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システムアーキテクト試験 2012年 午後1 問02
Webによる写真プリント注文システムに関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
B社は写真フィルム、印画紙及び DPE(フィルム現像・プリント・引き伸ばし)装置の開発、製造、販売を行っており、全国のDPEショップ(以下、ショップという)にこれらの商品を導入することで発展してきた。一方、B社は、インターネットやデジタルカメラの普及を踏まえて、顧客がB社にインターネットからデジタルデータの写真プリントを直接注文するためのB社固有のシステム(以下、B社注文システムという)を開発、運用している。顧客が注文した写真は、B社のプリント工場で一括してプリントし、宅配便で顧客に納品している。
近年、デジタルカメラの一層の普及によって、デジタルデータの写真プリントが主流になってきている。そこで、B社は、インターネットから写真プリント注文ができる販売サイトを提供して各ショップを支援することにした。既存のB社注文システムを各ショップで利用できるように汎用化したシステム(以下、汎用化システムという)を開発し、各ショップに提供することで、支援を行う。Cマネージャは汎用化システムの開発推進担当になった。
〔販売サイトの運営形態の検討〕
Cマネージャは、インターネット上の販売サイトの運営形態を調査し、汎用化システムによる運営形態を検討した。販売サイトの運営形態案を表1に示す。

〔汎用化システムへの要望や制約〕
Cマネージャは、各ショップへのヒアリングなどを通じ、汎用化システムへの要望や制約を次のようにまとめた。
(1) ショップの特色を出したいので、独自の商品を開発して販売するなどの工夫を行えるようにしたい。
(2) システムやサイト全体の運営、管理は、B社が行ってほしい。
(3) ショップの運営について、B社からアドバイスや情報提供を行ってほしい。
(4) 顧客ごとの完了した取引回数などに応じた優遇をB社で行ってほしい。
(5) システムの開発、改造やWebページの作成を独自に実施できないショップがある。
(6) どのショップでも、ブラウザと電子メール(以下、メールという)は利用できる。
(7) ショップでは、ブラウザを用いて大きなサイズのデータを受け取ることはできるが、メールで受信できるデータのサイズには制限がある。
(8) ショップでは、メールの受信を数分以内に知ることはできるが、Webページを毎日確実に確認することは難しい。
〔汎用化システムの運営形態と提供形態の検討〕
Cマネージャは、〔汎用化システムへの要望や制約〕を踏まえた運営形態の検討を行い、表1を検討した結果、電子商店街案を採用することにした。次に、ショップへのシステム提供形態を検討した。ショップへのシステム提供形態案を表2に示す。

Cマネージャは、表2を検討した結果、Saas案を採用することにした。
〔汎用化システムの利用イメージ〕
汎用化システムでは、Web店舗という概念を導入する。Web店舗は各ショップがWeb上に設ける電子商店であり、インターネットから写真プリント注文を受け付ける。汎用化システムの利用イメージは次のとおりである。
(1) 店舗開設
各ショップは、Web店舗の登録とその店舗のWebページ作成を行う。Webページでは、各ショップの特色や強みをアピールできる。Webページは、テンプレートを選択し、文章を入力したり、写真やイラストをアップロードしたりすることによって、独自のデザインを容易に作成できる。独自の商品として、各ショップがWeb店舗で提供する独自のプリントサイズ、フォトブック、カレンダなどの仕上げ、納期の組合せ(以下、プリント種別という)を登録する。
(2) 会員登録
顧客は、この電子商店街を利用するために会員登録を行い、会員IDを取得する。会員登録をすると、写真データをアップロードし、必要に応じて編集したり、写真データのプリントを任意のWeb店舗に注文したりすることができる。
(3) 写真プリント注文
顧客は、住所、最寄駅、プリント種別、受取方法、支払方法などを指定して、注文したいWeb店舗を検索する。顧客は、選択したWeb店舗に入店して、プリントしたい写真データと、プリント種別やそれぞれの枚数・部数を指定する。受取方法は、宅配便受取と店頭受取から選択でき、支払方法は、クレジットカード、銀行振込、代金引換、店頭支払が選択できる。プリント種別、対応できる受取方法、支払方法はWeb店舗ごとに異なる。
入力内容を確認して顧客が注文を確定すると、B社からショップに通知される。
顧客は、過去の注文履歴(注文日、注文したWeb店舗、プリント種別、価格、完了状況など)を一覧で確認できる。
(4) 写真プリント作成
ショップは、注文の通知を受け、注文内容を確認する。注文された写真データと注文内容をショップのPCにダウンロードし、DPE装置で写真プリントを作成する。宅配便受取の場合は、発送手続を行う。店頭受取の場合は、顧客宛てに来店依頼メールを送信し、店頭で保管する。
(5) 写真受渡し
顧客は、宅配便やショップで写真を受け取る。
(6) 決済管理
ショップは、注文の支払方法に応じたタイミングで顧客の支払状況を確認し、必要に応じて催促を行う。入金管理はショップの責任で行う。ショップは、写真の受渡しと決済の確認後、B社に取引の完了登録を行う。
(7) B社のショップ支援
顧客が同じ会員IDで複数のWeb店舗を利用できるようにするために、顧客管理は各ショップではなく、B社が行う。また、B社は、顧客ごとの完了した取引回数に応じて優遇を行ったり、電子商店街全体の売れ筋情報や特色あるWebページの作り方などをショップに定期的にアドバイスしたりすることで、ショップを支援する。
〔汎用化システムの開発方針〕
Cマネージャは、汎用化システムの開発方針を次のようにまとめた。
(1) B社注文システムを改造して汎用化システムをSaaSとして開発し、各ショップにサービスとして提供する。
(2) Web店舗ごとに異なる可能性がある選択肢は、汎用化システムでは全て選択できるように開発し、Web店舗ごとに表示できる選択肢を選べるようにする。
(3) B社と各ショップが連携する機能(以下、ショップ連携という)を設ける。ショップ連携には、注文があったことをB社からショップに伝達する“注文伝達”、B社からショップに顧客データ、写真データを受け渡す“データ受渡し”、ショップがB社に取引の完了を登録する“取引完了登録”の三つの機能をもたせる。
〔汎用化システムの概要〕
〔汎用化システムの開発方針〕に基づき、汎用化システムの概要を検討した。汎用化システムの機能一覧を表3に示す。

設問1(1):〔汎用化システムの運営形態と提供形態の検討〕について、(1),(2)に答えよ。
Cマネージャが、販売サイトの運営形態として電子商店街案を採用することにした理由を20字以内で述べよ。
模範解答
・各ショップの創意工夫が生かせるから
・各ショップの特色が出せるから
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 「各ショップの創意工夫」
- 「各ショップの特色が出せる」
- 電子商店街案の特徴:ショップの独自性を重視できる運営形態
なぜその解答になるのか【問題文引用と論理的説明】
まず、Cマネージャは「販売サイトの運営形態案」として下記の表1を検討しています。
この二つの案の違いで重要なのは、「電子商店街案」の特徴にある以下の記述です。
「フォトブック、カレンダーなどの独自の商品、特色あるWebページなど、各ショップの創意工夫を生かせる。」
また、〔汎用化システムへの要望や制約〕にもあります。
(1) 「ショップの特色を出したいので、独自の商品を開発して販売するなどの工夫を行えるようにしたい。」
これらから、雑多なショップの多様性や創意工夫を活かしたいという要望に対応できるのは電子商店街案であることがわかります。
対して、「B社単独通販サイト案」は「B社主導の商品展開になりやすい」とあり、ショップごとの独自性は出しにくい傾向にあります。
このため、Cマネージャが「電子商店街案を採用」した理由は、「各ショップの創意工夫や特色が生かせるから」となります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ選択肢
- B社単独通販サイト案のメリット部分に着目してしまう
「修正が少なく管理が容易」「B社主導」など管理者側の視点ばかりで考え、ショップの要望を無視しやすい。 - 運営形態の「支援」という文脈を見落とす
問題文は「各ショップの工夫を支援するシステム」の話がメインなので、運営主体とショップの立場を正確に区別して理解することが重要。 - 「特色」と「管理の容易さ」を取り違えない
合格者は「運営の容易さ=良い案」ではなく「ショップの特色が出せること」がポイントであることを理解すべき。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- 電子商店街の特徴は「複数独立店舗の集合体として多様な商品やサービスを可能にする」ことであり、ITシステム設計でも「個別店舗の自由度を重視した運営形態」である。
- 「B社単独通販サイト」のように中央集権型のシステムは管理は楽でも、個別店舗や販売パートナーの独自性が出しにくい。
- 問題文の要望(例:(1)ショップの特色を出したい)を必ず確認し、解答のキーワードと結びつけるクセをつける。
- 運営形態や提供形態の違いは、「どこまでの自由度・独立性を各店舗に与えているか」で比較すると理解しやすい。
本設問のポイントは「ショップの特色や創意工夫を重視した運営形態はどれか?」という視点であり、その答えは「電子商店街案」となるため、模範解答の短文は「各ショップの創意工夫が生かせるから」などで十分です。
設問1(2):〔汎用化システムの運営形態と提供形態の検討〕について、(1),(2)に答えよ。
Cマネージャが、ショップへのシステム提供形態としてSaaS案を採用することにした理由を、B社のメリットと各ショップのメリットに分けて、それぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
B社のメリット:サイトの運営,管理やショップの管理を一括して行えるから
各ショップのメリット:ショップでシステムの導入,開発及び運用をしないで済むから
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- B社がSaaS案を選択することで、複数ショップのシステム運営や管理を集中して行える。
- 各ショップはシステムの導入やカスタマイズ、保守運用を自ショップで行う必要がなくなる。
2. なぜその解答になるのか(問題文の引用と論理的説明)
B社のメリット:サイトの運営・管理やショップの管理を一括して行えるから
問題文の【汎用化システムの提供形態案】(表2)におけるSaaS案の特色には、
「サーバやデータベースは全Web店舗で共有するが、自店舗のデータしか参照・更新できないようにする。運用は、全ショップ共通とする」
「B社が、各ショップの運営状況などを把握しやすく、一括した管理が可能である。」
と記載されています。
つまり、SaaS提供形態は中央集約型の仕組みのため、B社はサーバの管理や顧客データ管理、サイト全体の運用を一元的に行えます。これにより、システムの安定性や運用効率が高まり、個別にショップを支援する労力も削減できます。
各ショップのメリット:ショップでシステムの導入、開発及び運用をしないで済むから
同じく表2のSaaS案の説明には、
「汎用化システムをSaaSとしてサービス提供」
「ショップごとの異なる部分はWeb店舗の設定変更で対応」
「システムの運用はB社が共通で行う」
と記述あります。
また、〔汎用化システムへの要望や制約〕の(5)には、
「システムの開発、改造やWebページの作成を独自に実施できないショップがある。」
とあり、ショップ単独でカスタマイズや運用をする負担を負うことは望まれていません。
SaaS案を採用することで、ショップは面倒なシステム導入や保守作業、開発をせずにB社が提供するサービスをそのまま利用できます。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
パッケージ案との混同
パッケージ提供形態は各ショップがサーバを独自に運用し、カスタマイズや開発もショップが行います。このため、「ショップの導入・開発負担を軽減」とは真逆の特徴です。
設問でSaaS案のメリットを聞かれているので、パッケージ案の内容と混同しないことが重要です。 -
「ショップの独自性」と「B社の管理一元化」の両立
電子商店街案採用の基となった「ショップの特色を出せる」ことと、「B社による一括管理」は共存させる必要があります。
しかし提供形態としてパッケージ案を見れば、ショップ独自運用の強みはあるものの、一括管理という点でB社側の負担が大きくなります。設問は「SaaS案を採用した理由」に特化している点を見誤らないようにしましょう。 -
SaaS案はシステムの誇張された完全自由利用ではない
SaaSは基本的に共通プラットフォームの共用利用形態なので、ショップごとに完全自由なカスタマイズはできません。
受験者は「SaaS=ショップ側開発負担ゼロ」ではあるが「完全自由な設定とは異なる」と認識しておくことが大切です。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
SaaSの特徴とメリット
- サーバ、ソフトウェアをベンダーが管理し、サービス提供を行う形態。
- 顧客(利用者)はインターネット経由でサービスを利用でき、導入や保守が不要。
- 複数顧客が共通システムを使うが、データは分離管理されるためセキュリティも保たれる。
- 運用・管理の一元化により、ベンダー側の監視や統合的な管理が容易となる。
-
パッケージ提供との違い
- パッケージはソフトウェアの購入・設置が顧客側で必要。
- 各顧客がカスタマイズや個別の運用を行い、保守負担が顧客側に大きい。
-
今回の問題のポイント整理
- B社は「一括運営や管理を楽にしたい」 → SaaS案が合致。
- ショップの中には「独自開発や運用が難しいところがある」 → SaaSが適切。
- SaaS提供によりB社の支援もしやすくなり、ショップは負担軽減でメリット大。
以上の観点から、「SaaS案がB社とショップ双方にメリットがあり、汎用化システムの提供形態として適切」という理解が重要です。
設問2
〔汎用化システムの開発方針〕で、Cマネージャが“Web店舗ごとに異なる可能性がある選択肢は、汎用化システムでは全て選択できるように開発し、Web店舗ごとに表示できる選択肢を選べるようにする。”と考えた理由を35字以内で述べよ。
模範解答
Web店舗ごとの要望に設定変更で対応できるようにしたいから
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- Web店舗ごとに異なる可能性がある選択肢
- すべての選択肢を選べるように汎用化
- Web店舗ごとに表示できる選択肢を選択可能にする
- 設定変更で対応可能にする
- 多様なショップの要望に柔軟に対応
解説
本問題の肝は、「Web店舗ごとに異なる可能性がある選択肢」への対応方法です。
【問題文】の「〔汎用化システムの開発方針〕」には以下の記述があります。
Cマネージャは、
“Web店舗ごとに異なる可能性がある選択肢は、汎用化システムでは全て選択できるように開発し、
Web店舗ごとに表示できる選択肢を選べるようにする。”と考えた。
この考え方は、表1の「電子商店街案」を採用した理由とも関係しています。電子商店街案では、
- 「フォトブック、カレンダーなどの独自の商品、特色あるWebページなど、各ショップの創意工夫を生かせる」
(表1 電子商店街案 特色より)
という特色があり、ショップごとに異なる商品の品揃えや受取方法、支払方法など多様な要望があることが分かります。
加えて【問題文】の「〔汎用化システムへの要望や制約〕」には、
とあり、ショップごとに異なる要求を柔軟に反映できかつB社が管理しやすい仕組みが求められています。
これらの状況から次のように考えられます。
-
あらかじめ全ての選択肢を汎用化システムに実装しておくことで、多様なショップの多様なニーズをカバーできる。
-
ショップごとに使いたい選択肢だけを設定で選択できるようにすることで、個別のカスタマイズをしなくても、多様なショップのニーズに対応できる。
-
これにより、(5)のような独自改造ができないショップでも、管理画面などの設定変更だけで自分の店に合ったWeb店舗を作れる。
-
B社は一括管理でき、システム改造不要のためメンテナンスが容易。
したがって、「Web店舗ごとの要望に設定変更で対応できるようにしたいから」が妥当な回答となります。
受験者が誤りやすいポイント
-
「全ての選択肢を用意するのは非効率」や「一律に同じ選択肢を全店舗に適用する」ことを混同する点→ 本設問のポイントは、一律でなく店舗ごとに異なる選択肢を設定変更で対応する仕組みを設計したところにあります。
-
「店舗側に開発してもらう」や「ショップがシステムを改造できる」のように誤解しやすい点→ 「独自改造できないショップもある」ため、設定で容易に対応可能にする、という点に着目すべきです。
-
「B社が全て決定する」ため、選択肢を制限するとの誤解→ 店舗の特色出しを尊重するため、選択肢は店舗ごとに可変とする必要があります。
試験対策としてのポイント
-
「汎用化システム」では、多様なショップの個別要望に対応できる柔軟性が重要
-
全機能を網羅的に持ち、店舗ごとに設定変更で選択できる設計が望ましい
-
SaaS型サービスのメリットとして“一括管理・個別設定”の組合せを理解する
-
顧客管理、注文管理など共通部分はB社が運営しつつ、店舗ごとの差異は設定で制御する
-
「設定変更で対応可能にする」ことは、メンテナンスコスト抑制や、非IT店舗の利用しやすさにもつながる
以上の理解で、「Web店舗ごとの要望に設定変更で対応できるようにしたいから」という模範解答が納得できます。
設問3(1):〔汎用化システムの概要〕について,(1),(2)に答えよ。
“注文伝達”をメールで実装する理由と,“データ受渡し”をブラウザで実装する理由を、それぞれ20字以内で述べよ。
模範解答
“注文伝達”をメールで実装する理由:注文を速やかに通知できるから
“データ受渡し”をブラウザで実装する理由:大きなサイズのデータを受け取れるから
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
解説
1. “注文伝達”をメールで実装する理由
問題文の〔汎用化システムへの要望や制約〕に以下の記述があります。
(7) ショップでは、ブラウザを用いて大きなサイズのデータを受け取ることはできるが、メールで受信できるデータのサイズには制限がある。
(8) ショップでは、メールの受信を数分以内に知ることはできるが、Webページを毎日確実に確認することは難しい。
ここから、注文があったことを各ショップに「速やかに通知する」必要があるため、メールで“注文伝達”を行う設計にしています。メールは即時に受信できるため、注文の到達確認がしやすい利点があります。
また、注文通知はテキスト中心の連絡であり、データ容量も一般に小さいため、メールでの通知に適しています。
2. “データ受渡し”をブラウザで実装する理由
注文内容に含まれる写真データは大容量です。問題文の(7)にもありますが、
ショップでは、ブラウザを用いて大きなサイズのデータを受け取ることはできるが、メールで受信できるデータのサイズには制限がある。
このことから、大きな写真データの送受信はメールでは難しいため、Webブラウザを介したダウンロードで実装しています。
ブラウザのHTTP通信はファイルの断片的ダウンロードや再開機能、帯域制御などが充実しているため、大容量データに適しています。
受験者が誤りやすいポイント・注意点
-
「注文伝達」にメールを使う理由を「確実に届くから」などと単に「確実性」だけで答えるのは不十分です。即時性(速さ)が重要な点を押さえましょう。
-
「データ受渡し」をメールで行わない理由を単に「大容量だから」と答えるだけでなく、「メールにサイズ制限があること」と「ブラウザで大容量データを受け取れること」の両面を述べると説得力が増します。
-
間違いやすいのは、両者の実装理由を混同すること。例えば、「注文伝達も大容量だからブラウザで」と考えないようにしましょう。注文伝達は通知なので容量は小さいです。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
通知系処理は即時性重視でメールを活用するケースが多い。
メールはリアルタイムで受信通知が得やすく、簡易テキスト伝達に向く。 -
大容量データの送受信にはHTTP通信(ブラウザ)を利用し、メールはサイズ制限で不向き。
ブラウザは分割ダウンロードや再開が可能で大容量データに対応。 -
制約条件を正確かつ複合的に読み取ることが重要。
特にメールとブラウザそれぞれの利用環境や機能制限を問題文から把握する。 -
SaaS型汎用システム開発では、「システムの共通部分」と「店舗ごとの設定や独自性」を分けて設計する点も押さえましょう。
この設問ではシステム設計上、通知とデータ送受信の特性を生かした異なる通信手段を選択していることを問われています。問題文の制約を正確に理解し、具体的な理由を的確に簡潔にまとめることが合格の鍵です。
設問3(2):〔汎用化システムの概要〕について,(1),(2)に答えよ。
“取引完了登録”が必要な理由として,過去の注文履歴の完了状況を確認するという理由以外に、どのような理由が考えられるか。30字以内で述べよ
模範解答
顧客ごとの完了した取引回数に応じた優遇を行うから
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 取引完了登録の理由の一つが「顧客ごとの完了した取引回数に応じた優遇を行うため」
- 「完了した取引回数」という顧客の取引実績を把握し、優遇策に活用する点が重要
- 単なる履歴の管理だけでなく、サービス向上や顧客関係強化のために利用される
解答がなぜこうなるかの説明
【問題文】の中で、取引完了登録の意義についてヒントが複数あります。特に以下の部分に注目してください。
「(4) 顧客ごとの完了した取引回数などに応じた優遇をB社で行ってほしい。」
これは、ショップ単位ではなくB社が顧客の取引状況を総合的に管理し、例えばポイント付与や割引などの優遇措置を行うことを示しています。
また、
「(7) 汎用化システムの利用イメージ」(7)では、 「B社は、顧客ごとの完了した取引回数に応じて優遇を行ったり、〜」と明記。
このため、注文が完了したと確定できる状態を記録しないと、優遇措置の適用が正確にできません。単なる注文履歴ではなく、正式に「完了」とされた注文の数を管理しなければなりません。この仕組みが「取引完了登録」という機能の役割です。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの理由
- 「取引完了登録」は単に注文履歴の更新と思い込みがちですが、ただの履歴参照とは異なり、B社の顧客優遇の根拠データとなる重要な情報更新です。
- 「完了状況を確認するため」という部分を問われた際に、履歴の単純管理や帳票のため、という曖昧な回答をしてしまうと減点の恐れがあります。
- また、ショップ側の業務(出荷確認や決済方法の処理)だけが理由と思うと、B社が介在する理由を見落としがちです。
- 加えて、B社が顧客管理を行うために共通の完了登録が必要という点を理解することが大切で、ショップや顧客だけでは完結しないシステム連携の意義も押さえましょう。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
これらを踏まえ、「取引完了登録」は単なる履歴更新より顧客サービス向上に直結する重要機能であることを理解しましょう。
まとめると、
- 「取引完了登録」はB社が顧客単位で確定した取引状況を管理し、優遇策やマーケティングに活用するために必要
- これにより、ショップ毎ではなくB社中央で顧客管理が一元化される
- 単なる注文履歴とは異なる確定処理としてシステム要件に組み込まれている
という点を押さえて解答に臨んでください。