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システムアーキテクト試験 2010年 午後1 問01
生産管理システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
A社は、設備機械メーカである。A社の製品は、受注生産方式で生産されているが、競合他社に対する優位性を確保するために、生産方式を見直すことになった。それに伴い、システムを再構築することになり、情報システム部を中心にシステム再構築の企画プロジェクトを立ち上げた。
〔生産方式の見直し〕
A社では現在、顧客からの受注ごとに“製番”と呼ばれる管理番号を付与し、製番単位で製品組立、製品を構成するユニット品の組立て、ユニット品を構成する部品や材料(以下、部品及び材料を資材という)の手配まで管理する方式をとっている。この方式を次の方式に変更することにした。
(1)ユニット品までは、製品をグループ化した機種ごとの販売予測に基づく見込生産方式とする。
(2)製品組立は、製番で管理する受注生産方式とする。顧客から受注した後、製品組立計画を立案するときにユニット品を引き当てる。
図1に製品構成のモデルを示す。

〔現在の業務内容〕
A社各部門の現在の業務内容は次のとおりである。
(1)営業部門
営業部門では、販売計画の立案、顧客からの引合対応、見積り、納期回答、受注、出荷、据付けの後の検収確認、売上・請求などの業務を行っている。見積段階で仮の製番が付与され、受注確定時に正式な製番となり、以降の生産に引き継がれていく。現在の営業システムには、見積り、受注、売上・請求の機能がある。
(2)設計・技術部門
設計・技術部門では、製品の設計、製品製造の工程設計及び製造設備設計の業務を行っている。また、製品を構成するユニット品・資材の情報と、製品・ユニット品組立及び部品加工の製造工程情報を設計仕様書に記載して生産管理部門に渡す。現在の設計システムは、CADを全面的に活用している。
(3)生産管理部門
生産管理部門では、受注状況に基づく製品組立計画の立案、ユニット品及び資材の所要量計画の立案、ユニット品の組立計画及び部品の加工計画の立案の業務を行っている。所要量計画の基準となる部品表及び加工計画の基準となる工程表の生成や情報追加は、担当者が設計仕様書の図面などの内容を読み取り、生産管理システムに入力することによって行われている。現在の生産管理システムには、生産計画サブシステム、購買管理サブシステム及び工程管理サブシステムがあり、生産計画サブシステムには、生産管理部門で立案した組立て及び加工計画の登録・更新、ユニット品及び資材の所要量計算、基準情報の維持・管理の機能がある。
(4)購買部門
購買部門では、資材の所要量計画に基づいて、購入資材の購買先への発注業務を行っている。また、購買先からの受入検収、資材在庫管理、買掛金管理の業務も行っている。現在の購買管理サブシステムには、発注、受入検収、資材在庫管理の機能がある。
(5)製造部門
製造部門では、製品組立計画、ユニット品組立計画、部品加工計画に基づいて、各製造現場の作業計画立案・作業指示、製造作業、実績収集・作業進捗管理などの業務を行っている。現在の工程管理サブシステムには、作業指示、実績収集、作業進捗管理の機能がある。
〔生産方式の変更に伴う各部門への要求事項〕
プロジェクトチームは、生産方式の変更に伴う各部門への要求事項をまとめた。
(1)営業部門
A社では、多様な顧客要求に応じるために、多数の機種を取りそろえている。ユニット品を見込生産するために、機種ごとの販売予測が重要になってくる。営業部門には、その精度を上げることが要求された。
(2)設計・技術部門
設計・技術部門には、製品を構成するユニット品をできるだけ標準化・共通化することが要求された。また、新製品の設計と既存製品の設計変更の内容を迅速に生産管理部門に提供することが要求された。
(3)生産管理部門
ユニット品の生産計画では、機種ごとの販売予測に基づいて、その機種を構成するユニット品の所要量及び在庫量から生産量を決める。
資材所要量計画では、ユニット品の生産計画を基に、ユニット品を構成する資材の所要量を計算し、資材の在庫量を加味した上で、正味の資材所要量を決める。
さらに、製品組立計画の立案では、ユニット品の所要量計算とユニット品在庫の引当てを行う。生産管理部門には、ユニット品の在庫管理や資材所要量計画の精度を上げることと、納期回答のために、製番で管理する製品組立計画の内容やその進捗状況を営業部門に適時にフィードバックすることが要求された。
(4)購買部門
発注は、資材所要量計画で設定された購入資材が対象になる。購買部門には、購買先への発注に対する納期管理の強化と資材在庫管理の精度を上げることが要求された。
(5)製造部門
製造部門には、生産管理部門に適時に作業進捗状況を報告することが要求された。
〔システム再構築の方針〕
各部門への要求事項を踏まえ、情報システム部長は次の(1)~(4)のシステム再構築方針を打ち出した。
(1)システム再構築においては、生産方式の見直しに対応して、生産管理システムを中心に見直し、営業システム、設計システムとの連携の強化を図る。
(2)生産管理システムに関しては、ユニット品の見込生産化に伴い、資材所要量計画、資材購買及び資材在庫管理を重点的に見直す。
(3)営業システムに関しては、生産管理システムでの生産計画設定のための、精度の高い情報を適時に提供するとともに、生産管理システムから営業上必要な情報のフィードバックを受けられるようにする。
(4)設計システムに関しては、生産管理システムで使用する基準情報を迅速かつ適時に提供できるようにする。
〔新生産管理システムの概要〕
プロジェクトチームがまとめた新生産管理システムの概要を表に、新生産管理システムの全体体系を図2に示す。


設問1
生産方式の変更は,受注・出荷における営業上の優位性をもたらす一方,在庫管理上のリスクが発生する。受注・出荷における営業上の優位性と在庫管理上のリスクについて,それぞれ25字以内で述べよ。
模範解答
営業上の優位性:受注から出荷までのリードタイムが短縮できること
在庫管理上のリスク:ユニット品,資材の在庫過不足が発生すること
解説
キーワード・論点の整理
なぜこの解答になるのか(問題文の引用を交えての説明)
営業上の優位性について
【問題文からの引用】
- 「製品組立は、製番で管理する受注生産方式とする」
- 「営業部門には、その精度を上げることが要求された」
- 「A社では、多様な顧客要求に応じるために、多数の機種を取りそろえている」
- 「営業システムに関しては…生産管理システムから営業上必要な情報のフィードバックを受けられるようにする」
これらから、新方式ではユニット品は見込生産で予め準備しておき、製品組立は受注後に行うため、「受注から出荷までのリードタイムが短縮できる」ことが期待されます。このリードタイム短縮が営業上の競争力強化になるため、営業上の優位性の核心は「リードタイムの短縮」と言えます。
在庫管理上のリスクについて
【問題文からの引用】
- 「ユニット品までは見込生産方式」→「機種ごとの販売予測に基づく在庫管理が必要」
- 「ユニット品在庫管理や資材所要量計画の精度を上げることが要求された」
- 「購買部門には…資材在庫管理の精度を上げる」
- 「資材の所要量計画」には「正味の資材所要量を決める」ことが含まれる
見込生産は需要予測に基づくため、予測が外れると「ユニット品や資材の在庫過不足」が発生しやすくなります。つまり、今までの受注生産方式に比べて在庫管理の難易度(リスク)が上がることが懸念されます。これが在庫管理上のリスクです。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
リードタイム短縮の意味を混同する
リードタイムは「受注から出荷まで」の期間を指します。単に製造時間ではなく、情報伝達や資材調達、組立準備を含む全体の期間です。リードタイムが短縮されるということは営業の優位性につながるため、この点を正確に理解しましょう。 -
見込生産による「在庫の増加」だけをリスクと誤解する
在庫管理のリスクは「過剰在庫」だけでなく、「不足による納期遅れ」も含みます。問題文の要求事項に「資材所要量計画の精度を上げる」とあり、在庫適正化が課題とされていることを踏まえて、過不足の両方を含めて答える必要があります。 -
営業の優位性として「コスト削減」などを挙げない
問題文では営業上の優位性として「多様な要求への対応」「リードタイム短縮」が中心であり、コスト削減は直接触れられていません。解答は問題文から論理的に導ける内容に限定することが大切です。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
見込生産方式と受注生産方式の特徴を明確に区別すること
- 見込生産:需要予測にもとづき在庫を持つ方式 → 在庫リスク増大
- 受注生産:受注後に生産 → リードタイム長いが在庫リスクは低い
今回は両者を組み合わせたハイブリッド方式であり、それぞれの利点・欠点を理解すること。
-
リードタイム短縮は営業の競争力に直結する重要キーワード
問題の焦点を押さえた場面で頻出するテーマ。普段から用語・概念を正確に理解すること。 -
在庫管理のリスクは「過剰在庫」と「欠品リスク(不足)」の両方を含む
どちらか一方だけ述べるのではなく「過不足」を用いると表現が適切。 -
問題文の要求事項や方針をしっかり読み、そこから論理的に回答を組み立てる訓練をする
問題文全体との整合性が評価される午後問題では、小問も全体の文脈から読み解く力が重要。
以上の点を踏まえ、解答例の「受注から出荷までのリードタイムが短縮できる」「ユニット品,資材の在庫過不足が発生すること」は、問題文の記述から導き出される最も妥当で的確な回答となります。
設問2(1):営業システムと新生産管理システムのインタフェースについて(1),(2)に答えよ。
営業システムから生産計画サブシステムの製品組立計画及びユニット品生産計画に渡すべき情報は何か。それぞれ15字以内で述べよ。
模範解答
製品組立計画に渡すべき情報:見積り提示及び受注の情報
ユニット品生産計画に渡すべき情報:機種ごとの販売予測情報
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
2. なぜその解答になるのか:問題文の記述を引用しながら説明
-
製品組立計画に渡すべき情報:「見積り提示及び受注の情報」問題文の〔生産方式の見直し〕で述べられているように、製品組立は「製番で管理する受注生産方式」であり、製品組立計画は「顧客から受注した後」に立案されます。生産計画サブシステム(製品組立計画)は、「営業システムとのインタフェース」があり、営業部門の「見積り」「受注」によって付与される製番情報を基に製品組立計画を立てるため、営業システムから「見積り提示および受注の情報」を受け取り、それをもとに計画を策定します。【問題文の該当箇所】「見積段階で仮の製番が付与され、受注確定時に正式な製番となり、以降の生産に引き継がれていく」
「製品組立は製番で管理する受注生産方式」
新生産管理システムの「製品組立計画」機能内容:
・営業システムとのインタフェース
・製品の組立日程計画策定/組立オーダ指示 -
ユニット品生産計画に渡すべき情報:「機種ごとの販売予測情報」一方、ユニット品生産計画は見込生産方式であり、「機種ごとの販売予測に基づく」生産を行います。営業部門に「機種ごとの販売予測の精度向上」が要求されていることから、生産計画では営業部門から、機種別の将来的な販売数量を予測したデータを受け取り、ユニット品の所要量計算や日程計画を行います。【問題文の該当箇所】「(1)ユニット品までは、製品をグループ化した機種ごとの販売予測に基づく見込生産方式とする」
「生産管理部門…機種ごとの販売予測に基づいて、その機種を構成するユニット品の所要量及び在庫量から生産量を決める」
生産計画サブシステムの「ユニット品生産計画」機能内容:
・営業システムとのインタフェース
・ユニット品正味所要量計算
・ユニット品組立日程計画策定/組立オーダ指示
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由
-
「見積りと受注」と「販売予測」の混同どちらも営業システムからの情報ですが、受注に基づき製番単位で製品組立計画が立てられるのに対し、ユニット品は見込生産のため、まだ受注が確定していなくても販売予測情報を基に計画されます。
「販売予測」を製品単位の「見積り・受注」の情報として誤答しやすい点に注意が必要です。 -
管理単位の違い製品組立は「製番単位(受注生産)」で管理しているため、「見積り」「受注」情報が直結します。
逆に、ユニット品は「機種単位(見込生産)」で管理しているので、受注情報は関係せず「販売予測」情報のみが使用されます。 -
用語の混在「受注情報」と「販売予測情報」はどちらも営業システムの情報だが、生産管理側では使用タイミングも目的も異なるため区別が求められます。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
-
生産方式の違いに基づく管理単位の理解
- 製品組立は「受注生産方式(製番管理)」→ 受注・見積り情報必須
- ユニット品は「見込生産方式(機種単位)」→ 販売予測情報必須
-
営業システムから生産計画サブシステムへ供給される主な情報は何かを明確に区別する
- 製品組立計画:見積り・受注情報
- ユニット品生産計画:販売予測情報
-
「販売予測」は将来の見込みであり、確定していない情報であるため、受注情報とは目的も管理方法も違うことを理解する
-
システム間インタフェースの役割を意識する
営業システムは営業活動に関する情報を生産計画に提供し、生産計画はこれを使って効率的な製造計画を立てる
このように、生産方式の違いにより、営業システムから生産計画サブシステムへ渡すべき情報は用途に応じて明確に区別されます。これをしっかり理解することが、午後1試験で頻出の生産管理問題を解く際のポイントとなります。
設問2(2):営業システムと新生産管理システムのインタフェースについて(1),(2)に答えよ。
生産計画サブシステムの製品組立計画から営業システムに渡す情報は,営業部門のどの業務に必要か。10字以内で述べよ。
模範解答
納期回答業務
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- 製品組立計画:新生産管理システムの生産計画サブシステムの一機能。
- 営業システムに渡す情報:納期や製品組立の進捗状況などのデータ。
- 営業部門の業務の中で必要なもの:顧客への「納期回答業務」。
- キーワード:納期回答、製品組立計画、営業システムへの情報連携
2. なぜ「納期回答業務」なのか
問題文には、以下のように明示されています。
「生産管理部門には、…製品組立計画の内容やその進捗状況を営業部門に適時にフィードバックすることが要求された。」〔営業部門〕
「営業部門では、見積り、受注、売上・請求の機能がある。」
「見積段階で仮の製番が付与され、受注確定時に正式な製番となり…」
特に、生産管理システムの「製品組立計画」から営業システムに渡す情報は、営業部門で実行される 顧客の注文に対する納期の回答や確認 に必要です。営業部門が顧客に対して出荷可能な日程を回答するには、製品がいつ組立可能か(=納期)が分かっている必要があるためです。
さらに、システム再構築方針の記述に、
「…生産管理システムから営業上必要な情報のフィードバックを受けられるようにする。」
とあり、これに該当するのは納期など、営業の外向けサービスに直結する情報です。
よって、 「製品組立計画から営業システムに渡す情報」は営業部門の「納期回答業務」に必要な情報 となり、解答は「納期回答業務」となります。
3. 受験者が誤りやすいポイントとひっかけ選択肢
-
「見積り業務」や「受注業務」と混同しやすい
多くの営業業務が関与するため、「売上・請求」や「見積り」関連の言葉に引きずられることがあります。しかし、製品の組立計画は受注確定後の生産段階に係るため、直接見積り段階の情報とは異なります。 -
「売上管理」や「請求業務」ではない点
製品の組立計画情報は納期に関係するため、請求や売上管理には直接使われにくいです。ここを誤って選ぶケースがあります。 -
「製品組立」と「ユニット品」の違い
問題文では製品組立は製番単位で受注生産、ユニット品は見込生産と異なるため、ユニット品生産計画の情報は納期回答に直結しにくい点も押さえる必要があります。
4. 試験対策のポイント
-
納期回答業務は営業部門が顧客に対して約束する出荷日の根拠であることを理解する
製品組立計画から得た組立可能日程情報が不可欠である。 -
生産管理システムから営業システムへのフィードバック情報は「納期」と「進捗」情報が核心
進捗情報も当該業務の補助に使われる。 -
営業部門の主な業務(見積り・受注・納期回答・売上・請求)を区別して正確に理解する
それぞれが必要とする情報や段階が異なるので混同しない。 -
製品の生産方式:見込生産(ユニット品)と受注生産(製品組立)の区別を把握する
情報の流れや管理単位の違いに注意。
まとめ
この問題は、生産管理と営業のシステム連携の要点を理解できているかを問うものです。製品組立計画がどのように営業の顧客対応業務に役立つかを正確に理解して「納期回答業務」と答えられることが重要です。
設問3(1):基準情報管理サブシステムの機能内容について,(1),(2)に答えよ。
設計システムとのインタフェースにおいて,設計システムから受け取る情報は何か。二つ挙げ,それぞれ25字以内で述べよ。
模範解答
①:製品を構成するユニット品・資材の情報
②:製品・ユニット品組立及び部品加工の製造工程情報
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
本問題の模範解答は以下の2つです。
- 製品を構成するユニット品・資材の情報
- 製品・ユニット品組立及び部品加工の製造工程情報
このキーワードは、「設計システム」と「生産管理システム(基準情報管理サブシステム)」間のインタフェースで受け取る情報の種類を示しています。
なぜその解答になるのか〈問題文の引用を交えた論理的説明〉
問題文の「現在の業務内容」の【設計・技術部門】の記述には:
「製品を構成するユニット品・資材の情報と、製品・ユニット品組立及び部品加工の製造工程情報を設計仕様書に記載して生産管理部門に渡す。」
と明記されています。つまり、設計システムは「製品の構成情報」と「製造工程情報」を設計仕様書を通じて生産管理部門へ提供しています。これが生産管理システムの「基準情報管理」サブシステムに取り込まれ、新生産管理システムの基礎データとなります。
また、「新生産管理システムの概要」表の「基準情報管理」サブシステムの機能には:
とあり、「設計システムとのインタフェース」が部品表管理において重要な役割を持つことがわかります。設計システムが提供するのは製品構成(部品表)と工程情報(工程表)であり、これが新生産管理システムの根幹といえます。
以上から、「製品を構成するユニット品・資材の情報」と「製品・ユニット品組立及び部品加工の製造工程情報」が設計システムから受け取る主要情報として適切です。
受験者が誤りやすいポイントや、ひっかけの選択肢がある場合の理由
-
「設計システムからの情報=設計図面やCADデータ」という誤認
多くの受験者は「設計システム=CAD」など設計図面そのものを思い浮かべがちですが、ここで求められているのは「生産管理が利用するための情報」、つまり「構成情報」や「工程情報」に整理されたデータです。設計図面やCADファイルそのものではなく、それらから抽出・集約した部品・資材情報や工程情報が生産管理に連携されます。 -
部品情報と工程情報を分けずに一括りにしてしまうこと
設問は二つ挙げよとしているため、「製品構成に関わる情報」と「製造工程に関わる情報」を分けて答える必要があります。一括してあいまいに表現すると減点される恐れがあります。 -
見積りや販売予測など営業部門の情報と混同するミス
問題文に営業部門の役割として販売予測が重要とありますが、設計システムから提供される情報ではありません。生産管理上の基準情報として求めているため混同しないこと。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- 設計システム(CAD等)→生産管理システム連携は、部品表(BOM:Bill of Materials、部品構成表)と工程表(作業手順・工数など)という2種類の基準情報が中心。
- 生産管理は設計情報を基に「何を作るか」「どのように作るか」を計画・管理するため、この2つの情報が必要不可欠。
- システム間インタフェースの際には「設計システムで作られた情報」を「生産管理システムの基準情報管理サブシステム」が取り込み、基準情報として管理・活用する。
- 受験時、設計・技術部門と生産管理部門の役割を区別し、それぞれどのような情報連携があるかを明確に理解すると正答しやすい。
- 設問の字数制限を守りつつ、適切なキーワード(「ユニット品・資材の情報」「製造工程情報」など)を入れることが重要。
以上を踏まえ、下記が本設問の模範的な回答例となる理由とその根拠です。
設問3(2):基準情報管理サブシステムの機能内容について,(1),(2)に答えよ。
表中の(a)に入れる適切な処理を,15字以内で述べよ。
模範解答
a:部品表, 工程表の生成
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
-
部品表(BOM)と工程表の生成
新生産管理システムの「基準情報管理」サブシステムの機能の一つとして、設計仕様書の情報をもとに「部品表」「工程表」を作成・生成し、システム内で管理・活用することが求められている。 -
設計システムとの連携
設計・技術部門が設計仕様書を作成し、それを基に生産管理に必要な基準情報(部品表・工程表)を生成するためのインタフェースを持つこと。 -
基準情報の維持・管理
部品表・工程表は生産計画や資材所要量計算の基礎情報なので、正確かつ最新の状態に保つ必要がある。
解答の理由(問題文の記述による論理的説明)
問題文の「現在の業務内容」-生産管理部門の説明では、以下の記述があります。
「所要量計画の基準となる部品表及び加工計画の基準となる工程表の生成や情報追加は、担当者が設計仕様書の図面などの内容を読み取り、生産管理システムに入力することによって行われている。」
これを受けて「新生産管理システム」の概要表の「基準情報管理」サブシステムの説明文に、
とあり、ここに入るのは、
- 設計システムからの情報を受けて部品表や工程表の生成を行う処理、
が妥当です。
部品表と工程表は生産管理に欠かせない基準情報であり、これを生成する処理が設計システムとの連携の中核であるため、15字以内で適切に表現すると「部品表, 工程表の生成」となります。
受験者が誤りやすいポイント・注意点
-
「部品表や工程表の更新」と限定的に考える誤り
問題文では「生成や情報追加」とあるため、「生成」が抜けると基準情報の初期作成や大幅変更の処理をカバーできません。単なる「更新」では不十分です。 -
単に「設計情報の受け渡し」など抽象的な表現も不適切
「インタフェース」機能は既に明示されているため、処理内容としてはより具体的な「生成」と説明することが必要です。 -
部品表だけ、あるいは工程表だけの記述も不完全
両方を対象としなければ問題文の記述に合致しません。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
生産管理システムの基準情報は部品表(BOM)と工程表が中心であること
これらは設計仕様から生成され、それを基に所要量計画や作業計画が立てられる。 -
基準情報管理は「生成」と「追加・更新」の両方を含む処理であることを理解する
新製品開発や設計変更に対応できるよう、最新の情報に基づく正しい基準情報の生成が必須。 -
システム連携では「インタフェース機能」と「処理機能(生成など)」の違いを明確に区別する
インタフェースがあるだけでなく、インタフェースを通じてどのような処理が行われるかを正確に把握すること。
以上の内容を踏まえ、
が最も適切な解答です。
設問4(1):〔新生産管理システムの概要〕について、(1),(2)に答えよ。
製品組立計画モジュールで、受注した製品を構成するユニット品について、その所要量を計算すると同時に、システムで行うべき機能は何か。20字以内で述べよ。
模範解答
ユニット品在庫を引き当てる機能
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- ユニット品の所要量計算
- ユニット品在庫の引当て
- 製品組立計画モジュールの役割
- 受注に基づく製品組立のための準備処理
なぜ「ユニット品在庫を引き当てる機能」なのか
問題文の〔生産方式の見直し〕および〔生産管理部門の要求事項〕では、以下のように記述されています。
-
新たな生産方式では、製品の組立は製番単位の受注生産方式を維持しつつ、ユニット品は機種ごとの販売予測に基づく「見込生産方式」としている。
-
具体的には、
「(2)製品組立は、製番で管理する受注生産方式とし、顧客から受注した後、製品組立計画を立案するときにユニット品を引き当てる」
とあります。 -
また、生産管理部門の要求事項において、
「製品組立計画の立案では、ユニット品の所要量計算とユニット品在庫の引当てを行う」
と明示しています。
このことから、製番という単位で受注された製品について、製品を構成するユニット品の所要量を計算するだけでなく、その時点で既に在庫にあるユニット品の数量を「引き当て」て、実際に製品に割り当てる処理が必要であることがわかります。
つまり、製品組立計画モジュールの機能としては、
- 受注情報から構成ユニット品の数量(所要量)を計算する
- その所要量に対して、既存ユニット品在庫から引き当てを行う
この2つをセットで実施し、組立に必要なユニット品の確保を行う必要があります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
「所要量の計算」だけを答える誤り
→所要量計算は重要ですが、問題は「計算すると同時に、システムで行うべき機能」なので単に「計算」では不十分です。 -
「資材の手配」や「発注」など購買側の業務機能と混同する誤り
→製品組立計画モジュールはあくまでユニット品の引当てまでが役割で、その先の資材手配は資材所要量計画や購買管理の役割です。 -
「製品の組立工程管理」や「作業指示」など工程管理領域の機能と混同
→本問は計画段階の「製品組立計画」の機能に限定されている点が重要です。
試験対策として覚えておくべきポイント
以上の理解があれば、「ユニット品在庫を引き当てる機能」が正しく答えとして選べます。問題文の指示に沿って、製品組立計画モジュールの機能を具体的にイメージしておくことが合格へのカギとなります。
設問4(2):〔新生産管理システムの概要〕について、(1),(2)に答えよ。
資材正味所要量計算を行う上で、資材所要量計画モジュールに入力情報を提供する機能モジュールが三つあり、資材所要量計画の精度を上げるために、それぞれにおいて考慮すべきことがある。一つは部品表管理において、設計システムから受け取る情報や,その他の追加情報を部品表に迅速に反映することである。あと二つの機能モジュール名を挙げ、考慮すべきことをそれぞれ30字以内で述べよ。(①,②は順不同)
模範解答
①:機能モジュール名:ユニット品生産計画
考慮すべきこと:販売予測に基づいて,ユニット品生産量を適切に設定すること
②:機能モジュール名:資材在庫管理
考慮すべきこと:資材入出庫処理の確実な実施による在庫精度向上を図ること
解説
模範解答の核心キーワード・論点の整理
なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えて論理的説明)
この問題は、「資材正味所要量計算」に入力情報を提供する機能モジュールについて、その名称と計画精度向上のための留意点を答えるものです。まず、表「新生産管理システムの概要」や問題文の業務内容を踏まえながら説明します。
1. ユニット品生産計画
-
根拠:
- 表の「生産計画」サブシステムに「ユニット品生産計画」があり、機能として「販売予測に基づいたユニット品正味所要量計算」や「組立日程計画策定/組立オーダ指示」を担当しています。
- 問題文の《生産方式の見直し》で「ユニット品までは機種ごとの販売予測に基づく見込生産方式」とあり、また《生産管理部門》の要求事項として「機種ごとの販売予測に基づきユニット品の所要量・在庫量から生産量を決める」とあります。
-
論理的説明: ユニット品生産計画は、販売予測の精度に直接依存します。販売予測がずれれば、必要なユニット品の生産量が正確に算出されず、資材の所要量計算にも狂いが生じます。したがって、販売予測を正確に反映しユニット品生産量を適切に設定することが、資材正味所要量計算の精度向上に不可欠です。
2. 資材在庫管理
-
根拠:
- 「購買管理」サブシステム内の「資材在庫管理」モジュールは「資材入出庫処理/棚卸処理」や「管理資料作成」を担っています。
- 問題文《生産管理部門》の要求事項では、「資材の在庫量を加味して正味の資材所要量を決める」と明示されています。
- 《購買部門》でも「資材在庫管理の精度を上げること」が要求されているため、在庫情報は資材所要量計画に非常に重要です。
-
論理的説明: 資材在庫管理が正確でないと、実際の在庫不足や過剰が生じ、資材の所要量計画もずれてしまいます。資材の入出庫が確実に処理されて初めて、在庫データを正確に反映した所要量計算が可能となるため、資材入出庫処理の確実性が求められます。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
1. ユニット品生産計画と製品組立計画の混同
- 製品組立計画も「生産計画」サブシステムの一機能ですが、これは「受注生産」で製番単位管理、営業システムと連携して製品組立日程を計画します。
- 資材所要量計画の基になる「正味所要量計算」はユニット品の「見込生産」に基づくため、販売予測を反映するのは「ユニット品生産計画」です。
- この違いを理解しないと、「製品組立計画」を誤答にしやすいです。
2. 資材在庫管理とユニット品在庫管理の混同
- 資材在庫管理は資材単位(部品・材料)での入出庫を管理しますが、ユニット品在庫管理はユニット品単位での管理です。
- 資材所要量計画の影響を直接受けるのは「資材在庫管理」側なので、これを誤ると回答がずれます。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
生産方式の分類と所要量計画の関係
「見込生産」は販売予測に基づく生産、「受注生産」は受注タイミングでの生産であるため、所要量計画に必要な入力情報が異なることを理解する。 -
情報システム部門ごとの役割分担と連携
設計システムは部品表や工程表の情報を提供し、生産管理システムは生産計画と所要量計算を実施、購買管理は発注・納期管理を行い製造部門は実績収集を行うという流れを押さえる。 -
資材正味所要量計算に必要なデータ
正味所要量計算には「ユニット品生産計画」に基づく所要量と「資材在庫管理」による実在庫の情報が必須であり、両者の精度向上が計画精度を高める。 -
キーワード整理
「ユニット品生産計画」「販売予測」「資材在庫管理」「入出庫処理」「正味所要量計算」などの用語の意味と役割をセットで覚える。
以上の点を踏まえて理解を深めて、情報処理技術者試験「午後1」の生産管理システム関連問題に臨んでください。