システムアーキテクト試験 2010年 午後103


固定資産管理システムの改善に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。

 C社は、三つの事業所をもつ中堅のソフトウェア開発企業である。C社では固定資産管理システムの改善を行うことになった。 〔現行システムの概要〕  C社の現在の固定資産管理システム(以下、現行システムという)の概要は、次のとおりである。 (1)管理対象は、C社が所有するすべての固定資産で、固定資産テーブルで管理している。リース資産や顧客からの預り資産は管理していない。資産は、購入時に一意の資産番号が付与され、固定資産テーブルに登録される。個々の資産には、それぞれ管理責任をもつ部署(以下、管理部署という)及び管理担当者が定められている。 (2)年1回、登録されている資産について、現物を固定資産テーブルの内容と照合する処理(以下、現物照合という)を実施する。現物照合の対象となる機器には、資産番号、資産名、取得日及びバーコード化した資産番号が印刷されたシール(以下、資産シールという)を貼り付けて管理している。対象機器で、シールが貼られていない機器は存在しない。 (3)PCの本体とモニタのように物理的に複数に分かれた資産を購入したり、複数台を一括で購入したりする場合、固定資産テーブルには1件分として登録してあり、資産シールは同一のものを複数枚作成している。 (4)資産には、サーバなど場所を固定して設置してある機器(以下、固定機器という)と、ノートPCなど持ち運び可能な機器(以下、携帯機器という)がある。固定機器について、同一資産番号をもつ資産の設置場所は同一の場所である。 (5)固定資産テーブルには、管理担当者名、設置場所名などの属性があり、これらに変更が生じた場合には、固定資産テーブル変更画面から変更を行っている。現行システムの固定資産テーブルの主な属性を表1に示す。  なお、携帯機器の設置場所名には空白がセットされている。
システムアーキテクト試験(平成22年度 午後I 問3 表1)
〔現物照合業務の概要〕  C社は現在、現物照合業務を次のとおり実施している。  (1)それぞれの部署では、自部署が管理している資産を固定資産テーブルから抽出し、設置場所名、管理担当者名、資産番号で昇順に並んだ固定資産一覧表を印刷する。  (2)印刷された固定資産一覧表を基に現物照合を行い、固定資産一覧表に記載されている資産があったら、ハンディスキャナでバーコードをスキャンする。  (3)スキャンによって作成された現物照合レコードを当日中に管理サーバにアップロードし、固定資産テーブルに現物照合完了区分と現物照合実施日を書き込む。  (4)同一の資産シールが複数枚ある場合は、スキャンがシール枚数分の回数行われたときに照合されたものとしている。  (5)遠隔地に設置してあり、バーコードをスキャンできない場合は、管理担当者が電話などで当該資産が存在していることを確認し、照合担当者に報告することで照合されたものとし、固定資産テーブル変更画面から現物照合情報を更新する。  (6)照合ができなかった資産は、管理部署の部長が除却稟議を起案し、社内決裁後に除却処理を行う。除却処理後、固定資産テーブルから削除される。   〔現物照合業務の問題点〕  現在の現物照合業務は、次のような問題点を抱えている。  (1)固定資産一覧表に記載されているが、現物が見つからずに除却される資産がある。一方で、資産シールが貼ってあるのに固定資産テーブルに存在しない機器が発見されることがある。  (2)固定機器の設置場所を移動するとき、設置場所名の変更漏れが発生している。  (3)同一の資産シールを複数枚発行している資産について、照合されたことになっているのに実物の数が合わないと内部監査で指摘されることがある。  (4)遠隔地の資産を回収したとき、照合されていたはずの資産が見つからないことがある。   〔現物照合業務の改善〕  C社では、これらの問題点を解決するために、業務の改善を行うことにした。情報システム部のD課長は、次の改善案を提示した。  (1)管理対象にリース資産及び顧客からの預り資産も追加する。  (2)物理的に複数に分かれた資産は、それぞれに枝番を付与して内訳を管理する。バーコードにも資産番号と枝番の両方を含める。  (3)携帯機器の現物照合は、現行と同様、固定資産一覧表を基に照合を行って、バーコードをスキャンする。固定機器の現物照合は、一覧表を使用せずに、設置してある場所単位に、そこに設置してあるすべての機器のバーコードを順次スキャンする。  (4)固定機器の設置場所を移動する際に、これをシステムに登録する機能(以下、移動管理機能という)を追加する。このために、各設置場所には一意な場所コードを付与し、場所コードをバーコード化したカードを設置する。  (5)すべての問題点をシステムの機能追加で対応することはせず、一部の問題点については、業務の運用方法の変更で解決を図る。上記の改善案に基づいて設計した新システムのE-R図を図に示す。   システムアーキテクト試験(平成22年度 午後I 問3 図1)
 新システムでは、枝番を付与した内訳を管理するために新たに内訳テーブルを作成する。同一資産番号で管理されている内訳の数を資産テーブルの内訳数で管理する。同一資産番号で内訳が1個の資産の場合、内訳テーブルには枝番が“1”のレコードが1件だけ作成される。  また、現物照合テーブル及び移動テーブルの主キーにも枝番を追加する。内訳テーブルで管理されている枝番単位に現物照合が行われると現物照合レコードが生成され、それに基づいて、内訳テーブル及び資産テーブルの属性が更新され、資産テーブルの照合内訳数と内訳数が一致したときに、当該資産番号の資産の照合が完了する。現物照合レコードは、管理サーバに累積して保存する。  なお、毎年、現物照合を実施する前に、資産テーブルの照合内訳数には“0”を、最新現物照合実施日及び内訳テーブルの現物照合実施日には初期値をセットする。
  〔新システムの移動管理機能〕  新システムでは、固定機器の設置場所変更の情報を確実に取り込むために、搬出及び搬入の際に、それぞれすべての機器のバーコードをスキャンしてシステムに取り込むことにした。その際の処理内容を表2に示す。
システムアーキテクト試験(平成22年度 午後I 問3 表2)
 移動レコードは管理サーバにアップロードされ、このレコードを使って内訳テーブルの更新を行う。また、移動レコードは管理サーバに累積して保存する。移動レコードによる内訳テーブルの更新処理手順を表3に示す。
システムアーキテクト試験(平成22年度 午後I 問3 表3)

設問1

現在の現物照合業務において,固定資産一覧表にある資産が見つからないケースが発生している。考えられる原因を,35字以内で述べよ。
模範解答
固定機器の設置場所移動時に,設置場所名の変更漏れがあった。
解説

1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 固定機器の設置場所移動
  • 設置場所名の変更漏れ
  • 現物とシステム上の情報不一致
  • 固定資産一覧表に記載されるのはシステム上の情報(設置場所名含む)
  • 実際の場所とデータベースの設置場所の不一致が原因となる

2. なぜその解答になるのか(論理的説明)

問題文より、現物照合時に「固定資産一覧表に記載されているが、現物が見つからずに除却される資産がある」という問題点(〔現物照合業務の問題点〕(1))が挙げられています。
また、問題点の一つとして、以下の記述があります。
(2)固定機器の設置場所を移動するとき、設置場所名の変更漏れが発生している。
ここがポイントです。

仕組みを押さえる

  • 固定機器は設置場所の移動がある(〔現行システムの概要〕(4))
  • 固定資産テーブルには設置場所名の属性がある(表1)
  • 現物照合は各部署が固定資産一覧表を印刷し、そこに記載された資産を探して照合している(現物照合業務概要(1))

変更漏れで何が起こるか?

もし設置場所を移動した際に、システム上の設置場所名の更新が漏れると、一覧表に記載されている設置場所に現物が存在しなくなる可能性があります。そのため、
  • 固定資産一覧表には資産番号や設置場所名でソートされて資産が印刷される
  • しかし実際の設置場所(移動後の新しい場所)に資産があるため、旧設置場所では資産が「見つからない」現象が生じる
この状況が「一覧表にあるが見つからない」という問題の根本原因となるため、模範解答のように
「固定機器の設置場所移動時に,設置場所名の変更漏れがあった。」
とされる訳です。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの可能性

ひっかけ例

  • 「携帯機器の設置場所」問題に誤って言及する
    → 問題文に「携帯機器の設置場所名には空白がセットされている」(現行システム(5))とありますが、今回の現物が見つからない問題は「固定機器の設置場所移動時の変更漏れ」に限定されているため、携帯機器の場所関連の説明は不要です。
  • 資産シールの複数枚管理の問題
    → 問題点の一つに「資産シールが複数枚あって数量が合わない」ということも書かれていますが、これは「現物が見つからない」直接の原因とは異なります。
  • 遠隔地の電話確認が妥当であるとか
    → 遠隔地での電話確認も問題点として書かれていますが、「一覧表に記載されているのに見つからない」という問いに合致しません。

正しい切り口

  • 問題文の「現物照合業務の問題点」から「設置場所名の変更漏れ」という具体的な記述に直結させることが大事です。

4. 試験対策のポイント・覚えておくべき知識

ポイント内容
固定資産管理システムの設置場所管理の重要性固定機器の正確な設置場所管理が現物照合の基盤になる。
設置場所移動時の登録・更新の徹底移動時に場所名やコードの変更を正確に行わないとデータ不整合が生じる。
現物照合の帳票と実物の照合関係帳票はシステム情報に基づくため、データが古いと帳票と現物が一致しない。
問題文内の「問題点」と対応策の紐付け「問題点」として明示されている事項から解答の根拠を見出す練習をする。

まとめ

  • 固定機器の設置場所変更時にシステムのデータ更新を怠ると、印刷される一覧表が現状の設置場所と合わず、現物が見つからないトラブルが発生します。
  • そのため、設置場所情報の誤り・変更漏れは固定資産管理の大きなミスの原因と覚えておきましょう。
  • 試験問題では「現行システムの問題点」から対応するキーワード・原因を的確に抽出することが重要です。

設問2(1)新システムでは、新たに内訳テーブルを作成して、枝番単位に管理することによって、現在の現物照合業務における問題点を解決している。これに関して、(1),(2)に答えよ。

枝番の追加によって解決できる問題点は何か。35字以内で述べよ。
模範解答
同一の資産シールを複数枚発行している資産の現物の数が足りないこと
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 「枝番の追加」
  • 「同一の資産シールを複数枚発行している資産」
  • 「現物の数が合わない(足りない)問題」
  • 固定資産を1件分としてまとめて管理しているが、実際は物理的に複数に分かれた資産の内訳があること
  • バーコードに枝番を含めることで、資産単位ではなく内訳単位で管理・照合できるようになる

解答の論理的説明

問題文の【現行システムの概要】には以下の記述があります。
(3)PCの本体とモニタのように物理的に複数に分かれた資産を購入したり、複数台を一括で購入したりする場合、固定資産テーブルには1件分として登録してあり、資産シールは同一のものを複数枚作成している。
ここで、複数の物理資産を1つの資産番号で管理し、複数枚のシールを発行しています。
【現物照合業務の問題点】として、
(3)同一の資産シールを複数枚発行している資産について、照合されたことになっているのに実物の数が合わないと内部監査で指摘されることがある。
という課題があり、「複数枚の同一シール」という状態が実物管理のズレを生じさせています。
その解決策として【現物照合業務の改善】では、
(2)物理的に複数に分かれた資産は、それぞれに枝番を付与して内訳を管理する。バーコードにも資産番号と枝番の両方を含める。
とあり、枝番を付与することで、
  • 各物理的な内訳を個別に識別
  • バーコードで単独の内訳をスキャンして正確な個数を把握
  • 内訳単位で現物照合記録を管理
この仕組みによって、「同じ資産番号の複数枚がスキャンされた」としても、内訳の個数(枝番の数)と実物の個数のズレを検知・管理できるようになります。 つまり、枝番の追加は「同じ資産番号で複数物理資産を一括管理しているが、正確な現物の数が合わない問題」を解決するためのキーです。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「枝番」=単なる番号の追加、としか捉えて、問題点そのものとの関連付けができない。
    → 「枝番で内訳管理」という目的を見落とさないこと。
  • (1)リース資産や顧客預り資産を管理対象に含める改善案など、他の改善案と混同すること。
    → 問題文中の「枝番の追加」が対応する問題点がどれかを明確に判断する。
  • 固定機器の「設置場所移動の管理」の改善案(移動管理機能)と混同すること。
    → 移動管理は設置場所コードの変更に関わる話であり、枝番とは別の課題に対応。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 物理的に複数に分かれた固定資産を1つの資産番号で管理すると、正確な現物管理が困難になることがある。
  • 枝番や内訳番号を付与することにより、資産番号単位ではなく、内訳単位で管理する仕組みが作れる。
  • バーコードに資産番号+枝番を含めることで、照合も正確に行えるようになる。
  • 現物照合で実物の数と管理上のシール数が合わない問題の有効な対応策として、枝番管理が使われる。
  • 問題文で提示されている改善案は問題点に対する直接的な対応策を示しているので、「○○の改善に枝番を付与する」という場合、その目的と対応する問題点を整理しよう。

これらを理解すると、枝番追加が「同一の資産シール複数枚発行による現物数の不整合問題」を解決するという模範解答の意味がスッと納得できます。

設問2(2)新システムでは、新たに内訳テーブルを作成して、枝番単位に管理することによって、現在の現物照合業務における問題点を解決している。これに関して、(1),(2)に答えよ。

新システムでは、ハンディスキャナからアップロードされた現物照合レコードによるテーブル更新処理において、資産テーブル及び内訳テーブルが更新される。資産テーブルで更新される属性名を二つ挙げ、それらはどの属性によってどのように更新されるかを、それぞれ35字以内で述べよ。(①,②は順不同
模範解答
①:属性名:最新現物照合実施日   どの属性によってどのように更新されるか:現物照合レコードの現物照合実施日で置き換える。 ②:属性名:照合内訳数   どの属性によってどのように更新されるか:更新前の内訳テーブルの現物照合実施日が, 初期値のときに1を加算する。
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

項目内容
更新される属性・最新現物照合実施日
・照合内訳数
更新の根拠・最新現物照合実施日 ← 現物照合レコードの「現物照合実施日」で置換
・照合内訳数 ← 内訳テーブルの「現物照合実施日」が初期値(未照合状態)の場合に1加算
更新のタイミングハンディスキャナで読み取った現物照合レコードの登録時に反映

なぜその解答になるのか(論理的説明)

新システムでは、現物照合業務を効率化・正確化するため、枝番を付けた内訳単位で照合を管理しています。資産テーブル(旧「固定資産テーブル」)と内訳テーブルでそれぞれ情報を持ち、現物照合レコードのデータに基づいて更新します。
  1. 最新現物照合実施日の更新
    問題文より:
    「現物照合レコードが生成され、それに基づいて、内訳テーブル及び資産テーブルの属性が更新され、…」
    さらに、
    「資産テーブルの最新現物照合実施日」
    は新たに追加された属性であり、現物照合が完了した最新の日付を保持する役割です。
    よって、現物照合レコードに含まれる
    • 「現物照合実施日」
    を使って、資産テーブルの最新現物照合実施日を「置き換える=最新の日付に更新する」という動作を行うことが妥当です。
  2. 照合内訳数の更新
    現行システムでは資産番号単位で管理していたものを、新システムでは枝番付きの内訳単位に管理範囲を細分化しました。
    問題文には、
    「内訳テーブルの現物照合実施日が初期値のときに1を加算する」
    とあり、内訳テーブルの現物照合実施日で「照合が初めて完了した内訳」をカウントし、
    その結果を資産テーブルの「照合内訳数」に累積していきます。
    つまり、内訳単位での初回照合時にのみ、「照合内訳数」を増やす仕組みとなっているため、
    この仕様により、資産全体の照合進捗を正しく管理できるようになるのです。

受験者が誤りやすいポイント・注意点

  1. 最新現物照合実施日の更新は「加算」ではない
    「最新現物照合実施日」は単なる「日付」なので、スキャンされた最新の日付で「置き換え」です。
    「加算」や「累積」ではありません。ここを「加算」と勘違いすると誤答になります。
  2. 照合内訳数は「初回照合のカウント」
    照合内訳数は、単純に現物照合回数をカウントするのではなく、内訳テーブルの現物照合実施日の「初期値」からの変化(初回照合完了時)を数えます。
    そのため、同じ内訳の2回目以降の照合は照合内訳数を増やさない点がポイント。
  3. 現物照合レコードによる更新範囲の切り分け
    資産テーブルの更新は2つの属性だけでなく、内訳テーブルも更新されるため、更新の責任範囲を正確に理解する必要があります。

試験対策のポイントまとめ

  • 資産テーブルと内訳テーブルの役割の違いを理解すること
    資産テーブルは全体資産の管理(1資産番号単位)、内訳テーブルは細分化された管理(枝番単位)を行う。
  • 最新現物照合実施日属性は現物照合レコードの日付で更新
    ハンディスキャナからのスキャン情報で置換更新するため、「最新の現物照合実施日」を保持する。
  • 照合内訳数は初めて現物照合した内訳のカウント
    内訳テーブルの「現物照合実施日」が初期値から変わる時に1件ずつ加算し、資産テーブルの照合内訳数を更新する。
  • 「初期値」や「置き換え」「加算」の意味を正しく理解し、わかりにくい点は問題文での用語を重視する
    問題の記述をよく読み、いわゆる「用語の定義」に忠実に答えること。

以上が本問の模範解答への理解を深める解説です。今後の資産管理システムの設計・データベース更新ロジックを考慮する際にも応用できる基礎知識ですので、しっかり習得してください。

設問3

表3中の(a)~(f)に入れる適切な字句を答えよ。ただし,属性名で答える場合は,どのレコードの属性であるかも記述せよ。(順不同)
模範解答
a:内訳テーブルの当該レコードの設置場所コード b:移動レコードの移動場所コード 順不同 c:内訳テーブルの当該レコードの設置場所コード d:999999 e:内訳テーブルの当該レコードの設置場所コード f:移動レコードの移動場所コード
解説

解説:表3の(a)~(f)に入れる適切な字句


1. 模範解答の核心となるキーワード・論点整理

番号項目模範解答
a移動レコードが搬出時に「等しい」べき内訳テーブル属性内訳テーブルの当該レコードの設置場所コード
b搬出時に比較対象となる移動レコード属性移動レコードの移動場所コード
c移動レコードが搬入時に「あるべき」内訳テーブル属性内訳テーブルの当該レコードの設置場所コード
d搬入時の比較先となる固定値(設置場所コード変更先のコード)999999
e搬入時に内訳テーブルにセットするべき値内訳テーブルの当該レコードの設置場所コード
f搬入時に代入される移動レコード側の属性移動レコードの移動場所コード

2. 解答がこうなる理由の論理的説明

問題の表3は「移動レコードによる内訳テーブルの更新処理手順」を示しています。その中で、搬出・搬入それぞれで正しい照合(整合性チェック)と更新を行うために以下のチェックが設けられています。

(a)(b)搬出時のチェック

  • (a)~(b)の関係
    「①移動レコードの搬出・搬入区分が搬出のとき、a と b が等しいこと」
    ここで「a」と「b」は設置場所コード同士の比較です。
  • 問題文の根拠
    表2の「バーコードスキャン」処理で、搬出のときは
    • ① 搬出する場所のカートのバーコード(=移動場所コード)が読み取られる
    • ② 搬出するすべての資産のバーコードが読み取られる
    また表3の処理1は、
    「移動レコードの資産番号及び枝番をキーに、内訳テーブルから当該レコードを抽出」
    であるため、内訳テーブルのレコードの設置場所コードとの突合が必要です。
  • 結論
    搬出時に読み取った移動場所コード(移動レコードの移動場所コード)と、内訳テーブルの該当資産の設置場所コードが一致しないと、搬出している場所と内訳がずれているため「整合性エラー」で処理停止する。
    よって(a)は「内訳テーブルの設置場所コード」、(b)は「移動レコードの移動場所コード」。

(c)(d)搬入時のチェック

  • (c)~(d)の関係
    「②移動レコードの搬出・搬入区分が搬入のとき、c が d であること」
    ここで d は「999999」という固定値です。
  • 問題文の根拠
    表3の説明4に、
    「① 搬出のとき、内訳テーブルの設置場所コードに 999999 をセットする」
    よって搬入時に内訳テーブルの元の設置場所コードが999999(=未設置または移動中の特殊コード)であることを確認する意味となる。
    つまり、搬入時には「現状の場所コード」が「999999」である=移動中の状態であることが前提とされる。
  • 結論
    搬入前の状態の設置場所コード(内訳テーブル)が999999と等しいかをチェックし、そうでなければエラー。
    したがって(c)は「内訳テーブルの設置場所コード」、(d)は「999999」。

(e)(f)搬入処理の更新

  • (e)~(f)の関係
    「② 搬入のとき、e を f にセットする」
  • 問題文の根拠
    表3の説明4②で、搬入時には、
    「内訳テーブルの設置場所コードに移動レコードの移動場所コードをセットする」
    つまり、搬入先の場所コードを内訳テーブルに登録する。
  • 結論
    (e)は「内訳テーブルの設置場所コード」で、(f)は「移動レコードの移動場所コード」となる。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 設置場所コードの比較について
    「a と b」や「c が d」とあったときに、どちらが内訳テーブルの属性でどちらが移動レコードの属性なのか迷うことがあります。重要なのは、現状の登録値(内訳テーブル)とスキャン入力された情報(移動レコード)を比較する構図だと認識することです。
  • 999999の特殊意味
    値「999999」が固定で使われることから「特別な意味をもつコード(例:未設置、移動中など)」だと理解しなければなりません。特に、固定資産管理でよく使われるイレギュラーコードの例として覚えておくと良いでしょう。
  • 搬出・搬入で異なる比較条件
    搬出のときは「内部と移動場所コードが一致すること」、搬入のときは「前内部が999999であること」と処理が異なるため、問題文の「条件」「処理」をじっくり読み分けることが必要です。

4. 試験対策としてのポイント・知識まとめ

  • 固定資産管理における現物照合・移動管理の流れを理解する
    • 固定資産テーブル、内訳テーブル、移動レコードの役割を区別して把握
    • バーコードを利用した搬出・搬入手順の意味と意義を押さえる
  • 移動時の設置場所コード管理の重要性
    • 搬出時は実際に「現在置かれている設置場所コード」とスキャン情報が合っているか確認し、
    • 搬入時は「移動中の代替コード999999」から新しい設置場所コードに更新
    • 固定値「999999」は固定資産移動業務で標準的に使われる特殊コードと捉える
  • 類似問題での属性名の混乱を防ぐ
    • 内訳テーブルと移動レコードの属性を区分けして覚える
    • 主キーや条件比較に用いる属性名は「移動場所コード」「設置場所コード」と明確に表記されているので注意深く識別
  • 表や問題文の文言を厳密に読む習慣
    • 「~等しいこと」「~出あること」といった比較条件は重要なポイント
    • 更新手順の番号と内容を照らし合わせて理解することが正確な解答につながる

以上のポイントを踏まえて、固定資産管理のシステム設計や移動管理業務の処理理解を深めることが合格への近道です。

設問4(1)〔現物照合業務の改善〕について、(1),(2)に答えよ。

現在の現物照合業務における問題点のうち,システムの機能追加では解決できない問題点は何か。40字以内で述べよ。
模範解答
遠隔地の資産を回収したとき,システム上照合されていた資産が見つからないこと
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点

  • キーワード:
    「遠隔地の資産を回収したとき」、「システム上照合されていた資産が見つからないこと」
  • 論点:
    システム機能の追加によって解決できない問題点であること。
    特に、物理的な資産の場所変更や実態管理の難しさに起因する問題。

2. なぜその解答になるのか(問題文引用を踏まえて)

問題文の「〔現物照合業務の問題点〕」に以下の記述があります。
(4) 遠隔地の資産を回収したとき、照合されていたはずの資産が見つからないことがある。
この問題点は、照合記録があるにもかかわらず物理的に資産が存在しない、つまり「システム上の情報と現実の資産の不一致」が発生していることを指しています。
また、「〔現物照合業務の改善〕」では次の記述があります。
(5) すべての問題点をシステムの機能追加で対応することはせず、一部の問題点については、業務の運用方法の変更で解決を図る。
このことから、物理的な資産管理の難しさを完全にシステムだけで解決できない問題があることが示唆されています。
よって、
  • 「遠隔地の資産を回収したとき、システム上照合されていた資産が見つからないこと」は、物理的な資産の追跡と管理における運用上の課題であり、
  • システムの単なる機能追加では根本的に解決できない問題点である
と判断されます。

3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの解説

誤りやすいポイント

  • 「資産シールの複数枚による数の不一致」や「設置場所名変更漏れ」などは、システムのデータ構造や管理プロセスの改善で解決可能に見えるため、こちらを機能追加で解決できない問題と誤解しやすい。
  • 「固定機器の設置場所を移動するときの管理漏れ」は移動管理機能を通じて解決できるため、機能追加により対処可能。
  • 「固定資産一覧表に存在しない資産シールが見つかる問題」は、資産管理範囲の見直しやテーブル運用改善で機能的に対応が可能。

解説

問題点システム機能追加での対応可否理由
固定資産一覧表に記載されない資産シールの存在可能資産管理範囲拡大や内訳管理で対応可能
設置場所名の変更漏れ可能移動管理機能の追加で防止可能
複数枚資産シールによる数量不一致可能内訳管理やバーコード活用で改善可能
遠隔地資産を回収したときの実在しない資産の存在(模範解答)不可能物理的資産の実態管理・運用の問題
このように、問題点を正確に把握し、システム機能拡張と業務運用の切り分けを理解しないと誤答しやすいです。

4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • システム開発や改善問題では、「機能追加で解決可能な課題」と「運用改善など機能外の課題」は明確に区別されることが多い。
  • 物理的な資産管理(実物の所在管理)はシステムだけで完全対応しきれず、運用ルールや人的管理の役割が重要になる場面がある。
  • 問題文中の「改善案」に「すべてをシステムで対応しない」と明記されている場合は、システム不能な領域を探すことが解答のカギ。
  • 問題文の「問題点」が「どのような原因(システム・運用・外部環境など)で起きているか」を丁寧に読み取り、その原因に対する対応策の区分(システム追加か運用変更か)を考える習慣をつけること。
  • 特に固定資産管理や棚卸系の問題では、「バーコード」、「資産番号・枝番管理」、「移動管理機能」などのシステム的ポイントをおさえつつ、運用上の課題も見落とさないことが重要。

以上を踏まえ、模範解答の「遠隔地の資産を回収したとき,システム上照合されていた資産が見つからないこと」がシステム機能拡張のみで解決できない問題点であると理解してください。

設問4(2)〔現物照合業務の改善〕について、(1),(2)に答えよ。

その問題点を、業務の運用方法の変更によって解決するとき,行うべき運用の変更点を35字以内で述べよ。
模範解答
バーコード付の資産の写真など,存在を証明する証ひょうを提出させる。
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • バーコード付の資産の写真など
  • 存在を証明する証ひょうを提出させる
  • 業務の運用方法の変更による問題解決策
  • 「存在確認」の信頼性向上方法

解答がそのようになる理由の説明

問題文の【現物照合業務の問題点】には、次のような記述があります。
(1)固定資産一覧表に記載されているが、現物が見つからずに除却される資産がある。一方で、資産シールが貼ってあるのに固定資産テーブルに存在しない機器が発見されることがある。
この記述は、実際の「資産の存在確認」が「バーコードスキャン」や「一覧表のみの確認」といった手段だけでは完全ではなく、資産の紛失や管理漏れの発生原因となっていることを示しています。
また、【現物照合業務の改善】の中で、
(5)すべての問題点をシステムの機能追加で対応することはせず、一部の問題点については、業務の運用方法の変更で解決を図る。
と述べられており、運用方法を変更することで対応することが明示されています。
したがって、「存在確認の信頼性を高める運用として、バーコードシールが貼られているだけでなく、それを写真などで証明させることで、現物の有無をより確実に証明する」という対策が有効です。
この運用により、
  • 実際に資産が存在していることを目視・記録で裏付けられるため、資産シールの貼り間違いや不正な削除を減らせる。
  • 一覧表にあるのに資産がない誤判定や、逆に資産があるのに一覧表にないケースを減らせる。
という問題を緩和できます。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢とその理由

誤りやすいポイントひっかけ理由
「システム的対応を答えてしまう」問題文で「運用方法の変更で解決する問題」と明示されているのに、システム機能追加案を挙げてしまう。
「ただバーコードスキャンを増やす対策」スキャン回数を増やしても報告や除却の問題は解決できないため、不十分な運用変更となる。
「担当者の報告・確認だけにする」現行の遠隔地での電話確認と同様に曖昧であり、実質的な証明力向上には繋がらない。
「除却の際の承認プロセスの変更」除却後の資産削除は問題解決には間接的かつ限定的であり、存在確認の精度向上には寄与しない。
誤答する場合、これらの切り口が選ばれやすいですが、設問はあくまで「運用方法の変更による存在証明手段」について問われています。そこを見誤らないようにしましょう。

試験対策として覚えておくべきポイント・知識

  • 情報処理技術者試験における業務改善の切り分け
    問題文で「システム対応」と「運用改善」のどちらで問題を解決するか区別が明示される場合が多い。設問の要件を把握し、それに合致した解答を心がける。
  • 存在証明や実在確認のための運用例
    バーコード貼付だけでは資産の実態把握が不十分なケースが多い。写真撮影や現物確認書類、証ひょう類の提出を組み合わせる運用は実務でもよく用いられる。
  • ハード(システム)のみで解決できない問題も業務運用で対応可能
    システム機能追加が高コストや過剰な設計になりそうな場合、運用の見直し(工程の追加・証跡資料の管理・担当者の責任明確化など)から着手するのが良い対策になる。
  • 固定資産管理の実務知識
    固定資産台帳と実物の差異はよくある問題。除却・移動・貸出管理などのトラブルを防ぐために適切な証明と記録管理が重要。

以上のことから、解答例の「バーコード付の資産の写真など,存在を証明する証ひょうを提出させる」は、現物の実在性を運用で担保し、問題点の1つを効果的に解消する方法として適切です。
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