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システムアーキテクト試験 2011年 午後1 問01
システムにおける災害対策に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
A社は、全国に約300店舗をもつコンビニエンスストアチェーンである。A社は新たな事業継続計画(BCP)を策定することにし、それに合わせてシステムを見直すことにした。
〔現行システムの概要〕
A社の現行システムは、店舗業務を支援するシステム、本部業務を支援するシステム、及び配送センタ業務を支援するシステムから成っている。A社は本部業務を支援するシステムを稼働させるために、関東センタと関西センタの二つのデータセンタ(以下、東西両センタという)を保有している。店舗業務を支援するシステムと本部業務を支援するシステムの概要は、次のとおりである。
(1)店舗業務を支援するシステム
①店舗発注・納品管理システム:発注用端末から入力された商品単位の発注データを、東西両センタへ送信する。また、納品された商品を検品し、その結果を納品データとして関東センタへ送信する。本システムで使用する店舗発注商品マスタは、毎朝、関東センタから受信する前日との差分データによって更新される。
②POSシステム:顧客ごとに売上処理を行うとともに、POS端末から取得した客層、商品コード、数量、販売金額などの販売データを蓄積し、1日1回関東センタへ送信する。店舗には、数か月分のデータを蓄積している。
③売上伝送システム:売上高、値引き額、廃棄額などのデータを関東センタへ送信する。
④店舗管理システム:店舗の温度管理や、従業員の勤怠管理などを行う。
(2)本部業務を支援するシステム
後述する発注システムだけは、ハードウェア障害などに備えて、東西両センタで同じ処理(以下、東西二重処理という)を行う。他のシステムは関東センタだけで稼働している。関東センタには、運用を行うために数名の要員を配置している。関西センタには、発注処理を行うために1名の要員を配置している。
①発注システム:店舗から送信された発注データを用いて、配信用データと後続処理用データを作成し、配信用データを仕入先及び配送センタに配信する。発注システムは、業務の根幹を成すシステムであり、高速性、正確性、信頼性が求められる。配信用データは、通常は関東センタから配信するが、関東センタの障害時にだけ関西センタから配信する。関東センタの障害時は、関東センタが復旧した後に、後続処理用データを関西センタから関東センタに送信し、関東センタで後続処理を行う。
このために、発注処理で用いる商品マスタ、取引先マスタなどの本部発注用マスタは、東西両センタで同じ内容を保持している。発注システムの概要を図1に示す。

関西センタには、関東センタの稼働状況を、“1”、“2”、“3”の値によって示す制御ファイルがあり、正常時は“1”がセットされている。関西センタの運用要員が、その値を、障害発生時には“2”に、復旧時には“3”に変更する。この制御ファイルの値に応じた関西センタの発注システムの処理内容を表1に示す。


②買掛金・未払金管理システム:店舗から送信される納品データを基に、買掛金や未払金を集計し、仕入先からの請求データと照合して支払を行う。データの確認・入力は、本社ビル又は関東センタのLANに接続されたPCだけから行うことができる。
③会計システム:店舗の売上伝送システムから送信されるデータ、及び買掛金・未払金管理システムから連携されるデータを基に財務会計処理を行う。月次締め処理は、翌月の第3営業日に行っている。データの確認・入力は、本社ビル又は関東センタのLANに接続されたPCだけから行うことができる。
④情報系システム:店舗から送信された販売データを基に、各種の分析を行う。分析結果は、今後の販売戦略を立案するために用い、本社ビルのLANに接続されたPCだけから参照できる。分析のためには全ての販売データを漏れなく取り込むことが必要だが、業務の緊急性はない。
⑤業務マスタ管理システム:本部発注用マスタや会計システムなどで使用するマスタの管理を行う。また、店舗発注・納品管理システムで使用する店舗発注商品マスタを作成し、前日との差分データを店舗へ配信する。データの確認・入力は、仕入れ担当者が外出先からも作業ができるように、本社ビルのLANに接続されたPC又は社員が携行するモバイルPCだけから行うことができる。
⑥利用者マスタ管理システム:各システムの利用者マスタの管理を行う。利用者ID、パスワード及び各利用者のアクセス権限を管理する。パスワードは、利用者が自分で変更する。利用者の新規登録やアクセス権限の変更は、利用希望者が利用開始日の1週間前までに電子申請を行う。所属部長の承認を受けると、情報システム部に回送される。情報システム部の管理者が承認を行うと、マスタに反映される。申請日から利用開始日までが1週間未満の場合は、エラーとしている。データの確認・入力は、本社ビル又は関東センタのLANに接続されたPCだけから行うことができる。
〔BCPの策定〕
A社では、従来、関東センタが長期間使用できないような大規模な災害への対策は講じていなかった。このたび、関東センタが長期間使用できないケースを想定して新たにBCPを策定し、本部業務を支援するシステムの災害対策を講じることになった。ただし、関西センタ及び本社ビルは通常どおり使用できることを前提とする。
A社の事業企画部は、次のBCPを策定し、経営者の承認を得た。
(1)関東センタで稼働している全てのシステムを関西センタで稼働させることは考えず、業務を限定した縮退運用による事業継続を行う。
(2)最も優先することは、店舗への商品の供給を維持することとする。次に優先することは、期日までに仕入先への支払を行うこととする。
(3)財務会計の月次締め処理は、翌月の第5営業日まで延期できる。
(4)上記(2)、(3)に関連しないシステムについては、関西センタでの縮退運用時には稼働させず、関東センタが復旧した後に処理を再開する。
〔システムの見直し方針〕
通常は、関西センタでは、発注の東西二重処理とマスタ受信以外の処理を行っていない。関西センタでの縮退運用の実施が決定された時点で、縮退運用に必要な処理を立ち上げる。縮退運用時は、関東センタの運用要員は本社ビルへ移動し、本社ビルのPCからリモート運用を行う。
また、表2に記載されている作業内容について、その対象を発注システムから縮退運用に必要な全てのシステムに拡大する。
〔要件の追加〕
システムの見直し方針の決定後、人事厚生部から感染症の流行時の事業継続という新たな要件が提示され、この対策についてもシステムの見直し方針に取り込むことになった。
まず、初期の段階として、社員が感染症にかかり、欠勤者が増加した場合を想定する。この場合には、ある業務の担当者が全員出社不可能になる事態も考慮し、出社可能な社員を、優先する業務に、担当の枠を越えて振り分け、優先度の高い業務に限定した縮退運用による事業継続を行う。また、部長や情報システム部の管理者が出社できない場合は、出社可能な社員の中からその代行者を任命する。
次の段階として、更に感染症が流行して、本社ビルが閉鎖されて本社ビル内で業務ができなくなることや、東西両センタへの入館者が制限され本部業務担当者が入館できなくなることなどを想定する。この場合でも、優先する業務を継続して実施できるよう、追加対策を検討する。ただし、財務会計の月次締め処理は、復旧まで延期することができる。
設問1
表1中の(a),(b)に入る関西センタの発注システムの処理内容を、それぞれ25字以内で述べよ。
模範解答
a:配信用データを仕入先及び配送センタに配信する。
b:後続処理用データを関東センタに送信する。
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
-
(a)に入る内容は「配信用データの配信」
→ 「配信用データを仕入先及び配送センタに配信する」 -
(b)に入る内容は「後続処理用データの送信」
→ 「後続処理用データを関東センタに送信する」 -
東西両センタの処理分担、特に関東センタ障害時の関西センタの役割に関わる内容であること
-
発注システムの稼働制御(「制御ファイルの値」によって関西センタの動作が切り替わる)がポイント
解答となる理由の論理的説明
本問は、「表1 制御ファイルの値に応じた関西センタの発注システムの処理内容」における(a)、(b)部分を埋める問題です。
表1の該当部分を再掲します。
1. 制御ファイルの「2」の場合
関西センタは、関東センタ障害発生時に制御ファイル「2」に書き換えられます。
問題文の該当箇所を引用します。
問題文の該当箇所を引用します。
「障害発生時には“2”に変更する」とあり、制御値が2のとき、関西センタは発注処理を行う。
さらに、図1の説明から
- 通常、配信用データは関東センタから配信されるが、
- 関東センタ障害時は関西センタから配信する。
したがって、関西センタは「配信用データを仕入先及び配送センタに配信する」必要があります。
これが(a)の答えです。
2. 制御ファイルの「3」の場合
これは、復旧時に使われる値で、
「関東センタが復旧した後に、後続処理用データを関西センタから関東センタに送信し、関東センタで後続処理を行う。」
この記述より、(b)は「後続処理用データを関東センタに送信する」が正しいです。
そして、最後に制御ファイルを通常状態の「1」に戻します。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
「配信用データ」と「後続処理用データ」の区別があいまいになる
→ 問題文では、「配信用データは仕入先及び配送センタに配信」、「後続処理用データは関東センタで処理」と明確に役割が分かれています。混同しないよう注意。 -
関西センタの通常時の処理と障害時の処理を混同する
→ 通常時は東西二重処理として関西センタも発注処理を実行するが配信用データは関東センタから配信し、障害時は関西センタが代行して配信用データを配信する。 -
制御ファイルの値の意味(1、2、3)が区別できない
→ 1:通常運用、2:障害時、3:復旧時のそれぞれの意味を押さえる。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
発注システムにおける東西二重処理の仕組み
→ 東西のデータセンタで同じ発注処理を行うが、配信だけは関東センタが基本。障害時は関西が代行。 -
配信用データと後続処理用データの役割と送信先
-
制御ファイルの値による運用状態の切替
- 「1」=正常運用
- 「2」=関東センタ障害時(関西センタが配信代行)
- 「3」=復旧時(後続処理用データを関東センタへ送信し、制御値を1に戻す)
-
問題文中でよく指示される「●●に準じた運用」や「●●時の処理内容」等は落ち着いて読み取り、システムの運用フローに沿った理解が重要。
以上のように、問題文の処理フローと制御ファイルの意味を正確に理解し、「配信用データは仕入先および配送センタに配信」「後続処理用データは関東センタに送信」という役割分担を押さえれば、正解に導けます。
設問2
表2中の(c)で行う作業内容を35字以内で述べよ。
模範解答
c:東西両センタの発注処理のプログラムを同じバージョンにする。
解説
模範解答の核心となるキーワード・論点整理
- 「東西両センタ」:発注システムが2拠点(関東センタ、関西センタ)で稼働していること。
- 「発注処理のプログラム」:業務の根幹を成す発注処理のソフトウェア。
- 「同じバージョンにする」:ソフトウェアのバージョンを同期させて、一致させること。
- 作業の対象は「業務処理プログラム」である点。
このキーワードから、発注システムの災害対策においては、両センタの処理プログラムの整合性を保つことが重要であることが説明のポイントです。
解答となる理由の説明
表2の「発注システムを維持するために行う作業内容」では、3つの項目が挙げられています。
このうち、(c)の作業に該当するのは「業務処理プログラムのバージョンを合わせること」です。
問題文中の以下の記述が根拠になります。
「後述する発注システムだけは、ハードウェア障害などに備えて、東西両センタで同じ処理(以下、東西二重処理という)を行う。」
「このために、発注処理で用いる商品マスタ、取引先マスタなどの本部発注用マスタは、東西両センタで同じ内容を保持している。」
「システム基盤として東西両センタのOS及びミドルウェアを同じバージョンにする。」
この文脈から、「業務処理プログラム」も同様に、東西両センタで同一のバージョンに保つ必要性が示されています。
バージョン不一致は、二重処理時のデータ不整合や動作不具合の原因になるため、両センタでプログラムを統一しておくことは重要な維持管理作業です。
バージョン不一致は、二重処理時のデータ不整合や動作不具合の原因になるため、両センタでプログラムを統一しておくことは重要な維持管理作業です。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけへの注意
-
「マスタデータを同じにする」や「システム基盤(OS、ミドルウェア)を同じバージョンにする」という記述と混同しやすい。
→ マスタデータやOS・ミドルウェアの内容ではなく、「業務処理プログラム(発注処理プログラム)」のバージョンを合わせる点が(c)の正解。 -
「縮退運用で全てのシステムを動かす」という配慮を混同し、業務処理プログラム全般の更新と捉えてしまう場合があるが、ここでは「発注システム維持のための作業内容」であることに留意。
-
「東西のデータ連携」や「制御ファイル管理」など運用方法の詳細は(c)の内容ではなく、「プログラムのバージョン管理」であることを誤らない。
試験対策として覚えておくべきポイント
- 二重処理を行うシステムでは、各拠点のプログラムが同じバージョンであることが信頼性維持の基本である。
- 「システム基盤(OSやミドルウェア)」「業務処理プログラム」「マスタデータ」の3つの維持管理対象は分けて整理すること。
- 事業継続計画(BCP)では、災害時の縮退運用や二重処理システムの信頼性確保が重要な設計要素。
- 作業内容の表現は、具体的かつ簡潔に理解・表現できるようにしておく。例えば「同じバージョンにする」というのはソフトウェア管理の基本的な考え方。
以上のポイントを押さえ、本問のようなシステム維持管理作業の設問に備えましょう。
設問3(1):関東センタが長期間使用できないような大規模災害時の関西センタでの縮退運用について,(1),(2)に答えよ。
縮退運用時には処理を行わず,関東センタが復旧した後に、処理を再開するシステムは何か。本部業務を支援するシステムの中から一つ挙げ,その理由を25字以内で述べよ。
模範解答
システム名:情報系システム
理由:BCPにおける優先業務に該当しないから
解説
模範解答のキーワード・論点整理
- 選択すべきシステム:情報系システム
- 理由の核心キーワード:BCPにおける優先業務に該当しない
- BCPでのシステム運用:縮退運用で稼働しないものは、関東センタが復旧後に処理再開
- 本部業務支援システムの中で優先度が低い業務
なぜ「情報系システム」が答えになるのか(問題文の引用を交えて説明)
問題文の【BCPの策定】部分に、縮退運用における優先順位が記載されています。
(1)~(4)のうち、特に重要なポイントは以下:
(2)「最も優先することは、店舗への商品の供給を維持」
次に「期日までに仕入先への支払を行うこと」
(3)財務会計の月次締め処理は延期可能
(4)関連しないシステムは縮退運用時には稼働せず、復旧後に再開
これを踏まえ、対象のシステム群の説明を確認します。
情報系システムの説明では、
分析結果は今後の販売戦略立案に用い、本社ビルのLAN接続PCのみで参照可能。
分析のためには全販売データを漏れなく取り込む必要があるが、業務の緊急性はない。
これはつまり、「緊急を要しない業務」であり、BCPの縮退運用で優先される業務(店舗供給や仕入先支払)に含まれません。
以上から、BCPの【(4)関連しないシステムは縮退運用時に非稼働で復旧後再開】の条件に合致するため、
となり、模範解答の「情報系システム」「BCPにおける優先業務に該当しないから」という回答が導かれます。
受験者が誤りやすいポイントと注意点
-
POSシステムや買掛金・未払金管理システム、会計システムとの混同
- POSシステムは店舗の売上処理に直結し、買掛金管理や会計システムは支払業務や財務会計に関わるため、BCPで優先される対象です。
- 情報系システムは「分析」のみに使い、業務の緊急性がないと明示されているためここを間違えやすいです。
-
業務の緊急性の理解不足
- 分析系システムは重要だが緊急性が低い。BCPでは即時復旧が求められる優先業務ではないことを理解してください。
-
「縮退運用」の意味の誤解
- 縮退運用とは、フル稼働しないが業務の本質的な継続のために必要最低限の処理だけを行う運用です。優先業務以外のシステムは停止されます。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
BCPにおける業務の優先順位の理解
→ 事業継続計画は最優先業務(店舗への商品供給、仕入先への支払)を維持し、その他は縮退運用や停止となる。 -
縮退運用とは
→ システム全てを稼働させるのではなく、業務継続のための重要な処理に絞って運用する。 -
各システムの役割とBCP時の重要度を押さえる
→ 例えば、情報系システムは分析であり緊急性が低い。 -
設問では「理由を25字以内」とあるため、簡潔にキーワードを述べられるように訓練する
→ 「BCPにおける優先業務に該当しない」と端的に答えられることが重要。
以上の理解をもって、本問のようにBCP時の運用方針と業務の重要度から、どのシステムが縮退運用時に停止し復旧後再開となるか判断できるようになりましょう。
設問3(2):関東センタが長期間使用できないような大規模災害時の関西センタでの縮退運用について,(1),(2)に答えよ。
(1)で挙げたシステムの処理を再開する際に,考慮すべきことは何か。40字以内で述べよ。
模範解答
店舗に蓄積した未送信の販売データを漏れなく情報系システムに取り込むこと。
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
-
核心キーワード:
- 「店舗に蓄積した未送信の販売データ」
- 「漏れなく」
- 「情報系システムに取り込む」
-
論点:
事業継続計画(BCP)に基づく縮退運用から通常運用へ戻す際に、店舗側に蓄積されたデータの欠落なく取り込み、分析業務などに必要な情報系システムのデータ整合性を確保することが重要である。
2. 解答となる理由の論理的説明
問題文にある「店舗業務を支援するシステム」の説明の中で、POSシステムは以下のように記述されています。
「POSシステム: 顧客ごとに売上処理を行うとともに, POS端末から取得した客層, 商品コード, 数量, 販売金額などの販売データを蓄積し、1日1回関東センタへ送信する。店舗には、数か月分のデータを蓄積している。」
さらに「本部業務を支援するシステム」のうち、情報系システムについて、
「情報系システム: 店舗から送信された販売データを基に各種の分析を行う。分析結果は今後の販売戦略立案に用いられる。全販売データを漏れなく取り込むことが必要で、業務の緊急性はない。」
また、BCPとして、
「関東センタが長期間使用できないケースで縮退運用を行う際、情報系システムは関西センタでの縮退運用時には稼働させず、関東センタ復旧後に処理再開する。」
これらから、縮退運用期間中、店舗がPOS端末に蓄積した販売データ(関東センタが機能不全のため送信できなかったデータ)を、復旧後に確実に情報系システムに取り込まなければ、販売分析等の精度が損なわれることになるため、この「漏れなく」取り込みは必須の考慮事項となります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢解説
3-1. 「店舗発注・納品管理システムのデータ」や「売上伝送システムのデータ」を選びがち
- 発注や納品、売上伝送も重要ですが、問題文で特に「再開時に漏れなく取り込む」と強調されているのは、店舗に蓄積される「販売データ(POSデータ)」であり、これは情報系システムの分析処理に影響します。
- 発注データはBCP上、東西センタで二重に処理されているなど冗長化されており、店舗側の蓄積は問題になっていません。
3-2. 「早急な処理」や「速やかな開始」などを重視しすぎて「漏れなく取り込む」ことを軽視しやすい
- 問題文では情報系システムは「業務の緊急性はない」とされており、速やかな開始以上に「データの完全性」が優先される点を押さえる必要があります。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識
以上の理解を押さえることで、本問の問われている「再開時に考慮すべきこと」が「店舗の未送信データを情報系システムに漏れなく取り込むこと」となる理由が明確に理解できます。
設問4(1):感染症の流行に備えた対策について(1),(2)に答えよ。
欠勤者の増加への対策として,本部業務を支援するシステムの業務処理プログラムを一部変更する必要がある。どのシステムをどのように変更する必要があるか。システム名を挙げ,変更の内容を40字以内で述べよ。
模範解答
システム名:利用者マスタ管理システム
変更の内容:緊急時には申請から利用開始まで 1 週間未満でもエラーにしないように変更する。
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- システム名:利用者マスタ管理システム
- 変更内容の要点:
緊急時(欠勤増加などの非常事態)において、- 「利用開始まで1週間未満」の申請に対するエラー判定を解除
- すなわち、迅速な利用者登録やアクセス権付与を可能にする
- 背景となる要件:「感染症の流行時の事業継続」に対応するために、通常の承認プロセス(申請から利用開始まで1週間)の制約を緩和し、業務の縮退運用を支援する
2. なぜその解答になるのか(論理的説明)
【問題文】の記述を引用しながら整理します。
- 利用者マスタ管理システムは、各システムの利用者ID・パスワード・アクセス権限を管理するシステムです。
- 申請手順としては、「利用希望者が利用開始日の1週間前までに電子申請し、所属部長承認→情報システム部管理者承認を経てマスタに反映される」ルールがあります。
- しかし、このプロセスは平常時の運用であり、欠勤者増加時の迅速な担当者割当など緊急対応には対応していません。
- 問題文に、「緊急時には、申請日から利用開始日までが1週間未満の場合であってもエラーにしないよう変更する」とある要件が示されています。これは感染症による欠勤者増加時に、早急かつ柔軟に利用者登録と権限付与を行い、業務継続を図るためです。
したがって、
- 「利用者マスタ管理システム」の「利用開始まで1週間未満の申請エラー判定」を解除する変更が必須となります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
-
利用者マスタ管理システムの役割
→ 各システムのアカウント管理・アクセス権限設定を行う。これは利用者の権限管理の中枢であり、緊急時の柔軟な対応に活用される。 -
BCP(事業継続計画)対応での「縮退運用」について
→ 事業継続には「優先する業務に絞って運用する」ことと、欠勤等による人員不足を踏まえた柔軟な担当者割当(利用者登録)が重要である。 -
緊急時のアクセス権限付与の例外ルール
→ 通常の申請承認手続きが間に合わない場合は、申請期間やフローの短縮や除外を検討する必要がある。 -
問題文の記述を正確に把握し、システムの役割と変更点を的確に判断する力を養うこと
まとめ
この変更は、感染症流行などで人員が不足した際に、新規利用者の迅速な追加や権限修正を可能にして、業務の優先継続を支える重要な対策です。
設問4(2):感染症の流行に備えた対策について(1),(2)に答えよ。
本社ビルの閉鎖及び東西両センタへの入館者の制限に備えた追加対策として,買掛金未払金管理システム及び利用者マスタ管理システムについて,システムの環境を一部変更する必要がある。変更の内容を30字以内で述べよ。
模範解答
モバイル PCからもアクセスできるように変更する。
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- モバイルPCからのアクセスを可能にすること
- システムの利用制限解除(アクセス端末の拡大)
- 「本社ビル閉鎖」や「センタへの入館制限」といった物理的制約に対応するための環境変更
- 対象システム:買掛金・未払金管理システム、利用者マスタ管理システム
- システムの利用場所・端末の柔軟性確保(リモートアクセスやモバイル利用の実現)
なぜこの解答になるのか(論理的説明)
1. 本社ビル閉鎖、センタ入館制限による課題
問題文では、感染症の流行が激化した場合の追加対策として、
「本社ビルが閉鎖されて本社ビル内で業務ができなくなる」「東西両センタへの入館者が制限され本部業務担当者が入館できなくなることなどを想定する」
と明記されています。
この状況下では、従来「本社ビルのLANに接続されたPC」や「関東センタのLANに接続されたPCだけから操作可能」とされたシステムは、物理的にアクセスが困難になります。
2. 対象システムの現状のアクセス制限
-
買掛金・未払金管理システム「データの確認・入力は、本社ビル又は関東センタのLANに接続されたPCだけから行うことができる。」
-
利用者マスタ管理システム「データの確認・入力は、本社ビル又は関東センタのLANに接続されたPCだけから行うことができる。」
つまり、どちらのシステムも社内ネットワークの特定端末からのみアクセス可能であり、外部やモバイル端末からは操作できません。
3. 物理的制限を乗り越えるために必要な変更
上述の制約を乗り越えるためには、
- 社外からでもアクセスできる仕組みが必要
- 社外の端末(モバイルPCなど)からのアクセスを許可することが合理的
特に、問題文で感染症流行時の対応策として、
「…外出先からも作業ができるように、本社ビルのLANに接続されたPC又は社員が携行するモバイルPCだけから行うことができる。」
という環境が既に述べられていることから、この要件に合致する変更が求められます。
したがって、「モバイルPCからもアクセスできるように変更する。」とするのが妥当です。
受験者が誤りやすいポイント/ひっかけ
-
「VPN導入」や「クラウド化」など具体的な技術用語を選ぶ誤り問題文はあくまでも「システムの環境を一部変更」と表現しており、回答は30字以内で簡潔に求められています。過度に詳細な技術的手法(例:VPN導入、クラウド化など)を書くと字数制限オーバーや問題趣旨から外れる可能性があります。
-
単に「リモートアクセスを可能にする」と答える誤り「モバイルPCから」という具体的な端末種類に注目する必要があります。リモートアクセスは便利ですが、今回の問題文が強調しているのは「モバイルPCを利用して出社以外で業務継続する」点です。
-
既存の「本社ビルやセンタのLAN限定アクセス」を変更しない立場物理的制約があるため、これまでの運用を維持するだけではBCPとして不十分です。必ずアクセス環境の変更を行う必要があります。
試験対策として覚えておくべきポイント
まとめ
- 感染症流行などによる物理的な施設閉鎖・入館制限に対応して、社内LANに限定されていたシステム利用環境を見直し、社外からの利用を可能にする必要がある。
- これにより、買掛金・未払金管理システムや利用者マスタ管理システムもモバイルPCなどを用いたアクセスが可能となり、BCPの要件を満たす。
- 試験では「モバイルPCからもアクセスできるように変更する。」と簡潔に記述することが重要。
以上の解説で、問題文の要件背景と解答の根拠が明確になるかと思います。