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システムアーキテクト試験 2014年 午後1 問01
社内システムの強化・改善に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
A社は、設備機械メーカB社の子会社で、B社が販売した設備機械の改修、保守を行っている保守サービス会社である。このたび、社内システムの強化・改善を行うことにした。
〔社内システムの強化・改善の目的〕
A社では、設備機械の改修、定期保守の受注案件単位に、工事管理番号(以下、工番という)を採番し、工番が採番された案件(以下、案件という)ごとに、見積りから受注、手配、工事実施、顧客検収、売上、請求、入金、損益までを管理している。
しかし、現行システムではそれらが部分的に実装されているだけなので、一元的に管理できていない。
そこでこのたび、案件の発生から完了までを一元的に管理するシステムを構築し、顧客サービスの向上と、進捗管理、損益管理などの社内管理の強化につなげることにした。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕
(1) 見積り・受注
① 顧客からの、設備機械の不具合対応要請や改造要求などの改修の依頼については、現場に出向いて、改修の内容を確認した後、見積金額のベースとなる予定原価を算定して、顧客に見積りを提示する。顧客と見積りを合意した後、受注となり、工番を採番する。
② 定期保守は、基本契約を事前に締結しているが、保守時期が到来するたびに、付帯作業も含めた見積金額のベースとなる予定原価を算定し、A社から顧客に見積金額の通知を行い、顧客との合意後、定期保守の受注として工番を採番する。
(2) 手配計画・部品手配・作業手配
① 案件の作業時期から、手配計画を作成する。部品の手配計画として、改修及び保守に必要な部品の所要量を計算し、調達時期を決定する。また、作業の手配計画として、案件の作業量を見積もり、作業期間に合わせた作業員、機材の手配を決定する。社内の作業員だけで作業が間に合わないときは、外注の手配を計画に含める。
② 部品の手配計画に基づき、部品手配として発注を行う。
③ 作業の手配計画に基づき、作業手配として作業指示と部品の出庫指示を行う。また、外注を手配する必要があるときは、外注先に発注を行う。
(3) 工事実施・顧客検収
現場で改修作業、保守作業を実施する。作業の終了後に作業実績報告を行い、外注した作業については、外注検収報告を行う。顧客検収を受けた後に顧客検収報告を行う。作業実績報告では、作業員別作業時間、改修及び保守に使用した部品の使用量、作業員の出張滞在費、部品・工事機材の運搬費などを報告する。
(4) 売上・請求・入金
① 顧客検収報告に基づき、売上を計上し、締め日に請求を行う。
② 顧客からの入金額が、当該案件の売上額と一致していることを確認する。
(5) 工番別損益管理
① 工番別原価要素ごとに、実績原価集計を行う。集計する原価要素には、部品費、労務費、外注費及び直接経費がある。直接経費は、作業員の出張滞在費と部品・工事機材の運搬費である。
② 入金を確認し、工番別実績原価を集計して、工番別損益を確定する。この時点で、案件は完了となる。
〔社内システムの強化・改善の内容〕
案件の発生から完了までの業務の流れの中で、現在検討している社内システムの強化・改善の内容は、次のとおりである。
(1) 現行の受注システムでは、受注登録時に人が工番を採番し、入力していたが、強化・改善後は、受注システムに、見積書及び定期保守通知書の作成処理を新規に追加し、その中で工番の自動採番を行う。改修については、見積書を作成後、管理者の承認を受け、承認登録する。定期保守については、付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書の作成後、管理者の承認を受け、承認登録する。いずれも、管理者の承認がなければ工番の採番はできない。承認された見積書及び定期保守通知書を顧客に提示し、合意後に受注となる。
(2) 見積りの段階で、原価要素別に予定原価を登録する。
(3) 受注システムでの受注登録は、入力の負担を軽減するために、改修では見積書の内容を、定期保守では定期保守通知書の内容を引き継いで登録できるようにする。
(4) 部品手配及び作業手配は、現行の購買管理システム及び作業管理システムを利用する。購買管理システムの機能には、部品所要量計算、部品発注・検収処理、外注発注・検収処理がある。作業管理システムの機能には、作業予定登録、作業指示処理、部品出庫指示処理、作業実績処理、顧客検収登録がある。
(5) 案件全体の進捗と損益の管理のために、工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムを新規に構築する。これらのシステムで必要となる情報は、できるだけ現行システムから取得できるようにする。
〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕
現行システムと、工番別進捗管理システム及び工番別損益管理システムとの関連を図1に示す。

(1) 工番別進捗管理システム
工番別進捗管理システムでは、案件の発生から完了までの進捗状況を工番別進捗マスタ上で管理する。
① 案件の発生から完了までに行われる業務上の各機能(以下、業務機能という)について、システムで終了とするタイミングを、業務機能終了タイミング表として表1に示す。

② 手配計画の中で、手配の予定を工番別進捗マスタに登録するとき、作業時期からみて、手配の整合性をチェックし、問題があるときは、警告を表示する。
(2) 工番別損益管理システム
工番別損益管理システムでは、工番ごとの売上、原価、損益及び入金額の予定と実績を工番別損益マスタ上で管理する。また、原価については、原価要素別に管理する。賃率マスタは、作業員の資格別の時間当たり単価を管理している。
① 売上の登録
見積時に、予定売上の登録を行い、顧客検収報告の登録時に、実績売上として登録する。
② 予定原価の登録
予定原価は、見積段階では、作業は社内の作業員だけで行うものとみなし、原価要素別に部品費、労務費、直接経費を見積もり、登録する。
③ 実績原価の収集
・部品費は、作業実績報告で登録された、実際に使用した部品の費用を計上する。
・労務費は、作業実績報告から計算し、計上する。
・外注費は、購買管理システムからの外注検収時の金額を計上する。
・直接経費は、作業実績報告で登録された、作業員の出張滞在費、部品・工事機材の運搬費を計上する。
④ 損益計算
損益は、予定売上と予定原価の差額を予定損益として、実績売上と実績原価の差額を実績損益として計算する。
⑤ 入金の把握
入金予定は、受注時点での売上額を入金予定額とし、入金実績は現行の会計システムからの入金情報によって更新する。
設問1(1):社内システムの強化・改善後の案件の発生及び完了について、(1),(2)に答えよ
工番の採番は、強化・改善後の受注システムの中で、どのタイミングで行うべきか。30字以内で述べよ。
模範解答
見積書又は定期保守通知書の承認が登録されたとき
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 工番の自動採番のタイミング
- 見積書または定期保守通知書の承認が登録された時点
- 管理者の承認がなければ工番の採番はできない契約条件
- 受注システム内での承認登録後に工番採番が行われること
なぜ模範解答になるのか(問題文の記述を基に論理的説明)
問題文の〔社内システムの強化・改善の内容〕(1)には次のように記述されています。
「受注システムに、見積書及び定期保守通知書の作成処理を新規に追加し、その中で工番の自動採番を行う。改修については、見積書を作成後、管理者の承認を受け、承認登録する。定期保守についても同様に、付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書の作成後、管理者の承認を受け、承認登録する。 いずれも、管理者の承認がなければ工番の採番はできない。」
つまり、
- 見積書や定期保守通知書を作成する段階だけでなく、それらの**「管理者承認」**がなされ、承認登録が完了したときに初めて工番が採番できるという業務ルールが設定されている。
- これにより、承認前の不確定な案件に工番が割り振られることを防ぎ、工番の管理を厳格に行う。
さらに表1の「業務機能終了タイミング表」では、
問題文の文脈より、「見積り・定期保守」も「見積書の承認」と同様に管理者承認の登録時が終了タイミングと考えられ、すなわちこの承認登録時に工番の自動採番を行うことになります。
以上より、「工番の採番は見積書又は定期保守通知書の承認が登録されたときに行う」が論理的に正しい説明となります。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
受注登録時に工番を採番すると思い込みやすい
現状の(現行)システムでは、受注登録時に人が工番を採番していたため、ここで採番すると思いがちです。しかし問題文では強化・改善後の仕組みで「承認登録時」と明確にしています。 -
見積書作成時点で工番を採番すると誤解しやすい
見積段階で工番を採番するのではなく、「承認を受け承認登録が完了した」時点で採番となることを理解しましょう。 -
承認不要で工番が採番されると誤認しやすい
問題文で「いずれも管理者の承認がなければ工番の採番はできない」と明示されているため、承認無視で採番は認められません。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
業務プロセスにおける「承認」の重要性
システム導入や改修時には、承認ルールの設定が多い。特に案件管理で番号管理(工番など)は承認完了後に行うことが多い。 -
業務機能終了タイミングの理解
システム設計問題で「いつそのステップが公式に完了とみなされるか」は重要な論点。 -
「見積り」「承認」「受注」の関係
見積り(見積書・通知書の作成)→管理者承認→工番採番→受注登録、の流れを正確に理解できるかが重要。 -
表で示されている用語やタイミングを読み取る力
本問題のように表1の「業務機能終了タイミング表」はよく出題されるため、表形式のデータから正しいタイミングを読み取る練習が必要。
この理解に基づき、模範解答である「見積書又は定期保守通知書の承認が登録されたとき」という回答は、業務ルールにもとづく正確な工番採番のタイミングとして適切です。
設問1(2):社内システムの強化・改善後の案件の発生及び完了について、(1),(2)に答えよ
顧客との契約上での、案件の完了時期を、40字以内で述べよ。
模範解答
顧客からの入金額が,当該工番の売上額と一致していることを確認したとき
解説
模範解答の核心キーワードと論点整理
-
キーワード
- 「顧客からの入金額」
- 「当該工番の売上額と一致」
- 「確認したとき」
- 「案件の完了時期」
-
論点
案件(工番)としての業務処理の完了は、単なる作業や検収の終了だけでなく、顧客との金銭的なやり取りの最終確認である「入金確認」をもって確定される点が重要です。
この「入金の一致確認」が契約上、案件完了のタイミングと定められていることを理解することがカギとなります。
なぜその解答になるのか(問題文の論理的説明)
問題文の【案件の発生から完了までの現行業務の流れ】の(4)「売上・請求・入金」及び(5)「工番別損益管理」の箇所では、案件完了の条件について明確に示されています。
- (4) ②:「顧客からの入金額が,当該案件の売上額と一致していることを確認する。」
- (5) ②:「入金を確認し,工番別実績原価を集計して,工番別損益を確定する。この時点で,案件は完了となる。」
これらの記述から、単に作業内容が終了しているだけではなく、請求した売上代金の入金が顧客から確認され、かつ入金額が売上額と一致していることをもって「案件完了」となることが明示されています。
つまり、契約上の案件完了とは「顧客からの入金額が当該工番の売上額と一致していることを確認したとき」なのです。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢の理由
1. 作業完了や顧客検収のタイミングで完了と誤解しやすい
- 作業実施の完了や顧客検収が済んだ時点では、案件は技術的な面で終わっているように見えますが
- 問題文では「顧客検収後に売上を計上し」ており、それだけでは案件完了ではありません。
2. 請求書の発行をもって完了とする誤解
- 請求書が発行された段階(請求の段階)は、まだ入金が確認できていないので完了とは言えません。
- 「入金が登録された時点」が案件完了に近い段階になりますが、入金額と売上額の不一致がある場合は完了できません。
3. 原価集計や損益計算で完了と考えない
- 原価集計や損益計算は事後処理の一部であり、これらの最終結果も入金確認後に行われることから、入金が確認されないと確定できません。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
以上を押さえておくことで、本問題で問われている「顧客との契約上の案件完了時期」という重要な業務プロセスの理解が深まり、正しい解答が導きやすくなります。
設問2
手配計画の中で、手配の整合性をチェックしている。作業手配での作業員,外注、機材の手配の他に,何がどのように計画されているかをチェックしているか。30字以内で述べよ。。
模範解答
部品手配が,作業時期に合わせて計画されているか
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- キーワード:部品手配、作業時期、計画、整合性チェック
- 論点:「手配計画」の整合性を確認する対象として、作業員・外注・機材だけでなく、部品の手配が「作業時期に合わせて」計画されているかをチェックしている
2. なぜその解答になるのか【問題文の引用を用いた論理的説明】
問題文の「〔工番別進捗管理システム〕(1)②」に、次の記述があります。
「手配計画の中で、手配の予定を工番別進捗マスタに登録するとき、作業時期からみて、手配の整合性をチェックし、問題があるときは、警告を表示する。」
この「手配計画」には以下の要素が含まれます(「〔社内システムの強化・改善の目的〕(2)①」より):
- 作業員、機材、外注の手配
- 部品の所要量の計算と調達時期の決定
つまり、作業量に合わせた作業員・機材・外注の手配だけでなく、必要な部品の「所要量を計算し」「調達時期を決定」することも「手配計画」に含まれています。
したがって、手配の整合性チェックでは、「部品手配も作業時期に合わせて計画されているか」を検証しなければなりません。
したがって、手配の整合性チェックでは、「部品手配も作業時期に合わせて計画されているか」を検証しなければなりません。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの注意点
-
作業員・機材・外注だけが手配の対象と誤解しやすい
問題文では「作業の手配計画として、作業員、機材、外注の手配を書いてあるため、これだけで十分と思い込みやすい」ですが、あくまでも「手配」という大きな括りの中に部品手配も含まれます。 -
「手配の整合性チェック」は「作業時期に合わせて」の確認であることを忘れやすい
時間軸での整合性が重要であるため、単に手配されているかどうかだけでなく「作業時期に適合しているか」が問われます。 -
「手配計画」の範囲を正確に把握できていない
「手配計画」は単に作業員や外注を割り当てることだけでなく、「部品の所要量計算」と「調達時期決定」なども含まれることを明確に理解しておく必要があります。
4. 試験対策ポイント/まとめ
受験生へのアドバイス
業務の全体像を把握する際には、「手配計画」がどの範囲までの計画なのかを誤解しないことが重要です。特に、工事や保守作業では、単に人員や機材の配置だけでなく、部品の調達タイミングが全体の進行を左右します。この点をしっかり押さえておくと、設問に対して正確な回答が可能となるでしょう。
【まとめ】今回の設問の正解は
「部品手配が,作業時期に合わせて計画されているか」
です。
この答えは、「手配計画の中で整合性チェックが行われている対象の一つに『部品手配』があり、その時期が作業時期に適合しているかを検証している」ことを示しています。
この答えは、「手配計画の中で整合性チェックが行われている対象の一つに『部品手配』があり、その時期が作業時期に適合しているかを検証している」ことを示しています。
設問3(1):工番別進捗管理システムについて,(1),(2)に答えよ。
作業手配及び工事実施関連の業務機能のうち、購買管理システムからの情報に基づき、終了と判断する業務機能を表1の番号から二つ挙げ,判断のために取得すべき情報を、それぞれ15字以内で述べよ。(①,②は順不同)
模範解答
①:番号:8
情報:外注先への発注書発行情報
②:番号:11
情報:外注検収報告の登録情報
解説
模範解答の核心となるキーワード・論点整理
-
業務機能終了タイミング表(表1)からの該当業務機能番号
「作業手配及び工事実施関連の業務機能」のうち、購買管理システムからの情報に基づき終了と判断する業務機能は以下の2つ:- 【8】作業手配・外注発注(外注先への発注書が発行されたとき)
- 【11】工事実施・外注検収(外注検収報告が登録されたとき)
-
取得すべき情報(15字以内)
- 外注先への発注書発行情報
- 外注検収報告の登録情報
なぜその解答になるのか:論理的説明
1. 該当業務機能の特定
問題文の【工番別進捗管理システム】の説明の中にある「業務機能終了タイミング表(表1)」によると、
となっています。
ここで、「購買管理システムからの情報に基づき終了と判断する業務機能」とあるため、購買管理システムで管理・処理されている情報をもとに「終了判定」を行う業務機能を探します。
2. 購買管理システムの機能と取得情報
問題文の「〔社内システムの強化・改善の内容〕(4)」に、
「部品手配及び作業手配は,現行の購買管理システム及び作業管理システムを利用する。
購買管理システムの機能には、部品所要量計算,部品発注・検収処理,外注発注・検収処理がある。」
つまり、購買管理システムでは「外注発注」と「外注検収」の情報が扱われています。
これに対応する業務機能は表1の【8】作業手配・外注発注(発注書発行)と【11】工事実施・外注検収(検収報告登録)です。
よって、これらの2つの業務機能は購買管理システムの情報を基に終了判断できます。
受験者が誤りやすいポイント・注意点
-
番号「5」部品手配・発注との混同
番号5の「部品の発注書が発行されたとき」も購買管理システムで扱われるため混乱しやすいですが、問題は「作業手配及び工事実施」に関わる業務機能から選ぶ点に注意してください。部品手配は「作業手配及び工事実施」ではなく部品手配関連と文脈上明確に区分されています。 -
外注関連に絞る理由の理解不足
購買管理システムには複数機能がありますが、ここでは「外注発注」「外注検収」に該当するものを選択する必要があります。「外注」というキーワードに注目しましょう。 -
情報取得内容の表現のポイント
情報は「発注書発行」「検収報告登録」といったイベント性のある具体的なものを求められています。曖昧な「外注情報」などでは不十分です。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
進捗管理システムの終了タイミングは業務フローの重要な節目に連動している
→ 表1の業務機能と終了タイミングを正確に理解すること。 -
システムごとの機能分担を整理する
→ 購買管理システムは部品(自社または外注)発注・検収を扱うことが多い。 → 作業管理システムは作業指示、実績報告などの管理に重点を置く。 -
外注関連の業務は必ず「発注」と「検収(実施結果)」の2つのステップで管理される
→ 進捗の区切りとして「発注書発行」と「外注検収報告登録」が重要。 -
問題文にある「作業手配及び工事実施関連の業務機能」という語句を正しく解釈する
これに合致しない部品手配などは除外できる。
まとめ表:該当業務機能と取得情報
このように、業務プロセスの中での**「発注済」「検収完了」という明確なイベントをもって業務機能の終了が判断される**ことをしっかり理解し、システム毎の機能や業務機能終了タイミング表の対応関係を把握することが重要です。
設問3(2):工番別進捗管理システムについて,(1),(2)に答えよ。
業務機能を終了とするタイミングについて、表1中(a),(b)に入れる適切な内容を、それぞれ20字以内で述べよ。
模範解答
a:定期保守通知書の承認が登録されたとき
b:顧客検収報告が登録されたとき
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- (a)は「見積り・定期保守」業務機能を終了とするタイミングに対応
- (b)は「顧客検収・売上」業務機能を終了とするタイミングに対応
2. 解答が正しい理由の論理的説明
(a) 定期保守通知書の承認が登録されたとき
- 問題文〔社内システムの強化・改善の内容〕(1)に、「定期保守については、付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書の作成後、管理者の承認を受け、承認登録する。」とあります。
- 承認なしでは工番の採番ができないため、承認が業務機能としての区切りとなります。
- 表1の業務機能終了タイミングで、(1) 見積り・改修は「見積書の承認が登録されたとき」となっているため、定期保守でも同様に「定期保守通知書の承認が登録されたとき」が妥当です。
- したがって、「定期保守通知書の承認が登録されたとき」が(a)の正解です。
(b) 顧客検収報告が登録されたとき
- 問題文の〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(3)で、「顧客検収を受けた後に顧客検収報告を行う」とあります。
- さらに、工番別損益管理システム概要の〔売上の登録〕で「顧客検収報告の登録時に、実績売上として登録する」と明示しています。
- 表1の「顧客検収・売上」の業務機能終了タイミングは(b)が該当します。顧客検収完了を示す顧客検収報告登録の時点で業務機能終了となるため、正しく(b)は「顧客検収報告が登録されたとき」となります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの解説
- 「承認が登録されたとき」を見逃す可能性
→ 見積り・改修と同様に、定期保守でも「承認を受け、承認登録する」点に着目することが重要です。 - 「顧客検収報告」と「売上計上」を混同し、売上登録時点を終了タイミングと誤解することがある
→ 表1の「請求」や「売上」が続く業務として分かれているため、顧客検収報告登録のタイミングが業務機能終了となります。 - 定期保守通知書と見積書という2種類の書類の違いを見落とすこと
→ 改修は「見積書」、定期保守は「定期保守通知書」がそれぞれ作成されて承認されます。業務機能終了タイミングの呼び方もそれぞれに合わせる必要があります。
4. 試験対策のポイント・覚えておくべき知識
- 業務プロセスの区切りは、システム上の「承認登録」や「報告登録」のタイミングで判断されることが多い。
- 「見積り」段階は承認までがセットで業務完了となり、「受注」「顧客検収」などの後続業務も、それぞれ完了時点が明確に定義されているか確認する。
- 表や図中で使われている用語をそのまま正確に記憶・理解できていることが重要。書類名や登録項目を混同しないこと。
- 進捗管理や損益管理関連のシステムは、各業務の完了判定条件がシステムのどの登録タイミングに連動しているかを理解しておく。
まとめ
この問題では、業務フローの完了判定ポイントをしっかり押さえ、適切なタイミングを表現できるかが問われています。この理解が現場のシステム設計や運用とも直結するため、実務的な視点も含めて整理しておきましょう。
設問4(1):工番別損益管理システムについて,(1),(2)に答えよ。
予定原価の原価要素のうち、見積時には設定できず,作業計画の立案時に初めて設定できる原価要素がある。その原価要素を答えよ。
模範解答
外注費
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 予定原価の原価要素
- 見積時に設定できる原価要素(部品費、労務費、直接経費)
- 作業計画立案時に初めて設定できる原価要素
- 外注費
なぜ「外注費」が答えになるのか(論理的説明)
問題は「予定原価の原価要素のうち、見積時には設定できず、作業計画の立案時に初めて設定できるものは何か」という内容です。
【問題文】からの根拠引用
- 受注段階の予定原価の扱いについて:
「予定原価は,見積段階では,作業は社内の作業員だけで行うものとみなし,原価要素別に部品費,労務費,直接経費を見積もり,登録する。」
この記述から、見積時点で「部品費」「労務費」「直接経費」は予定原価として見積可能であることがわかります。
- 一方で、作業手配計画での外注については:
「外注の手配を計画に含める」
とあり、外注手配の有無は「作業手配の計画作成」という段階で初めて検討されます。したがって、外注費は見積時に予定原価として設定できず、「作業計画の立案時」に初めて計上できる原価要素です。
誤りやすいポイント・ひっかけとなる選択肢について
- 労務費(作業員の時間単価)
→ 社内作業員だけで作業すると想定して見積時に登録可能。 - 直接経費(出張滞在費、運搬費など)
→ 予定原価として見積時に計上可能。 - 部品費
→ 必要部品の所要量計算に基づき見積時に設定。
これらは見積段階で登録可能であるため、消去されます。
- 外注費
→ 手配計画で外注の必要性が判明して決定されるため、見積時には予定できない。
試験対策として押さえておくべきポイント
このように、原価管理や工程管理の理解において、「外注費は見積時には確定できず、作業手配計画の立案時に初めて予定原価として扱う」という点を押さえておくことが重要です。
以上を踏まえ、模範解答の「外注費」が正解となります。
設問4(2):工番別損益管理システムについて,(1),(2)に答えよ。
労務費の実績原価は,作業実績報告で報告された作業員全員の労務費になる。作業員一人一人の労務費は、どのように計算されるか。計算式を答えよ。
模範解答
作業員の作業時間実績×作業員の資格別の時間当たり単価
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 作業員の作業時間実績
- 資格別の時間当たり単価
- 労務費は、作業員ごとに異なる単価を賃率マスタから取得し、それに作業時間を掛けて計算する
- 労務費は、作業実績報告に基づく実績原価要素の一つ
なぜその解答になるのか(問題文の記述から論理的に説明)
A社の社内システム強化・改善の内容及び「工番別損益管理システム」の説明で労務費の算出方法が示されています。
ポイントとなる記述
- 「賃率マスタは,作業員の資格別の時間当たり単価を管理している。」
- 「労務費は,作業実績報告から計算し,計上する。」
このことから、労務費を計算するためには、各作業員ごとの「作業時間」と、賃率マスタに登録された「資格別の時間当たり単価」が必要であることが分かります。
したがって、
作業員の「作業時間実績」 × 資格別の「時間当たり単価」
の計算式で労務費が求められます。この方法で労務費を算出することで、資格が異なる作業員の賃金差を反映し、より正確な原価管理が可能になります。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
全作業員共通の一律単価を使用する誤解
作業員ごとに賃率(時間当たり単価)が異なるという点を見落とし、単純に作業時間だけを計算に用いる誤り。 -
作業時間以外の費用(例:出張滞在費や運搬費)を労務費に含める誤り
これらは直接経費として別に計上されています。労務費は「作業員の作業時間」に基づく賃金計算に限定されます。 -
作業実績報告の存在を無視する誤り
労務費は「作業実績報告」に基づいて計算されるため、この報告が前提となることを理解していないと誤答しやすい。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
以上のように、労務費は「作業実績」である作業時間と「資格別単価」の積算によって求められるため、この点を確実に理解しておくことが重要です。試験でも「作業時間実績」と「資格別単価」の組み合わせによる計算式が問われることが多いため、しっかりと押さえておきましょう。