システムアーキテクト試験 2014年 午後102


物流センタのシステム構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。

 C社は、関東地方を中心に日用雑貨品の製造・販売を行っている。このたび物流センタの新設に伴い、物流センタシステムを新規に構築することになった。   〔現在の受注・出荷業務及びシステム化状況〕  (1) 商品は、見込生産をしており、生産後、決められた配分割合で各営業所に配送し、各営業所で在庫を保持している。  (2) 顧客は、雑貨卸問屋及び量販店が主であり、担当する顧客が営業所ごとに決められている。商品の注文は、営業担当者が直接顧客から受けるか、顧客から営業所への電子メール、電話、ファックスで受けている。  (3) 受注は、各営業所で入力し、営業所サーバで管理している営業所在庫から引き当てる。在庫引当てができた受注は、システムで出荷関連の帳票を発行して出荷する。  (4) 営業所在庫で引当てができなかった受注は、他営業所に在庫の有無を確認し、在庫があれば受注データをその営業所に送信し、出荷を依頼する。  (5) 他営業所にも在庫がない場合は、工場サーバに自営業所への出庫依頼データを送信する。工場は、受けた出庫依頼を追加の生産計画として取り込み、その結果を営業所への出庫予定データとして送信する。営業所は、その出庫予定(営業所にとっての入荷予定)が、受注した納期に影響する場合は、営業担当者が顧客と納期調整を行い、その結果を受注変更として登録する。  (6) 顧客への出荷データは売上データとして、営業所サーバから夜間に本社へ送信され、本社サーバで売上計上、請求・入金処理が行われる。売上は、受注した営業所への計上が原則であるが、他営業所から出荷した場合は、売上の一部が出荷手数料として、出荷した営業所に振替計上される。
〔物流センタ新設後の業務概要〕  新設した物流センタで商品在庫を集中管理し、顧客への出荷は全て物流センタから行う。物流センタには、物流センタサーバを導入し、営業所の受注処理を行う。 現在検討している、物流センタ新設後の業務概要は、次のとおりである。
 (1) 受注・在庫引当て   ① 顧客からの受注は、各営業所から物流センタサーバに登録し、出荷予定、出荷実績、在庫引当てなどの状況を、随時照会できるようにする。受注登録時に、物流センタの商品在庫の引当てを行い、結果を出荷予定ファイルに出力する。   ② 物流センタの商品別在庫を管理する在庫マスタの在庫関連項目として、実在庫、引当済実在庫、入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を設ける。受注登録時の在庫引当ては、これらの在庫情報から算出した引当可能在庫に対して行われる。引当可能在庫は、次の式で算出する。    引当可能在庫 = 実在庫 + 入荷予定在庫 −(引当済実在庫 + 引当済入荷予定在庫)
 (2) 入荷   ① 物流センタサーバは、工場サーバから入荷予定情報を受信し、在庫マスタの入荷予定在庫を更新するとともに、翌日分の入荷予定表を出力する。工場からの入荷時に、入荷予定表と現品の照合チェックを行う。   ② 入荷実績を物流センタの受入場の端末から入力し、保管庫に棚入れするための棚入指示表を出力するとともに、在庫マスタの実在庫、引当済実在庫、入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を更新し、棚番別在庫ファイルの棚入指示済在庫を更新する。
 (3) 棚入れ・保管   ① 棚入指示表に基づき、商品を保管庫の棚に入れ、ポータブル端末から棚入実績を入力し、物流センタサーバに送信する。保管庫では、1種類の商品を一つ以上の棚に保管している。保管庫の在庫管理は、物流センタサーバの棚番別在庫ファイルで行い、棚入実績によって、棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚入指示済在庫を更新する。   ② 適正在庫を維持するために、在庫マスタに在庫補充点を新たに設定する。在庫量が在庫補充点以下になると、システムで一定量の在庫補充のオーダを生成し、工場サーバに送信する。在庫補充点には、在庫補充のリードタイム内での欠品を防止するための安全在庫が含まれている。
 (4) 棚出し   ① 保管庫で、翌日出荷予定の棚出指示表を出力し、棚番別在庫ファイルの棚出指示済在庫を更新する。棚出指示表に基づいて棚出しをした後、ポータブル端末から棚出実績を入力し、物流センタサーバに送信する。   ② 棚出実績によって、棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。
 (5) 出荷   ① 出荷場で、翌日出荷予定の出荷予定表と出荷ラベルを出力する。棚出しされた商品を出荷場で段ボール箱に梱包し、出荷ラベルを貼り、納品先別にそろえておく。翌日、商品を引取りに来た運送業者のトラックに段ボール箱を積み込む。その出荷実績を出荷場の端末から入力し、受注の消込み、在庫マスタの実在庫、引当済実在庫を更新するとともに、納品伝票などの出荷関連帳票を出力する。   ② 物流センタからの出荷時点で、受注した営業所の売上として計上される。売上データは、夜間に本社サーバに送信し、本社サーバで売上集計処理、請求・入金処理を行う。
  〔棚出しから出荷までの業務フロー〕  棚番別在庫ファイルのレイアウトを図1に、(4)棚出しから(5)出荷までの業務フローを図2に示す。
システムアーキテクト試験(平成26年度 午後I 問2 図1)
システムアーキテクト試験(平成26年度 午後I 問2 図2)
  〔棚出し関連及び出荷関連の処理記述書〕  棚出し関連の処理記述書を表1に、出荷関連の処理記述書を表2に示す。
システムアーキテクト試験(平成26年度 午後I 問2 表1)
システムアーキテクト試験(平成26年度 午後I 問2 表2)

設問1(1)物流センタの在庫について,(1),(2)に答えよ。

受注登録時の在庫引当てにおいて,引当対象となる引当可能在庫の算出式の(a)~(c)に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
a:実在庫 b:引当済実在庫 c:出荷予定日までの入荷予定在庫
解説

1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

項目内容
a実在庫
b引当済実在庫
c出荷予定日までの入荷予定在庫
  • 実在庫:現在、物流センタに実際に保管されている商品の数量。
  • 引当済実在庫:既に他の受注に対して引当て済みの実在庫数量。これを差し引くことで、在庫の二重引当てを防ぐ。
  • 入荷予定在庫(出荷予定日までの分):今後、出荷予定日までに入荷見込みのある在庫数量。まだ現物はないが、入荷予定のため引当に考慮する。

2. なぜその解答になるのか—問題文の記述を引用しながら論理的に説明

問題文〔物流センタ新設後の業務概要〕の(1) 受注・在庫引当て部分に以下の記述があります。
「物流センタの商品別在庫を管理する在庫マスタの在庫関連項目として,実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を設ける。
受注登録時の在庫引当ては,これらの在庫情報から算出した引当可能在庫に対して行われる。引当可能在庫は,次の式で算出する。
引当可能在庫 = 実在庫 + 入荷予定在庫 −(引当済実在庫 + 引当済入荷予定在庫)」
この記述から、
  • 実在庫」は現在の倉庫内に実物が存在する在庫を指し、
  • 引当済実在庫」は既に他の受注のために予約されている実在庫なので、在庫引当ての余力から除外すべきです。
  • 入荷予定在庫」はまだ倉庫にないが、出荷予定日までに入荷が見込まれており、計画的な引当てに加えます。
  • 引当済入荷予定在庫」は既に予約されている入荷予定在庫であり、これも除外しなければ過大な引当てとなってしまいます。
したがって、
  • 「a」は、計算式の一番目に書かれている「実在庫」。
  • 「b」は、引当候補から差し引く「引当済実在庫」。
  • 「c」は、ここで「入荷予定在庫」とされていますが、問題文の設問の文脈から在庫引当ての適正な計算に含めるべきは「出荷予定日までの入荷予定在庫」です。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢について

  • 入荷予定在庫の期限の誤解
    「入荷予定在庫」はただの未入荷在庫ではなく、「出荷予定日までに入荷する見込みの在庫」である点が重要です。この期限を含めて計算する理由は、在庫引当の根拠として、予定された納期を考慮する必要があるためです。納期までに入荷しない在庫は引当対象にならないため、単純な入荷予定在庫ではなく「出荷予定日までの」入荷予定在庫が正しい表現です。
  • 「引当済入荷予定在庫」の意味を見落とす
    引当済入荷予定在庫も引当可能在庫の計算対象から差し引く必要があります。ここを忘れてしまうと、二重引当てや過大な引当てになる恐れがあります。
  • 「実在庫」と「引当済実在庫」を混同する
    実在庫は現物の在庫総量、引当済実在庫はその内、既に他の注文に使われることが決まっている部分なので、差し引いた値が真の引当可能な数量になります。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識

  • 在庫引当可能数の計算式を正確に理解すること
    [ 引当可能在庫 = 実在庫 + 入荷予定在庫 - (引当済実在庫 + 引当済入荷予定在庫) ]
  • 入荷予定在庫は「出荷予定日までに入荷する見込みの数量」という期限付き概念であること
    これは納期調整のための重要なポイント。
  • 引当済在庫を必ず差し引いて、過剰引当てを防止すること
    引当済在庫とは既に他注文で予約済みの数量。
  • 在庫管理システムにおける「実在庫」「入荷予定在庫」「引当済在庫」の役割の違いを明確に区別して理解すること
  • 設問文のキーワードを見逃さず、そのまま反映した回答を心がけること
    問題文の語句(今回なら「実在庫」「引当済実在庫」「入荷予定在庫」)と同等の見慣れた専門用語を使うこと。

以上を踏まえ、今回の設問の解答は以下の通りです。
(a)(b)(c)
実在庫引当済実在庫出荷予定日までの入荷予定在庫

設問1(2)物流センタの在庫について,(1),(2)に答えよ。

物流センタへの入荷時に,在庫マスタの実在庫の加算更新と入荷予定在庫の減算更新を行う。他に二つの在庫情報が更新される可能性がある。その二つについて,何の在庫情報が,どのように更新されるか。それぞれ20字以内で述べよ。
模範解答
①:引当済実在庫が加算更新される。 ②:引当済入荷予定在庫が減算更新される。
解説

1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 実在庫の「加算更新(増加)」
  • 入荷予定在庫の「減算更新(減少)」
  • 加えて、更新される2つの在庫情報:
    引当済実在庫が「加算更新される」
    引当済入荷予定在庫が「減算更新される」
  • 物流センタの在庫管理における「入荷実績」処理時の在庫マスタ更新がポイント
  • 「引当済」在庫とは、既に受注に対して「確保」されている在庫として管理される数量

2. 解答の根拠と論理的説明

問題文の〔物流センタ新設後の業務概要〕(2)入荷の説明に、以下の記述があります。
② 入荷実績を物流センタの受入場の端末から入力し,保管庫に棚入れするための棚入指示表を出力するとともに,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を更新し,棚番別在庫ファイルの棚入指示済在庫を更新する。
つまり、入荷実績を入力した段階で、在庫マスタの4つの在庫項目が更新されます。
  • 実在庫の加算:実際に倉庫に入荷した商品の数量が増えるため、実在庫を増やす
  • 入荷予定在庫の減算:工場から予定されていた入荷が完了したため、入荷予定在庫からその数量を引く
  • 引当済実在庫の加算
  • 引当済入荷予定在庫の減算
このうち、「引当済実在庫」と「引当済入荷予定在庫」が何故更新されるのかは、以下の理由です。
  • 受注に対して既に引当ててある在庫であっても、まだ物理的には倉庫に存在しない在庫(「引当済入荷予定在庫」)を管理している。
  • 入荷が実施されて、実在庫になった場合、これまで「引当済入荷予定在庫」として引当てていた数量を物理的に確保できる現物在庫である「引当済実在庫」へ移行する。
  • したがって、入荷実績時に「引当済入荷予定在庫」は減らし(引当て対象としての予定が完了し)、対応する量だけ「引当済実在庫」を増やす更新処理となる。
この更新により、商品の引当状況が「予定」から「実在」に正しく反映され、在庫の整合性が保たれます。

3. 受験者が誤りやすいポイント・注意点

誤りやすい点理由と解説
「引当済実在庫」と「引当済入荷予定在庫」の更新を漏らす問題文で明示されている該当更新項目を見落としやすい。単に実在庫や入荷予定在庫の増減だけを考えてしまう。
「引当済」在庫の意味を誤解する「引当済在庫」は受注に対して確保中の在庫量を指し、「実在」「入荷予定」に分かれて管理されていることを理解しておくことが必要。
「実在庫」の減算や「入荷予定在庫」の加算と誤認入荷時は「実在庫」が増えるのが正で、逆に「入荷予定在庫」は減る点を混同しやすい。
「棚入指示済在庫」など他の在庫項目を答えてしまう問題文で更新対象として示されていないため答えとしては不適切。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

  • 物流センタにおける在庫管理は、物理在庫だけでなく「引当済」や「入荷予定」等の受注連動した状態別在庫管理が重要。
  • 在庫マスタの主要な在庫項目は以下の4つ:
    • 実在庫:倉庫に実際に存在する数
    • 引当済実在庫:既に受注へ割り当て済みの実在在庫数
    • 入荷予定在庫:将来入荷予定の数(まだ商品が倉庫にない)
    • 引当済入荷予定在庫:受注に引当て済みの入荷予定在庫
  • 入荷時の更新では、入荷予定から実在庫へ数量が移動し、引当済の「予定」在庫が「実在」在庫に置き換わるイメージで理解する。
  • 在庫引当ての式も押さえておくこと:
    引当可能在庫 = 実在庫 + 入荷予定在庫 −(引当済実在庫 + 引当済入荷予定在庫)
    
  • 問題では「在庫マスタの更新」という用語がキーワードになるので、その対象と更新方向を正確に理解することが重要。

以上を踏まえ、問われている「他に二つ更新される在庫情報」の答えは、
更新対象更新内容
引当済実在庫加算更新される(増加)
引当済入荷予定在庫減算更新される(減少)
となり、問題文の模範解答と一致します。

設問2(1)表1の棚出し関連の処理記述書について,(1),(2)に答えよ。

表1中の(d)に入れる適切な字句を,25字以内で述べよ。
模範解答
d:棚番別在庫ファイルの出荷対象商品の棚番
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 棚出指示表作成の処理中 (表1「棚出指示表作成」の (3)で特定すべきもの
  • 「d」の位置は、出荷予定のレコードから棚番別在庫ファイルと関連付けるための情報
  • 棚番別在庫ファイルの主キーは「棚番+商品コード」
  • 出荷対象商品を、どの棚番から棚出し(出庫)するかを特定する必要がある
  • よって、「棚番別在庫ファイルの出荷対象商品の棚番」が「d」に該当

解答となる理由の詳細な説明

問題文(表1 棚出指示表作成処理)を見ると、処理の流れは以下の通りです。
処理機能処理内容
棚出指示表作成(1) 棚出指示表出力指示画面を表示する。
(2) 日付を指定して出荷予定ファイルから翌日出荷予定レコードを抽出する。
(3) dを特定する。
(4) 棚番別在庫ファイルの棚出指示済在庫を更新する。
(5) 棚出指示表の編集、出力を行う。
(6) 出荷予定ファイルの翌日出荷予定レコードの状態を棚出指示済みにする。
この中で「(3) dを特定する」が肝心です。
  • **「出荷予定ファイル」**には「出荷予定商品の情報」が含まれているが、棚から実際に商品を取り出すためには、「棚番」(どの棚に商品があるかの場所情報)が必要です。
  • **「棚番別在庫ファイル」**は保管庫の「棚番」と「商品コード」で管理されており、どの商品がどの棚にどれだけあるかを記録しています。
したがって、「出荷予定ファイルのレコード(商品コード)」だけでは棚出し準備はできません。出荷予定の商品がどの棚にあるかを特定しなければならず、その特定すべきものが**「棚番別在庫ファイルの出荷対象商品の棚番」**になります。
これにより、棚の在庫数量の更新・棚出指示を正確に実施できるため、棚番を特定する必要があるのです。

参考:棚番別在庫ファイルのレイアウト(図1より)

棚番商品コード実在庫棚入指示済在庫棚出指示済在庫
主キー主キー

受験者が誤りやすいポイント・注意点

  • 「商品コード」だけを特定する、又は「出荷予定商品」という表現だけで終わらせてしまう。
    → 商品コードは商品を識別するための最小単位ですが、倉庫管理では棚ごとの在庫を管理し、棚出し指示は「棚番」が必須。商品コードだけではどの棚から取るかわからず、指示不十分。
  • 「棚出指示表」=「棚出指示済在庫の更新」だけに注目してしまい、棚番を特定する理由がおろそかになる
    → 棚出指示の前提として、棚番の特定が必要不可欠であることを忘れない。
  • 「引当済在庫」や「実在庫」、在庫数量だけを答えにする
    → 数量だけでは棚出しの具体的指示にならず、「場所」情報である棚番を特定するのが正解。

試験対策ポイント・覚えておくべき知識

  • 物流・倉庫管理システムでは、「商品コード」だけでなく「棚番」などの保管場所情報が重要である
  • 棚出し(出庫)の指示には、出荷予定の注文商品に対する**「どの棚から出すか」という場所の特定が必須**
  • 在庫管理においては、「在庫数」と「引当済み(予約された)在庫」、「保管場所(棚番)」の3つを関連付けて管理することが基本
  • 問題文や処理記述書に出てくるファイルの主キーや、管理項目をしっかり押さえること(例:「棚番別在庫ファイル」=棚番+商品コード)
  • 出荷作業の各段階(指示→実績入力→在庫更新)でどの情報を用いるか、関連付けるかを意識する

以上を踏まえて、今回の「d」の答えは以下の通りが最も合理的で正解です。
d:棚番別在庫ファイルの出荷対象商品の棚番

設問2(2)表1の棚出し関連の処理記述書について,(1),(2)に答えよ。

表1中の(e)に入れる処理内容を,35字以内で述べよ。
模範解答
e:棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。
解説

模範解答案の核心キーワード・論点整理

  • 棚番別在庫ファイルの更新
  • 実在庫の更新
  • 棚出指示済在庫の更新
  • 【棚出実績入力時の処理内容】
これらが「(e)に入るべき処理内容」のキーワードとなっています。

なぜその解答になるのか(問題文からの論理的説明)

1. 棚出処理の流れについて(表1の処理記述書)

棚出処理では、ポータブル端末から棚出指示要求を受け、実際の棚出し作業が完了すると「棚出実績」が端末からサーバへ送信されます。このタイミングで実績に基づく在庫数量の更新が必要です。
  • 表1「棚出処理」の3行目以降に注目します。
    (3) ポータブル端末から棚出実績が入力されたら、次の処理を行う。
    e
    ② 出荷予定ファイルの翌日出荷予定レコードの状態を、棚出済みにする。
ここで、(e)には「棚出実績に基づいてどのようなファイル・データ更新を行うか」が入るべきです。

2. 棚番別在庫ファイルの役割(図1、問題文)

  • 図1の棚番別在庫ファイルには以下の項目があります。
    項目名説明
    実在庫現実に棚にある商品の数量
    棚入指示済在庫入庫指示が出てまだ棚入れされていない在庫量
    棚出指示済在庫出庫指示が出てまだ棚出しされていない在庫量
  • 問題文(4)棚出しの説明に、
    「② 棚出実績によって,棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。」
と明記されています。

3. 以上から導かれる結論

・棚出し実績入力時に「実在庫」から実際に出庫された数量を減算する。
・棚出指示済在庫(出庫指示だが未実施)の数を減らし、実績に反映させる。
したがって、(e)に入るべき処理内容は、「棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する」とするのが最も正しい表現です。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  1. 在庫マスタの更新と混同する
    • 「在庫マスタ」は商品全体の在庫状況管理に使われ、棚レベルの実績反映ではなく別段階の管理対象です。
    • (e)は「棚番別在庫ファイル」の更新処理なので混同しないよう注意。
  2. 棚出指示済在庫のみの更新とする誤解
    • 実在庫も同時に減るため、「棚出指示済在庫だけを更新する」と誤答しやすい。
  3. 指示済と実績の違いを理解する必要
    • 「棚出指示済在庫」は出庫指示は出ているが実際に出庫はまだ完了していない状態。
    • 「棚出実績」は実際に棚から出庫されたことを意味し、その実績を反映し両方を更新する必要がある。

試験対策として覚えておくべきポイント・知識

ポイント説明
棚番別在庫ファイルの主な項目実在庫、棚入指示済在庫、棚出指示済在庫
棚出し実績入力時の更新処理実在庫(実際に物理的に減る在庫数)と棚出指示済在庫(指示済でまだ実績に反映していない在庫数)の双方を更新する。
在庫管理の多層構造(マスタと棚別ファイル)在庫マスタは全体の在庫、棚番別在庫ファイルは物理棚単位の在庫管理でそれぞれ役割が異なる。混同しないこと。
状態管理と実績管理の違い指示済は指示レベルの予約情報、実績は実際の作業完了情報。実績入力があったら両方の更新が必要。

まとめ

(e)に記述すべき処理は、棚出し作業の実績入力時に「棚番別在庫ファイルに対して実在庫と棚出指示済在庫の両方を更新する処理」です。
問題文の記述とデータ更新の意味を理解し、在庫管理システムの現実的な運用をイメージしながら、以下の表現にまとめましょう。
「棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。」
このポイントを押さえれば、物流センタの在庫管理での棚出し実績処理に関する設問は恐らく正解できます。

設問3(1)表2の出荷関連の処理記述書について、(1),(2)に答えよ。

表2中の(f)に入れる適切なファイル名を答えよ。
模範解答
f:出荷予定ファイル
解説

解答の核心キーワードと論点整理

  • キーワード:出荷予定ファイル
  • 論点:「出荷処理」において、出荷実績入力後に「該当する出荷予定レコードの状態を出荷済みに更新」する処理対象ファイルは何か。

なぜ「出荷予定ファイル」が正解なのか

【問題文】の表2「出荷関連の処理記述書」では、出荷処理の流れとして以下が示されています。
処理機能処理内容
出荷処理(3) 出荷実績が入力されたら、次の処理を行う。
f の該当する出荷予定レコードの状態を出荷済みにするとともに、出荷実績ファイルに出力する。
この(f)に入るのは、出荷予定のレコードを管理するファイルです。問題文で「出荷予定ファイル」は、受注登録後に「出荷予定」や「出荷状態」を管理するファイルであると明記されています。出荷実績と照合し、該当レコードの状態を「出荷済み」に変更することで、出荷漏れや二重出荷を防ぎ、在庫管理や販売データの正確な更新につながります。
また、(1)の「出荷予定表・出荷ラベル作成」では、
  • (2) 「日付を指定して出荷予定ファイルから翌日出荷予定レコードを抽出する」
  • (4) 「出荷予定ファイルの翌日出荷予定レコードの状態を出荷指示済みにする」
とあるように、「出荷予定ファイル」は出荷の指示や実績管理の中心的役割を持つファイルであることがわかります。
したがって、出荷実績入力直後に更新対象となる「該当レコードの状態を出荷済みにする」ファイルは、「出荷予定ファイル」以外に考えにくいのです。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 出荷実績ファイル:出荷実績を保存するファイルですが、実績の記録であり、出荷予定のレコードの状態変更は行いません。ここを混同すると誤答につながります。
  • 在庫マスタ:在庫数量の更新はここで行いますが、「状態」の管理・更新は出荷予定ファイルの役割です。
  • 棚番別在庫ファイル:棚ごとの在庫実績を管理するファイルですが、出荷の状態管理は行いません。
  • 受注ファイル:受注データの管理に使いますが、出荷予定のステータス管理とは異なります。
つまり、「状態の更新」という概念を持つファイルが「出荷予定ファイル」である点を押さえなければなりません。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • システムのファイル構成や役割を正確に理解する。特に、予約・予定系のファイルと実績系のファイルの違いを明確に区別する。
  • 出荷フローにおける「状態管理」は「出荷予定ファイル」で行うことが多い。
    → 受注、出荷予定、出荷実績はそれぞれ別ファイルで管理され、それぞれの役割を正確に理解する。
  • 処理記述書の指示や更新対象ファイルの記述に注目し、「状態の更新」や「実績の登録」は何を意味するのかを考えること。
  • また、受注から出荷管理までの業務フローを把握し、それに対応したファイル管理構造をイメージできるよう訓練することが大切。

以上により、(f)に入る適切なファイル名は 「出荷予定ファイル」 となります。

設問3(2)表2の出荷関連の処理記述書について、(1),(2)に答えよ。

表2中の(g)に入れる処理内容を,30字以内で述べよ。
模範解答
g:受注ファイルの受注レコードの状態を出荷済みにする。
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理

  • 受注ファイルの受注レコードの状態を出荷済みにする
  • 出荷処理における受注データの状態更新
  • 受注から出荷完了までの進捗管理
  • 出荷済という状態は、受注処理の最終段階を示す重要な更新

2. なぜその解答になるのか(問題文の記述を引用しながら論理的説明)

表2の「出荷処理」には、出荷実績が入力された後に行う一連の処理が記述されています。そこでは、
  • (4) 出荷予定レコードの状態を出荷済みにする
  • (5) 在庫マスタの実在庫、引当済実在庫の更新
  • (6) 出荷実績に該当する_________
  • (7) 出荷関連帳票の編集、出力
とステップが続いています。
(6)に当てはまる処理は、出荷実績と連動して「受注データ側も出荷済みの状態に更新し、処理の完了を示す」ことです。
問題文の業務概要には、「物流センタからの出荷時点で、受注した営業所の売上として計上される」とあり、さらに受注から出荷までの一連の工程で、受注情報はシステム上正しく管理されている必要があります。
したがって、出荷処理で出荷実績の登録時に、対応する受注ファイルの受注レコードの状態も「出荷済み」に更新しなければ、一貫した状態管理ができません。
このことから、(g)にあてはまる処理は
「受注ファイルの受注レコードの状態を出荷済みにする」
となります。

3. 受験者が誤りやすいポイントや、ひっかけの選択肢の解説

  • 「売上データの更新」と混同する誤り
    出荷処理の中で売上計上は後処理として別途行われますが、ここで聞かれているのは受注レコードの状態更新です。売上データとは別ファイルであり混同しないように注意が必要です。
  • 「在庫マスタの更新」と混同する誤り
    在庫マスタの実在庫や引当済実在庫の更新は(5)です。よく似ていますが、(g)は受注ファイル側の状態更新である点を正しく理解しましょう。
  • 出荷予定ファイルの更新ではないこと
    出荷予定ファイルはすでに出荷済みに更新されています。ここでは受注ファイルの受注情報の状態変更が問われています。
  • 「出荷実績ファイルへの出力」と混同しないこと
    こちらは出荷実績として実績ファイルに登録する処理で、(g)は受注ファイルの更新です。

4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識

ポイント内容と理由
受注ファイルの役割受注データの受発注状態をプロセス全体で管理。状態更新(例:受注済→出荷済)が重要。
出荷処理後の状態変更出荷実績入力後、出荷済みの状態を受注ファイルにも反映させ、一貫性を保持。
ファイル間の役割分担の理解出荷予定ファイル、受注ファイル、在庫マスタ、出荷実績ファイルなどの役割を明確に区別する。
処理の順番と関連性出荷予定→棚出し→出荷実績→受注の状態更新→売上計上の流れを理解する。
「状態」管理の重要性各ファイルのレコード状態(例:「棚出し済み」「出荷済み」など)で業務進行を管理する仕組みを理解する。

以上を踏まえ、
  • 本問では、出荷実績入力をもって受注処理の出荷段階が完了したことを「受注ファイルの出荷済み状態更新」によって明示することが問われている。
  • これにより、販売管理・在庫管理・売上計上の各プロセスが正しく連携されることになる。
この基本的な業務フローとシステム間の状態管理の知識が情報処理技術者試験「午後1」の出題ポイントです。

設問4

物流センタ新設後は、営業所別の売上集計を行うとき,現状の売上データの集計で発生している,あるデータが発生しなくなる。それは,どのようなデータか。25字以内で述べよ。
模範解答
他営業所に振替計上する出荷手数料分のデータ
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 他営業所に振替計上する出荷手数料分のデータ
  • 現状(物流センタ新設前)は、他の営業所から出荷される場合に売上の一部を振替計上している
  • 物流センタ新設後は、出荷がすべて物流センタから集中管理・出荷されるため、この振替計上が不要になる

解答がこのようになる理由(論理的説明)

問題文の【現在の受注・出荷業務及びシステム化状況】の記述(特に(6))に以下の説明があります。
売上は,受注した営業所への計上が原則であるが,他営業所から出荷した場合は,売上の一部が出荷手数料として,出荷した営業所に振替計上される。
つまり、現状は営業所単位で商品在庫を持ち、受注営業所以外の別営業所が出荷すると、
  • 受注した営業所に売上計上しつつ、
  • 出荷した営業所(受注営業所とは異なる営業所)に対しては「出荷手数料分の売上振替データ」を計上する運用がなされている。
これが営業所間の在庫分散と出荷が別々の営業所で分担されているために起きている現象です。

一方で【物流センタ新設後の業務概要】を見ると、
新設した物流センタで商品在庫を集中管理し,顧客への出荷は全て物流センタから行う。
物流センタからの出荷時点で,受注した営業所の売上として計上される。
ここから、物流センタがすべての出荷を一元で担当するため「他営業所間の出荷振替」が不要になります。なぜなら、出荷は営業所単位ではなく物流センタ単位で行い、売上計上の対象も「受注営業所」で一元管理され、出荷手数料等の中間的な振替処理は発生しないのです。

まとめると、
状況出荷時の売上計上の扱い出荷手数料の振替データ有無
現状(営業所別在庫)出荷営業所と受注営業所が異なる場合、振替計上が発生あり(振替計上データが発生)
物流センタ新設後出荷は物流センタ一元管理。受注営業所のみに売上計上なし(振替計上が不要)

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「売上そのものがなくなる」と誤解すること
    → 売上は受注営業所に計上され続けます。売上自体が無くなるわけではありません。
  • 「在庫管理方法の変化」をそのまま答えにしてしまうこと
    → 在庫管理は変わるが問われているのは、『売上集計で発生しなくなるデータ』です。
  • 出荷手数料の振替データの意味を誤解すること
    → 振替計上は営業所間の売上調整のための会計データであり、物流センタでの一元出荷により不要になります。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 営業所単位の在庫分散管理物流センタの在庫集中管理 は売上データの扱いに違いを生じる
  • 出荷拠点が多拠点に分散している場合、営業所間の売上振替(出荷手数料等)が発生することがある
  • 物流センタ集中出荷により、出荷拠点間の売上振替は不要になり、会計処理が簡素化される
  • 試験問題では「業務プロセスの変化によるデータ処理の違い」を問う観点が重要であるため、システム化の目的・効果を正確に理解すること

以上の理解をもとに、設問解答としては「他営業所に振替計上する出荷手数料分のデータ」が発生しなくなることを押さえましょう。
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