システムアーキテクト試験 2016年 午後103


売上・回収業務のシステム改善に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。

 E社は、関東地方を中心に建材の卸販売を行っている。現在、販売管理システムと 会計システムを対象に、売上から回収までの業務及びシステムの改善を進めている。   〔現状の売上から回収までの業務と関連システムの概要〕  現状の売上から回収までの業務と関連システムの概要は、次のとおりである。関連システムは、販売管理システムと会計システムである。 (1)売上業務  売上計上には、販売している商品の特性によって、出荷した時点で売上を計上する(以下、出荷基準という)場合と、顧客からの検収書を入手した時点で売上を計上する(以下、検収基準という)場合の2通りがある。出荷基準の場合は出荷伝票の控えから、検収基準の場合は顧客の検収書から、営業事務部門で売上伝票を起票し、販売管理システムに入力して売上を登録している。また、売上伝票の控えが経理部門に回付され、経理部門で仕訳伝票を起票し、会計システムに入力して、売上勘定と売掛金勘定に計上している。 (2)返品業務  商品は、誤出荷や不良品出荷などによって返品されることがある。良品の返品は、倉庫在庫へ戻入れを行い、それ以外は廃棄などの処理を行う。返品の受付後、返品伝票を起し、販売管理システムに入力することによって、必要な処理を行っている。また、返品伝票の控えが経理部門に回付され、返品に伴う修正仕訳伝票を起票し、会計システムに入力している。  なお、返品に対する再出荷は、通常の出荷と同様に処理する。 (3)請求業務  顧客への毎月の請求は、指定請求先に対し、締日までの売上情報に基づき請求書を発行する場合と、一部の大手顧客からの支払通知書に基づき請求書を発行する場合がある。請求書は、会計システムで発行し、経理部門から顧客に送付している。 (4)入金業務  顧客からのE社への入金は、E社指定口座への銀行振込によって行われる。また、全ての顧客の支払条件は、締日の翌月末払いとなっている。支払日が休日の場合は、その前の営業日となっている。顧客からの入金情報はファームバンキングに よって入手している。
(5)売掛金管理業務  売掛金の消し込み及び残高管理は、経理部門で行っている。   〔売上から回収までの業務に関わるシステム改善要望〕  関連部門から、売上から回収までの業務に関わる、次のようなシステム改善要望が出された。 (1)売上業務の改善  ①営業事務部門と経理部門での伝票の受渡しをできるだけ減らせるようにシステムを改善してほしい。  ②経理部門での仕訳伝票起票、入力などの事務処理工数を減らすために、販売管理システムと会計システムとの連携を強化してほしい。 (2)返品業務の改善  ①これまで返品については、返品理由が曖味なまま安易に返品を受け付け、処理されていたケースが多かった。今後は、顧客や配送業者との確認も含めて営業事務部門、出荷部門などの関連部門で返品理由を明らかにし、自社責任による返品か否かを明確化していきたい。  ②自社責任による返品については、販売管理システムに新たに返品受付処理を設け、返品に伴う必要な処理をシステムで連携できるようにしてほしい。 (3)請求業務の改善  ①顧客からの支払通知書は、今は郵送されてきているが、その入手方法をシステムで対応できるように改善してほしい。  ②支払知書の内容と請求内容の照合をシステムで対応してほしい。 (4)売掛金管理業務の改善  資金繰り強化及び売掛金の不良債権化予防の一環として、売掛金未回収のリスクを減らすための情報提供をシステムで行ってほしい。
〔改善後のシステムの内容〕  システム改善要望を踏まえ、情報システム部門で検討した改善後のシステムの内容は、次のとおりである。 (1)売上及び返品に関する処理  出荷後の出荷伝票又は顧客検収後の検収書を販売管理システムに登録し、その実績データに基づき売上計上を行う。また、出荷実績は、販売管理システムの在庫管理に反映する。売上の情報は、会計システムに連携し、自動仕訳を行い、一般会計処理で関連する勘定科目に計上する。それによって、売上伝票を起票して経理部門に回付することは廃止する。また、経理部門での仕訳伝票の起票とその入力も廃止する。  返品については、販売管理システムに新たに返品受付の処理を設ける。ここで受け付ける返品は、自社責任が明確になった返品だけとする。売上の修正が必要な返品は、売上ファイルにその修正を反映し、会計システムにもその修正を連携して反映する。また、良品の返品の場合は、販売管理システムの在庫管理に反映する。  売上及び返品に関する処理の改善後のシステムフローを図1に示す。
システムアーキテクト試験(平成28年度 午後I 問3 図1)
(2)請求に関する処理  大手顧客からの支払通知書に基づく請求については、顧客からの支払の対象となる支払明細データを事前にEDIで入手できるように顧客と調整する。その支払明細データと売上データとの照合処理を、毎月顧客ごとの締日を基準にして実施する。照合の結果、不一致が発生した場合は、人手で顧客との確認・調整を行い、確定結果をシステムに登録し、必要な売上データの修正を行う。  請求に関する処理の改善後のシステムフローを図2に示す。
システムアーキテクト試験(平成28年度 午後I 問3 図2)
(3)売掛金管理に関する処理  売掛金管理において、新規の管理帳票として売掛金年齢表を作成する。売掛金年齢表は、売掛金の回収を促進し、不良債権化を未然に防止するための情報を提供する管理表であり、現時点の売掛金残高に対する回収が、顧客の売掛金の支払条件に応じた回収になっているか、回収が遅れている場合はいつの売上分の売掛金残高が幾ら未回収となっているかが出力されている。  売掛金年齢表の帳票イメージを図3に示す。売掛金年齢表に例示している、顧客F社、G社、H社の売掛金の支払条件は、3社とも月末締め翌月末払いである。また、売掛金年齢表の作成は、月末入金による売掛金の消し込み処理の後に行うものとする。
システムアーキテクト試験(平成28年度 午後I 問3 図3)

設問1(1)売上に関する処理について、(1),(2)に答えよ。

改善後のシステムで作成される出荷実績ファイルから、システムで自動的に売上ファイルに売上計上できるデータと、売上計上できないデータがある。それはどのようなデータか。それぞれ15字以内で述べよ。
模範解答
売上計上できるデータ:出荷基準の商品のデータ 売上計上できないデータ:検収基準の商品のデータ
解説

模範解答の核心となるキーワード・論点整理

売上計上できるデータ売上計上できないデータ
出荷基準の商品のデータ検収基準の商品のデータ
  • 「出荷基準」:出荷した時点で売上を計上する方法
  • 「検収基準」:顧客からの検収書を入手した時点で売上を計上する方法
  • 「出荷実績ファイル」:出荷情報を記録し、売上計上に用いるファイル
  • 出荷実績ファイルから自動で売上計上できるのは「出荷基準」の商品情報のみである点

なぜその解答になるのか(問題文の記述を引用しながら論理的に説明)

問題文の(1)売上業務の現状に次の記述があります。
売上計上には、販売している商品の特性によって、
出荷した時点で売上を計上する(以下,出荷基準という)場合と、
顧客からの検収書を入手した時点で売上を計上する(以下,検収基準という)場合の2通りがある。
さらに改善後のシステムの内容では、
出荷後の出荷伝票又は顧客検収後の検収書を販売管理システムに登録し、その実績データに基づき売上計上を行う。

出荷の実績は、販売管理システムの在庫管理に反映する。
売上の情報は、会計システムに連携し、自動仕訳を行い計上する。
ただし、図1や説明から「出荷実績ファイル」は名前の通り出荷時の情報を元に生成されるため、
  • 出荷実績ファイルは出荷基準の商品の売上計上に用いられる
  • 検収基準の売上は、顧客の検収を受けた時点で検収実績ファイルが作成され、こちらが別途売上計上に使われる
つまり、出荷実績ファイルは検収基準の売上を含まず、それゆえ検収基準の商品データは「出荷実績ファイルからは自動的に売上計上できない」データになるのです。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由

  1. 「出荷実績ファイルからすべての売上を計上できる」と誤解する
    → 出荷基準と検収基準の売上計上タイミングが異なり、両者のデータは別ファイルで管理されているため。
  2. 「検収基準商品も出荷基準と同じタイミングで売上計上される」と勘違いする
    → 問題文冒頭で明確に2通りの売上計上基準があると述べている点を見落とす。
  3. 「売上計上できないデータ=売上計上しないデータ」と捉える誤解
    → 検収基準の商品も売上計上はされるが、出荷実績ファイルからではなく、別の検収実績ファイルを用いる。

試験対策として覚えておくべきポイント・知識

  • 売上計上基準には出荷基準と検収基準があることを必ず押さえる。
  • **販売管理システムのデータファイルは目的別に分かれている(出荷実績ファイル、検収実績ファイルなど)**ことを理解する。
  • 売上計上は基準に応じて異なるファイルやタイミングで行い、ひとつのファイルからすべての売上を計上するわけではないことを認識する。
  • 改善後システムは業務効率化のために伝票の受渡しを減らすが、業務の性質によるデータ管理は変わることがある。

以上を踏まえて、
分類内容
売上計上できるデータ出荷基準の商品のデータ
売上計上できないデータ検収基準の商品のデータ
と理解することが、今回の問題の正答につながります。

設問1(2)売上に関する処理について、(1),(2)に答えよ。

改善後のシステムでの売上ファイルから会計システムへの連携において、自動仕訳後,会計システムの一般会計処理で行われる処理について、具体的な勘定科目名を挙げて20字以内で述べよ
模範解答
売上勘定と売掛金勘定への計上処理
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点整理

  • 「売上ファイル」から会計システムへ連携し「自動仕訳」を行う
  • 会計システムの「一般会計処理」での計上
  • 計上される具体的な勘定科目名
  • 売上勘定売掛金勘定への計上処理

なぜその解答になるのか(論理的説明)

問題文〔改善後のシステムの内容〕(1)売上及び返品に関する処理には、以下の記述があります。
「売上の情報は、会計システムに連携し、自動仕訳を行い,一般会計処理で関連する勘定科目に計上する。」
さらに、
「売上伝票を起票して経理部門に回付することは廃止し、経理部門での仕訳伝票の起票とその入力も廃止する。」
という点から、売上計上のための仕訳は販売管理システムから連携される売上ファイルの情報をもとに「自動的に仕訳処理される」ことがわかります。
また、現状の業務では、
「仕訳伝票を起票し、会計システムに入力して、売上勘定と売掛金勘定に計上している。」
とあり、売上計上の際に必須の勘定科目として「売上勘定(売上高を計上する勘定科目)」と「売掛金勘定(売掛金を計上する資産科目)」が使用されていることがわかります。
これらのことから、改善後も「売上ファイル」を使って会計システムで自動仕訳し、会計システムの一般会計処理で具体的に計上される勘定科目は「売上勘定」と「売掛金勘定」であると判断できます。

受験者が誤りやすいポイントと注意点

  1. 請求書発行や入金で使う勘定科目を混同しないこと
    例えば、「売掛金管理」や「入金処理(現金・預金勘定)」に関わる勘定科目を誤って売上計上時の科目と考えることがあるが、売上計上時に関係するのは「売上勘定」と「売掛金勘定」です。
  2. 「仕訳伝票を起票」する処理の廃止に注意
    売上伝票起票や仕訳伝票起票が廃止されるからといって会計上売上計上がされないわけではありません。販売管理システムと会計システムの連携強化で自動的に仕訳が生成されます。
  3. 自動仕訳の対象となる会計科目の範囲は限定的
    一般会計処理にて他の勘定科目(例えば経費やその他収益)まで計上されるわけではなく、売上計上に必要な科目に絞られます。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
売上計上時の基本勘定科目売上勘定(収益の計上)、売掛金勘定(未収金の資産計上)
システム連携の役割販売管理システムから会計システムへの売上データ連携により、手作業の仕訳入力を省略できる
自動仕訳の効果伝票の受渡しや仕訳起票などの事務工数を削減し、会計データの正確性・即時性を高める
会計システムの一般会計処理勘定科目ごとに仕訳を会計帳簿に記録し、試算表・決算書の基礎データとなる
試験対策システム間連携で何を自動化するのか、どの会計科目に影響するのかを正確に把握すること

これらの知識をもとに、「売上ファイルから会計システムへの自動仕訳後の一般会計処理で計上される勘定科目は何か?」と問われた場合は、迷わず「売上勘定」と「売掛金勘定」と答えられるようにしましょう。

設問2(1)返品に関する処理について、(1),(2)に答えよ。

改善後のシステムでの返品受付で入力された返品情報に基づき、販売管理システム又は会計システムで、三つの処理が行われる。一つは売上計上済商品の売上減算処理である。他の二つについて、それぞれ20字以内で述べよ。
模範解答
①:売上計上済商品の売掛金減算処理 ②:良品の返品の在庫への加算処理
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点の整理

キーワード・論点内容・意味
売上計上済商品の売上減算処理返品があった場合に、既に計上している売上金額を減らす(売上の修正)処理
売上計上済商品の売掛金減算処理売上と連動している売掛金(顧客からの未回収債権)も減らす処理
良品の返品の在庫への加算処理良品返品の場合、倉庫在庫に戻されるため、販売管理システムの在庫マスタに数量を加算する処理
返品商品は処理内容により売上・売掛金・在庫の修正が必要返品受付が業務上重要。返品理由を明確にし、自社責任での返品のみ受付。返品データはシステム連携され、売上・売掛金・在庫に影響する

なぜその解答になるのかの論理的説明

1. 売上計上済商品の売上減算処理について

【問題文】の改善後システムの記述に、
「返品に伴う必要な処理をシステムで連携できるようにしてほしい」
→ 「売上の修正が必要な返品は、売上ファイルにその修正を反映し、会計システムにもその修正を連携して反映する。」
つまり、返品によって元の売上金額が修正(減少)され、これが「売上計上済商品の売上減算処理」に該当します。
この部分は既に問題文で処理の一つとして示されており、設問はそれ以外の処理を問うています。

2. 売上計上済商品の売掛金減算処理について

売上は「売上勘定」と「売掛金勘定」に計上されます。【現状の売上業務】では、
「仕訳伝票を起票し、会計システムに入力して、売上勘定と売掛金勘定に計上している。」
よって、売上が減算される場合は、それに伴い売掛金(顧客の支払い債権)も減少させる必要があります。
【改善後】では、
「売上の情報は、会計システムに連携し、自動仕訳を行い、一般会計処理で関連する勘定科目に計上する。」
返品の修正も同様に売掛金を減らす仕訳に反映されます。つまり、返品受付による処理として「売上計上済商品の売掛金減算処理」が行われます。

3. 良品の返品の在庫への加算処理について

【返品業務】の現状説明に、
「良品の返品は、倉庫在庫へ戻入れを行い,必要な処理を行っている。」
【改善後のシステム】では、
「良品の返品の場合は、販売管理システムの在庫管理に反映する。」
つまり、返品で戻った良品は倉庫の在庫にカウントし直す必要があり、これが「良品の返品の在庫への加算処理」です。

受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢

  1. 「売上計上済商品の売上減算処理」を何度も挙げてしまう誤り
    設問では「一つは売上計上済商品の売上減算処理」と言われていますので、他の処理を答えるべきです。重複回答を避けましょう。
  2. 返品処理=単純な売上減少だけと考える誤り
    返品は売上だけでなく、売掛金・在庫にも影響があるため、複数の処理が必要です。売掛金や在庫の修正を見落としがちです。
  3. 返品理由確認や自社責任の判断を処理の一つと勘違い
    「返品理由の明確化」や「関係部署での返品受付」は業務プロセスの話で、設問は「システムで処理される具体的な処理」を問うています。

試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • 返品処理が関連システムに与える影響は多方面に渡ること
    売上計上の取消だけでなく、売掛金残高の調整、さらに良品返品であれば在庫情報の更新も含みます。
  • システム間連携の役割を理解すること
    販売管理システムで返品受付すると、その情報は売上減少、売掛金減少、在庫増加へ連携され、自動的に各勘定やマスタが更新されます。
  • 業務プロセスとシステム処理を区別すること
    「返品理由確認」などは業務上の手続きですが、設問ではシステム上での「売掛金減算処理」「在庫加算処理」などの具体的処理を答える必要があります。
  • キーワードとして覚えるべき用語
    売上減算処理・売掛金減算処理・在庫加算処理は、販売管理・会計連携の返品処理の基本ワードです。

以上を踏まえ、返品受付時には「売上の減算」「売掛金の減算」「在庫の加算」という三つの主要なシステム処理が連携して行われることを理解しておきましょう。

設問2(2)返品に関する処理について、(1),(2)に答えよ。

返品受付された返品データの中で、売上を修正する必要がないデータがある。どのようなデータか。20字以内で述べよ。
模範解答
検収基準での出荷商品の返品データ
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理

  • 返品データの中で売上を修正する必要がないもの
  • 検収基準で売上計上している商品に関する返品
  • 売上計上タイミングの違い(出荷基準 vs 検収基準)
  • 返品による売上修正の有無の判断基準

2. 解答がなぜこれになるかの論理的説明

問題文の「〔現状の売上から回収までの業務と関連システムの概要〕」の(1)売上業務部分には次の記述があります。
「売上計上には、販売している商品の特性によって、出荷した時点で売上を計上する(出荷基準)場合と、顧客からの検収書を入手した時点で売上を計上する(検収基準)場合の2通りがある。」
また、返品業務のところに、
「返品に伴う修正仕訳伝票を起票し、会計システムに入力している」
とありますが、具体的にどの返品で売上修正が必要か改善後のシステムの説明(1)には、
「返品については、販売管理システムに新たに返品受付の処理を設ける。ここで受け付ける返品は、自社責任が明確になった返品だけとする。 売上の修正が必要な返品は、売上ファイルにその修正を反映し、会計システムにもその修正を連携して反映する。良品の返品の場合は、販売管理システムの在庫管理に反映する。」
大事なポイントは、売上計上のタイミングの違いにより売上の修正が必要か不要かが分かれることです。つまり、
  • 出荷基準の場合は、商品を出荷した時点で売上を計上しているため、返品があれば売上の減額(売上修正)が必要になる。
  • 検収基準の場合は、売上は顧客の検収(受入)をもって計上されているため、出荷時点ではまだ売上計上されておらず、返品して戻ってきても売上計上自体がされていないことになる。よって返品があっても売上の修正は不要となる。
このため「売上を修正する必要がない返品データ」は、検収基準で売上計上している商品の返品であると結論づけられます。

3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの理由

  • 「出荷商品の返品」=すべて売上修正必須と思い込む誤り
    • 出荷基準商品と検収基準商品を区別せず、返品は全て売上を直すと考えると誤答になります。
  • 「良品返品は売上修正が必要ない」と考える誤り
    • 良品の返品は基本的に在庫に戻す処理であり、売上は通常減額されませんが、それは出荷基準か否かにかかわらず売上修正が必要ないわけではありません。
  • 返品理由の違いに注目しすぎる
    • 今回は売上修正の要否が問われているので、返品理由(自社責任か否か)は正解の本質ではありません。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
売上計上基準の違い出荷基準は商品出荷時点で売上計上、検収基準は顧客検収時点で売上計上
返品による売上修正の要否出荷基準の商品返品 → 売上修正が必要、検収基準の商品返品 → 売上修正は不要
返品処理と在庫処理の区別良品返品は通常在庫に戻し売上修正しないケース多し、ただし売上計上基準による判断が本質
システム連携による業務効率化売上修正を伴う返品はシステム連携で正確に仕訳と在庫管理を行う

この問題では「売上計上の仕組み」が返品後の売上修正の有無を決める最大のポイントです。
この基本知識を正確に理解し、設問文の「返品受付された返品データ」「売上を修正する必要がない」というキーワードに着目して答えを導きましょう。

設問3

請求に関する処理の中で、顧客からの支払明細データと請求予定の売上データの照合において、照合対象となるお互いのデータが発生した期間について整合がとれている必要がある。その期間はいつからいつまでか。20字以内で述べよ。
模範解答
前月締日翌日から今月締日まで
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 照合対象となる売上データと支払明細データの「期間の一致・整合」
  • 期間の起点:前月締日翌日
  • 期間の終点:今月締日
  • 顧客ごとの「締日」を基準に照合が行われること

解答の論理的説明

問題文の請求業務改善案より、特に以下の記述を参照します。
「大手顧客からの支払通知書に基づく請求については、顧客からの支払の対象となる支払明細データを事前にEDIで入手できるように顧客と調整する。その支払明細データと売上データとの照合処理を、毎月顧客ごとの締日を基準にして実施する。」
この「毎月顧客ごとの締日を基準にして」照合を行うため、照合対象となる売上データは
  • 単なる「当月分の売上」ではなく
  • 「前回締日の翌日」から「今回の締日」までに発生した売上
に限定されます。
例えば、月末締めであれば、
締日照合対象売上の期間
今月末前月末の翌日から今月末までの売上
この範囲により、支払明細データと売上データを一致させて照合し、請求金額の誤りや過不足を防ぐことが狙いです。
したがって、答えは
「前月締日翌日から今月締日まで」
となります。

受験者が誤りやすいポイント

  • 「前月締日」と「前月締日翌日」を混同する
    「前月締日その日」を含めるのではなく、その翌日から今回の締日までが対象期間です。
    締日当日は売上計上の区切り日であり、締め後の売上は翌日以降の新たな期間として管理します。
  • 「当月初日から締日まで」と誤答する
    顧客によって締日が月をまたぐ場合があり、「前月締日の翌日が当月初日」とは限らないため、単に「当月」と捉えるのは誤りです。
  • 「今月締日を含めるのか否か」
    今月締日までの売上は照合対象となるため、今月締日を含むことを意識してください。

試験対策ポイント・覚えておくべき知識

  • 「締日」基準の売上と支払期間の管理
    システム間のデータ連携や請求に際して、売上計上期間と支払期間の整合が重要。
    必ず【前月締日翌日から今月締日まで】の期間を基準にして照合することを覚えましょう。
  • EDIによる支払明細データの事前入手と自動照合
    問題の改善案では顧客とのEDI連携で「支払明細データ入手→売上データ照合→不一致確認」という流れが重要。
    期間の整合なくして正確な自動照合は実現しません。
  • 業務フローの基本理解
    請求・入金・売掛金管理における期間管理と連携フローの理解は午後1試験でも頻出テーマです。
    特に「締日」や「期間区切り」の概念をしっかり押さえましょう。

このように、出題意図は「支払明細と売上の期間を正しく整合させること」であるため、解答は「前月締日翌日から今月締日まで」が適切です。

設問4

図3中の売掛金年齢表において、F社,G社、H社の中で、売掛金の回収に問題がない顧客はどの顧客か。顧客名を答えよ。また、問題がない理由を、顧客の支払条件を含めて40字以内で述べよ
模範解答
顧客名:F社 理由:支払条件である月末締め翌月末払いのとおりで,支払の遅れがないから
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 顧客名:F社
  • 支払条件:月末締め翌月末払い
  • 回収状況:支払条件どおりで遅れがない
  • 売掛金年齢表から判断

なぜF社が正解になるのか(問題文の引用を交えて解説)

問題文には次のように記載されています。
「売掛金年齢表は、売掛金の回収を促進し、不良債権化を未然に防止するための情報を提供する管理表であり、現時点の売掛金残高に対する回収が、顧客の売掛金の支払条件に応じた回収になっているか、回収が遅れている場合はいつの売上分の売掛金残高が幾ら未回収となっているかが出力されている。」
「顧客F社,G社、H社の売掛金の支払条件は、3社とも月末締め翌月末払いである。」
この支払条件を踏まえて図3の売掛金年齢表(抜粋)を確認します。
顧客名売掛金残高合計10月売上分9月売上分8月売上分7月以前売上分
F社15,00015,000
G社10,0008,0002,000
H社8,0002,0003,0002,0001,000
問題の判定基準は「支払条件月末締め翌月末払いであることから、前月10月の売上分が未回収であれば問題ない。9月以前の売上分が残っている(未回収)がある顧客は支払遅延あり=問題あり。」です。
  • F社は「10月売上分15,000千円」が未回収であるが、当日(平成28年11月1日)時点ではまだ支払期限である「10月末締め→11月末払い」の期限は過ぎていません。つまり、支払遅延がなく正常です。
  • G社は「9月売上分2,000千円」が未回収。これは10月末までに回収されるべきもので、11月1日時点で未回収は支払遅延を意味します。
  • H社は「8月、7月以前の売上分が合計3,000千円未回収」であり、さらに遅延が大きいと判断できます。
したがって、売掛金の回収状況に問題がない顧客はF社となります。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由

  • 未回収=問題ありとは限らない
    売掛金が未回収でも、支払条件に照らして期限内であれば正常です。支払期限の理解が不足すると、「売掛金が残っている=悪い」と誤判断しやすいです。
  • 複数の支払月があることの理解不足
    G社やH社は複数月にわたって未回収がある点から遅れていると判断できるが、これを見落とすと正解できません。
  • 支払条件の「月末締め翌月末払い」を忘れる
    この条件の意味を正しく理解し、その期限を踏まえて未回収期間を把握できていないと誤答します。

試験対策として覚えておくべきポイント

  1. 売掛金年齢表(エイジングリスト)の読み取り
     売掛金の未回収残高を支払月ごとに分類し、回収遅延や不良債権の兆候を確認する重要な管理資料である。
  2. 支払条件の理解と照合
     「月末締め翌月末払い」などの支払条件を正確に解釈し、回収状況の良否を判断する。
  3. 未回収=必ず問題ではないことの理解
     経過期間が支払条件の猶予内なら未回収でも問題なし。期限超過が問題となる。
  4. 売掛金管理の目的
     資金繰りの強化や不良債権化予防のために、売掛金の経過管理とリスク判定が重要である。
  5. 図表の読み取り練習
     本問題のような図や表での判定を正確に行う練習を重ねる。

以上の点を踏まえ、売掛金年齢表を用いた売掛金管理の基礎を押さえて試験に臨みましょう。
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