システムアーキテクト試験 2011年 午後102


購買管理システムの設計に関する次の記述を読んで、 設問1~4に答えよ。

 機械部品メーカの B 社は、材料・部品などの資材を調達するための購買管理システムを開発中である。
 
〔購買管理システムの位置付け〕  現在 B 社は、全社統合生産システム構築の一環として購買管理システムの開発を行っている。全社統合生産システムは、 購買管理システムの他に、生産管理システム、在庫管理システムで構成されている。  購買品目検収後の買掛金計上から支払までの管理は、既存の会計システムで行う。
 
〔B社の購買方式〕  B社の購買方式は、次の三つである。 (1) 計画購買方式  生産管理システムの資材所要量計画から出された、 資材の購買要求(以下、計画購買オーダという)に応じて購買を行う。計画購買オーダには、購買品目の品番、所要量、所要時期の情報が含まれる。 (2) 定量購買方式  在庫管理システムから出された、 発注点を割った資材の一定数量の購買要求(以下、定量購買オーダという)に応じて購買を行う。定量購買オーダには、購買品目の品番、数量の情報が含まれる。 (3)都度購買方式  不定期、不定量での資材の購買要求(以下、都度購買要求という)に応じて購買を行う。
 
〔購買業務の概要〕  購買業務は資材部が担当しており、 主な業務として、 購買先及び購買品目の選定・契約業務、購買計画業務、発注業務、検収業務、納期管理業務、資材倉庫管理業務がある。  購買計画、発注、検収、納期管理の各業務は、現在開発中の購買管理システムを利用する。 図1に、 業務の流れを示す。
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問2 図1)
 (1) 購買計画業務   計画購買オーダは生産管理システムから、定量購買オーダは在庫管理システムから購買管理システムに連携する。都度購買要求は、資材部で受け付け、入力する。資材部では、購買要求の状況を見て、購買先、納期、購買単価、発注数量の調整・決定を行い、決定した結果の情報(以下、発注オーダという)を購買管理システムに入力する。 ここで、納期は納入予定日である。   購買要求の購買先、発注予定日、納期及び発注数量については、表 1 に示す発注内容の決定方法で決められる。   なお、一つの購買品目を、複数の購買先候補から選定して購買する場合があり、購買単価も異なることがある。また、一つの購買先から複数種類の購買品目を購買する場合もある。
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問2 表1)
 (2)発注業務   決定した発注オーダは、発注予定ファイルを経由して発注ファイルに登録され、発注予定日に達したものに対して、資材部の発注担当者が発注指示をして、注文書を発行し、購買先に発注を行う。未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは、発注残として発注ファイル上で管理する。   また、未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは、在庫管理システムにおける入庫予定情報になり、 生産管理システムの資材所要量計画で利用される。資材所要量計画は、製品の生産計画に基づいて算出した資材の総所要量に対して、現在の在庫及び今後の入出庫予定を加味して、正味の資材所要量を決めるものである。  (3)検収業務   発注された資材は、資材部所管の資材倉庫へ納品される。B 社では、分割納品は認めていない。 受入・検品後、倉庫担当が検収入力を行う。 納品され検収が完了した発注オーダは、 検収済みとして発注ファイル上で管理される。 検収後の資材は、在庫の入庫計上と同時に、棚卸資産の原材料勘定に計上される。  (4)納期管理業務   発注済みで未検収の発注オーダの中で、納期に遅れそうな発注オーダについては、 資材部から購買先に督促する。  
〔購買管理システムの主要ファイル〕  購買管理システムで使用する主要ファイルである、 購買先マスタ、 購買品目マスタ、 単価マスタ、発注ファイルのレイアウトを図2に示す。  購買品目マスタの品目区分は、計画購買方式の対象品目か、定量購買方式の対象品目か、都度購買方式の対象品目かの区分を示す。 基準発注ロットは、その品目の発注単位となる数量のことである。 例えば、基準発注ロットが100個で所要量が180 個の場合、発注数量は 200 個になる。 また、 検収日数は、納品されてから検収を完了するまでに掛かる日数のことである。  単価マスタの購買リードタイムは、発注から納品までに掛かる日数のことである。 発注ファイルの発注状態は、発注オーダが現在どのような状態にあるかを示す区分である。
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問2 図2)

設問1(1)購買計画業務の発注内容の決定方法における,発注予定日,納期及び発注数量の決定に関して,(1)~(3)に答えよ。

計画購買オーダの発注予定日の決定について,計画購買オーダの所要時期からの算出方法を,40字以内で述べよ。
模範解答
所要時期から購買リードタイムと検収日数だけ,前の日を発注予定日とする。
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 発注予定日は「所要時期」から逆算して決める
  • 逆算に用いる日数は「購買リードタイム」と「検収日数」の合計
  • 発注予定日は「計算した日付の前日」とする

なぜその解答になるのか(論理的説明)

問題文の表1「発注内容の決定方法」において、計画購買オーダの発注予定日の決定方法は以下のように定められています。
計画購買オーダ
発注予定日:購買管理システムで、所要時期、購買品目マスタ及び単価マスタから計算する。
この計算の具体的な意味は、所要時期(資材が欲しい日)に必要な日数を「購買リードタイム」と「検収日数」でさかのぼるということです。
  • 購買リードタイム(単価マスタの項目)は、発注から納品までにかかる日数。
  • 検収日数(購買品目マスタの項目)は、納品後に検収を完了するまでの時間。
この2つを足した日数が「発注予定日から所要時期までの期間」になります。
例:
  • 所要時期:4月20日
  • 購買リードタイム:3日
  • 検収日数:1日
    → 発注予定日は「4月20日−(3+1)日=4月16日」となります。さらに発注はその日の“前日”に行うため、4月15日が発注予定日になります。
この考え方から、模範解答の「所要時期から購買リードタイムと検収日数だけ,前の日を発注予定日とする。」が導かれます。

誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  • 「前日」を付け忘れやすい
    発注予定日を「所要時期−リードタイム−検収日数の日」そのものとしてしまい、さらに前日へ繰り下げる点を忘れるケースがあります。実際の発注はその日の開始前に行うため、計算結果の日の前日が正しい発注予定日です。
  • 検収日数を無視する
    発注から納品まではリードタイムだけを考慮しがちですが、納品後の検収にかかる日数も発注計画に必須であることに注意が必要です。
  • 計画購買方式と定量購買方式の違いを混同する
    定量購買方式の発注予定日は「発注オーダを入力した翌日」と定められており、計画購買方式とは決定方法が異なります。計画購買方式特有のリードタイムと検収日数を加味する点を混同しないようにしましょう。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
計画購買方式の発注予定日の決め方所要時期から「購買リードタイム+検収日数」を引き、さらに前日を発注日とする。
リードタイムと検収日数の役割リードタイムは「発注〜納品」所要期間、検収日数は「納品〜検収完了」所要期間。
発注予定日は計画の基準日発注処理は「発注予定日の前日」に行うため、前日に取りまとめること。
定量購買方式との違い定量購買方式は「発注オーダ入力翌日」を発注予定日として固定。

以上を理解し、問題文の表やマスタ構成をしっかり結び付けて覚えておくことが、午後問題の解答精度を高めるポイントです。

設問1(2)購買計画業務の発注内容の決定方法における,発注予定日,納期及び発注数量の決定に関して,(1)~(3)に答えよ。

定量購買オーダの納期の決定について,定量購買オーダの発注予定日からの算出方法を,35字以内で述べよ。
模範解答
発注予定日から購買リードタイムだけ,先の日を納期とする。
解説

1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 「発注予定日から購買リードタイムを加算する」
  • 「納期は発注日からの期間により決める」
  • 定量購買オーダに限定した納期の決定方法であること
  • 「納期=発注予定日+購買リードタイム」

2. 解答の根拠と論理的説明

問題文の【購買計画業務】の説明及び、表1「発注内容の決定方法」の「定量購買オーダ」欄には次の記述があります。
  • 発注予定日は「発注オーダを入力した翌日を設定する」
  • 納期は「購買管理システムで、発注予定日と単価マスタから計算する」
さらに、単価マスタの説明に「購買リードタイムは、発注から納品までにかかる日数」と記載されています。
つまり、購買管理システムでは、
「納期(納入予定日)」は、
「発注予定日」+「購買リードタイム(日数)」で計算されるため、
定量購買オーダの納期は「発注予定日から購買リードタイムだけ先の日付」となります。
この関係は、納期が「いつまでに資材が納品されるべきか」を示すもので、発注予定日を基点として納期を決める合理的な方法です。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「所要時期」から計算するのではないか?
    計画購買オーダの場合は「所要時期」から計算しますが、定量購買オーダは「発注予定日」を基に算出します。
    ここを混同してしまうと誤答になります。
  • 発注予定日と納期の意味を誤解する
    発注予定日も納期も日付ですが、発注予定日は「いつ発注するか」、納期は「いつまでに納品されるか」の違いです。意味を混同して納期を発注予定日そのままとする誤りが起きやすいです。
  • 購買リードタイムが単価マスタに存在することの気付かず、別のデータを探しがち
    問題文に単価マスタでリードタイムを管理すると明示があるため、そこを押さえておく必要があります。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

  • 「発注予定日」は、実際に発注を行う日の予定日である。
  • 「納期」は、納入予定日であり、発注予定日に購買リードタイムを加えて計算する。
  • 購買リードタイムは「発注から納品までに掛かる日数」で単価マスタに管理されている。
  • 購買方式ごとに納期計算の基準日が異なる。
    • 計画購買方式は「所要時期」
    • 定量購買方式は「発注予定日」
    • 都度購買方式は文中省略(都度なのでその都度判断)。
  • 購買管理システムでの納期計算ルールについて問題文の表を読み取り、方式ごとの違いを整理する。

参考: 表1 発注内容の決定方法(抜粋)

購買要求発注予定日納期
計画購買オーダ「所要時期」「購買品目マスタ」「単価マスタ」から計算「所要時期」「購買品目マスタ」から計算
定量購買オーダ発注オーダを入力した翌日を設定発注予定日と単価マスタから計算

この理解を正確に整理し、「定量購買オーダでは発注予定日を起点とし、購買リードタイム(日数)を足した日付が納期となる」と答えられるようにしておきましょう。

設問1(3)購買計画業務の発注内容の決定方法における,発注予定日,納期及び発注数量の決定に関して,(1)~(3)に答えよ。

計画購買オーダの発注数量の決定方法を、購買品目マスタの項目名を用いて,30字以内で述べよ。
模範解答
基準発注ロットの整数倍になるように所要量を切り上げる。
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 「基準発注ロット」
  • 「整数倍」
  • 「所要量を切り上げる」
  • 発注数量は所要量に対して基準発注ロット(発注単位)に合わせて調整される
これらが計画購買オーダの発注数量決定方法の中核となる概念です。

なぜその解答になるのか(論理的説明)

問題文の購買管理システム「計画購買方式」の説明には、次の指示があります。
例えば、基準発注ロットが100個で所要量が180個の場合、発注数量は200個になる。
この記述は、「基準発注ロット」がその品目の発注単位であり、発注数量は必ず基準発注ロットの整数倍でなければならないことを示しています。
計画購買オーダには「所要量」という必要な数量が示されていますが、この必要量だけでは必ずしも発注数量にはなりません。発注単位の制約を満たすため、所要量は基準発注ロットの整数倍に切り上げられます。
表1の「発注数量の決定方法」にも、
購買要求発注数量
計画購買オーダ購買管理システムで、計画購買オーダの所要量と購買品目マスタから計算する。
とあり、購買品目マスタの「基準発注ロット」がキー情報として参照されています。
以上より、「計画購買オーダの発注数量は、所要量を基準発注ロットの整数倍に切り上げた数値」というのが正しい決定方法となります。

受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢

  • **「切り捨てる」や「所要量そのまま」**と誤解する
    所要量をそのまままたは切り捨てて発注するという誤答が散見されますが、基準発注ロットという発注単位があるため、必ず調整(切り上げ)が必要です。
  • 基準発注ロットの意味を混同する
    「基準発注ロット」を単なる目安や最小発注量と捉えてしまうケースがありますが、ここでは発注単位として「整数倍で発注しなければならない」ルールが明確にあるため、この点を忘れないようにしましょう。
  • 「発注数量=所要量+α」という曖昧表現
    問題文には具体例もあり明確ですが、「+αは発注リードタイムや安全在庫の分か?」などと混同しないこと。

試験対策として覚えておくべきポイント・知識

  • 基準発注ロット(発注単位)は購入数量の単位であり、発注数量は基準発注ロットの整数倍で決定すること
  • 計画購買オーダの発注数量は、あらかじめ所要量が示されるが、発注単位に合わせて切り上げる必要がある
  • 表やマスタの項目名は設問文で使われている通り正確に把握する
  • 数字の丸め方(切り上げ・切り捨て・四捨五入)を状況や仕様記述から正しく理解する
  • 発注数量の決定ロジックは購買方式(計画・定量・都度)によって異なるため整理する

参考:購買品目マスタの該当項目例

品番品目区分購買品目名基準発注ロット検収日数
※主キー(発注単位数量)

このように、設問では「基準発注ロットによって所要量を整数倍に切り上げる」ルールが核心になるので、必ず把握しておきましょう。

設問2(1)発注ファイルに関して(1),(2)に答えよ。

発注状態において,管理すべき発注オーダの状態が三つある。一つは,“登録されている発注オーダが未発注”の状態である。残りの二つについて,それぞれ20字以内で述べよ。
模範解答
①:発注済みだが,未検収の状態 ②:納品され検収が完了した状態
解説

模範解答の核心キーワードと論点整理

解答番号発注状態の説明(20字以内)キーワード・論点
発注済みだが,未検収の状態発注済み/購入先には注文済み/まだ検収されていない状態
納品され検収が完了した状態納品済み/検収処理完了/在庫に入庫計上済み
  • 発注状態は「登録 (未発注)」「発注済み (未検収)」「検収済」の3段階に分けて管理されている。
  • 受注から検収完了までの一連の流れを表し、購買プロセスの進捗状況を把握可能。

解答に至る論理的説明

問題文の【発注業務】および【検収業務】の記述から根拠を探ります。
  1. 登録されている発注オーダが未発注(問題文既出。ここは省略)
  2. 発注済みで未検収の状態
    • 問題文「未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは、発注残として発注ファイル上で管理する。」
    • 「資材部の発注担当者が発注指示をして,注文書を発行し,購買先に発注を行う。」 → これが「発注済み」の状態。
    • 「検収が完了した発注オーダは,検収済みとして発注ファイル上で管理される。」という表現から、この発注済みだが検収されていない状態を区別していることがわかる。
  3. 納品され検収が完了した状態
    • 問題文「納品され検収が完了した発注オーダは検収済みとして発注ファイル上で管理される。」
    • 「検収後の資材は在庫の入庫計上と同時に棚卸資産の原材料勘定に計上される。」とあるので、ここで検収完了として管理している。
これらの解説から、発注状態は以下の3つで区分されることが明確です。
発注状態説明
未発注発注オーダが登録された段階で、まだ注文していない状態
発注済み・未検収発注は済んだが、まだ納品・検収されていない状態
検収済み納品されて、検収作業も完了している状態

受験者の誤りやすいポイントと注意点

  • 「発注済み」と「検収済み」の区別が必須
    → 「発注済みかつ未検収」は注文は出しているが、購買品がまだ倉庫に届いていなかったり、納品はあっても検品・検収処理が未完了であることを示すため重要。
  • 「納品されていない状態」を発注済み未検収と誤解しないこと
    ※実際は納品されていても検収未処理かもしれないため、単に納品=検収済とは限らない。
  • 「発送済み」や「受領済み」など、問題文にない用語を使わないこと
    文章や用語は問題文に準じる必要がある。

試験対策のポイント・まとめ

  • 発注状態は「未発注」「発注済み(未検収)」「検収済み」の3段階で管理されていると理解する。
  • 発注済み(未検収)とは、購買先に対して正式に注文を出したが、まだ納品・検収作業が終了していない状態。
  • 検収済みは、納品され検品・検収まで完了し、在庫計上や会計処理が進んでいる状態。
  • 業務フローを理解し「業務用語」と「状態管理」の関係を押さえておくことが重要。
  • 問題文中の用語・表現を正確に使い、20字以内の表現では簡潔に伝える練習をしておくこと。

この理解が深まれば、購買管理システムの業務監査やシステム設計を学習する際もスムーズに対応できます。

設問2(2)発注ファイルに関して(1),(2)に答えよ。

図1の業務の流れにおいて、購買管理システムから在庫管理システムに渡されるのは、発注ファイルのどのような状態のレコードか。35字以内で述べよ。
模範解答
入庫予定としての未発注及び発注済みで未検収の発注オーダのレコード
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 「発注ファイル」から渡されるレコードの状態
  • 「未発注の発注オーダ」
  • 「発注済みで未検収の発注オーダ」
  • それらが「入庫予定情報」として在庫管理システムに連携されること
  • 式で言うと、「発注残として管理される発注オーダ」と同義

なぜその解答になるのか(論理的説明)

問題文の【購買管理システムの業務概要】より、以下の記述を確認します。
「決定した発注オーダは、発注予定ファイルを経由して発注ファイルに登録され、発注予定日に達したものに対して、資材部の発注担当者が発注指示をして注文書を発行し、購買先に発注を行う。」
さらに、
「未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは、発注残として発注ファイル上で管理する。」
ここでの「発注残」は、在庫管理システムにとっては「入庫予定」です。
「また、未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは、在庫管理システムにおける入庫予定情報になり、生産管理システムの資材所要量計画で利用される。」
つまり、
  • 購買管理システム内の発注ファイルの中でも、
    • 発注指示前の「未発注」状態のオーダー
    • 発注は済んでいるが、まだ納品検収が完了していない「発注済みで未検収」のオーダー
この2種類の発注オーダが在庫管理システムに連携され、入庫予定の情報となっています。
したがって模範回答は、
入庫予定としての未発注及び発注済みで未検収の発注オーダのレコード
となり、購入品が実際に倉庫に到着し在庫として認識される前の「まだ検収されていない資材の到着予定」を示しています。

受験者が誤りやすいポイントやひっかけ

  1. 「検収済みの発注オーダ」を連携すると誤解する
    → 検収済みはすでに入庫計上された後なので、在庫管理システムの入庫予定ではなく、現物在庫として既に反映済み。従って「発注ファイルから渡されるのは入庫予定としての未検収分のみ」です。
  2. 「未発注以外の発注状態」つまり、「発注済みで検収済み」や「キャンセル済み」のオーダーを含むと誤解する
    → 発注済みでも検収済みなら入庫は完了しているので、入庫予定として渡す相手は限られています。
  3. 購買管理システムから在庫管理システムに連携されるデータのファイルや内容を混同する
    → 発注ファイルのうち特に「発注残」と呼ばれる未発注・発注済未検収のものに限定されている点に注意。

試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • 発注ファイルの「発注状態」の区分を理解する。
    発注状態は「未発注」「発注済み」「検収済み」などの分類があり、それぞれ意味が異なる。
  • システム間連携の意義を押さえる。
    購買管理システムは、発注計画や進捗管理を担当し、まだ在庫に反映されていない資材の入庫予定情報を在庫管理システムに提供する。
  • 入庫予定とは、まだ倉庫に存在しないが来る予定の資材情報である点を理解する。
    これにより、生産計画などの資材所要量計算に反映される。
  • 状態管理と連携データの対象を意識する。
    システム間で連携されるのは、現時点で「予定・未完了のもの」のみ。
  • 「発注残」の定義を正確に理解すること。
    発注残=未発注+発注済み未検収。

まとめ

用語説明
未発注発注計画は決定したが、まだ発注指示していない状態
発注済み未検収注文は完了したが納品検収はまだの状態
発注残発注ファイル上で管理される「未発注」+「発注済み未検収」
検収済み資材が納品・検収され在庫に入庫済み
入庫予定在庫管理システムが受け取る「これから入庫予定」の情報
こうした用語や状態を正確に把握し、図1の業務の流れでのシステム連携の意図を理解することが合格の鍵となります。

設問3

図1の業務の流れにおいて、購買管理システムから在庫管理システムに渡されるのは、発注ファイルのどのような状態のレコードか。35字以内で述べよ。
模範解答
原材料,買掛金への仕訳計上処理
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 購買管理システムから在庫管理システムに渡されるのは「発注ファイル」のレコード
  • 渡されるのは「未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダ」のレコード
  • これらの発注オーダは「発注残」として管理される
  • 在庫管理システムでは「入庫予定情報」として利用される

なぜその解答になるのか(問題文の記述を引用しながら論理的説明)

問題文の〔発注業務〕に、
「未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは,発注残として発注ファイル上で管理する。また,これらは,在庫管理システムにおける入庫予定情報になり,生産管理システムの資材所要量計画で利用される。」
とあります。この記述から、
  • 購買管理システムが在庫管理システムに渡す情報は「発注残」(未発注+発注済で未検収の発注オーダ)であり、
  • 在庫管理システムはそれを「入庫予定情報」として資材の管理に使うことが分かります。
一方、現金の支払い処理や買掛金計上は既存会計システムで行うため、ここで渡される発注ファイルのレコードは「買掛金への仕訳計上処理」そのものを指しません。
よって、在庫管理システムに渡される発注ファイルの状態は「未発注または発注済みで未検収の発注オーダ」、すなわち「発注残」の状態であることが正しい理解です。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  • 「検収済みの発注オーダを渡す」という誤解
    検収が完了した資材は「発注ファイル上で検収済みとして管理」されるが、これは在庫管理システムに渡す入庫予定情報ではありません。検収済みは資材が在庫に入った状態を示すため、渡す対象ではありません。
  • 会計処理の混同
    「買掛金の計上や支払い」は会計システムで行うため、購買管理システムから在庫管理システムに渡される情報ではありません。購買管理システムから会計システムに渡される情報と混同しないこと。
  • 発注予定日の処理混同
    発注予定日が到来するまで「発注予定ファイル」で管理し、発注指示後に「発注ファイル」に記録されます。在庫管理システムに渡すのはこの「発注ファイル」の発注残データであることを理解しましょう。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
購買管理システムが在庫管理システムに渡す情報「未発注および発注済みで未検収の発注オーダ」(発注残)であり、入庫予定情報として利用される。
検収済みのデータの取扱い検収済みは入庫完了を示し、在庫管理システムが管理する在庫情報の一部となるが、発注残のデータではない。
買掛金計上や支払処理はどこで行うか既存の会計システムで処理されるため、購買管理システムからの直接の連携対象ではない。
ファイル管理と業務フローの把握発注予定ファイル、発注ファイル、検収ファイルの違いと流れを正確に理解することが重要。

この問題では、特にシステム間で連携されるデータの種類とその状態(未発注・発注済み・検収済み等)を見極めることが問われています。業務フローの理解とファイルの役割を正しく整理して確実に答えましょう。

設問4

単価マスタの主キーとなる項目について、図2中の(a),(b)に入れる適切な項目名を答えよ。(a,bは順不同)
模範解答
a:品番 b:購買先コード
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 単価マスタの主キーは複合キーであること
  • 複合キーの構成要素は、購買単価が特定されるための「品番」と「購買先コード」であること
  • 各購買先ごとに、品目ごとに購買単価や購買リードタイムが異なる可能性があるため、どちらか一方だけでは重複が生じること

解答の論理的説明

問題文の購買管理システム構成や購買方式の説明から、単価マスタは「購買単価」および「購買リードタイム」を保持しています。これらは「どの品目を」「どの購買先から」調達するかによって異なりうる情報です。
図2で示された単価マスタのレイアウトは以下のとおりです。
a(キー1)b(キー2)購買単価購買リードタイム
未記入未記入
これに対し、問題文の記述を確認すると:
  • 「一つの購買品目を複数の購買先候補から選定して購買する場合があり、購買単価も異なることがある」
  • つまり購買単価は「品番」だけでなく、「購買先コード」も考慮しなければ一意に特定できない。
  • したがって、単価マスタの主キーは『品番』と『購買先コード』の複合キーであることが妥当です。
購買単価は利用する購買先によって変わるため、単に品番だけをキーにしてしまうと、同じ品番で複数の購買先がある場合にデータが重複し混乱を招きます。また、購買先だけをキーにしても、複数の品目を扱うことから区別できません。
以上より、
  • a:品番
  • b:購買先コード
が正解となります。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  1. 「発注番号」や「発注状態」をキーと考える誤り
    発注ファイルの「発注番号」はトランザクション単位の一意識別子であり、マスタファイルのキーとは異なります。問題は単価マスタのキーなので混同しないよう注意しましょう。
  2. 「購買品目名」や「購買先名」などの名称項目をキーと誤解する
    名称項目は検索や表示には有用ですが、主キーとしては適切でなく、システム設計でもコードで一意に管理します。
  3. 「品番」または「購買先コード」のみを単独で主キーとする誤り
    いずれか一方だけでは複数の異なる単価データを区別できません。
  4. 問題文中の「単価マスタの主キーはa+bの複合キー」とある点を見落とす
    「単一キー」か「複合キー」かを慎重に読み取ることが重要です。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • マスタデータの主キーは、データの「一意性」を保証する属性(または属性の組み合わせ)で決める。
  • 購買管理システムでは、単価やリードタイムは「品目」と「購買先」の組み合わせで管理されることが多い。
  • マスタファイルの主キーは、コード(ID)で識別し、名称は副次的な情報とする。
  • 複合キーの場合は、「どの属性が欠かせないか」を問題文や業務説明文から読み取る練習をする。
  • 業務の流れとファイル構造を理解し、ファイル間でどの情報が必須かをイメージすることが合格には効果的。

この問題は、業務知識とデータベース設計の基礎をつなげて問う良問です。単純にファイル名で答えるのではなく、業務の背景と連携を理解したうえで、主キーの選定理由を明確に答えられるようにしましょう。
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