システムアーキテクト試験 2011年 午後103


利益管理システムの改善に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。

 C社は首都圏に50店舗をもつ総合スーパマーケットチェーンで、店舗ごとの利益管理を行っている。近年、業績の悪化に伴い、利益管理の強化に取り組むこととなり、経営企画部の主導によって、現在の利益管理システム(以下、現行システムという)の改善を行うことを決定した。   〔C社及び現行システムの概要〕 (1)C社の各店舗はビルを一棟借りしている。各店舗には3桁の一意な店舗番号が付与されている。 (2)各店舗は、部門(生鮮食品、加工食品、紳士服、婦人服、子供服、日用品、家電、寝具、店舗事務、店舗会計など)ごとに場所が分かれている。各部門には3桁の一意な部門番号が付与されており、上位1桁で売場部門か非売場部門かを区別している。また、売場部門ごとにレジを設置してあり、商品の精算はその商品を扱っている売場部門のレジで行っている。 (3)部門ごとに、商品売上高から仕入原価を引いた粗利から、当該部門の販売員の人件費及び売場家賃を減じた額を部門責任利益として、部門の評価に活用している。 (4)各店舗では、部門責任利益の合計から、店舗共通経費及び本社から等分で配賦される全社経費を減じた額を店舗責任利益としている。店舗共通経費には、部門単位で発生する物流費用と、店舗単位で発生する水道光熱費、駐車場賃料及び店舗管理費用が含まれる。店舗管理費用には非売場部門の家賃や人件費などが含まれる。また、全社経費には、広告宣伝費と、本社費用としての本社の人件費と情報システム費用などが含まれる。   〔現行システムの問題点と改善案の作成〕  現行システムは、業績が好調だった時期に、全社経費や店舗共通経費の取扱いなどの厳密な検討を行わずに前述の仕様で開発された。しかし、一部の店舗が赤字となり、不採算部門を把握しようとした際に、当該店舗の全ての部門の部門責任利益は黒字であり、どの部門で採算が悪いのかが分からない、といった事態が発生した。  経営企画部では、部門責任利益をより厳密に把握するために、費用計上方法を変更することを決定し、それに合わせて現行システムを改善することにした。改善後のシステム(以下、新システムという)の要件を次のように決定した。
(1)店舗共通経費及び全社経費の全ての実績(以下、費用実績という)を各売場部門に配賦するように改める。現在の部門責任利益から、配賦された費用実績を減じた額を新たな部門責任利益として、部門の責任を明確にする。当該店舗の店舗責任利益は部門責任利益の合計とする。 (2)全社経費は、店舗ごとの売上金額の合計や客数の合計に応じて各店舗に配賦する。 (3)各店舗の店舗共通経費及び(2)で各店舗に配賦した全社経費を、部門ごとの面積、客数、売上金額などに応じて各売場部門に配賦する。  これらの配賦の基準となる面積、客数、売上金額などを総称して配賦基準と呼ぶ。また、費用が全社で発生するか、店舗単位で発生するか、部門単位で発生するかの区分を費用発生区分と呼ぶ。費用発生区分が“部門”の場合は、直接当該部門の費用として計上されるので、費用の配賦は行わない。費用計上方法の変更内容を表1に示す。  なお、広告宣伝費は、厳密には広告1本ごとに恩恵を受ける部門に費用を配賦すべきだが、対応するためには広告宣伝業務の大幅な変更を伴うので、客数に応じて配賦する方法とした。
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問3 表1)
 経営企画部からは、今後、費用分類が増える可能性があること、広告宣伝費などは配賦基準を変更する可能性があることを考慮し、それらに柔軟に対応できるシステムにしてほしい、という要望が付け加えられた。   〔新システムの設計〕  新システムの要件を基にして、情報システム部で新システムの設計を行った。  (1)客数計算   C社では、売場部門のレジから送信されてくる売上実績ファイルに、属性として、店舗番号、部門番号、レシート番号、商品コード、売上金額などを保有しており、レジでのレシートの発行枚数(以下、レシート枚数という)が分かる。新システムでは、このレシート枚数を客数とみなして処理を行う。レシート枚数は、実際に店舗を訪れた客数(以下、来店客数という)とは異なるが、新たな仕組みを作らずに来店客数の近似値が得られることを、経営企画部に説明し、了承された。  (2)構成比計算   毎月の会計処理終了後、当月分の売上実績ファイル、部門別面積ファイルから、3種類の配賦基準に基づいて各部門の配賦比率を計算し、結果を構成比ファイルに出力する。構成比には、店舗合計に対する比率を表す店舗内構成比と、全社合計に対する比率を表す全社構成比がある。構成比は四捨五入して小数第4位までを求める。  (3)部門費用計算   毎月の会計処理で確定した費用実績ファイルから、配賦指示ファイルに定義した費用分類ごとの費用発生区分及び配賦基準に基づいて、構成比ファイルを用いて各部門に配賦する金額を計算し、結果を部門費用ファイルに出力する。   配賦指示ファイルを設けてコントロールする方式を採用したのは、費用分類の追加や配賦基準の変更に柔軟に対応するためである。   構成比計算、部門費用計算の処理概要を図1に示す。
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問3 図1)
主要ファイルとその属性を表2に、それぞれの処理の手順を表3に示す。
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問3 表2)
システムアーキテクト試験(平成23年度 午後I 問3 表3)
〔テスト結果に基づいた修正〕  新システムのテストを行ったところ、全店舗の店舗責任利益の合計が、現行システムの全店舗の店舗責任利益の合計と一致しない事象が発生した。  新システムの全店舗の店舗責任利益の合計を現行システムと一致させるために、部門費用計算の処理において、特定の部門の配賦費用に特別な調整を行う処理を追加して対応した。

設問1

経営企画部の要望に基づき,新システムでは配賦基準の変更に柔軟に対応できる設計を行った。新システムにおいて,費用分類の配賦基準を既存の別の配賦基準に変更する場合に必要となる修正の内容を35字以内で述べよ。
模範解答
配賦指示ファイルで,当該費用分類のレコードの配賦基準を変更する。
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理

  • 配賦基準の変更に対応する仕組みは「配賦指示ファイル」
  • 費用分類ごとに「費用発生区分」と「配賦基準」を管理している点
  • システムが柔軟に対応可能な理由は、この「配賦指示ファイル」を使った制御にある
  • 修正内容は「配賦指示ファイルで配賦基準を変更する」ことに集約される

2. なぜその解答になるのか(問題文の該当記述を引用しながら)

問題文中には、新システムの特徴として、経営企画部の要望から「費用分類が増える可能性」や「配賦基準が変更になる場合がある」ことを踏まえた設計を行ったとあります。
「経営企画部からは,今後,費用分類が増える可能性があること,広告宣伝費などは配賦基準を変更する可能性があることを考慮し,それらに柔軟に対応できるシステムにしてほしい」
このために、システムは以下の方式を採用しました。
「配賦指示ファイルを設けてコントロールする方式を採用したのは、費用分類の追加や配賦基準の変更に柔軟に対応するためである。」
この「配賦指示ファイル」には「費用分類ごとの費用発生区分及び配賦基準」が定義されており、これを変更することで対応可能です。
つまり、配賦基準を変更する時にはプログラムの修正や大規模なデータ構造の見直しは不要で、
  • 「配賦指示ファイルの該当レコードの配賦基準を変更する」
という作業だけで済みます。
これが模範解答の
配賦指示ファイルで,当該費用分類のレコードの配賦基準を変更する。
という内容の根拠であり、効率的かつ柔軟なシステム設計の重要なポイントです。

3. 受験者が誤りやすいポイントや注意すべき点

  • 「配賦基準の変更=プログラム修正」と誤解しやすい
    問題文に「柔軟に対応できる」仕組みが示されているため、プログラムの修正ではなくファイルの変更で済むことが重要です。
  • 配賦指示ファイル以外のファイルの修正を考えやすい
    例えば「構成比ファイル」や「費用実績ファイル」などと混同しやすいですが、構成比や実績は別の目的のデータであり、配賦基準変更時の主対象は配賦指示ファイルです。
  • 配賦基準を単に「配賦ファイル」や「設定ファイル」とだけ表現すると不完全
    問題文や模範解答では具体的に「配賦指示ファイル」と名称が明示されているため、受験対策としては正確な名称を用いることが大切です。

4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識

ポイント解説
配賦基準の変更に柔軟に対応する方法配賦基準や費用分類情報を「配賦指示ファイル」で管理
システム設計の柔軟性の確保プログラム修正ではなく、データ(ファイル)修正で対応する設計
配賦基準変更時の最小限の修正範囲当該費用分類レコードの「配賦基準」を配賦指示ファイルで変更するだけ
ファイル間の役割分担の理解配賦指示ファイル:配賦基準管理
構成比ファイル:基準値割合
費用実績ファイル:実費記録
  • 情報処理技術者試験では、要件に基づく設計の柔軟性や拡張性を問う問題が出題されやすいため、
    「配賦指示ファイルなどの設定ファイル方式による制御」については、用語と意味を正確に理解しておきましょう。
  • 問題文の設計背景や目的をよく読み、その上で具体的なシステムの構成要素に着目することが解答の鍵です。

以上より、模範解答「配賦指示ファイルで,当該費用分類のレコードの配賦基準を変更する。」が最適解となります。

設問2(1)〔新システムの設計〕について,(1)~(3)に答えよ。

レシート枚数を客数として使用した場合、実際の来店客数より多く計上されるケースと少なく計上されるケースがある。それぞれのケースを一つずつ挙げ,その内容を35字以内で述べよ。
模範解答
多く計上されるケースの内容:1 人の客がレジで複数回の精算を行った場合,複数人として計上される。 少なく計上されるケースの内容:来店した客が商品を購入しなかった場合,計上されない。
解説

模範解答の核心となるキーワード・論点整理

ケースキーワード・論点
多く計上されるケース1人の客がレジで複数回の精算を行う → 複数回分のレシート発行 → 複数人としてカウントされる
少なく計上されるケース来店した客が商品を購入しない → レシートの発行なし → 客数として計上されない

解答になる理由の論理的説明

C社の新システムでは、客数を「レジで発行されたレシート枚数(レシート枚数)」で代用しています。問題文から、
  • 「レジでのレシートの発行枚数(以下、レシート枚数という)を客数とみなして処理を行う」
  • 「レシート枚数は、実際に店舗を訪れた客数(来店客数)とは異なるが、新たな仕組みを作らずに来店客数の近似値が得られる」
とあります。
この取り扱いのため、以下のようなズレが生じます。
  1. 多く計上されるケース:
    「1人の客がレジで複数回の精算を行った場合、複数枚のレシートが発行される」ため、1人の来店客が実際には1人なのに、レシート枚数上は複数人とカウントされてしまいます。
    つまり、顧客一人の実来店客数よりも多く客数が計上されることになります。
  2. 少なく計上されるケース:
    「客が来店したが、商品を購入しない場合はレジでの精算がなくレシートも発行されない」ため、その来店客はレシート枚数に反映されません。
    この場合、実際には来店しているのにカウントされないので、客数が少なく計上される事態が生じます。

受験者が誤りやすいポイントとひっかけの注意事項

  • 「レシート枚数=実際の来店客数」と完全に一致しないことに注意する。
    受験者は「レシート枚数を客数に利用しているだけなので近似値」と理解していないと、「誤差は出ない」と誤解しやすいです。
  • 複数のレジでの別精算を同一人物の来店客数としてカウントしてしまう点
    複数の商品や部門を回って複数のレジで精算する1人の客が、複数人分として計算されることに気づかず混乱する可能性があります。
  • 購入しなければレシートがないので来店カウントできないこと
    買物をしなかったお客は来店しているのにカウントされないため、客数が少なく計上される点を見落としがちです。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • レシート枚数は、実来店客数の近似値として利用されるが完全に一致しない。
    → 来店客数の「基準」として便利だが、誤差が存在することを理解する。
  • レシート枚数が多く計上される要因は、「1人の来店客が複数回のレジ精算をするケース」が代表的。
    → 複数のレジや複数会計をすることにより客数が過大評価される。
  • 逆に、レシートが発行されない来店客(買物をしなかった人など)はカウントされず、客数は少なく計上される。
  • こうした「近似値利用のメリットと限界」を正しく理解し、設問では要件に合わせて適切な理由付けができることが重要。

これらを踏まえ、問題では「1人の客が複数精算した場合、多く計上される」「商品購入なしは客数に計上されない」といった要点を端的に述べることが求められています。

設問2(2)〔新システムの設計〕について,(1)~(3)に答えよ。

配賦指示ファイルに必要な属性を三つ挙げ,主キーを下線で示せ。(項目は順不同)
模範解答
費用分類(下線),費用発生区分,配賦基準
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 配賦指示ファイルに必要な属性は以下の3つである。
    • 費用分類(主キー)
    • 費用発生区分
    • 配賦基準
  • これらの属性は「費用分類ごとに費用発生区分と配賦基準を求める」ために必要であり、新システムの柔軟な費用配賦処理の根幹をなしている。

なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えた論理的説明)

  1. 問題文の新システム設計の部分に以下の説明があります。
 「部門費用計算(中略) 費用実績ファイルの費用分類ごとに配賦指示ファイルのレコードから費用発生区分と配賦基準を求める。」
ここから、配賦指示ファイルは「費用分類ごと」に「費用発生区分」と「配賦基準」を管理し、費用の配賦方法を指定するファイルであることがわかります。
  1. それにより、費用実績ファイルから得られた費用分類に応じて配賦方法を判定し、適切な処理が行われます。
  2. 費用発生区分と配賦基準は、
「費用分類が増える可能性」「配賦基準が変更される可能性」に対する柔軟性を担保するために配賦指示ファイルで管理する。
とも記載されています。
  1. 主キーとして「費用分類」を設定しているのは、配賦指示ファイルが「費用分類ごとの設定」を保持するファイルだからです。つまり、配賦指示ファイルの1レコード=1費用分類の配賦ルールを表します。
以上より、
属性役割主キーか否か
費用分類配賦指示のキー、費用ごとの配賦設定を識別主キー
費用発生区分費用の発生場所(全社、店舗、部門など)を指定主キー以外
配賦基準配賦に用いる基準(売上金額、客数、面積など)主キー以外
が正解となります。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  • 費用実績ファイルの属性を混同する誤り
    受験者は「店舗番号」や「部門番号」などの属性が他ファイルに存在するため、配賦指示ファイルにも「店舗番号」や「部門番号」が必要と思い込みがちですが、配賦指示ファイルは費用分類単位で配賦ルールを設定するため、個別店舗や部門の情報は不要です。
  • 費用発生区分と配賦基準の理解不足
    配賦基準は必ずしも「店舗単位」や「部門単位」と一致しないため、配賦指示ファイルにはその配賦方法を正確に表現する情報として「配賦基準」が不可欠です。ここを抜かしたり混同すると誤答となります。
  • 主キーの問題
    配賦指示ファイルは「費用分類」でデータを一意に決めるため、費用分類が主キーであることを理解しないと「費用発生区分」「配賦基準」等を主キーに含めてしまう誤りが起こりやすいです。

試験対策として覚えておくべきポイント・知識

  1. 配賦指示ファイルの役割を理解すること
    • 費用配賦処理で「費用分類ごとに配賦ルールを管理」し、これにより新たな費用分類や配賦基準の追加・変更に柔軟に対応可能。
  2. 主キー=費用分類に注目すること
    • 配賦指示ファイルは「費用分類での一意性」を保持し、各分類に対して「費用発生区分」「配賦基準」を定義する。
  3. 配賦基準(売上金額、面積、客数など)と費用発生区分(全社・店舗・部門など)は必ずセットで管理されることを理解する。
  4. ファイル設計の基本は「役割に応じて必要な情報を持たせる」こと
    • 配賦処理用ファイルには店舗や部門の識別は必要ないが、費用分類単位のルールが必須であることを意識する。

まとめ

属性名主キーか説明
費用分類配賦指示ファイルの主キー。費用分類ごとに配賦ルールを管理。
費用発生区分×費用がどこで発生したか(全社、店舗、部門など)。
配賦基準×配賦に使う基準(売上金額、客数、面積など)を指定。
これらの属性を理解し、ファイル設計や費用配賦の処理の全体像をつかむことが、午後1試験合格のために重要です。

設問2(3)〔新システムの設計〕について,(1)~(3)に答えよ。

表3中の(a)~(d)に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
a:u1 ÷ u3の値 b:部門別面積ファイル c:m1 ÷ m3の値 d:店舗内構成比
解説

模範解答の核心キーワードと論点整理

変数解答キーワード要点・意味
au1 ÷ u3の値全社構成比=当該部門売上金額合計÷全社売上金額合計
b部門別面積ファイル面積情報を持つファイル名
cm1 ÷ m3の値全社構成比=当該部門の面積÷全社面積合計
d店舗内構成比店舗内の部門占める割合(比率)
これらは「表3 構成比計算、部門費用計算の処理の手順」の中の空欄(a)~(d)に入れる適切な語句です。設問の理解のポイントは、構成比を計算するためにどのデータを使って「全社構成比」や「店舗内構成比」を求めるか、そして部門費用計算でどの構成比を用いるかにあります。

解答となる理由の論理的説明

(a) 全社構成比の計算式について

問題文(表3 構成比計算 手順1)には:
売上実績ファイルから、店舗番号、部門番号ごとに…
売上実績ファイルから、店舗番号が等しいレコードの売上金額の合計 u2、及び全てのレコードの売上金額の合計 u3 を求め、全社構成比に a 、店舗構成比に (u1÷u2) の値を設定する。
ここで、u1は「店舗番号及び部門番号が等しいレコードの売上金額の合計」、u3は「全社の売上金額合計」です。したがってaに入るべきは
  • 全社構成比 = u1 ÷ u3
この値は「全社における当該部門の売上金額の割合」を示します。

(b) 面積基準の構成比計算に用いるファイル

問題文(表3 構成比計算 手順2)では:
b から、店舗番号、売場の部門番号ごとに構成比ファイルのレコードを作成する。
ここで面積情報が格納されているのは、「表2 主要ファイルとその属性」の中の
ファイル名属性
部門別面積ファイル年月、店舗番号、部門番号、面積
したがって、bに入るのは「部門別面積ファイル」です。

(c) 面積基準での全社構成比計算式

同じく手順2にて:
c から、店舗番号が等しい売場のレコードの面積の合計 m2、及び全ての売場のレコードの面積の合計 m3 を求め、全社構成比に (m1÷m3) を設定する。
m1は「当該レコードの面積」、m3は「全社の面積合計」です。構成比は「当該部門面積 ÷ 全社面積合計」であるため、
  • cは「m1 ÷ m3」

(d) 店舗発生費用の部門配賦で除外する費用除外の対象と使う構成比

問題文(費用計算の手順)で、
費用発生区分が "店舗" の場合、求めた配賦基準に従い構成比ファイルのレコードから、d 店外費実績ファイルの売上金額を除いて部門費用ファイルのレコードを作成する。
ここでの"d"の意味は「どの構成比を使用して配賦するか」です。店舗発生費用の部門配賦においては、店舗内の各部門の割合で費用を按分するため、
  • dは「店舗内構成比」
となります。

受験者が誤りやすいポイントと注意点

  1. 全社構成比と店舗内構成比の混同
    配賦比率には「全社構成比」と「店舗内構成比」があり、全社ベースの割合とその店舗内の割合で使い分けられます。特に( a )の全社構成比と( d )の店舗内構成比を混同しやすいので注意が必要です。
  2. ファイル名や変数の取り扱い
    「部門別面積ファイル」という具体的なファイル名を答える問題では、抽象的な表現でなく正確なファイル名を書く必要があります。同様に、面積や売上を表す変数名も問題文のものを正確に用いることが求められます。
  3. 構成比計算における分母の違い
    全社構成比は「全社合計」で割るが、店舗内構成比は「店舗合計」で割るため、分母の対象データ範囲を混同しがちです。

試験対策ポイント

  • 構成比の種類を理解すること
    「全社構成比」と「店舗内構成比」の定義と役割を明確に把握しましょう。つまり、
    構成比定義用途
    全社構成比部門実績 ÷ 全店舗合計実績全社経費などの全社配賦に使用
    店舗内構成比部門実績 ÷ 当該店舗内合計実績店舗経費の店舗内配賦に使用
  • ファイル間のデータ連携の理解
    構成比は「売上実績ファイル」や「部門別面積ファイル」から計算し、「構成比ファイル」に保存され、配賦計算時に使われる一連の流れをイメージで掴みましょう。
  • 配賦基準と費用発生区分の関連性
    費用ごとに発生区分(全社・店舗・部門)が違い、配賦方法や基準も変わるので、表1で「費用分類」「費用発生区分」「配賦基準」を正しく覚えること。
  • 問題文の用語・変数の正確な読み取り
    特に変数名(u1, u2, u3,m1, m2, m3 など)の意味を問題文から引用し、何を表すかを正確に理解すること。

以上のポイントを押さえ、設問の(a)~(d)に適切な語句を回答できるようにしましょう。

設問3

表3中の構成比計算の配賦基準“面積”の作成において,構成比ファイルを作成する処理で面積の合計を求める際に,売場の部門だけを対象としている理由を40字以内で述べよ。
模範解答
費用を配賦するのは売場部門だけなので,非売場部門は構成比計算の対象外だから
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 費用配賦の対象は売場部門のみ
  • 構成比計算における「面積」合計対象は売場部門のみに限定
  • 非売場部門は費用配賦の対象外にあたるため構成比計算から除外

2. なぜその解答になるのか【問題文引用と論理的説明】

問題文の「表1 費用計上方法の変更内容」を見ると、費用分類ごとに費用発生区分が「全社」「店舗」「部門」に分かれています。
  • 配賦基準「面積」で費用配賦されるもの(例:水道光熱費)は、
    「店舗」区分の費用であり、売場部門に配賦する旨が記載されています。
  • さらに問題文中の〔C社及び現行システムの概要〕(2)では、
    『部門には上位1桁で売場部門か非売場部門かの区別があり』、
    『売場部門ごとにレジが設置され、商品精算がその売場部門レジで行われる』と明記されています。
  • また、〔新システムの要件(1)〕には、
    『店舗共通経費及び全社経費の費用実績を各売場部門に配賦するように改める』とあり、
    売場部門以外の非売場部門が費用配賦の対象から除外されていることを示しています。
つまり、配賦基準「面積」の合計を求める際に、
非売場部門(例:店舗事務、店舗会計など)は費用配賦の対象外であるため、
面積合計に含めるのは配賦対象の売場部門だけに限定しているのです。

3. 受験者が誤りやすいポイント・引っかけの選択肢

  • 非売場部門も含めて面積の合計を求める誤り
    非売場部門は家賃や人件費などが含まれる「店舗管理費用」として店舗共通経費に分類されるが、
    新システムの配賦対象はあくまで「売場部門」のみであり、非売場部門に直接費用配賦しない。
    したがって非売場部門も計算に含めると配賦比率が狂う。
  • 面積の合計を全社売上や客数などの別基準と混同する誤り
    面積基準はあくまで「面積」に関連した費用配賦であり、客数や売上基準は別途計算する。
    混乱しやすいので注意が必要。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識

ポイント内容
費用配賦の対象新システムでは「売場部門」のみが費用配賦の対象であり、非売場部門は対象外。
費用発生区分と配賦基準「部門」「店舗」「全社」で費用実績が発生し、それぞれ配賦基準(面積・客数・売上金額)で配賦先が異なる。
構成比計算の基準別集計配賦基準ごとに対象部門の実績値を集計し、配賦比率を算出。面積配賦では売場部門の面積のみ集計対象。
配賦基準ごとの集計対象面積は売場部門のみ、客数・売上金額は売場部門が主対象で、非売場部門は基本除外される。
これらを踏まえて、配賦基準ごとに費用配賦対象が異なることを正確に理解しておくことが合格への鍵です。

まとめ

「配賦基準『面積』の合計を売場部門のみで求める理由」は、
新システムでの費用配賦の対象が売場部門に限定されており、非売場部門は費用配賦対象外だからです。
この区別を明確に理解し、配賦基準ごとに対象部門が異なる点を押さえておきましょう。

設問4

〔テスト結果に基づいた修正]において,新システムのテストで全店舗の店舗責任利益の合計が現行システムの合計と一致しなかったことについて、考えられる原因を30字以内で述べよ。ただし,システムが仕様どおりに正しく動作することは確認できているものとする。
模範解答
構成比は四捨五入して小数第 4位までを求めていること
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • **四捨五入(小数第4位まで)**による構成比の精度の問題
  • 新システムの処理で算出される 構成比の丸め誤差
  • それに伴う、配賦された各部門費用の合計と実費用実績の差異(ずれ)
  • システム仕様および処理手順の正確な動作確認がされている中での不一致原因

なぜその解答になるのかの論理的説明

問題文の「〔新システムの設計〕」の(2)構成比計算部分に、以下の記述があります。
構成比は四捨五入して小数第4位までを求める。
この処理により、各店舗・部門ごとの配賦比率(構成比)を計算する際に、端数処理が行われています。小数第4位までに丸めることで、比率の合計が元の実績値に完全一致しなくなります。わずかな丸め誤差が複数の部門や店舗で積み重なり、全店舗の店舗責任利益合計と現行システムの合計が一致しない原因となります。
さらに、「〔テスト結果に基づいた修正〕」で、
新システムの全店舗の店舗責任利益の合計を現行システムと一致させるために、部門費用計算の処理において、特定の部門の配賦費用に特別な調整を行う処理を追加して対応した。
とある点からも、丸めによる合計値のずれを調整しなければ全体合計が一致しないことが明示されています。
以上から、システムは仕様どおり動作しているものの、丸め(四捨五入)による精度の影響が原因で合計値にずれが生じていると結論づけられます。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけとなる内容

  • 「仕様どおりに正しく動作している」ことが条件であるため、システムのロジックや配賦基準の誤りではないこと。
    → つまり、「配賦基準の設定ミス」や「計算ロジックの不具合」を答えるのは誤り。
  • 全社費用や店舗共通経費の配賦方法の違いを考える受験者が多い。
    → これらは新システム設計前提で変更されているが、合計不一致の直接原因にはならない。
  • 小数点の丸め精度や端数処理が試験問題で問われることを忘れがち。
    → 精度・丸め誤差は業務システムの会計計算で重要な論点である。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント項目内容
丸め誤差の影響計算結果の丸め処理が全体合計値にずれを生じさせることがある。
精度の取り扱い小数第何位まで丸めるか等は利益・費用計算で重要な仕様となる。
仕様と実装の違いシステムが仕様通り動作しても、仕様の仕様上の課題(精度等)は起こる。
配賦計算の合計整合性配賦計算後の合計値の調整処理が求められる場合がある。
問題文の条件や制約把握問題文の前提(例:「仕様通り正しく動作している」)を意識する。

以上を踏まえ、情報処理技術者試験の午後問題では、技術的な正確さだけでなく、計算の丸めや端数処理が結果に与える影響も考慮して設問に答えることが重要です。
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