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システムアーキテクト試験 2012年 午後1 問01
会計システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
A社は、食品の取扱いを中心とした商社である。また、 食品の製造又は小売を行っている連結子会社が数社ある。このたび A 社では、会計システムの全面的な再構築を行うことになり、 情報システム部門及び経理部門を中心にプロジェクトチームを立ち上げた。
〔現在のシステム化の状況とその関連する業務〕
A社の現在のシステム化の状況とその関連する業務は、次のとおりである。
(1) 会計システムとその関連業務
会計システムでは、 一般会計処理及び支払手形処理が実施されている。会計システムへのデータ入力は、全て経理部門で起票された仕訳伝票を基に行っている。出力帳票として、一般会計処理では、仕訳帳、総勘定元帳、試算表、貸借対照表及び損益計算書があり、 支払手形処理では、 支払手形及び支払手形管理資料がある。
(2) 販売管理システムとその関連業務
販売管理システムでは、受注処理、出荷・売上処理及び請求処理が実施されている。受注処理では、受注登録、 在庫引当てが行われる。出荷・売上処理では、出荷伝票の発行、出荷実績の登録、受注の消込み、在庫の引落し及び納品後の受領実績登録が行われる。受領実績登録後に、受領書が出荷部門から経理部門に回付され、売上及び売掛金に計上される。請求処理では、得意先の締め日ごとに、 対象となる売上の請求書を発行している。請求に対する入金は全て銀行振込で行われており、経理部門で入金を把握している。
(3)仕入管理システムとその関連業務
仕入管理システムでは、 発注処理、 入荷・検収処理及び在庫管理処理が実施されている。発注処理では、 発注登録、 仕入伝票の発行が行われる。入荷・検収処理では、入荷した時の受取登録、 検品後の検品実績登録、 検収伝票発行及び在庫計上が行われる。また、 発行された検収伝票が経理部門に回付され、買掛金に計上される。買掛金の支払の一部は手形で行われている。在庫管理処理では、販売と仕入に伴う入出庫の処理、月次の棚卸処理及び在庫管理資料の作成が行われている。
(4) 人事給与システムとその関連業務
人事給与システムでは、 給与計算、 賞与計算、 年末調整及び人事管理の各処理が実施されている。人件費の実績は、 給与関連帳票が経理部門に回付され、 一般会計に計上される。また、 給与、賞与、 法定福利費などの人件費の見込情報も人事給与システムで計算している。
現在の会計システムの概要を図1に示す。

〔会計システム再構築の背景〕 (1) A社の経営層からの指示 経営層からの次の指示によって、 会計システムの見直しが必要になった。 ① 現在、 月次決算の報告が翌月の半ば過ぎになっている。 連結子会社との連結決算報告も含め、 決算日程を短縮すること。 ② 財務報告の信頼性を確保するために、 内部統制に問題がないか、 検討すること。
(2) 取引方法の変更
取引先と調整した結果、 取引方法を次のように変更することになり、 会計システムにもその変更を反映することが必要になった。
① A社の売上計上基準を納品基準から出荷基準へ変更する。
② 買掛金の支払は、全て銀行振込による支払へ変更する。
(3) 経理部門からの課題・要望への対応
経理部門からは、 表1に示す課題・要望が出され、 会計システムの改善が必要になった。
経理部門の管理面での課題として、 特に資金管理関連における資金収支の管理強化が挙げられた。資金収支の実績だけでなく、将来の資金収支予定を正確に把握することが重要になっている。
〔会計システム再構築の方針〕 (1) 再構築後の会計システム(以下、新会計システムという)は、新たに会計ソフトウェアパッケージを導入し、その会計ソフトウェアパッケージがもっている機能を全面的に活用する。また、経営層からの指示、取引方法の変更及び経理部門からの課題・要望への対応に重点をおく。 (2) 既存の販売管理、仕入管理及び人事給与の各システムとの連携を強化する。 ① 各システムから新会計システムへ渡す情報は、伝票ではなくデータで渡すことにする。 ② 販売管理システムで行っていた請求処理は、会計ソフトウェアパッケージがもっている請求処理に移行する。 (3) 内部統制実施基準に対応したシステムとする。 〔新会計システムの概要〕 新会計システムは、一般会計、売掛金管理、買掛金管理、資金管理、経費管理及び連結会計の六つのサブシステムから構成される。 新会計システムの概要を図2に示す。

〔会計システム再構築の方針〕 (1) 再構築後の会計システム(以下、新会計システムという)は、新たに会計ソフトウェアパッケージを導入し、その会計ソフトウェアパッケージがもっている機能を全面的に活用する。また、経営層からの指示、取引方法の変更及び経理部門からの課題・要望への対応に重点をおく。 (2) 既存の販売管理、仕入管理及び人事給与の各システムとの連携を強化する。 ① 各システムから新会計システムへ渡す情報は、伝票ではなくデータで渡すことにする。 ② 販売管理システムで行っていた請求処理は、会計ソフトウェアパッケージがもっている請求処理に移行する。 (3) 内部統制実施基準に対応したシステムとする。 〔新会計システムの概要〕 新会計システムは、一般会計、売掛金管理、買掛金管理、資金管理、経費管理及び連結会計の六つのサブシステムから構成される。 新会計システムの概要を図2に示す。

〔内部統制面からの検討〕 内部統制実施基準では、“財務報告の信頼性を確保するための IT の統制は、会計上の取引記録の正当性、完全性及び正確性を確保するために実施される”と記述されている。さらに、“正当性とは、取引が組織の意思・意図にそって承認され、行われることをいい、完全性とは、記録した取引に漏れ、重複がないことをいい、正確性とは、発生した取引が財務や科目分類などの主要なデータ項目に正しく記録されることをいう”と記述されている。 また、内部統制実施基準の中で、“IT の統制の構築” における “IT に係る業務処理統制”の具体例の一つとして、入力情報については、“入力情報の完全性、正確性、正当性などを確保する統制” が挙げられている。
設問1(1):新会計システムの構築によって、出荷部門と経理部門との間の業務変更、及び新会計システムと販売管理システムとの間のシステム連携の追加が必要となる。その変更及び追加について、(1),(2)に答えよ。
売上計上基準の変更に伴い、出荷部門において人手で行っていた業務で不要となる業務を25字以内で述べよ。
模範解答
受領実績登録後,受領書を経理部門に回付する業務
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 売上計上基準の変更:「納品基準」から「出荷基準」へ変更
- 人手で行っていた業務の不要化
- 受領実績登録後の「受領書」を経理部門に回付する業務の廃止
以上の点が、解答として重要なキーワード・論点です。
2. 解答の理由と問題文からの論理的説明
問題文の該当箇所の確認
- 【現在の販売管理システム関連業務】より
「受領実績登録後に、受領書が出荷部門から経理部門に回付され、売上及び売掛金に計上される。」
- 【取引方法の変更】より
「① A社の売上計上基準を納品基準から出荷基準へ変更する。」
売上計上基準の意味
- 従来の「納品基準」では、実際に商品が納品された時点で売上を計上するため、“納品後の受領実績登録→受領書回付→経理部門で売上計上”という手順が必要でした。
- 今回の「出荷基準」への変更は、「商品が出荷された時点」で売上計上を行う方式を意味します。
なぜ「受領書を経理部門に回付する業務」が不要になるか
- 出荷基準に変わると、売上計上は「出荷時点」で済むため、 出荷後に受領実績を経理部門が確認するための「受領書」は会計処理の起点とはならなくなります。
- そのため、「受領実績登録後に受領書を出荷部門から経理部門に回付する」という 人手による回付作業は不要となるのです。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ選択肢の理由
-
「納品基準」と「出荷基準」の混同売上計上基準の変更前後で、売上計上のタイミングが違うことを理解せず、受領書回付の必要性を誤ることが多いです。
-
「受領実績の登録」自体が不要になると誤解「受領実績登録」は販売管理システム内の処理として残る可能性があるため、回付業務だけが不要となることに注意。
-
「請求処理」「売掛金計上」など他の業務を不要と誤解出荷基準への変更が影響を与えるのは売上計上の起点に関する処理のため、請求や売掛金管理関連の業務は引き続き必要な場合が多い。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識
まとめ
- 売上計上基準が「納品基準」から「出荷基準」に変更されると、売上計上のタイミングが変わり、「受領書」の経理部門への回付業務は不要になります。
- 特に、会計システムでは「受領書を基に仕訳伝票を作成する」プロセス自体を見直す必要があります。
- 同様の基準変更による業務影響は、他の業務処理やシステム構成にも波及するため、業務の起点と処理フローの整理が重要です。
これらのポイントを理解しておくと、出題趣旨や解答の根拠が明確になり、類似問題においても的確に対応できます。
設問1(2):新会計システムの構築によって、出荷部門と経理部門との間の業務変更、及び新会計システムと販売管理システムとの間のシステム連携の追加が必要となる。その変更及び追加について、(1),(2)に答えよ。
経理部門での仕訳伝票の起票及び入力の負荷を軽減するために、販売管理システムから新会計システムに渡すべき情報を10字以内で答えよ。また、その情報によって新会計システム側で行うべき処理を20字以内で述べよ。
模範解答
渡すべき情報:出荷実績情報
行うべき処理:売上及び売掛金計上の自動仕訳処理
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 渡すべき情報:「出荷実績情報」
- 行うべき処理:「売上及び売掛金計上の自動仕訳処理」
論点の整理
- 販売管理システムからは「受注処理」、「出荷・売上処理」、「請求処理」が行われている。
- 特に、売上の計上基準が「納品基準」から「出荷基準」へ変更されるため、実績情報として「出荷実績」が必須となる。
- 経理部門での負荷軽減のために、会計システム側で仕訳伝票の起票を自動化する必要がある。
- 伝票ではなく、より細かなデータ(ここでは出荷実績情報)を渡し、会計側で売上と売掛金を自動計上する。
なぜその解答になるのか(問題文の記述の引用を交えて解説)
1. 販売管理システムが扱う売上情報
問題文の販売管理システムの説明から抜粋すると、
「出荷・売上処理では、出荷伝票の発行、出荷実績の登録、受注の消込み、在庫の引落し及び納品後の受領実績登録が行われる。」
また、取引方法の変更として、
「① A社の売上計上基準を納品基準から出荷基準へ変更する。」
このことから、売上計上のトリガーは「出荷実績」となるべきであり、売上と売掛金の計上はこの出荷実績情報を基に行う必要があることがわかります。
2. 会計システムへの情報連携の方針
「各システムから新会計システムへ渡す情報は、伝票ではなくデータで渡すことにする。」
また、
「販売管理システムで行っていた請求処理は、会計ソフトウェアパッケージがもっている請求処理に移行する。」
この方針から、会計システム側で「仕訳伝票の起票」、すなわち「売上及び売掛金計上」の仕訳処理を自動で行う設計となります。
3. 経理部門の負荷軽減の観点
経理部門からの課題には、
「回付されてきた受領書を基に仕訳伝票を起票して入力することの負荷が大きい。会計システムで仕訳処理を行いたい。」
これに応える形で、「出荷実績」というデータを販売管理システムから渡し、仕訳起票を会計システム上で自動化することが求められています。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
- 売上計上基準の変更が問題文で明文化されている場合は、その基準に即した情報連携が求められる。
- **会計システムへの連携情報は、原則「帳票(伝票)ではなくデータ」**であることが多い。
- 仕訳伝票の起票を会計システム側で自動化することで経理部門の負荷軽減を図る設計思想を理解する。
- 「売掛金計上」と「売上計上」は連動しており、実績データ(ここでは出荷実績情報)が必須。
- 問題文中の「内部統制の観点」や「業務効率化の要望」は連携情報の明確化と処理自動化を指向している。
まとめ
この問題は、会計システム再構築の文脈の中で、「業務間の情報連携のあり方」と「会計処理自動化」の視点から正しい情報の選択と処理イメージを求めています。しっかり押さえておきましょう。
設問2(1):資金管理サブシステムについて,(1)~(3)に答えよ。
入金予定の把握のために、販売管理システム及び売掛金管理サブシステムから入金予定として取り込むべき情報を二つ挙げ、それぞれ15字以内で述べよ。
模範解答
①:受注時点での入金予定情報
②:売掛金の入金予定情報
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
2. なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文の経理部門からの課題・要望に注目すると、資金管理関連の要望として以下の記述があります。
・入金予定は、売掛金だけでなく、受注時点での入金予定情報も把握したい。
この部分から、「受注時点での入金予定情報」は販売管理システムが持つ情報として扱うべきものだということがわかります。
また、同課題・要望の中で、「売掛金計上後の入金管理及び売掛金残高管理については、会計システムで行いたい」と記されています。これにより、売掛金管理サブシステムからは「売掛金の入金予定情報」を取得する必要があることが示されています。
したがって、
- 販売管理システムからは、「受注時点での入金予定情報」(=まだ売掛金にもなっていない販売予定の入金予定データ)
- 売掛金管理サブシステムからは、「売掛金の入金予定情報」(=すでに売掛金として計上された分の入金予定)
という2種類の情報を取り込み、それによって資金収支の将来見込みを正確に把握することが求められていることが理解できます。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢について
受験者が誤りやすいポイント
- 「入金情報」と「入金予定情報」を混同する
- 実績の入金情報(すでに入金済みのデータ)と、将来の入金予定情報(まだ入金されていないが予定されているデータ)の違いを理解することが重要です。
- 「受領実績登録(受領書)」や「請求書情報」を入金予定情報と誤解しやすい
- 例えば、受領実績や請求書は過去または直前の取引実績を示すものであり、厳密には「未来の入金予定」ではありません。
- 連結子会社の会計情報を入金予定として挙げる誤り
- 連結子会社の情報は連結決算サブシステムで扱うものであり、入金予定とは直接関連しません。
選択肢での注意点
- 「売上計上基準」の変更で「納品基準から出荷基準へ変更」されているが、入金予定は「受注時点」と「売掛金時点」で捉えるという観点から、現在の売上計上基準とは直接関係ありません。
- 「銀行振込に変更する」ことは入金実績の受け取り方法の話であり、入金予定の情報種類とは区別されます。
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- 資金管理における入金予定の種類
- 資金収支管理では、「まだ売掛金になっていない受注時点の将来入金予定」と「売掛金として計上済みの入金予定」の2種類の情報が重要である。
- サブシステム間の役割分担
- 販売管理システム:受注など販売の原始データ管理 → 受注時点の入金予定
- 売掛金管理サブシステム:売掛金計上および入金管理 → 売掛金の入金予定
- 内部統制とシステム連携の観点から、伝票ではなくデータ連携が重要
- 新会計システムでは伝票起票の負荷軽減のため、システム間でデータ連携が行われる。
- 問題文の課題・要望の文言を正確に読み取る
- 指示や課題文中で強調されているキーワードは明確に答案に反映させることが重要。
以上の点を理解することで、本問題の設問「販売管理システムおよび売掛金管理サブシステムから入金予定として取り込むべき情報を二つ挙げよ」に対して、模範解答の
① 受注時点での入金予定情報
② 売掛金の入金予定情報
② 売掛金の入金予定情報
が的確かつ論理的な解答であることが納得できます。
設問2(2):資金管理サブシステムについて,(1)~(3)に答えよ。
出金予定の把握のために、人事給与システムから出金予定情報を新会計システムに取り込む必要がある。その情報は何か。25字以内で述べよ。
模範解答
給与,賞与,法定福利費などの人件費の見込情報
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 情報の種類: 給与、賞与、法定福利費など
- 情報の性質: 人件費の見込情報(出金予定情報としての役割)
- 対象システム: 人事給与システムから新会計システムへの取り込み
- 目的: 出金予定の把握に活用するため
解答の理由の説明
本問は「出金予定の把握のために、人事給与システムから新会計システムに取り込む情報は何か」を問うています。
問題文からの該当部分引用
(3)経理部門からの課題・要望への対応
・出金予定は、諸経費だけでなく、買掛金及び発注時点での支払予定情報も把握したい。
(4)人事給与システムとその関連業務
・給与計算、賞与計算、年末調整及び人事管理の各処理が実施されている。
・人件費の実績は、給与関連帳票が経理部門に回付されて一般会計に計上される。
・また、給与、賞与、法定福利費などの人件費の見込情報も人事給与システムで計算している。
ここから重要なポイントは、
- 新会計システムにおける資金管理関連で「出金予定を把握したい」こと。
- 出金予定として「諸経費」以外にも「人件費の見込情報」が必要であること。
- 人件費の見込情報は、人事給与システムが計算し、その情報を新会計システムに反映させる必要があること。
従って、
- 新会計システムが出金予定情報の一環として、人事給与システムから取り込むべきは「給与、賞与、法定福利費などの人件費の見込情報」である。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ解説
-
「給与関連帳票」や「給与関連の実績データ」そのものではないことに注意
→ 実績情報は過去に発生した出金(=出金実績)であり、出金予定の把握には「見込情報」が必要。見込情報は将来の支払い予定なので、資金管理に有用。 -
「出張費・交通費などの諸経費の見込情報」と混同しやすい
→ 問題文では諸経費の出金予定も求めていますが、「人事給与システム」から取り込む情報は人件費関連の見込情報であり、諸経費は他システムや別処理が担う。 -
「発注時点の支払予定情報」と混同しない
→ 発注情報は買掛金管理に関係し、仕入管理システムの領域。人事給与システム由来の情報ではない。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
以上が、本問の解答の論理的裏付けと試験対策のポイントです。
理解を深め、似た設問への対応力を高めましょう。
理解を深め、似た設問への対応力を高めましょう。
設問2(3):資金管理サブシステムについて,(1)~(3)に答えよ。
資金収支の管理を行う上で、現行の会計システムで稼働しているが新会計システムでは不要となる機能がある。不用となる機能を15字以内で述べよ。
模範解答
支払手形管理の機能
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 支払手形管理の機能
- 新会計システムにおける取引方法の変更
- 会計システムの再構築による機能不要化
- 支払手形処理の廃止
解答が「支払手形管理の機能」になる理由の論理的説明
本問題は、現行会計システムで存在している機能のうち、新会計システムにおいて不要となるものを答える問題です。
1. 現行システムにおける該当機能
問題文の「(1) 会計システムとその関連業務」には、
会計システムでは、一般会計処理及び支払手形処理が実施されている。
支払手形処理では、支払手形及び支払手形管理資料がある。
と明記されています。
つまり、現行システムには支払手形処理に特化した機能が存在し、その帳票管理も行われていることがわかります。
2. 取引方法の変更による影響
次に、問題文「〔会計システム再構築の背景〕(2)取引方法の変更」に、
買掛金の支払は、全て銀行振込による支払へ変更する。
と記述があります。
この改訂により、
- 支払の一部にあった「手形による支払」が全廃され、
- 購入先への支払はすべて銀行振込で完結することになります。
3. 新システムでの対応
新システムの方針を示す「〔会計システム再構築の方針〕(1)」及びサブシステム構成では、
- 支払手形処理に関する記述や機能が存在しない。
- 購買から支払まで一括して「買掛金管理サブシステム」及び関連サブシステムで処理。
つまり、支払手形管理に特化した機能は不要となり、廃止されることがほぼ確定しています。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由
1. 「買掛金管理」や「資金管理」機能との混同
-
買掛金の支払が銀行振込に統一される点を見落とし、買掛金管理機能そのものが不要になると誤解する。
→ 実際は買掛金管理は継続し、手形支払いがなくなるだけ。 -
資金管理機能の拡充に重きを置いており、「資金管理機能が不要」と誤解することがある。
→ 資金管理機能は、むしろ強化される方向。
2. 帳票や伝票処理の違いに惑わされる
- 現行システムでは、紙伝票を基に仕訳を起票していたが、新システムではデータ連携強化で伝票入力の工数削減が実現される。
- これを「仕訳伝票機能」が不要と誤解しやすいが、仕訳は必須処理で廃止されない。
試験対策ポイント・知識まとめ
以上を踏まえ、設問の答えは
「支払手形管理の機能」
となるのが論理的かつ正当な結論です。
設問3
連結会計サブシステムにおいて、連結子会社の決算情報を合算するときに、経理部門からの課題・要望からみて、システムに実装すべき機能がある。それは何か。30字以内で述べよ。
模範解答
連結子会社の勘定科目を連結可能な勘定科目に変換する機能
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 連結子会社の勘定科目がA社と統一されていない点
- 連結決算情報の合算に手間がかかる課題
- 「勘定科目を連結可能な勘定科目に変換する機能」の必要性
解答となる理由の説明
【問題文】の経理部門からの課題・要望に以下の記述があります。
・連結子会社の決算情報において、各連結子会社の勘定科目がA社と統一されておらず、連結情報の合算に手間が掛かる。
これはつまり、連結子会社ごとに使っている勘定科目体系(科目コードや名称)が異なるため、単純に数字を合計して連結決算の資料としてまとめられない状況を指しています。
連結会計サブシステムでは、異なる勘定科目体系のデータを一元的に扱う必要があります。このため、「連結子会社の勘定科目を連結可能な勘定科目に変換する機能」を実装し、各子会社の勘定科目をA社の基準に合う統一科目に自動的に置き換えることが求められます。
こうすることで、各子会社で異なる勘定科目が使用されていても、基準を揃えて合算が可能となり、業務効率化やミス防止につながります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの注意点
-
単に「連結決算の自動計算」や「連結子会社のデータ取り込み」とだけ考えてしまう
→ 問題が指摘しているポイントは勘定科目の不統一であり、単なるデータ連携とは問題の本質が異なります。 -
「伝票の統一」や「伝票起票の自動化」を答えにする誤り
→ 伝票やデータ起票は重要ですが、問題文が焦点を当てているのは勘定科目の整合性の部分です。 -
「勘定科目の統一」と表現すると字数オーバーになるため、「変換する機能」という具体的な表現を使うのが正解に近い
→ 漠然とした表現より、システム実装として具体的な「変換機能」の記述が望まれます。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
以上を踏まえ、この問題では「連結子会社の勘定科目を連結可能な勘定科目に変換する機能」が最適解となります。この機能により、A社の会計基準に合致した情報の一元管理と効率的な連結決算が実現可能になります。
設問4
“ITに係る業務処理統制”について、内部統制実施基準に挙げられている“入力情報の完全性を確保する”観点から、新会計システムと仕入管理システムとの関連において確認すべきことは何か。40字以内で述べよ。
模範解答
検収,棚卸しなど取引情報が漏れ・重複なく入力され,新会計システムに連携されること
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 入力情報の完全性
- 漏れ・重複なく入力されること
- 取引情報(検収、棚卸しなど)が対象
- 新会計システムへの正確な連携
なぜその解答になるか:論理的説明
1. 内部統制実施基準の要求内容
問題文の「内部統制面からの検討」には、次のように書かれています。
“ITの統制は、会計上の取引記録の正当性、完全性及び正確性を確保するために実施される”
“完全性とは、記録した取引に漏れ、重複がないことをいう”
つまり、業務処理統制として入力情報の**「完全性」**を保つことは非常に重要です。入力データに漏れや重複があれば、財務情報の信頼性を損ないます。
2. 仕入管理システムから新会計システムへの連携
問題文の仕入管理システムの説明では、
「入荷・検収処理では、受取登録、検品実績登録、検収伝票発行及び在庫計上が行われる。また、発行された検収伝票が経理部門に回付され、買掛金に計上される。」
さらに、新システムの方針では、
「各システムから新会計システムへ渡す情報は、伝票ではなくデータで渡すことにする。」
以上より、仕入管理で発生する検収情報や棚卸し情報は新会計システムで扱う買掛金管理や一般会計に直接入力され、その重要な取引情報が
- 漏れなく
- 重複なく
正確に連携される必要があります。
3. ITに係る業務処理統制の具体例としての入力情報の完全性
問題文中にも、
“ITに係る業務処理統制”の具体例として、「入力情報の完全性、正確性、正当性などを確保する統制」が挙げられている。
これに則り、仕入管理データの入力漏れ・重複がないか確認することが重要です。
誤りやすいポイント・ひっかけ
試験対策として覚えておくべきポイント
- IT統制の目的は「正当性・完全性・正確性」を確保すること。この3要素は必ず押さえる。
- 「完全性」は漏れ・重複がないことを指すので、入力情報がすべて抜けなく、重なることなくシステムに取り込まれる必要がある。
- 会計システム再構築では、伝票ではなくデータ連携の完全性が重要な観点となる。
- 自分の担当分野の業務処理とIT統制の観点を関連付けて考える訓練をする。特に「どの取引データに漏れや重複が発生すると影響が出るか」を意識すること。
- 内部統制実施基準は「入力情報の完全性を確保する統制」という具体例を覚えておくと、IT統制関連の問題で活用できる。
以上の理解を踏まえると、模範解答の
「検収,棚卸しなど取引情報が漏れ・重複なく入力され,新会計システムに連携されること」
は「ITに係る業務処理統制」の「入力情報の完全性」を最も的確に表現した回答となります。