ホーム > システムアーキテクト試験 > 2012年
システムアーキテクト試験 2012年 午後1 問03
セミナ管理システムの構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
D社は、各種のソフトウェアパッケージを核としたソリューションを提供する大手ソフトウェアベンダである。D社は、営業拡大を目的としたソリューションセミナ(以下、セミナという)を全国で年間数回ずつ、ホテルやイベント会場を使って開催しており、セミナの申込管理をシステム化している。
〔現状と課題〕
D社のセミナは、営業担当が指定した顧客に招待状を出し、Webで参加申込みを受け付ける。また、顧客以外の受講希望者の参加申込みも受け付けている。
各セミナは、1日単位で開催され、午前10時から午後5時までを五つの時間帯(以下、時限という)に分け、それぞれの時限でセッションを開催する。1回のセミナでは、20~30個のセッションが開催され、申込者は申込時に1~5個のセッションを予約するが、同一時限に開催されるセッションを複数予約することはできない。各セッションに定員を設定し、予約人数が定員に達した場合は、当該セッションは満席扱いとし、それ以降は予約を受け付けない。申込者には、申込時に当該セミナで一意に付与する申込IDと予約したセッション名を記載した受講票を、システムで発行する。
当日、会場受付には、申込ID順の申込者リストを準備し、来場した申込者(以下、受講者という)に受講票を提示してもらうことで、来場チェックを行っている。各セッションの会議室の入口では、受講者が提示した受講票に当該セッション名が記載されていることを確認して入室を許可しているが、申込IDなどの受講者の情報は記録していない。受講者が、予約していないセッションの受講を希望した場合には、空席待ちの列に並んでもらい、セッション開始時刻に空席があれば受講可能としている。
営業担当及びセミナ事務局から、次の課題が挙げられ、改善を要望されている。
(1) 会場受付で誰が来場しているかは把握できるが、セッションの受講は記録されないので、受講者が予約したセッションを実際に受講したかは把握できない。
(2) 各セッションの会議室の入口では、当該セッションを予約した申込者が来場しているかを把握できないので、予約人数が定員に達している場合に、セッションの開始時刻前に空席待ちの受講者を入室させてよいか判断できない。
(3) 受講者が実際にどのセッションを受講したか把握できないので、有効なフォロー営業ができない。
(4) 各セッションの受講希望人数にばらつきがあり、満席で予約を断るセッションがある一方で、予約人数が定員に満たないセッションもある。受講希望が多いセッションは、事前に大きな会議室に振り替えられるようにしてほしい。
D社では、これらの課題を解決するために、現在の申込管理のシステムを拡充し、セミナ管理システム(以下、新システムという)を構築することにした。
〔新システムに対する要件〕
情報システム部のE課長が新システムの構築を担当することになり、次のとおりに要件を定め、セミナ事務局(以下、事務局という)の了解を得た。
(1) 申込受付時に、セッションの予約状況によって、予約希望が多いセッションに割り当てられた会議室を、より定員が多い会議室に変更することを可能にする。
(2) セミナの会場受付では、受講者が持参した受講票に基づき、申込IDを記録したICカード(以下、受講カードという)をその場で発行する。
(3) 各セッションの会議室の入口に設置したICカードリーダに、受講者が受講カードをかざすことによって、予約の有無の確認を行い、セッションの受講を記録する。これによって、入室人数をリアルタイムに把握し、会場の事務局控室にあるPCで参照できる。
(4) 各セッションの予約人数、当該会議室の定員、予約者の来場情報、予約者の当該セッションへの入室情報及び現在入室している人数を基に、受講見込人数の推定を行い、空席待ちの受講者の入室を段階的に効率よく行えるようにする。
〔新システムの設計〕
E課長は、〔新システムに対する要件〕に基づき、新システムの設計を行った。
新システムのE-R図を図1に、新システムの処理概要を表1に示す。
なお、セミナには一意にセミナ番号を付与する。また、セッションにはセミナ内で一意なセッションIDを付与し、時限は開始時刻順に1~5の値をとる。
“受講セッション”の主キーについては、セミナ番号、申込ID、セッションIDを設定する方法と、セミナ番号、申込ID、選択したセッションの時限を設定する方法が考えられたが、業務プログラムの作成負荷を軽減するために、後者を選択した。


会議室変更の処理について、判断する条件と処理内容は次のとおりである。
あるセッションの予約人数が、そのセッションに割り当てられた会議室の定員の1.6倍に達したとき、当該セッションと、セミナ番号・時限が等しい全てのセッションについて処理を行う。
(1)各セッションの会議室の(a)が、当該セッションの会議室の(a)よりも(b)セッションを抽出する。
(2)抽出したセッションの中から、(c)が当該セッションの(c)よりも(d)セッションを選択する。
(3)選択したセッションの(c)を、選択したセッションの会議室の(a)割って倍率を求め、その倍率が最も低いセッションを選択する。
(4)選択したセッションの(e)と当該セッションの(e)を入れ替える。
〔営業担当役員からの追加要望〕
E課長が、役員会で新システムの概要を説明したところ、営業担当役員から次のような要望があった。
・セミナは営業拡大の絶好の機会であり、営業担当が総出で顧客対応を行っているが、受講者が多く目的の顧客がどこにいるのかが把握できず、うまく対応できていない。
・セミナの開催場所と内容によって、重要顧客を選定する。重要顧客の来場時と各セッションへの入室時に、営業担当に連絡してほしい。
・セミナ終了後、営業担当がフォロー営業を行えるように適切な情報を渡してほしい。
E課長は、これらの要望に応えるために、重要顧客の来場及び入室情報を把握できるよう新システムの設計の変更を行うことにし、あるエンティティタイプに重要顧客区分の属性を追加した。あわせて、顧客招待、セミナ受付、セッション入室の各処理を変更することにし、それぞれの処理の追加点を表2にまとめた。

設問1(1):〔新システムの設計】について、(1)~(3)に答えよ。
E課長は、業務プログラムの作成負荷を軽減するために“受講セッション”の主キーに、セミナ番号、申込ID、選択したセッションの時限を設定する方法を選択した。なぜ作成負荷が軽減できると考えたか。40字以内で述べよ。
模範解答
・同一時限の複数セッションのチェックをデータベースの一意制約で実現できるから
・ “受講申込”に対して同一時限の“受講セッション”が一つしか作れなくなるから
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 「受講セッション」の主キーを(セミナ番号、申込ID、時限)に設定
- 同一時限に複数セッション予約を禁止する制約の実現
- 一意制約によってデータベースが整合性を保証
- 業務ロジックのプログラム負荷軽減(重複予約チェックなどの簡素化)
なぜこの解答になるのか(問題文引用を交えた論理的説明)
問題文では、セミナにおける申込者は、
「申込者は申込時に1~5個のセッションを予約するが、同一時限に開催されるセッションを複数予約することはできない」
と明記されています。この業務ルールは必須の制約です。
受講セッションの主キー候補と問題
- 候補1:セミナ番号、申込ID、セッションID(より詳細で複雑)
- 候補2:セミナ番号、申込ID、時限(簡素)
もし、主キーに時限を使わず「セッションID」を主キーに含めた場合、同じ申込IDが同一時限に複数存在することが許されてしまい、重複チェックや重複防止のロジックをプログラムで複雑に実装する必要があります。
時限を主キーに含める効果
一方、主キーに『時限』を含めることで、
「同一申込ID・時限で受講セッションは1レコードのみ可能」
という規則がデータベースの一意制約により自動的に保証されます。結果として、
- 「同一時限に複数予約はできない」という制約がデータベースレベルで担保される
- 業務プログラムは重複チェック等の負荷を大幅に減らせる
というメリットがあります。
受験者が誤りやすいポイントと注意点
試験対策として覚えておくべきポイント
- 主キーに業務ルールに合致した属性を含めることで、データベースの一意制約が業務の重複チェックを自動的に保証できる。
- 業務ルールの「同一時限に複数セッション予約不可」は、主キーに「時限」を含めることで設計上容易に実現できる。
- 業務設計と物理設計には一対一の正確な対応が必要だが、主キー設計の工夫でプログラムの作成負荷を軽減可能。
- 情報処理技術者試験では、「業務ルールとデータベース設計の整合性」、「一意制約の活用」を理解しているかが問われやすい。
以上を踏まえ、受験者は「主キーの選択が業務ルールを自動的に守る役目を果たし、プログラムが簡素化できる」という本質を押さえておくことが重要です。
設問1(2):〔新システムの設計】について、(1)~(3)に答えよ。
図1のE-R図について、破線で示した5か所のリレーションシップを凡例に倣って示せ。
模範解答
図を参照
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
- 「破線で示した5か所のリレーションシップ」に対して対応するリレーションの種類(1対1、1対多、多対多)を凡例に沿って示すこと。
- E-R図のエンティティ間の関係性は、「顧客」から「受講セッション」まで各関連で表現されている。
- 各リレーションの矢印の向き・丸・黒丸のマークが示す多重度(1:一方のエンティティには必ず1つの関連がある、○:0か1、●:1以上多数)を理解すること。
2. なぜその解答になるのかの論理的説明
図1のE-R図では、5か所の破線リレーションシップについて凡例に倣った表記を問われています。図中の破線部分は特に重要な関連であり、各リレーションの意味を正確に把握することが重要です。
以下、設問に対応するリレーションシップ例の説明となります。
破線は凡例のように、下記のように表記されます。
凡例での記号の意味は以下です。
多重度は「必ずあるか(黒丸/●)」か「なくても良いか(白丸/〇)」が区別のポイントです。
例として「顧客」と「顧客招待」の関連は、顧客側が●(必ず一人存在)、顧客招待側が〇(招待がない顧客もあり得る、ただしここは基本的に招待が複数あるイメージ)で「●─────〇」(1対多)となります。
このように図中の破線部分を凡例に従って読み解き、5つのリレーションの組み合わせを正しく示すことが答えとなります。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
「1対1」と「1対多」の違いの見極めが難しい
どちらかのエンティティに複数の関連が存在するか否かを間違いやすい。
例えば、「顧客」は複数の「顧客招待」を持てるが「顧客招待」は1つの「顧客」にしかつかない。
これを逆に判断すると誤答になる。 -
黒丸(●)と白丸(〇)の混同
黒丸は必ず存在しないといけない(最低1つ以上)を示すため、ここを間違うとリレーションの意味を誤認しやすい。
例えば、「セッション」側は必ず会議室が割り当てられるから●、「会議室」はセッションがなくても存在するため〇という違い。 -
多対多(●────●)の認識ミス
多対多と1対多の区別を間違えやすい。E-R図に記載されていない多対多リレーションは存在しないため、多対多を選択するのは誤り。 -
破線部分を凡例と照合せず、自分のイメージだけで判断してしまう点
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
E-R図のリレーションの多重度は「必須/任意」と「数」の2概念が結合して示されている。
- 黒丸●=必須、白丸〇=任意
- 多重度が1あるいは多(1以上)を区別する。
-
関連付けの向きを理解すること
例えば、「1対多」では多の側が必ず1以上存在し、1の側は0か1かを確認。 -
複数のエンティティ間の意味を業務視点で納得しながら把握することで誤りを減らせる。
例:一つのセミナで複数のセッションがあるのは自然、これを逆に取ると誤り。 -
図中の凡例を参照して確実に理解する習慣を付けること
-
問題文の説明とE-R図の主キーの組み合わせを確認して、リレーションの多重度を推測することも有効
以上のポイントを踏まえて、破線で示された5か所のリレーションシップは凡例通りの表現で示すことが正解となります。
図1のようなモデルの読み取りは午後1試験の重要な基礎力の一つですので、確実に理解しましょう。
図1のようなモデルの読み取りは午後1試験の重要な基礎力の一つですので、確実に理解しましょう。
設問1(3):〔新システムの設計】について、(1)~(3)に答えよ。
本文中の(a)~(e)に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
a:定員
b:多い
c:予約人数
d:少ない
e:会議室ID
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点整理
解答の理由詳細と問題文からの引用による説明
本問題は、新システムにおいて、予約人数が多く当初割り当てた会議室では定員不足となるセッションの会議室を、大きな会議室に変更する処理の条件設定を問うています。
以下、問題文の該当記述を引用しながら説明します。
(a) 定員
「あるセッションの予約人数が、そのセッションに割り当てられた会議室の定員の1.6倍に達したとき…」
ここで「そのセッションの会議室の定員」が重要な比較基準です。会議室の「定員」はその会議室の収容限界人数を示すため、(a)は「定員」となります。
(b) 多い
「(1)各セッションの会議室の(a)が、当該セッションの会議室の(a)よりも(b)セッションを抽出する。」
ここで、(a)は「定員」と確定しているため、会議室の「定員」が当該セッションの会議室定員よりも「多い」もの、すなわちより大きな会議室を抽出します。
(c) 予約人数
表1の「会議室変更」処理概要:
「同時限の他のセッションの予約状況を確認し、可能であれば、定員が多い会議室への変更を行う。」
ここで、(c)は変更対象外の候補セッションの中から選ぶ時に重要な値です。予約人数を比較し予約人数の多いまたは少ない方を選ぶことになるため、(c)は「予約人数」となります。
(d) 少ない
「(2)抽出したセッションの中から、(c)が当該セッションの(c)よりも(d)セッションを選択する。」
ここは予約人数の大小の比較で、予約人数が「少ない」セッションを候補に選ぶ処理になります。つまり、(d)は「少ない」です。
(e) 会議室ID
「(4)選択したセッションの(e)と当該セッションの(e)を入れ替える。」
ここで入れ替えるのは、セッションに割り当てられた会議室情報です。セッションと会議室は「会議室ID」で紐づけられているため、(e)は「会議室ID」となります。
受験者が誤りやすいポイント
-
**(a)の「定員」**と間違えて「予約人数」と回答するミス
→「(a)」は「会議室の定員」であり、予約人数ではありません。予約人数は比較対象ですが、物理的な収容人数を示すのは「定員」です。 -
(b)の「多い」や「小さい」の混乱
→「より大きい会議室を選ぶ」ため、定員がより多い会議室を抽出します。「少ない」ではありません。 -
(c)(d)の予約人数の大小の取り扱い
→ここは逆に考えると間違えやすいです。変更候補のセッションの予約人数が「少ない」ものを選ぶという点を誤解しがちです。 -
(e)の「会議室ID」以外の可能性
→会議室名など見た目の情報ではなく、システムで一意に管理されるIDの入れ替えであるため、「会議室ID」が正解です。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
会議室の定員は物理的な収容人数を示す重要な属性であり、収容可能人数の基準になること。
-
予約人数と定員の関係を理解することが重要。予約人数が定員の一定倍数(本問題では1.6倍)を超えたら会議室を大きなものに変更する等の条件はよく問われる。
-
E-R図やシステム処理概要の中で各属性の役割を正確に把握すること。特にID系(会議室ID、申込IDなど)は一意に区別・入れ替え対象になる。
-
複数のセッションや会議室間での比較・入れ替え処理の論理的な考え方を整理すること。
-
設問の空欄埋め問題では、文脈と前後関係をよく読み、出題者が基準にしている「比較対象」と「比較方法」を正しく理解することが鍵。
これらのポイントを理解すれば、会議室変更の処理条件や流れを正確に説明でき、試験合格に近づけます。
設問2
空席待ちの受講者の入室を段階的に効率よく行うために、当該セッションの予約人数及び当該会議室の定員の他に、リアルタイムで把握できる三つの情報を利用する。どのような情報か、図1中の属性名を用いて、それぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
・当該セッションを受講する受講者のセミナへの来場日時
・当該セッションを受講する受講者のセッションへの入室日時
・当該セッションの入室人数
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 空席待ち受講者の入室判定に利用する「リアルタイムで把握できる三つの情報」
- それぞれ属性名を用いる
- 予約人数と会議室定員以外の情報として以下を列挙すること
- セミナ来場の状況(来場日時)
- セッション入室状況(入室日時)
- 現在の入室人数(入室人数)
解答がなぜこれになるのか(問題文引用と論理的説明)
問題文中の「〔新システムに対する要件〕」の(4)に、次の記述があります。
各セッションの予約人数、当該会議室の定員、予約者の来場情報、予約者の当該セッションへの入室情報及び現在入室している人数を基に、受講見込人数の推定を行い、空席待ちの受講者の入室を段階的に効率よく行えるようにする。
この要件から、空席待ちの受講者を入室させる判断材料として使うのは、
-
「予約者の来場情報」=受講者が会場に「来場」しているかどうかの状況。
→ 図1「受講申込」の「来場日時」属性がこれに該当します。 -
「予約者の当該セッションへの入室情報」=受講者が「どのセッションに実際に入室したか」の記録。
→ 図1「受講セッション」の「入室日時」属性に該当します。 -
「現在入室している人数」=セッションごとにリアルタイムで入室中人数を数え上げた数値。
→ セッションごとの「入場人数」として「セッション」の「入場人数」属性がこれにあたると考えられます。
したがって、予約人数や定員の情報に加え、「受講申込」の「来場日時」、「受講セッション」の「入室日時」、さらに「セッション」の「入場人数」という三つの情報を利用するというのが正しい解答です。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
「入室日時」と「入室人数」の混同
それぞれ役割が異なります。入室日時は個々の受講者がいつ入室したかを示し、「入室人数」はセッションにいる受講者の総数です。単に日時だけでなく人数も把握が必要という点を混同しやすいです。 -
「来場日時」と「申込日時」の取り違え
「申込日時」は申し込み情報であり、来場しているかどうかのリアルタイム判定には使えません。空席待ち入室判定に必要なのは「来場日時」です。 -
時限情報や会議室IDなどの不要な情報を挙げる誤り
問題文で求められているのは空席待ちの入室判断に使う、リアルタイム性のあるデータです。時限や会議室IDは予約情報として固定的であって、現在の入室判定には直接使われません。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
セッション予約管理において「予約人数」「会議室定員」以外にリアルタイムデータが重要
なぜなら実際の受講者数(来場率、入室状況)は予約人数と異なるため、真の受講数を把握することで空席待ちの管理が可能になる。 -
「来場日時」「入室日時」「入場人数」はシステム設計における重要な「状態管理属性」
これらにより、受講者の現在の位置・行動状況を把握でき、動的な空席管理やフォロー営業が実現できる。 -
E-R図の属性名は必ず問題文の図1を参照し、正確な属性を使い分けること
試験問題では明示的に図の属性名をたずねられるため、普段から設計図の属性名の正確な理解が必要。
まとめ
空席待ち入室を合理化するには、これらのリアルタイム情報が不可欠です。問題文の要件とE-R図の属性を正確に読み取り、論理的に結びつけられる力を養いましょう。
設問2(1)
空席待ちの受講者の入室を段階的に効率よく行うために、当該セッションの予約人数及び当該会議室の定員の他に、リアルタイムで把握できる三つの情報を利用する。どのような情報か、図1中の属性名を用いて、それぞれ30字以内で述べよ。
解説
設問3(1):〔営業担当役員からの追加要望〕について、(1)~(3)に答えよ。
重要顧客の来場及び入室情報を把握するために、あるエンティティタイプに属性として重要顧客区分を追加する。追加するエンティティタイプ名を挙げ、そのエンティティタイプに追加する理由を35字以内で述べよ。
模範解答
エンティティタイプ名:顧客招待
理由:重要顧客はセミナの開催場所と内容によって,招待時に選定されるから
解説
模範解答の核心となるキーワード・論点整理
- エンティティタイプ名:顧客招待
- 重要顧客区分を追加する場所として「顧客招待」が適切である理由
- 「重要顧客はセミナの開催場所と内容によって招待時に選定される」という業務背景
- 「重要顧客の来場及び入室情報を把握するために、招待された顧客の情報を扱うエンティティに属性を追加する」という観点
解答となる理由の論理的説明
問題文には、以下の記述があります。
「営業担当は、当該セミナに招待したい顧客を選んだとき、重要顧客については、顧客の一覧にその区分を付けて事務局へ提出する。」
つまり、重要顧客の選定は「顧客」そのものではなく、特定のセミナに対しての招待時点での選定基準によって決まります。
ここがポイントです。
ここがポイントです。
- 「顧客」エンティティはあくまで顧客個人や企業の基本情報を保持する。
- 「顧客招待」エンティティは「どのセミナにどの顧客を招待したか」の情報を保持する。
重要顧客は「特定セミナの開催場所や内容に応じ」て選ばれるため、この区分は「顧客招待」エンティティの属性として持つのが自然です。
この考えに基づき、重要顧客区分は「顧客招待」エンティティに追加します。
このことで、
このことで、
- どのセミナにおいてどの顧客が重要顧客かを区分で判別できる
- 後続処理で「そのセミナにおける重要顧客の来場・入室情報」を把握・通知できる
という要件を満たせます。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
問題文の「顧客招待」の役割を正確に理解しないと、単に「顧客」という文字を見て添付してしまうミスが起こります。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
区分やフラグはその意味・用途に合ったエンティティに追加することが基本
→ 例えば、顧客区分なら「顧客」に、セミナ単位の属性なら「セミナ」へ。
→ 条件がセミナ単位で変わるものは「顧客招待」など結合的エンティティで管理する。 -
業務の流れ・タイミングを読み取り、属性追加の最適な場所を考えること
申込や招待、実績など使用目的や発生タイミングに応じてエンティティを区別する。 -
設問文にある具体的な記述を根拠として、回答を論理的に組み立てる訓練をする
-
E-R図などで「エンティティタイプ」と「リレーション」の役割を正しく理解し使い分けることも重要。
まとめ
この設問では、「重要顧客区分の性格とシステム内での管理単位(セミナ単位の顧客招待)」を正しく理解することが合格のカギです。
試験対策では業務要件に合わせた属性設計を意識し、設問の根拠をしっかり読み取る姿勢を養いましょう。
試験対策では業務要件に合わせた属性設計を意識し、設問の根拠をしっかり読み取る姿勢を養いましょう。
設問3(2):〔営業担当役員からの追加要望〕について、(1)~(3)に答えよ。
表2中の(f)~(j)に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
f:受講票
g:申込ID
h:受講申込
i:顧客ID
j:受講カード
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
なぜその解答になるのか(問題文の記述引用と論理的説明)
1. 処理の追加点概要(表2からの読み取り)
表2のセミナ受付とセッション入室の追加点は以下の形で記述されています。
わかりやすく書き換えると、
「あるもの(f, j)に記載された申込ID(g)を使って受講申込(h)の情報を参照し、顧客ID(i)を取得して重要顧客区分を判定する」 という処理の流れです。
「あるもの(f, j)に記載された申込ID(g)を使って受講申込(h)の情報を参照し、顧客ID(i)を取得して重要顧客区分を判定する」 という処理の流れです。
2. f:受講票 が適切な理由
- 問題文【セミナ受付】処理の説明には、
「受講者から受講票を提示してもらい…申込IDを記録した受講カードを発行し」
とあります。 - 追加処理では「fのgでhを参照」という形式なので、fは「受講者が持っているもの」で受付時に使うもの。
- 受講者が受付で必ず持っているのは「受講票」
- だからfは「受講票」。
3. g:申込ID が適切な理由
- 申込IDはセミナ単位で一意に付与され、申込者を識別する主キー
- 問題文では「申込ID順の申込者リスト」や「申込IDを記録したICカード」など頻繁に用いられている
- fまたはjのどちらからh(受講申込)を参照するか決める「キー」が必要
- それが申込IDであることは明白
- よって、gは「申込ID」
4. h:受講申込 が適切な理由
- 申込IDから参照するテーブルが必要
- 問題文のE-R図より、申込IDの主キーに含まれる受付申込みのエンティティは「受講申込」
- 「受講申込」には申込者・顧客情報が含まれている
- 顧客情報の重要顧客区分を参照するのに使うため、ここを参照する
- したがってhは「受講申込」
5. i:顧客ID が適切な理由
- 重要顧客区分は顧客エンティティにあるため、該当顧客のIDが必要
- 「受講申込」からは「顧客ID」が取り出せる
- 顧客IDで顧客情報(重要顧客区分含む)を参照する
- よってiは「顧客ID」
6. j:受講カード が適切な理由
- セッション入室処理の説明では「jのgで…」となっている
- 受付で発行し、入室時にかざすのは「受講カード」ICカードであると問題文で明記
- だからjは「受講カード」
- 受講カードに申込IDが記録されているため、申込IDをキーに参照できる
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ注意点
-
fに「受講カード」と答えてしまう誤り
→問題文では受講票は紙で受講者が持参、受講カードは受付発行。セミナ受付処理の追加点で「fのgで参照」とあるのは、来場時に持参するもの→受講票が正解。 -
hに「顧客」や「顧客招待」などのエンティティを入れてしまう誤り
→申込IDから顧客IDを直接参照するわけではない。参照元は「受講申込」であり、そこから顧客IDを得る。 -
iに「申込ID」や「氏名」など誤った属性を入れてしまう誤り
→重要顧客区分は顧客エンティティにある。該当顧客を特定するキーは「顧客ID」なのでこれを取得すること。 -
jに「受講票」や「申込ID」など他の用語を入れてしまう誤り
→入室時にICカードリーダにかざすのは受付で発行した「受講カード」が正解。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
申込IDの扱いの理解
申込IDはセミナごとに一意で、履歴やチェックに必須のキー。受講票や受講カードに必ず含まれている。 -
紙の受講票とICカード(受講カード)の使い分け
受講票=申込時作成、受講者が持参し受付で確認用。
受講カード=受付で発行、入室管理に使う。 -
顧客情報と申込み情報のリレーション
「受講申込」→「顧客ID」を介して顧客エンティティの重要顧客区分を参照できる。 -
新システム要件での情報フロー
受講者の「来場」・「入室」の情報を即座に営業担当に伝えるため、受付時(受講票提示)と入室時(受講カード使用)双方の情報が必要。
以上を踏まえ、以下が模範解答となる理由です。
まとめ
- 受付時は「受講票」上の申込IDをもとに「受講申込」から「顧客ID」を取得し、来場顧客情報を特定する。
- 入室時は「受講カード」に記録された申込IDで同様に「受講申込」を参照し、入室の顧客を特定する。
- 顧客IDで重要顧客区分を判別し、営業担当に連絡する運用を想定している。
- 用語の正確な使い分け(受講票と受講カード、各エンティティの役割)を理解することが重要。
- データのキーと参照先を正しく追えるようにE-R図や処理概要をしっかり確認しよう。
これらの理解が情報処理技術者試験「午後1」問題の正答と深い理解につながります。
設問3(3):〔営業担当役員からの追加要望〕について、(1)~(3)に答えよ。
セミナ終了後、フォロー営業に使用する情報を営業担当に渡すことになったが、新システムの稼働によって確実に渡すことができるようになった情報がある。その内容を25字以内で述べよ。
模範解答
受講者がどのセッションを受講したかという情報
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 受講者がどのセッションを受講したか
- フォロー営業で活用できる具体的な受講履歴情報
- 新システムでのセッション入室記録の導入
- 受講者の行動(予約+実際の受講)を正確に把握可能にした点
解答となる理由の論理的説明
問題文には、現状の課題として以下の記述があります。
(1) 会場受付で誰が来場しているかは把握できるが、セッションの受講は記録されないので、受講者が予約したセッションを実際に受講したかは把握できない。
(3) 受講者が実際にどのセッションを受講したか把握できないので、有効なフォロー営業ができない。
つまり、現状では、
- 受講者がセッション予約した事実は分かるが、来場して実際に参加したかは分からない
- そのため、受講内容に基づく有効なフォロー営業が困難であった
一方、新システムの要件・設計には次の重要な点があります。
(3) 各セッションの会議室の入口に設置したICカードリーダに、受講者が受講カードをかざすことによって、予約の有無の確認を行い、セッションの受講を記録する。これによって、入室人数をリアルタイムに把握し、会場の事務局控室にあるPCで参照できる。
(7) セッション入室
各会議室の入口にICカードリーダを設置して、受講者は受講カードをかざして入室する。受講者の予約情報と入室時刻を記録することにより、受講人数をカウントする。
また、フォロー営業の処理概要には、
セミナ終了後、営業担当が受講者へフォロー営業ができるよう、受講者の一覧表を作成する。
と明示されています。
これらから、
新システムにより「受講者がどのセッションを実際に受講したか(予約+入室記録)」が正確に把握可能となり、その情報をフォロー営業に提供できるため、
「受講者がどのセッションを受講したかという情報」が確実に渡せるようになった、
という回答になるのです。
受験者が誤りやすいポイント、ひっかけの選択肢
-
「予約したセッション」だけを渡せるようになったと誤解する
現状でも予約情報はあるが、課題は「実際の受講」情報がない点。新システムは「受講の実態」を把握して渡すことができる点がポイント。 -
「来場者情報だけ」や「申込者情報のみ」と答える誤り
来場情報は従来も把握できていたが、それだけではフォロー営業に十分な情報とは言えない。 -
「受講時間、受講者の属性など別の情報」と回答しがちだが、問題の設問が問うのはフォロー営業に必須な「どのセッションを受講したか」の具体的なデータである
試験対策として覚えておくべきポイント
以上の理解を踏まえ、問題文の要件と模範解答をしっかり結びつけて正確に回答できるようにしましょう。