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システムアーキテクト試験 2013年 午後1 問03
食品製造業の基幹システムの改善に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
食品の製造を行っているF社では、売上拡大への対応、顧客満足度の向上、業務の効率化及び省力化を目指し、基幹システムの改善に取り組んでいる。
〔改善対象となった現行の業務及び関連する基幹システムの概要〕
改善対象となった現行の業務及び関連する基幹システムの概要は、次のとおりである。
(1)受注処理
(a)得意先からの注文は、翌日出荷分から数週間先の出荷分までまとめて送られてくるが、翌日出荷分の注文だけをシステムに受注登録している。翌々日以降の出荷分の注文(以下、先日付の受注という)は人手で台帳管理している。先日付の受注は、生産計画に反映させるために、受注部門から生産管理部門に集計表が渡されている。
(b)受注登録時にシステムで与信限度のチェックを行う。与信限度のチェックは、得意先ごとに次の計算式で行っている。
①今回受注登録額≦与信限度額−前月末売掛金残高−当月売上額+当月入金額
(c)受注登録後、受注受付順にシステムで製品在庫を引き当てる。製品の欠品時は、受注を一旦取り消し、得意先との間で受注数量変更、納期変更などの調整を行った後、再度受注登録している。
(2)出荷処理
(a)製品在庫引当処理後、在庫が引き当てられた注文の出荷伝票を発行している。
(b)得意先へは、工場内に1か所ある製品倉庫から、製品在庫として先に入庫されたものから先に出荷している。出荷に当たっては、前回出荷した製品の賞味期限は考慮していない。
(3)製品在庫管理
(a)製造された製品は、製品倉庫に入庫される。工場部門での製品製造実績登録によって、実在庫及び引当可能在庫の入庫計上をシステムで行う。
(b)製品在庫引当処理時に引き当てた分について、引当可能在庫の出庫計上をシステムで行う。また、出荷実績登録によって実在庫の出庫計上をシステムで行う。
(c)製品の賞味期限は、人手で台帳管理している。
(d)工場での製品の1回の製造単位を、製品ロットという。製品ロットには、一意な製品ロット番号が付与され、システム上で管理されている。
(4)原材料在庫管理
(a)原材料は、購買先からの納品・検品の後、工場内に1か所ある原材料倉庫に入庫され、製造現場からの払出し要求によって出庫される。
(b)原材料の在庫は、原材料倉庫での入出庫実績を登録することによってシステムで管理している。製造現場に未使用分の原材料が残ることがあり、それは人手で台帳管理している。
(c)購買先からの1回の納品単位を、原材料ロットという。原材料ロットには、一意な原材料ロット番号が付与され、人手で台帳管理している。
(d)原材料の賞味期限は、人手で台帳管理している。
〔現行システムに対する改善要件〕
業務の改善を検討した結果、現行システムに対して次のような改善を行うことにした。
(1)受注処理
(a)先日付の受注もシステムに登録し、未出荷分の受注に対して受注残高管理を行う。受注残高は、得意先ごとに、前回までに入力された受注のうち未出荷分の受注金額合計として算出する。
(b)今回受注した、先日付の受注も含む金額を、今回受注登録額として、前回までに入力された先日付の受注も加味した与信限度のチェックを行う。
(c)受注登録されたデータは、基幹システムを構成する既存の生産管理システムに渡す。
(d)受注に対する製品の引き当ては、翌日出荷分について製品ロット別に行う。
(2)出荷処理
(a)賞味期限が逆転するような出荷を防止するために、得意先ごとに、前回出荷した製品よりも賞味期限の日付が新しい製品を出荷する。
(b)受注数量に満たなくても、在庫がある分だけでも出荷できるような出荷指示を行う。
(3)製品在庫管理
(a)製品ロット別の入出庫処理及び在庫管理を行う。
(b)製品の賞味期限は、システムで管理する。賞味期限切れの製品は処分され、システムの管理対象から除外される。
(4)原材料在庫管理
(a)購買先からの入荷検品時に、原材料ロット単位での入庫実績を登録すると同時に、現物と原材料ロット情報を照合できるように、入荷ラベルを発行する。
(b)原材料倉庫から製造現場への払出し時に、原材料倉庫からの出庫実績を登録する。
(c)製造現場では、原材料の使用実績と未使用残実績を登録する。
(d)原材料在庫は、在庫場所ごとに原材料ロット別にシステムで管理する。賞味期限もシステムで管理する。賞味期限切れの原材料は処分され、システムの管理対象から除外される。
〔改善対象システムの主要なファイル一覧〕
現在設計中の主要なファイルの一覧を表1に示す。

〔製品ロット別在庫引当処理〕
製品ロット別の在庫引当について、図1の製品ロット別在庫引当処理フローに示すような処理を検討している。


〔ロット追跡〕
ロット追跡に関して、次の点を検討している。
(1)出荷実績から、ある製品ロットについて、その製品に使用した原材料ロットの全ての購買先を抽出する手順
・手順1:出荷実績から、該当する製品ロット番号のレコードを抽出
・手順2:原材料使用実績から、手順1で抽出した製品ロット番号に使用した原材料ロット番号のレコードを抽出
・手順3:(c)
(2)ある原材料ロット番号について、その原材料を使用した製品を出荷した全ての得意先を抽出する手順
・手順1:原材料使用実績から、その原材料ロット番号を使用した製品ロット番号のレコードを抽出
・手順2:(d)
設問1(1):受注処理の改善について、(1),(2)に答えよ
先日付の受注を登録するのは、与信管理強化の目的以外に、生産管理システムと連携させ、ある目的を達成するためである。その目的を述べよ。
模範解答
生産計画へ反映させること
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- キーワード:先日付の受注登録、生産管理システム、連携、生産計画への反映
- 論点:
- 先日付の受注をシステムに登録することで対応できること
- 与信管理以外の目的は生産管理システムとの連携
- 生産計画に反映させることで生産の効率化や適正化を実現する点
なぜその解答になるのか(論理的説明)
現行の業務では、翌日出荷分の受注だけをシステムに登録し、それより先の日付の「先日付の受注」は人手で台帳管理しており、生産管理部門へは受注部門が集計表を渡しているとあります。
「先日付の受注は、生産計画に反映させるために、受注部門から生産管理部門に集計表が渡されている。」(問題文〔改善対象業務の概要〕(1)(a))
この運用では、手作業での集計や引継ぎが発生し、情報がシステム上でリアルタイムに共有されないため、生産計画が最新の受注状況を反映できないリスクがあります。
改善要件では、
「先日付の受注もシステムに登録し、未出荷分の受注に対して受注残高管理を行う」
「受注登録されたデータは、基幹システムを構成する既存の生産管理システムに渡す。」(問題文〔改善要件〕(1)(a)(c))
と明記されています。これは、先日付分も含めた受注情報を一元的にシステム管理し、それを直接生産管理システムと連携させて、生産計画に反映させるためです。
つまり、先日付の受注を登録する目的が、与信限度管理の強化だけでなく、より正確でリアルタイムな生産計画の立案に必要な受注情報をシステム間で連携させることにあることがわかります。
受験者が誤りやすいポイント
-
誤りやすい点1:与信管理が唯一の目的と考える
問題文には与信限度管理の強化目的もあると明示されていますが、それが唯一の目的ではありません。改めて複数の目的が存在することに注意しましょう。 -
誤りやすい点2:生産計画以外の業務機能を想定する
先日付の受注登録が「販売促進」「在庫管理」など別の目的と誤認するケースがあります。問題文の具体的記述をよく読み、「受注部門から生産管理部門に集計表が渡されている」点がヒントになるため、業務フローの関連を正しく理解しましょう。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
受注情報のシステム登録と連携の重要性
受注情報は生産計画に直接影響するため、先日付を含めたすべての受注はシステムで一元管理し、生産管理システムと連携して反映させることが望ましい。 -
業務改善のねらいは複数であることが多い
与信管理強化だけでなく、生産計画の精度向上や業務効率化など、複合的な目的があるため、設問の条件から複数の視点で理由を読み取る訓練をする。 -
問題文のキーワードおよび業務フローを丁寧に確認
「集計表を渡している」「生産管理部門」など、業務間連携を示す語句は重要なヒント。問われている目的に直結する現状の運用と改善計画の説明部分を重点的に読解する。
これらを踏まえ、次のように理解しましょう。
このように、「先日付の受注を登録する目的は『生産計画へ反映させること』」であると理解することで、問題文の改善の意図を的確に押さえることができます。
設問1(2):受注処理の改善について、(1),(2)に答えよ
先日付の受注を取り込むことによって、与信限度チェックの計算式を変更する必要がある。計算式の右辺にどのような計算を追加すべきか。
模範解答
受注残高分を減算する。
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 先日付の受注をシステムで管理・反映させることによる与信限度チェックの計算式変更
- 受注残高の意味と計算対象
- 従来の与信限度チェック計算式の構造
- 新たに加味すべき「受注残高分」の減算
なぜ「受注残高分を減算する」かの論理的説明
【問題文】の現行業務では、翌日出荷分のみをシステムに登録し、「先日付の受注」は人手で台帳管理し、その集計結果を生産計画に反映していました。
そのため、現行の与信限度チェックは以下の計算式で行っています。
① 今回受注登録額 ≦ 与信限度額 − 前月末売掛金残高 − 当月売上額 + 当月入金額
ここで、「今回受注登録額」は翌日出荷分の注文のみを指し、「先日付の受注」は計算式に含まれていません。
しかし、【改善要件(1)(a)(b)】では、
- 先日付の受注もシステムに登録し、未出荷分の受注について受注残高管理を行う(=システム上に先日付の受注も存在し管理される)。
- 今回受注した注文(今回受注登録額)に先日付の受注分も含めて、与信限度チェックを行う。
つまり、与信限度チェックの対象とする負債リスクは、未出荷の過去受注(受注残高)を含むすべての未回収分+今回の受注分に拡大されます。
これにより、与信可能な範囲から既に確定している未出荷受注分(受注残高)も「差し引く」必要が生じます。
したがって、計算式の右辺に追加すべき計算は、未出荷の受注残高分の減算です。
これにより、「今回の受注登録額+先日付の未出荷受注残高」が与信限度額を超えないよう、より正確な与信管理が実施可能となります。
受注残高の計算例:
まとめると
このように「受注残高」を右辺に減算する必要があります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
「受注残高」の意味を正確に理解していない
→ 受注残高は「未出荷分の受注金額合計」を指し、単なる売上や入金ではありません。ここを誤解すると、なぜ引くべきかわからなくなります。 -
与信限度チェックに「先日付の受注分」を加えることをイメージできない
→ 先日付の受注をシステムに取り込むことにより、与信リスクを把握するために過去の未出荷注文も考慮しなければならず、それを反映しないと信用リスクを過小評価します。 -
計算式の符号ミス(足すべきか引くべきか)
→ 受注残高は未出荷分の「負債リスク」であるため、与信限度額から「引く」想定です。誤って足したりすると計算が矛盾します。
試験対策ポイント・覚えておくべき知識
-
与信限度チェックの考え方
売掛金残高や当月売上、入金だけでなく、今後の債権発生が見込まれる未出荷の受注残高も信用リスクとして考慮する必要がある。 -
受注残高とは「未出荷の受注分」「将来の債務予定」として管理されること。
-
システム改善で業務の透明性や管理対象が広がる場合には、与信計算などの管理式の見直しも必要になる。
-
計算式は符号の意味を理解して読むこと。「限度額−既存債権−新規債権」であり、限度を超えないか管理している。
以上を踏まえれば、
今回の改善で「先日付の受注も加味して与信限度チェックを正確に行うためには、現時点の未出荷受注残高を減算項目として追加する必要がある」
という模範解答の意図が論理的に理解できます。
設問2(1):原材料在庫管理の改善について、(1),(2)に答えよ。
改善後のシステムにおいて、管理対象として、ある場所の在庫が追加になる。どの場所のどのような在庫が追加になるか。
模範解答
製造現場に未使用で残った原材料在庫
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 「管理対象として追加される在庫の場所」:製造現場
- 「管理対象として追加される在庫の種類」:未使用で残った原材料在庫
- 論点:現行システムでは「製造現場に残った未使用原材料の在庫は人手で台帳管理」だが、改善後は「これをシステムで管理対象に加える」ことが明示されている点
2. 解答が正しい理由の論理的説明
現行システムの管理対象(問題文引用)
(4)原材料在庫管理
(b) …原材料の在庫は、原材料倉庫での入出庫実績を登録することによってシステムで管理している。製造現場に未使用分の原材料が残ることがあり、それは人手で台帳管理している。
ここから、現状では製造現場の「未使用残分」に関する原材料在庫はシステム管理外であることがわかります。
改善要件での追加管理対象(問題文引用)
(4)原材料在庫管理
(c) 製造現場では、原材料の使用実績と未使用残実績を登録する。
(d) 原材料在庫は、在庫場所ごとに原材料ロット別にシステムで管理する。賞味期限もシステム管理する。
この記述からは、改善後に
- 「製造現場にある原材料の未使用残在庫も含めて」
- 「原材料在庫管理の対象に加える」
と明示されています。
したがって、管理対象として新たに加わる在庫は、製造現場にある未使用の原材料在庫であると結論づけられます。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの解説
-
誤りやすいポイント:在庫の「場所」の認識
問題文中に「倉庫内の在庫」と「製造現場の在庫」が区別されていますが、倉庫の在庫は旧来よりシステム管理済みです。受験者は「在庫が追加」と聞くと、倉庫の在庫増加と混同してしまうことがあります。 -
誤りやすいポイント:「未使用残在庫」が台帳管理からシステム管理へ変わる点
製造現場に残る「未使用の原材料在庫」は現行では管理対象外ですが、改善後は初めてシステムに取り込まれます。ここに気づかず、「製造現場はもともと管理されている」と誤解することがあります。 -
ひっかけ:製造現場の製品在庫や完成品在庫との混同
製造現場に製品在庫があるとも考えがちですが、「未使用原材料在庫」の話である点に注意が必要です。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
このポイントを理解すると、問題文に記載された改善内容を正しく把握でき、体系的な解答が可能になります。特に「原材料在庫管理に製造現場の未使用残在庫を含める」という改善要件は重要な改善ポイントとして押さえておきましょう。
設問2(2):原材料在庫管理の改善について、(1),(2)に答えよ。
管理対象となる在庫の追加によって、原材料ロット別在庫マスタに追加すべきキーとなる属性を答えよ。
模範解答
在庫場所コード
解説
解説:原材料ロット別在庫マスタに追加すべきキーとなる属性について
1. 模範解答の核心キーワード・論点
- 在庫管理は「在庫場所ごと」に行う必要がある
- 「原材料ロット別在庫マスタ」の管理単位の拡張
- 主キーに追加すべき属性は「在庫場所コード」
- 問題文における「在庫場所ごとに原材料ロット別にシステムで管理する」という要件
2. なぜ答えが「在庫場所コード」なのか ― 問題文からの論理的説明
問題文の改善要件(4)原材料在庫管理では、以下の記述があります。
(4)(d) 原材料在庫は、在庫場所ごとに原材料ロット別にシステムで管理する。賞味期限もシステムで管理する。
ここから、従来は「原材料コード」と「原材料ロット番号」を主キーとして管理されていた原材料ロット別在庫マスタについて、どこに在庫があるか(在庫場所)も管理対象に含めなければならないことがわかります。
このファイルに「在庫場所ごとに管理する」要件を満たすためには、主キーに「在庫場所コード」を追加し、同じ原材料ロットでも複数の在庫場所ごとに区別して管理できるようにする必要があります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
- 単に「原材料ロット番号」だけで管理してしまう誤り
- 原材料ロット番号は一意ですが、複数の倉庫や保管場所がある場合、それらを区別できません。
- 「賞味期限」をキーに加える誤解
- 賞味期限は管理項目として重要ですが、主キー(複合キー)に加えなくても良い。(賞味期限で同一ロットが複数になることは通常ない)
- 「購買先コード」をキーに加える
- 購買先はロット番号に紐づいて管理されているため必要なし。
問題文で重視されているのは**「在庫場所ごとに管理する」**という点です。この観点を見落とすと誤答しやすいです。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
- 在庫管理の拡張要件で「在庫場所ごとに管理」とある場合は、必ず主キーに「在庫場所コード」を追加して管理単位を細分化することが基本です。
- 「ロット管理」で複数の管理単位(ロット番号、保管場所、賞味期限など)が絡む場合、どの単位を主キーに含める必要があるか考える際は、「識別可能にしなければならない最小単位」を意識すること。
- 問題文の改善要件や業務要件は、設計すべきキーや管理項目の根拠になるため、要件を正確に読み取る訓練をすること。
- ファイルの主キーは「一意にレコードを特定できる属性の組み合わせ」である。これが満たされていない場合は追加キーの検討が必要。
以上がこの問題の模範解答「在庫場所コード」を主キーに追加すべき理由の詳細な解説です。
正確に業務要件を把握し、管理単位の拡張に対応する設計が求められます。
正確に業務要件を把握し、管理単位の拡張に対応する設計が求められます。
設問3
〔製品ロット別在庫引当処理〕について、図1中の(a),(b)に入れる適切な処理内容をそれぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
a:X ≦ 製品ロット別在庫マスタのレコードの引当可能在庫数量
b:製品ロット別在庫マスタのレコードの引当可能在庫数量
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点整理
-
aのキーワード:
「X ≦ 製品ロット別在庫マスタのレコードの引当可能在庫数量」
→ 引当数量(X)が引当可能在庫数以下であることの判断を示す。 -
bのキーワード:
「製品ロット別在庫マスタのレコードの引当可能在庫数量」
→ 引当可能在庫数を全て使い切る処理。 -
論点:
製品ロット別在庫引当処理フローにおいて、在庫数量と受注数量を比較し、
・引当可能在庫数量で全数量引当可能な場合(a)
・在庫不足で部分引当の場合(b)
の処理を適切に分けていること。
2. 解答の論理的説明
本問題の図1「製品ロット別在庫引当処理フロー」では、「受注レコードの未引当受注数量」を
この処理は受注数量に対して、製品ロット別の賞味期限が新しい順に引当処理を行い、在庫引当可能数を適宜減らしながら出荷指示を作成していきます。
X1
として処理しています。この処理は受注数量に対して、製品ロット別の賞味期限が新しい順に引当処理を行い、在庫引当可能数を適宜減らしながら出荷指示を作成していきます。
aについて
図1の分岐分けでは、
「製品ロット別在庫マスタのレコードの引当可能在庫数量 = 0?」に対して
- Yes → 次のロットへ
- No → aへ進む
の後に、aの処理があります。
このaの処理直前に、
- 受注数量
X
と製品ロットの引当可能在庫数を比較し、 X ≦ 引当可能在庫数
の場合のみ一回で引当完了できる
と判断することが求められています。
これは、受注数量が在庫数以内なら一括引当可能で処理が楽になるためであり、この分岐によって処理が簡単に完了できるかどうか判定します。
bについて
一方、受注数量が引当可能在庫数量を上回っており、全部は引当できない場合に、
- 所持している在庫数を全て引き当てる
- 残りの受注数量は引き当てず欠品や次のロットで処理する必要がある
ため、
bの処理で「製品ロット別在庫マスタの引当可能在庫数量を出荷指示数量にし、0とする」という全在庫の引当の処理が必要となります。
bの処理で「製品ロット別在庫マスタの引当可能在庫数量を出荷指示数量にし、0とする」という全在庫の引当の処理が必要となります。
問題文の該当引用部分
- (1)(d)
「受注に対する製品の引き当ては、翌日出荷分について製品ロット別に行う。」 - 製品ロット別在庫引当処理のフロー説明
- 図1の注釈
X1
は「引当受注数量」- 「製品ロット別在庫マスタの引当可能在庫数量」を参照し、引当処理を実施
これら事実が根拠になります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
「a」と「b」の役割の取り違え
→ aは「受注数量が在庫以下で完了可能」、bは「部分引当の残処理」なので、この主旨を理解していないと逆に選んでしまう。 -
「引当可能在庫数量」自体をa,bの条件に混同するミス
→ a,bとも在庫数に関わるが、aは「比較条件」、bは「在庫全量の引当」である点を意識して区別する。 -
「引当可能在庫数=0」の分岐前の理解不足
→ 在庫数0なら処理しない流れで、a,bは在庫ありの場合の処理なので、文脈を誤るとズレる。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
ロット別在庫管理の基本処理
引当可能在庫数と受注数量を比較し「全量引当か部分引当か」を判断する基礎ロジックを理解する。 -
業務フロー図や処理フローでの「条件分岐」の意図を正確に掴む力
特に数量比較や条件分岐は、その意味を噛み砕いて整理する。 -
「引当可能在庫数量」=「引当可能な在庫残数」という概念をしっかり押さえること。
-
出荷指示作成時に数量調整を行う、欠品時も考慮する、など、現実的な業務要件への理解を深めておく。
主要ファイルの関連部分再掲(参考)
以上のポイントを押さえることで、図1の(a),(b)に適切な処理内容が論理的に理解でき、正確な解答を導けます。
設問4
〔ロット追跡〕について、本文中の(c),(d)に入れる適切な手順内容を、表1のファイル名、属性を用いてそれぞれ45字以内で述べよ。
模範解答
c 原材料受入実績から,手順 2 で抽出した原材料ロット番号に対応する購買先コードを抽出
d:出荷実績から,手順1で抽出した製品ロット番号に対応する得意先コードを抽出
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- (c)は「製品ロットに使われた原材料ロットに紐づく購買先を出す」という処理。
- (d)は「原材料ロットを使った製品ロットで出荷された得意先を抽出する」処理。
- それぞれのファイルとキー項目を用い、段階的に対象情報を抽出する流れがポイント。
2. なぜその解答になるのか(本文引用と論理的説明)
全体背景
ロット追跡とは、製品や原材料のロット単位で「どの原材料がどの製品に使われ、その製品がどの得意先に渡ったか」を追跡できる仕組みです。
(c) の解答理由
-
手順1,2は問題文にある通り、
・手順1:出荷実績から、該当製品ロット番号レコード抽出 ・手順2:原材料使用実績から該当製品ロット番号に使われた原材料ロット番号取得
-
手順3 (c) で必要なのは、原材料ロット番号に紐づく「購買先」を抽出すること。
-
具体的に、「原材料受入実績」ファイルには、
原材料ロット番号、購買先コード、原材料賞味期限などが記録されている。 -
よって、手順2で得た原材料ロット番号から「原材料受入実績」ファイルを参照し、「購買先コード」を抽出するのが自然で論理的です。
(d) の解答理由
-
問題文の手順は、
・手順1:原材料使用実績から原材料ロット番号で製品ロット番号抽出 ・手順2:(d)
-
(d) で必要なのは、「抽出した製品ロット番号を使い、それを出荷した得意先コードを抽出」すること。
-
「出荷実績」ファイルは、製品ロット番号と得意先コードが記録されており、言い換えれば、「どの得意先にどの製品ロットが出荷されたか」が分かる。
-
つまり、ここでは「出荷実績ファイルから製品ロット番号に対応する得意先コードを抽出」するのが正しい手順となります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ選択肢
-
誤りやすい点1: 原材料ロット情報の取得先の混同「原材料ロット番号に対応する購買先はどのファイルか?」で「原材料使用実績」ファイルの方を考えがちですが、原材料使用実績ファイルは、製品ロットと原材料ロットの使用数量を管理するものであり、購買先コードは含まれていません。
-
誤りやすい点2:製品ロットを用いた得意先の抽出「製品ロット番号に基づき、得意先コードをどこから探すか?」で「受注ファイル」など他のファイルを選びがちですが、得意先コードを製品ロット別に具体的に追跡するには「出荷実績ファイル」が適切です。
-
ひっかけになる誘導問題中に複数のファイルが出てくるため、目的に合うファイルを正しく選ぶ注意力が必要。ファイル名・主キー・属性をしっかり把握することが重要です。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
ロット追跡の基本的な考え方
- 生産(製造)サイクルにある「原材料ロット番号」と「製品ロット番号」をキーに使用実績を追跡し、さらに「出荷実績」や「受入実績」から購買先や得意先を抽出できる形にすることが重要。
-
ファイル構造と主キーの理解
- どのファイルにどの情報が登録されているかを把握し、そのファイルの主キーとなる項目情報を理解すること。
-
システム設計問題でのファイル連携のイメージ
- 目的に応じて、関連ファイルを参照・結合してデータを取り出す処理フローをイメージできること。
-
具体的なシステム用語の整理
- 例:受注番号、得意先コード、製品コード、製品ロット番号、原材料ロット番号、購買先コードの違いや役割を正確に理解。
参考情報:ファイルの主要属性一覧(表1より抜粋)
これらの属性を基に正しい抽出手順を理解しましょう。
以上のポイントを踏まえ、設問(c)(d)では本文の手順とファイル構成から適切なデータ抽出方法として、
- (c) 「原材料受入実績ファイルから原材料ロット番号に対応する購買先コードを抽出」
- (d) 「出荷実績ファイルから製品ロット番号に対応する得意先コードを抽出」
が正解となります。