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システムアーキテクト試験 2015年 午後1 問02
業務及びシステムの移行に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
B社は、飲料製造会社M社の地域別販売会社であり、自動販売機(以下、自販機という)での小売販売だけを行っている。B社では、業務の効率向上のために、現在使用している自販機販売管理システム(以下、現行システムという)から、M社が地域別販売会社向けに提供している自販機販売管理システム(以下、新システムという)に移行することになった。
〔B社の業務の概要〕
(1)B社は、本社と150か所の営業所を有する。各営業所には倉庫がある。営業所は近隣の営業所とグループを構成しており、この単位を営業所グループという。
(2)自販機はB社の資産であり、法人や個人の敷地に設置させてもらい、売上の数%を手数料としてその設置先(以下、自販機設置先という)に支払う。
(3)商品別販売予測業務:営業所では、週初に、個々の自販機について1週間分の商品別販売予測を行う。倉庫の容量の制約から、注文は毎日、翌日配送分だけ行う。
(4)商品注文業務:営業所では、毎朝、商品の注文を入力する。入力した注文は、本社に集約され、毎日1回、本社からM社に発注される。このとき発注した商品は、発注の翌日夕方に、M社から各営業所の倉庫に直接配送される。商品は全てM社の製品である。
(5)在庫管理業務:倉庫の在庫管理は、各営業所で行う。在庫管理業務の一環として、同じ営業所グループの他の営業所から商品を融通してもらうことがある。
(6)巡回業務・売上金回収業務・売上計上業務・商品補充業務:営業員は、巡回予定に従って、担当する自販機を毎日巡回し、自販機の売上金回収、売上計上、並びに商品の補充数の計算及び補充を行う。
(7)手数料支払業務:営業所では、自販機設置先への手数料支払を行う。締日は、自販機設置先ごとに異なるが、20日又は月末が多い。手数料支払業務では、手数料計算、手数料計算書作成・送付、振込みを行う。手数料計算書には、商品別の売上単価、本数、売上額、手数料などの明細を記載する。
〔B社の現行システムの概要〕
(1)サーバの構成:現行システムは、本社と各営業所にサーバが設置されている分散型のクライアントサーバシステムであり、本社システム、営業所システムから成る。
(2)システムの機能:本社システムは、全社の在庫管理、会計、発注及び販売管理の機能をもつ。営業所システムは、営業所ごとに行う在庫管理、注文、販売及び手数料計算の機能をもつ。営業所システムは、そのシステムが管理する営業所の情報に加え、本社システムからマスタや他営業所の情報を受け取って動作する。営業所システムを社外で利用する際には、携帯型の端末であるハンディターミナル(以下、HTという)を使用する。
(3)HTと自販機の連携:HTは、売上金回収登録、売上計上及び商品補充登録の機能をもつ。営業員は自販機から売上金を回収し、HTを自販機と通信させ、売上額をHTに入力して、売上計上処理を行う。さらに、自販機から収集した売上情報を基にHTが算出した補充数だけ、商品を補充する。自販機が保持している売上情報は、HTと一度通信するとクリアされる。
(4)HTとサーバの連携:営業員は、帰社後、HTを営業所システムと通させ、営業所サーバ上のデータを更新する。営業員全員がデータを更新した後、集計、在庫評価などの日次処理を行う。
(5)商品の注文タイミング:営業所システムに入力された商品の注文データは、朝1回、本社システムに一括転送され、本社は注文データを集約し、朝10時にM社に発注する。
(6)在庫、手数料計算:営業所の在庫、売上及び手数料のデータは、営業所の日次処理後に本社システムに一括転送される。全社の集計処理は、本社システムにおいてバッチ処理で行う。営業所の手数料計算処理は任意の締日付で行える。
(7)商品の融通:他の営業所から商品を融通してもらう場合、商品を譲り受ける営業所で倉庫間移動入庫をシステムに登録し、商品を譲った営業所がシステムで承認する。承認後、商品の受渡しを行う。
〔新システムの概要〕
(1)サーバの構成:新システムは、集中型のサーバシステムで、M社のデータセンタに設置されたセンタサーバを、本社及び営業所のWebブラウザから利用する。
(2)システムの機能:新システムは、現行システムの機能を全て保有する。
(3)HTと自販機の連携:新システムのHTは新機種に替わる。HTの機能。自販機とHTとの通仕様は、現行システムと同じである。
(4)HTとサーバの連携:新システムのHTはセンタサーバと直接通する。売上、商品補充などのデータはHTがセンタサーバと通することによって即時に更新される。サーバのバッチ処理の機能は、現行システムと同じである。
(5)商品の注文タイミング:新システムに入力された営業所の注文は、朝10時で締め切られ、その後M社に自動的に発注される。
(6)在庫、手数料計算:日次処理はセンタサーバで夜間定時に実行され、手数料計算処理を行う。手数料計算書は、本社で一括して印刷・送付する。手数料振込みも本社で一括して行う。
(7)商品の融通:他の営業所からの商品の融通は、現行システムと同じである。現行システムと新システムの主な相違点を表1に示す。

〔新システムへの移行方針〕 B社情報システム部のC課長は、新システムへの移行担当に指名され、担当役員から次の指示を受けた。 (1)移行期間中も、営業所で通常どおり業務を行えるようにすること (2)自販機設置先に迷惑をかけないこと (3)全営業所の一括移行はリスクが高いので、順次移行する方法を検討すること (4)移行期間中も、全社分の管理帳票などを出力できるようにすること C課長は移行方針の検討に当たって、M社から新システムの仕様や性能の説明を受けた。現行システムと新システム(以下、両システムという)のマスタは互換性がないが、ツールの使用と手作業による項目追加によって、マスタデータの移行は可能である。営業所の注文、売上、HTの自販機売上情報などの営業所システムのトランザクションデータは、両システムで互換性があり、現行システムのデータを新システムで読み込める。しかし、本社システムのトランザクションデータは、両システムで互換性がなく、新システムでは読み込めない。HTは両システムで互換性がなく、現行システムのHTは、センタサーバと通できない。
〔移行方法の具体化〕
C課長は、移行方針に基づいて、次のように移行方法を具体化した。
(1)新システムのサービスは、期首である1月1日に利用を開始する。
(2)本社では、両システムを1月から6月まで併用する。その間、本社で行う、従業員マスタ、自販機マスタ、商品マスタなどの修正業務については、両システムに同じ修正データを入力する。全社の管理帳票などは新システムだけから出力する。
(3)営業所は、1月から6月までの移行期間中に順次移行する。営業所には、一度システムで実施すると再度実施できない業務があるので、移行した営業所は、新システムだけを利用する。また、ある業務における一部の処理を、移行期間中も問題なく行うためには、移行単位を営業所グループごとにする必要がある。
(4)本社移行前日の12月31日に、全ての営業所で手数料計算処理を行った後、本社及び全ての営業所の現行システムの全マスタを新システムに移行する。
(5)移行期間中は、現行システムを利用している営業所の営業所トランザクションデータを日次処理前に抽出し、本社の現行システム経由で新システムに、夜間に一括転送して新システムでも日次処理を実行する。
(6)M社への発注は、新システムの機能を利用して、新システムだけから行う。移行期間中のシステム運用イメージを図1に示す。また、各営業所でのシステムの切替えは、表2の手順で行うこととした。


〔移行方法の説明〕 C課長は、移行方法について各部門に説明した。また、移行期間中だけの制約ではあるが、①現行システムを利用している営業所では、今までと同じタイミングで注文しても、発注処理で発注されるタイミングが今までとは異なる。そのため、通常どおりの運用ができない点に留意して業務を行うように依頼した。 移行方法の説明に当たり、営業部門から、表2の手順で各営業所のシステムを切り替えると、12月の手数料計算書が2枚に分かれることになり、業務上の問題があるとの指摘があった。そこで、表2の項番1の手順を変更し、手数料計算を12月31日に全営業所で行うのではなく、新システムにデータを転送して処理を行うことにした。
設問1
C課長が営業所グループ単位の移行を必要と判断した業務名と理由を40字以内で述べよ。
模範解答
業務名:在庫管理業務
理由:営業所が利用しているシステムが異なると,商品の融通ができなくなるから
解説
模範解答の核心キーワードと論点
- 業務名:在庫管理業務
- 理由:営業所ごとに利用システムが異なる状態では、同じ営業所グループ間で行われている商品の融通(倉庫間の在庫移動)が円滑にできなくなるため。
解答に至る論理的説明
問題文からポイントを引用しながら説明します。
-
B社の業務概要の(5)に、在庫管理業務が「倉庫の在庫管理は各営業所で行い,同じ営業所グループの他の営業所から商品を融通してもらうことがある」とあります。(5)在庫管理業務:倉庫の在庫管理は、各営業所で行う。在庫管理業務の一環として、同じ営業所グループの他の営業所から商品を融通してもらうことがある。
-
また、新システムへの移行方針の(3)に「ある業務における一部の処理を移行期間中も問題なく行うために、移行単位を営業所グループごとにする必要がある」と明記しています。
-
これは、同じ営業所グループの中で、システムが異なる状態が混在すると、商品融通という業務において必要なデータ連携や承認の仕組みが破綻し、円滑な業務遂行ができなくなるからです。
-
現行システムも新システムも商品の融通に関する機能は同じであるとされていますが、営業所単位でシステムが違うと、商品の譲り受け登録や承認のシステム間連携がうまくいきません。
-
このため、在庫管理業務の商品の融通をスムーズにするために、「営業所グループ」単位での移行が求められています。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
手数料支払業務や巡回業務といったほかの業務を選ぶミス
-
業務の中で「営業所グループ単位の移行が必要」と言われているのは、商品の融通に影響を与える「在庫管理」が最も影響大きいです。
-
手数料支払は営業所単位の処理が多く、巡回や売上回収は個別営業所単位で完結するため、グループ単位での移行の必要性は低いです。
-
-
営業所単位での移行が可能と考える点
- 問題文に明記されている通り、一部の処理は営業所グループ単位の移行でなければならず、単純に営業所単位で切り替えられない業務が存在することを理解していないと誤ります。
-
「理由」部分の表現のポイント
- 単に「システムが異なるから」ではなく、「商品の融通ができなくなるから」という具体的な業務面の影響を明示することが求められます。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
業務単位のシステム移行単位は、業務のデータ連携関係を理解することが重要
- 複数の営業所が共同で行う業務(例:商品の融通など)があれば、その単位でまとめて移行する必要がある。
-
在庫管理業務はグループ単位で密接に連携しているため、分散移行は注意が必要
-
業務影響が大きい部分は必ず「理由」まで含めて書く
- 受験では、業務名だけでなく「なぜそれか」が問われることが多いので理由を明確に書く習慣をつける。
-
移行時の混在状態で問題となる業務を正確に把握すること
- 例えば、今回のように手数料支払や注文処理は営業所単位で比較的独立しているが、商品の融通はグループ横断的な業務であると理解しておく。
まとめ
- 在庫管理は営業所グループ単位で連携が必要な業務。
- システム違いが混在すると商品の融通ができなくなるため、移行単位を営業所グループに設定。
- 業務の相互依存性を見ることで適切な移行単位を判断することが重要。
上記を踏まえ、問題文の根拠に基づいて解答すれば、求められる40字以内の解答が導きやすくなります。
設問2(1):〔移行方法の具体化〕について、(1)~(3)に答えよ。
本社で両システムに同じマスタ修正データを入力する理由を40字以内で述べよ。
模範解答
・本社システムのトランザクションデータは新システムでは読み込めないから
・本社システムのトランザクションデータは互換性がないから
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 本社システムのトランザクションデータは新システムで読み込めない(互換性がない)
- そのため、本社のマスタ修正を両システムに重複入力して整合性を保つ必要がある
解答に至る論理的な説明
問題文には次のように明記されています。
「本社システムのトランザクションデータは、両システムで互換性がなく、新システムでは読み込めない。」
これが意味するのは、本社の業務処理を現行システムと新システムの両方で併用しながら移行を行う際、現行システムで扱うトランザクションデータが直接新システムに反映できないという点です。
一方、マスタデータについては、
「現行システムと新システムのマスタは互換性がないが、ツールの使用と手作業による項目追加によって、マスタデータの移行は可能である。」
つまり、マスタは両システムで別々に管理されており、同期(整合性)をとる必要があります。
移行期間中は、本社が両システムを並行稼働するため、マスタ修正時にどちらか一方にのみ入力すると、もう一方のシステムのデータが古いままになる恐れがあります。これが、業務の混乱や誤った処理につながるため、
「本社では、両システムに同じ修正データを入力する。」
という方針を取っています。
この背景は、「本社システムのトランザクションデータが新システムに読み込めない」ため、両システムで独立したマスタ管理が必要になるためです。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
「営業所システムのデータは両システムで互換性がある」という点との混同営業所システムのトランザクションデータは互換性があり、新システムでも読み込めるため、営業所側の両システムのマスタ同期の必要性は薄いです。本問は「本社」システムに関する説明なので、この点を混同すると誤る可能性があります。
-
「マスタは互換性がないが、トランザクションデータは互換性がある」ということの理解不足これは重要で、マスタは別々に修正管理しなければならず、トランザクションは営業所システムのみ転送可能という構造です。これを正しく理解していないと解答があいまいになります。
-
「なぜマスタ修正データを両方に入力するのか?」の理由に直結しない表現を選ぶ例えば、「移行期間中だから両方に入力する」といった表現は理由として不十分です。理由はトランザクションデータの互換性の欠如にあります。
試験対策として覚えておくべきポイント
- システム移行では「マスタデータ」と「トランザクションデータ」の互換性の有無を必ず確認する。
- 「分散型」と「集中型」システムでの運用違いによって、データの同期や連携方法が異なるため、移行方針に反映される。
- 両システム併用時は、互換性のないデータについて二重入力・同期策を検討しなければならない。
- 特に本社システムのように、トランザクションデータの互換性がない場合はマスタ修正の二重管理が必要である旨を整理して理解しておく。
以上を整理すると、
が理解のポイントです。
設問2(2):〔移行方法の具体化〕について、(1)~(3)に答えよ。
再実施できない業務を二つ挙げ,その理由を30字以内で述べよ。
模範解答
業務名:
①:売上計上業務
②:商品補充業務
理由:
・自販機は HT と通信すると売上情報をクリアするから
・売上情報が 1 回しか取得できず,補充数が算出できないから
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
解答となる理由の論理的説明
問題文に記載されたB社の現状運用と新システムの仕組みから、なぜ「売上計上業務」「商品補充業務」が再実施不可なのか説明します。
-
HTと自販機の連携の特徴(現行システム)問題文内の〔B社の現行システムの概要〕(3)にて、「営業員は自販機から売上金を回収し、HTを自販機と通信させ、売上額をHTに入力して、売上計上処理を行う。さらに、自販機から収集した売上情報を基にHTが算出した補充数だけ、商品を補充する。自販機が保持している売上情報は、HTと一度通信するとクリアされる。」とあります。ここから分かるのは、
- 自販機の売上情報はHTと通信時に一度クリア(消去)されてしまう。
- つまり、売上情報は1回の通信でしか取得できず、それが「売上計上」と「商品補充数の算出」という一連の重要な業務の基礎になる。
-
再実施できない理由
- 一度通信し売上情報を取得すると自販機の情報は消えてしまうため、再度同じ売上情報を再取得して売上計上や補充数の算出をやり直すことはできません。
- したがって、「売上計上業務」と「商品補充業務」は一回限りの処理であり、誤りがあっても再実施できないのです。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの解説
試験対策として覚えておくべきポイント
-
業務プロセスの一連の流れとそれぞれのデータ依存関係を理解すること
- 自販機の売上情報は一回のHT通信で消去される→売上計上・商品補充が一回限りの処理。
- だからこれら業務は誤っても再度処理できず、運用上の注意が必要。
-
ハンディターミナル(HT)の役割と制限を明確に認識する
- HTは自販機とのデータ通信や売上入力補助に使われる。
- 自販機との通信で一度データを取ると再取得不可なので、取扱に注意。
-
移行や運用切替時の制約事項では「再実施できない業務」が何かを正しく把握
- この理解により、「移行時の業務運用のリスク」や「トラブル発生時の対処方針」が策定できる。
この問題は、現場の業務特性とシステムの技術的制約を正しく連結して理解する能力を問う典型例です。業務内容をしっかり読み込み、特に「データの一回性」「通信後のデータの状態変化」に着目しましょう。
設問2(3):〔移行方法の具体化〕について、(1)~(3)に答えよ。
移行期間中に不要になる業務名とその理由を15字以内で述べよ。
模範解答
業務名:手数料支払業務
理由:本社で一括して行うから
解説
解説
1. 模範解答の核心キーワードと論点整理
- 業務名:手数料支払業務
- 理由:「本社で一括して行うから」
- 重要キーワード:
- 「手数料計算書は、本社で一括して印刷・送付する」
- 「手数料振込みも本社で一括して行う」
- 移行期間中は本社で新システムを利用し、営業所は順次新システムへ切り替え
- 現行システムの営業所での手数料計算業務は不要となる
2. 解答の論理的根拠の説明
問題文より、新システムの特徴および移行方針から、手数料支払業務が移行期間中に営業所で行う必要がなくなると判断できます。
-
【新システムの概要】の「(6) 在庫,手数料計算」では、「日次処理はセンタサーバで夜間定時に実行され、手数料計算処理を行う。
手数料計算書は、本社で一括して印刷・送付する。
手数料振込みも本社で一括して行う。」と記述されており、手数料支払業務の集中化が明確です。 -
また、【移行方法の具体化】の(2)に、「本社では、両システムを1月から6月まで併用する。その間…全社の管理帳票などは新システムだけから出力する。」とあり、管理帳票の手数料計算書は新システムで出力されるため、営業所での計算や帳票作成は不要になることを示しています。
-
【現行システムの概要】の(6)によると、「営業所の手数料計算処理は任意の締日付で行える。」つまり現行では営業所ごとに計算が必要ですが、新システム導入により本社で一括実施になるため、営業所の手数料支払業務は不要になります。
3. 受験者が誤りやすいポイント
-
「営業所での手数料計算は残るのでは?」という誤解現行システムでは営業所ごとに手数料計算を行っているため、移行後も続くと誤認しやすい。しかし、新システムでは本社のセンタサーバで集中処理し、営業所の計算業務が不要になります。
-
手数料「計算」と「支払」の混同計算だけでなく、手数料計算書の作成・送付、振込みも本社で行うため、営業所の手数料支払関連業務が一括移行される点を見落としやすいです。
-
移行期間中は両システムが稼働している点営業所が順次新システムに切り替わるため、期間中は営業所ごとに違いがあるが、手数料支払業務は新システムの本社で一括処理されるため、営業所では不要と判断します。
4. 試験対策ポイント
- 移行計画では、「一括処理化」を行う業務は営業所の業務が「不要になる」可能性が高い。
- 「手数料支払業務」は移行で集中化されやすいため、今回のように本社で一括して行うケースが定番。
- 「業務名と理由を15字以内で」とあるため、理由は端的に「本社で一括して行う」とまとめること。
- 移行中の「分散型と集中型」の違いを押さえ、どの業務がどこで行われるのかを整理することが重要。
- 移行の説明文の中で「手数料計算書は本社で一括して印刷・送付」と明示されている部分は必ず確認する。
まとめ
- 新システムにより、手数料支払業務が本社のセンタサーバで集中処理されるため、営業所での作業は不要になる。
- 現行の営業所手数料計算や振込み、帳票作成は新システム導入で本社に移管される。
- 受験時は「集中型サーバ」と「一括処理化」というキーワードで判断するとよい。
この理解を基に、設問では「手数料支払業務:本社で一括して行うから」と端的に答えることが合格のポイントです。
設問3(1):〔移行方法の説明〕について、(1),(2)に答えよ
転送すべきデータの期間と内容を35字以内で述べよ。
模範解答
12月の締日の翌日から末日までの自販機のトランザクションデータ
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
- 転送すべきデータの期間:「12月の締日の翌日から月末まで」
- 転送対象のデータの内容:「自販機のトランザクションデータ(営業所システムのトランザクションデータ)」
2. なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えた解説)
背景
新システムへの移行期間中(1月~6月)においては、本社は現行システムと新システムを併用し、営業所は順次移行します。そのため、移行前後でデータ整合性を保つ工夫が必要です。
重要な記述
- 「営業所の注文、売上、HTの自販機売上情報などの営業所システムのトランザクションデータは、両システムで互換性があり、現行システムのデータを新システムで読み込める。」
- 「本社システムのトランザクションデータは互換性がなく、新システムでは読み込めない。」
- 「12月31日に全営業所で手数料計算処理を行い、本社および全営業所の現行システムの全マスタを新システムに移行する。」
- 「移行期間中は、現行システムを利用している営業所の営業所トランザクションデータを日次処理前に抽出し、本社の現行システム経由で新システムに夜間に一括転送して新システムでも日次処理を実行する。」
これらからの論理展開
- 12月31日(本社移行前日)に「締日であるか否かにかかわらず、全ての自販機設置先の手数料計算処理を行い、帳票を作成」したうえで、
- 「本社及び全営業所の全マスタを新システムに移行」するため、12月31日以前までのトランザクションは新システムに反映済み。
- 一方、それ以降の12月締日の翌日から月末までのトランザクションは現行システム上で発生し、新システムに転送して日次処理を継続する必要がある。
- このため、「12月の締日の翌日から月末まで」の自販機トランザクションデータを転送しなければならない。
これが模範解答の「12月の締日の翌日から末日までの自販機のトランザクションデータ」の意味するところです。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
「12月31日までの全データ」を転送すると思い込む誤り
→ 実際は、12月31日時点で既に手数料計算処理を終え、マスタを移した後なので、12月31日以前のデータは新システムに移されている。転送すべきは、「締日の翌日から末日まで」の期間分。 -
「全マスタだけで良い」と考える誤り
→ トランザクションデータは営業所の日々の売上や注文などを含み、移行後の注文・販売業務運用の継続には不可欠です。 -
「移行期間全体のデータを一括で転送」と勘違いする誤り
→ 毎日発生するデータは逐次新システムに反映する必要があり、期間を限定して転送することが運用上のポイント。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
以上を理解すれば、移行に伴うデータ転送期間と内容を正確に答えられます。
試験では「期間」と「データ種別」の両方を明示して答えることが重要です。
試験では「期間」と「データ種別」の両方を明示して答えることが重要です。
設問3(2):〔移行方法の説明〕について、(1),(2)に答えよ
発注タイミングの変化を15字以内で述べ,その理由を35字以内で述べよ。
模範解答
異なる点:1日遅れて発注されること
理由:営業所の注文を新システムに転送するのは,10時以降だから
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
解答となる理由の論理的説明
-
現行システムの発注タイミング
-
問題文の〔B社の現行システムの概要〕(5)に記載:「営業所システムに入力された商品の注文データは、朝1回、本社システムに一括転送され、本社は注文データを集約し、朝10時にM社に発注する。」
-
つまり、現行システムでは「営業所で注文したデータが営業所サーバに集約され、朝1回転送され、その後10時に本社がまとめて発注処理を行う」流れです。
-
-
新システムの発注タイミング
-
〔新システムの概要〕(5)に記載:「新システムに入力された営業所の注文は、朝10時で締め切られ、その後M社に自動的に発注される。」
-
新システムはセンタサーバで一元管理されているため、注文締切が10時で、それ以降に入った注文をまとめて自動発注します。営業所が締切(10時)まで注文入力を続けられ、締切後に一気に発注されます。
-
-
移行期間中の発注処理の実態
-
〔移行方法の説明〕の①にあるように:「現行システムを利用している営業所では、今までと同じタイミングで注文しても、発注処理で発注されるタイミングが今までとは異なる。」
-
〔移行方法の具体化〕(5)には、「移行期間中は、現行システムを利用している営業所の営業所トランザクションデータを日次処理前に抽出し、本社の現行システム経由で新システムに、夜間に一括転送して新システムでも日次処理を実行する。」
-
つまり移行期間中は、現行システムを利用している営業所の注文データは、朝1回の転送 → 本社での集約 → M社発注という現行システムの方式ではなく、新システムに夜間一括転送されて、そこで日次処理が行われます。
-
これらを整理すると:
-
現行システムの場合
→ 営業所の朝入力注文データはすぐに朝10時に発注される。 -
新システムの場合
→ 朝10時まで注文締切り後、一括して発注される。 -
移行期間中の現行システム利用営業所の場合
→ 朝注文しても、移行方法のため朝10時発注ではなく、「翌日夜に新システムに転送されてそこで発注される」となるので「1日遅れて発注」される。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの注意点
-
「朝10時に発注する」というタイミング自体は両システムで共通に見えるため、違いがわかりにくい。
移行期間中は、現行システム利用営業所の注文データを夜間に新システムに転送して処理するため、実際の発注は翌日になる。 -
「注文締切の時間」と「発注実行の時間」を混同しやすい。
新システムでは朝10時締切でほぼ即時発注。一方、現行システム利用営業所は移行期間中、実質的に「朝注文の翌日夜に発注される」ことに注意。 -
HTの通信相手やトランザクションデータの互換性の話と混同しないこと。
発注タイミングの変更はサーバ間のデータ連携方法に起因している。
試験対策のポイント
- 移行期間中のシステム混在時は、データの転送タイミングや発注処理のタイミングが変わる場合があることを理解する。
- 「締切時刻」と「発注実行時刻」の違いに注意する。
- 新システムが集中管理型であり、移行期間中は現行システムのデータを夜間に新システムに転送・同期する方式と理解すること。
- 移行期間中の運用上の制約を読み取り、業務への影響を的確に把握する力を養う。
- 問題文中のタイミングに関する記述(「朝1回」「朝10時」「夜間一括転送」)はキーワードとして暗記し、異なるシステムの処理の流れを整理する練習を重ねる。
この設問は、システム移行に伴い「見た目は変わらないが処理のタイミングが変わる」ことに着目させる典型問題です。時間軸に沿って両システムの違いと移行期間中の運用をしっかり理解しましょう。