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システムアーキテクト試験 2014年 午後1 問03
勤務管理システムの導入に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
D社は、社員数約1,000名の、建築設計を行っている中堅企業である。D社では、内部監査部門が定期的に内部監査を行っており、このたび勤務管理に関する監査が行われた。その指摘を受けて、新しい仕組みの導入を決定した。
〔D社の就業条件〕
D社の就業条件は、次のとおりである。
(1) 就業時間は9時から18時までで、時間外の勤務(以下、残業という)には、残業手当が支給される。残業は事前に届出を行う。
(2) 土曜日、日曜日及び祝日は休日で、休日出勤した場合は代休を取得する。
(3) 休暇種別として、勤続年数に応じて毎年付与される有給休暇、7月~9月に取得できる年間3日間の夏期休暇、及び慶弔時に取得できる特別休暇がある。
(4) 残業時間の上限は、労使協定で、1日7時間、月間45時間、連続する3か月累計120時間、年度累計360時間と定められている。
〔現在の勤務管理の概要〕
勤務管理に関する項目は、イントラネットを使った時間入力システムと紙の勤務管理表で管理している。勤務管理の概要は、次のとおりである。
(1) 社員は、業務を開始した時刻(以下、開始時刻という)及び業務を終了した時刻(以下、終了時刻という)を入力する。
(2) 残業をする場合は、事前に、事由及び終了予定時刻を記入した残業届出書を提出して、部長が確認印を押す。
(3) 月締めで個人単位に勤務管理表を印刷し、本人印を押した後、部長に提出する。部長は承認印を押して、人事部に提出する。このとき、1か月分の残業届出書を添付する。勤務管理表には、遅刻・直行などの始業区分、早退・直帰などの終業区分、開始時刻、終了時刻及び残業時間の明細が1か月分、日別で印刷されている。
社員は、同時に複数のプロジェクトに参加することがあり、プロジェクト別の損益を管理するために、勤務管理表とは別に、プロジェクト別業務時間を表計算ソフトで管理している。これを月次で回収し、部長が確認している。プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い。
また、夏期休暇の予定実績管理も、部別に表計算ソフトで管理している。
〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕
内部監査では、内部統制面及び労務管理面から次のような指摘を受けた。
指摘1: 部長が、月次で、勤務管理表、プロジェクト別業務時間及び残業届出書の3種類のデータを確認しているが、データの不一致が発生している。また、平均50名いる部員全員について、全ての日の明細を部長が確認していることに無理がある。
指摘2: 開始時刻及び終了時刻が勤務実態どおりに正しく入力されているかどうかの保証がない。入力された時刻が妥当かどうかを確認する必要がある。
指摘3: プロジェクト別業務時間が時間入力システムと連動しておらず、また、入力を毎日行っていないので、プロジェクトの実工数が正しく把握できていない。このことについて、損益を管理している経理部から精度の向上を求められており、運用の改善が必要である。
指摘4: 夏期休暇は、予定をあらかじめ決めて取得することになっているが、予定を入力しなかったり、予定どおりに休まなかったりする社員が多く、取得率が低迷している。
これらの指摘を受け、改善案として、勤務管理システムを導入することになり、あるソフトウェアパッケージを選定した。
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕
D社では、選定したソフトウェアパッケージでは不足する機能を追加開発することとし、追加開発を含めたシステム全体を新システムと呼ぶことにした。新システムを用いた勤務管理の概要は、次のとおりである。
(1) 各フロアの出入口にICカードリーダ付き入力端末を設置し、入退室時にICカード付き社員証をタッチして、入室・退室の時刻を記録する。1日の初回入室時刻と最終退室時刻を、翌朝のバッチ処理によって新システムに取り込む。
なお、終業後にフロア内でサークル活動や懇親会を行うことがあるので、最終退室時刻と終了時刻は必ずしも一致しない。
(2) イントラネットを通じて、社員は次の作業を行う。
① 勤務実績入力:毎日の勤務実績は、原則として翌営業日中に入力する。
・始業区分として、通常出社、遅刻、直行、出張、又はいずれかの休暇種別を選択して入力する。
・終業区分として、通常退社、早退、又は直帰を選択して入力する。始業区分が出張又は休暇種別の場合は、終業区分は空白とする。
・出社を伴わずに終日社外で業務を行う場合には、始業区分を出張として入力し、始業区分を直行、かつ、終業区分を直帰とする入力はしない。
・休暇以外の日は、開始時刻、終了時刻及び休憩時間を入力する。このとき(1)で記録した初回入室時刻及び最終退室時刻を参照できる。
② プロジェクト別業務時間入力:毎日、どのプロジェクトの業務をどれだけ行ったのか、プロジェクト別業務時間を入力する。研修、事務処理など、直接プロジェクトに従事していない時間は、間接業務時間として特別なプロジェクトコードを割り振って入力する。プロジェクト別業務時間の合計は、1日の業務時間と一致させる必要がある。一致しない場合、入力は完了しない。
③ 残業予定入力:残業をする場合、事前に事由及び終了予定時刻を入力する。
④ 夏期休暇予定入力:夏期休暇の取得予定年月日を3日分入力する。予定が変わった場合は取得予定年月日を変更する。
(3) イントラネットを通じて、部長は次の作業を行う。
・追加開発で作成された警告一覧を出力し、その内容を精査して部員に確認する。また、必要に応じて入力の訂正を行うよう指導する。警告一覧の詳細は後述する。
・部員のデータ入力が完了したことを確認し、月締めの入力を行う。
(4) ソフトウェアパッケージにはダウンロード機能があり、データがCSV形式で提供される。ダウンロードする属性項目は、任意に設定が可能であり、D社では、ダウンロードファイルのレイアウトを表1のように設定した。
なお、夏期休暇明細については、予定データは夏期休暇の取得予定年月日から、実績データは毎日の勤務実績から作成する。予定データの予定実績区分には“予定”が、実績データの予定実績区分には“実績”がそれぞれ設定される。

〔ダウンロードデータを使用した処理〕 D社では、部ごとにダウンロードを行うよう設定し、部長が自分の部のデータをダウンロードできるようにした。そのダウンロードデータを加工して、次の(1)~(3)の三つの機能を実現することにし、追加開発を行う。これによって、部長が、自分の部の部員の入力の確認を容易に行えるようになる。
(1) プロジェクト別工数一覧を出力する機能
任意のタイミングで、月間プロジェクト別業務時間明細からプロジェクト別工数一覧を出力する機能を設ける。部長は、適切なプロジェクトコードで入力が行われているかどうかをチェックする。
(2) 警告一覧を出力する機能
任意のタイミングで各種のチェックを行い、警告一覧を出力する機能を設ける。部長は、次に示す確認項目を指定して警告一覧を出力し、それを参考に、部員に確認したり、残業を削減するようプロジェクトリーダを指導したりする。
① 月間業務時間明細の、始業区分及び終業区分が妥当かどうかを確認する。
② 月間業務時間明細の、開始時刻及び終了時刻が妥当かどうかを確認する。
③ 月間業務時間明細と残業予定から、残業予定入力が正しく行われているかどうかを確認する。
④ 月間残業時間集計から、労使協定で規定した残業時間の上限の9割を超えている社員がいないかどうかを確認する。
⑤ プロジェクト別業務時間の入力が、翌営業日中に行われているかどうかを確認する。
⑥ 夏期休暇の取得率向上のために、取得予定年月日を3日分入力していない社員がいないかどうかを確認する。
これらの確認項目について容認される基準を、表2に示す。これらの基準を満たしていない場合に、その内容を警告一覧に出力する。

(3) 夏期休暇の取得奨励メールを送信する機能
夏期休暇の取得率向上のために、夏期休暇明細の休暇取得予定日の1週間前に、翌週の夏期休暇を取得するよう奨励するメールを自動的に送信する機能を設ける。
〔内部監査担当者によるレビュー〕
人事部は、新システムの概要について内部監査担当者に説明を行った結果、次の2点について改善を行うよう指摘された。
(1) 個人のプロジェクト別業務時間は正しく把握できるようになったが、プロジェクト単位に工数の実績を管理するためには、考えているプロジェクト別工数一覧では不十分であり、更なる考慮が必要である。
(2) 夏期休暇の取得率向上については、取得予定年月日を3日分入力していない社員の確認と取得奨励メールの送信を考えているが、現状を考えるとこれだけでは不十分である。追加の確認をして、ある条件に合致する社員の情報を警告一覧に出力することが必要である。
設問1(1):〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕に対する新システムでの対応について、(1),(2)に答えよ。
指摘1に対して,データの管理方法,部長の確認方法について改善するために,新システムで行った対応の内容を、それぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
データの管理方法:種類のデータを全て新システムで一元管理する。
部長の確認方法:部長が確認すべきデータだけを警告一覧に出力する。
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点整理
なぜその解答になるのか【問題文の引用を交えた論理的説明】
データの管理方法:種類のデータを全て新システムで一元管理する。
問題文の該当部分:
- 「〔現在の勤務管理の概要〕」で、勤務管理表、残業届出書、プロジェクト別業務時間など異なる形態やシステムでデータを管理し、部長がそれらの3種類のデータを個別に確認している。
- 「〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕」の指摘1:「部長が,月次で,勤務管理表,プロジェクト別業務時間及び残業届出書の3種類のデータを確認しているが,データの不一致が発生している。」
- 新システム導入では、「勤務管理に関する項目は新システムで運用し、種々のデータを統合的に管理する仕組み」に改められている。
このため、以前は複数の形態・場所でバラバラに管理していたデータを、ひとつのシステムでまとめて管理し、データの整合性を高めることがポイントです。
部長の確認方法:部長が確認すべきデータだけを警告一覧に出力する。
問題文の該当部分:
- 指摘1には、「平均50名の部員全員の全ての日の明細を部長が確認することは無理がある」とある。
- 「〔ダウンロードデータを使用した処理〕」にて、追加開発で「警告一覧」を出力する機能が設けられ、部長が「内容を精査し、必要に応じて訂正を指導する」と書かれている。
- また、警告一覧では「容認されないケース」「注意すべき点」だけが抽出されるため、部長は問題のあるデータだけに集中できる。
つまり、全てのデータを全部長が一つ一つ精査するのではなく、データの不整合や異常を抽出した警告一覧のみを確認することで効率的なチェックが可能となっています。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
データの一元管理の意味を取り違える:
「一元管理」とは単に1か所に集めるだけでなく、データの統合、連携が可能な状態を指します。単なるデータの置き場の統一と誤解しないよう注意してください。 -
部長の確認方法の誤解:
「全部のデータを引き続き全て精査する」と勘違いしやすいですが、実際は「異常のみ抽出して確認する」点が重要です。従来の膨大な量をいちいち部長が目で追う形からの改善が論点となっています。 -
入力者自身による精査や自動チェックを答えに含めない点:
問題文で部長の確認方法の改善として具体的に示されているのは「警告一覧の活用」ですので、他者(本人)や自動処理の説明はここでは問われていません。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
勤務管理システムにおけるデータの一元管理とは、複数の異なるデータ(勤務時間、残業申請、プロジェクト別時間など)を一つのシステムやデータベースで管理し、整合性・信頼性を高めること。
-
内部監査指摘への対応のひとつとして、部長など管理者の負担軽減のために、すべてを直接確認するのではなく「警告一覧」などの異常検知レポートを活用し、効率的に問題点を抽出・指導する仕組みを作ること。
-
「警告一覧」の役割は、業務担当者が全量のデータではなく、問題のあるデータだけを抽出して確認できるようにし、業務効率化とミス防止を両立することにある。
-
問題文中で示される具体的な対策や機能は、設問の解答で大事なキーワードとなるため、指摘内容と対応策を正確に結びつけて覚えておくことが合格のポイント。
以上のように、模範解答は内部監査で指摘された課題に対し、データのばらつきの解消(全種類データの新システム一元管理)と部長の確認作業の効率化(警告一覧による必要なデータだけの抽出)を明確に表現しています。受験生は「何をどう改善したのか」を端的にまとめる練習が重要です。
設問1(2):〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕に対する新システムでの対応について、(1),(2)に答えよ。
指摘2に対して,入力された開始時刻及び終了時刻が妥当かどうかを確認するために,新システムに盛り込んだ機能は何か。その内容を,35字以内で述べよ。
模範解答
ICカードリーダ付き入力端末で,入室,退室の時刻を記録する機能
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- ICカードリーダ付き入力端末
- 出入口での入退室時刻の記録
- 記録された入室・退室時間と勤務実績時間の照合
- 入力された開始時刻及び終了時刻の妥当性検証
2. 解答となる理由の論理的説明
問題文の指摘2は「開始時刻及び終了時刻が勤務実態どおりに正しく入力されているかの保証がない」という点にあります。つまり、社員が自ら入力した時間が本当に正しいかを確かめる必要があります。
【問題文】新システムの概要の該当部分:
(1) 各フロアの出入口にICカードリーダ付き入力端末を設置し,入退室時にICカード付き社員証をタッチして,入室・退室の時刻を記録する。1日の初回入室時刻と最終退室時刻を,翌朝のバッチ処理によって新システムに取り込む。
この機能により、直接的に社員が働いていた時間帯の物理的な入退室記録を取得します。従来は社員の自己申告に頼っていた開始時刻・終了時刻の入力に対し、この入退室記録を参照することで、時間のずれや虚偽入力を見つけられます。
さらに、
② 勤務実績入力の際に,(中略)このとき(1)で記録した初回入室時刻及び最終退室時刻を参照できる。
とあるため、入力時にこの記録も目視でき、間違いを避ける助けになります。
したがって、指摘2の「開始時刻及び終了時刻の妥当性を保証する機能」は、ICカードによる入退室時刻の自動記録と、その記録を勤務実績入力時に参照できる仕組みが中心となっており、これが模範解答の正当性を支えています。
3. 誤りやすいポイント・ひっかけの可能性
-
勤務実績の手入力部分を答えにしてしまう誤り
「勤務実績入力(開始時刻・終了時刻を自分で入力)」は従来から存在する手法であり、指摘2の改善策にはなりません。手入力のみでは勤務実態と乖離する可能性があるからです。 -
残業届出書や部長の確認機能と混同する誤り
残業届出書の確認は残業時間管理に関するものであり、勤務時間の正確な記録ではありません。 -
プロジェクト別業務時間管理機能と混同する誤り
プロジェクトの時間管理は工数管理の問題であり、勤務開始・終了時刻の妥当性とは別の論点です。
これらの理由から、対策として直接的に時間の自動記録を行う「ICカードリーダ付き入力端末」が唯一の適切な答えとなります。
4. 試験対策ポイント・覚えておくべき知識
-
勤務時間管理の信頼性向上には、手入力だけでなく客観的な物的証拠(例:ICカードの入退室記録)が不可欠である。
-
内部統制や監査対策としては、「入力の正当性を証明できる仕組み」が有効であることを理解しておく。
-
手入力のエラーや虚偽申告を防止するには、システムで自動取得したデータと手入力データの整合性チェックを組み合わせる。
-
勤務開始・終了時刻の妥当性確認と残業管理のための届出書類管理は別の論点であるため、設問の指示をよく読み、的を絞った回答を心がける。
以上を踏まえ、指摘2に対する機能で最も効果的かつ記述されているのは「ICカードリーダ付き入力端末による入退室の時刻記録」であるため、模範解答の通りと理解してください。
設問2
表2中の(a)~(f)に入れる適切な字句を答えよ。(e,fは順不同)
模範解答
a:空白
b:直帰
c:当月までの連続する3か月
d:月間プロジェクト別業務時間明細
e:勤務年月日
f:入力年月日
解説
1. 模範解答の核心キーワードと論点整理
- (a),(b)は始業区分・終業区分の妥当性判定に関わる区分名
- (c) は残業時間上限の判定における期間の範囲設定
- (d),(e),(f)はプロジェクト別業務時間入力日と勤務日付の判定対象
2. 解答の論理的説明
(a) と (b): 「始業区分」「終業区分」の容認基準
表2の①番の内容は、
・初回入室時刻が未入力のときは、始業区分が出張、休暇のいずれかであり、
・初回入室時刻が開始時刻より遅いときは、始業区分が直行である。
・最終退室時刻が未入力のときは、終業区分が (a) であり、
・最終退室時刻が終了時刻より早いときは、終業区分が (b) である。
この文脈から、「終業区分が未入力時」は空欄が許されず、「最終退室時刻が未入力の時はどんな終業区分が妥当か」を考えます。
【問題文】の「新システムを用いた勤務管理の概要」(2)①に、
・終業区分として,通常退社,早退,又は直帰を選択して入力する。始業区分が出張又は休暇種別の場合は,終業区分は空白とする。
そのため、最終退室時刻が未入力のとき終業区分は「空白」ではなく「直帰」であると整合します。よって、
- (a) は「空白」
- (b) は「直帰」
ではないかと考える人もいるかもしれませんが、実際は逆です。
しかし、指摘の文の順序と内容に注意しましょう。
- 「最終退室時刻が未入力のときは、終業区分が (a) であり」
- 「最終退室時刻が終了時刻より早いときは、終業区分が (b) である」
最終退室時刻が未入力(つまりデータがない)は、終業区分は「空白」(何も入力しない)であるべきと解釈されます。(例えば休暇日など)
同時に、終了時刻より早く退室した(最終退室時刻が終了時刻より早い)場合は、実際に「直帰」や「早退」などの区分が該当します。
【問題文】の記号付けと模範解答案は以下の通りです:
- a:空白
- b:直帰
つまり、
- 最終退室時刻が未入力 → 終業区分は空白(a)
- 最終退室時刻が終了時刻より早い → 終業区分は直帰(b)
これが問題文の条件と最も整合的です。
(c): 「連続する3か月」の残業時間判定範囲
表2の④残業時間の上限は、
・当月の月間残業時間が40.5時間を超えていない。
・(c)の月間残業時間の合計が108時間を超えていない。
・年度累計残業時間が324時間を超えていない。
【D社の就業条件】(4)で、
残業時間の上限は,労使協定で,1日7時間,月間45時間,連続する3か月累計120時間,年度累計360時間と定められている。
また、警告の容認基準では9割で判定しているため、
- 月間上限45時間の9割 → 40.5時間
- 3か月累計120時間の9割 → 108時間
- 年度累計360時間の9割 → 324時間
となる。
故に、
- (c) は「当月までの連続する3か月」
(d),(e),(f): 「プロジェクト別業務時間の入力」の妥当性条件
表2⑤では、
(d)について、(e) と (f) が2営業日以上離れていない。
【問題文】の「業務時間入力」は、
② プロジェクト別業務時間入力:毎日,どのプロジェクトの業務をどれだけ行ったのか,プロジェクト別業務時間を入力する。
さらに、
プロジェクト別業務時間が時間入力システムと連動しておらず,また,入力を毎日行っていないので...
これに基づき、
- (d) は「月間プロジェクト別業務時間明細」データファイル(入力状況の対象ファイル)
- (e) と (f) はそれぞれ、「勤務年月日(業務実施日)」と「入力年月日(入力日)」を示します。
この2つの日付が2営業日以上離れないことを容認基準として、入力の遅れ・漏れをチェックしています。
3. 受験者が誤りやすいポイントと注意点
-
(a),(b) に関して、「空白」と「直帰」の意味を取り違えがちです。
「最終退室時刻が未入力」で「終業区分を空白にするのは許されない」と誤解しやすいですが、実際の運用ルールからは未入力=該当なし=空白で問題ありません。
「終了時刻より早い退室時間が登録されている時に、直帰」が割り当てられる点に着目してください。 -
(c) は残業時間の上限管理でよく問われる論点。
労使協定の数値と警告の9割基準をセットで理解する必要があります。 -
(d),(e),(f) は入力遅延チェック。
「勤務年月日」と「入力年月日」が分かれていることや、対象のファイル名が長文で誤認しやすいため、問題文の表に慣れておくことが重要です。 -
「直行」や「直帰」、「出張」、「休暇」などの区分が複数あり、似ているため取り違うリスクがあります。背景の業務ルールをよく理解しましょう。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
-
始業区分・終業区分の運用ルールは、勤務時間と入退室記録を元に妥当性を判断するための重要な基準である。
→「出張」は始業区分で直行・直帰と組み合わせ不可、「終業区分が空白」は出張や休暇の時のみに認められる。 -
残業時間の管理は労使協定に基づき厳密にチェックする。
連続3ヶ月累計や年度累計など複合的な管理基準を覚え、警告基準には「9割ルール」があることを押さえる。 -
プロジェクト別業務時間の正確な入力は、経理や損益管理に直結するため、締め日の2営業日以内を目安に入力促進を行う必要がある。
-
システム上の入力日や業務日など複数の日付を扱う場合は、それぞれの意味を明確に理解し、遅延や齟齬をチェックする仕様が多いことを知っておく。
これらを正確に理解することが、業務・システム双方の視点を問う午後問題の得点に繋がります。
設問2(1)
表2中の(a)~(f)に入れる適切な字句を答えよ。(e,fは順不同)
解説
設問3(1):〔内部監査担当者によるレビュー]について,(1),(2)に答えよ。
プロジェクト別工数一覧で考慮すべき点は何か。その内容と理由を,それぞれ30字以内で述べよ。
模範解答
内容:部内だけでなく他部のデータと合わせた一覧を作成すること
理由:プロジェクトは複数の部が関わっているものが多いから
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- プロジェクト別工数一覧の範囲:部内だけでなく他部のデータも含むこと
- 理由の根拠:「プロジェクトは複数の部が関わっているものが多いから」
- 目的:プロジェクト単位で正確な工数実績を管理するため
なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えて説明)
D社の現状運用では、社員が同時に複数のプロジェクトに参加しているだけでなく、「プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い」と明記されています。
「社員は同時に複数のプロジェクトに参加することがあり,プロジェクト別の損益を管理するために,勤務管理表とは別に,プロジェクト別業務時間を表計算ソフトで管理している。プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い。」
この状況に対して、部長が自部門の部員のデータのみでプロジェクト別工数一覧を作成すると、他部門の工数が抜けてしまい、プロジェクト全体の工数実績を正確に把握できません。
そのため、内部監査担当者からは、
「プロジェクト単位に工数の実績を管理するためには,考えているプロジェクト別工数一覧では不十分であり,更なる考慮が必要である。」
との指摘がありました。
これを踏まえ、
- 内容:部内だけでなく他部のデータと合わせた一覧を作成すること
- 理由:プロジェクトは複数の部が関わっているものが多いから
という解答になるのです。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
部内データだけを集計すればよい、という誤解「部長が自部のデータだけを管理すれば良い」という運用理解では誤りです。複数部が関与するプロジェクトの場合、部横断的な集計が必要となるため、範囲を限定すると不完全な工数管理になります。
-
社員別工数管理とプロジェクト単位工数管理の混同本問題は「プロジェクト単位の工数管理」がテーマです。社員ごとの管理は当然ですが、プロジェクト全体の実績を把握するには複数部の情報統合が必要です。この点を混同しないように注意が必要です。
-
データの連携不足やシステム的な問題を理由とする誤答本設問は「考慮すべき点と理由」を問うものであって、「システム連携強化」や「リアルタイム同期」などのIT技術的解決策を答える問題ではありません。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
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プロジェクト別工数管理は部門を横断する集計が必須企業のプロジェクト管理では、複数部が協力してプロジェクトを推進することが多いため、部単位に縛られず全体を俯瞰した工数管理が必要。
-
内部監査や内部統制の視点を意識する監査指摘の背景には、データの整合性や重複・漏れの防止、過重労働防止などの管理面の問題があるため、「多部門のデータを統合して正確に管理する」といった統制の観点を理解できること。
-
「プロジェクト単位」「部門単位」「社員単位」の管理区分を区別できること問題文中の情報を丁寧に読み、管理対象の単位ごとの違いを把握し適切な対応策を考える力が重要。
以上の点を理解いただくと、本設問の正解が納得できるでしょう。
設問3(2):〔内部監査担当者によるレビュー]について,(1),(2)に答えよ。
夏期休暇の取得率向上に関するチェックが不十分と判断したのはなぜか。その理由を35字以内で述べよ。また,それを解決するために警告一覧に出力すべき社員の条件は何か。表1中のファイル名を用いて40字以内で述べよ。
模範解答
判断した理由:休暇取得予定日に休まなかった社員を把握することができないから
社員の条件:
・当年の夏期休暇明細で,過去日付の予定データ件数が実績データ件数より多い社員
・夏期休暇明細で,予定データの取得予定日が過ぎても,実績データが存在しない社員
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 休暇取得予定日に休まなかった社員を把握できない点が不十分な理由であること
- 夏期休暇明細における 「予定データ(予定)」と「実績データ(実績)」の比較
- 「予定した休暇日より過去の日付で予定はあるが実績の休暇取得がない社員」を警告一覧に出力し監視する必要
- 表1で示される 「夏期休暇明細」 ファイルの活用
なぜその解答になるのか【論理的説明】
問題文より夏期休暇の取得率向上に関して、以下の状況があります。
- 【問題文】
「夏期休暇は,予定をあらかじめ決めて取得することになっているが,予定を入力しなかったり,予定どおりに休まなかったりする社員が多く,取得率が低迷している。」 - 改善案では「夏期休暇の取得予定年月日を3日分入力」していない社員を発見し、その情報を警告一覧に出力することが計画されている。
しかし、内部監査担当者はこれだけでは不十分だと指摘しています。理由は、単に取得予定の入力がない社員だけでなく、
- 休暇予定を入力したけれど実際には休んでいない社員の把握ができていないからです。
具体的に言うと、
- 「夏期休暇明細」で、「予定実績区分」が“予定”のデータに基づき休暇取得予定があることは示されているが、
- 同じ社員について、「予定実績区分」が“実績”の休暇取得日が未入力、つまり取得実績なしの場合には「予定通りの取得がなかった」ことになる。
- したがって、「予定件数よりも実績件数が少ない」社員がいることを検出し、警告として部長に知らせないと、実際の取り残し社員を把握できない。
つまり、予定は立てているが取り消しや未取得があった社員の存在を無視しているため、取得率向上に対し効果的な対応が行えないという課題です。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
「入力していない=悪」としてしまいがち
→ 予定入力がない社員のみに着目すると、実は予定を立てたが休んでいない社員を見逃します。 -
「予定と実績の区分」の理解不足
→ 表1のファイルレイアウトで「予定実績区分」についての理解が不足し、それぞれのデータを区別できないことが誤答につながります。 -
実績がない社員=必ず休んでいないとは限らないという誤解
→ だが本問題の場合は「予定があるのに実績がない」というコントラスト検出がポイントです。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
勤務管理システムの運用改善では、予定と実績の双方が重要
→ 「予定のみ」「実績のみ」ではなく両者の差異が管理ポイント。 -
休暇管理においては予定の未入力だけでなく「予定後に取得がない」も警告対象
→ 休暇取得率向上には実際の取得把握が必須。 -
ファイルレイアウト(表1)に示されたデータ属性を正確に理解して、どのデータから何を把握するかを整理する
→ 予定・実績を分けて管理する仕組みを意識。 -
内部監査指摘の背景理解が合格のカギ
→ 不一致、未実施、不整合の抽出が監査指摘の本質。
参考:問題文の表1「夏期休暇明細」ファイルのレイアウト
- 予定実績区分:「予定」か「実績」のいずれかを示す
- これを比較して予定のみで実績がない場合が問題となる
以上の考察に基づき、
- 判断理由は「休暇取得予定日に休まなかった社員を把握できないから」
- 警告に出すべき社員の条件は「夏期休暇明細で当年の予定データ件数が実績データ件数より多い者、及び予定日の取得実績がない者」
となります。