスト、労務(給与)管理。
論理的な解説
1. 会計上の取引発生元を明示した記述の確認
問題文の「(3)共通業務」の対応方針には、はっきりと次のように書かれています。
「一般会計処理へは、会計上の取引発生元の業務システムから、自動仕訳で仕訳データを渡す」
さらに、合併後の全体業務構成の中で「財務管理」と同じレベルの業務名は以下のとおりです。
この中で会計上の取引発生元となりうるのは、「売上請求管理」「物流コスト管理」「労務管理」の3つです。
2. それぞれの業務の性質
-
売上請求管理
- 保管荷役料計算、運賃計算、請求処理など金銭を扱うため、売上の発生元であり仕訳が必要。
- 問題文より、「売上請求管理において、保管料、荷役料、運賃などの計算、売上処理、請求処理までを行う」と記載あり。
-
物流コスト管理
- 物流費用を詳細把握し、原価計算にかかわる。
- 問題文では「活動業務別の原価実績把握と、活動要素別の原価差異分析」を行い、会計に反映すると明記。
-
労務管理
- シフト管理、勤怠管理、給与計算を含み、給与は会計処理上の費用項目となる。
- 問題文では給与計算も含めてシステム化されることが明示されている。
3. 一方、誤りやすい業務や除外すべきもの
-
受注管理
- 入荷・出荷・配送オーダ処理の管理は業務の指示や運用管理を行う業務であって、直接的に会計の仕訳を発生させる取引そのものではない。
- そのため「自動仕訳データを渡す取引発生元」にはならない。
-
トレーサビリティ管理
- 商品の追跡・管理が目的であり、会計的な取引は伴わないため該当しない。
4. まとめると
財務管理と同じレベルで「自動仕訳データ」を渡す業務とは、
であるため、模範解答の①売上請求管理、②物流コスト管理、③労務管理が正しい。
注意すべき誤りや受験者のひっかけポイント
-
受注管理やトレーサビリティ管理を選んでしまう
これらは業務運用や品質管理のためのもので、直接会計仕訳を生じさせる業務ではありません。
受注処理はあくまで注文管理であり、売上や費用の発生を示すものではない点に注意。 -
配送業務や倉庫業務を選びたくなる
これらは業務オペレーションの管理が主目的で、単独で会計の取引発生元とはならないため誤りです。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
会計システムへの入力は「取引(売上、費用、給与等)が発生した業務システム」から行うこと
→ 取引発生元は売上請求・コスト管理・労務管理などの「金額が発生し会計に直接関わる業務」。 -
業務システムの役割を正確に理解すること
→ 受注・配送・倉庫等は業務管理であって、会計仕訳の直接の発生元ではない。 -
業務構成図や階層構造は正確に把握する
→ 問題文で指定されている「財務管理と同じレベル」で答える問題も多いので不注意を避ける。 -
システム連携の流れに注目する
→ 会計システムにデータを渡す業務は、必ず「金銭取引や費用を生む業務」との関連付けを意識。
以上のポイントを踏まえ、問題を読み取り、設問の要求に合致する業務を選ぶことで正答を導けます。