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システムアーキテクト試験 2017年 午後1 問02
生産管理システムの改善に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
F社は、工作機械や建設機械を構成する部品の製造販売を行う機械部品メーカである。このたび、生産管理部門、製造部門、経理部門から生産管理システムの改善要望を受け、システム改善プロジェクトを立ち上げた。
〔F社の生産形態〕
F社が販売する製品の生産形態には、顧客からの注文に対応する受注生産と、汎用部品や保守用部品を在庫として保持し、販売する見込生産がある。
〔製造工程の概要〕
製品の製造工程は、加工工程と組立工程から成っている。加工工程は、設備機械での切断、切削、ねじ切り、穴開け、検査などの作業工程で成り立っている。加工工程で製造する部品(以下、加工部品という)は、部品によって作業工程が異なる。組立工程では、加工部品や外部から購入した部品(以下、購入部品という)を使用し、製品別の組立ラインで製品を組み立てている。製造工程の概要を図1に示す。

〔現在の生産管理の業務内容〕 現在の生産管理に関わる部門の業務内容は、次のとおりである。 なお、現在の業務で利用している生産管理システム(以下、現行システムという)は、生産管理ソフトウェアパッケージ(以下、生産管理パッケージという)を利用している。
(1)生産管理部門での業務
生産管理部門では、主要な業務として、次の二つの計画業務を行っている。
①基準生産計画
受注生産の製品については、顧客からの注文情報を営業部門から入手する。また、見込生産の製品については、販売計画及び製品在庫状況の情報を営業部門から入手する。これらの情報を基に、どの製品を、いつ、どれだけ生産するかという基準生産計画を月次で立案する。計画を立案する際には、工場側の状況も考慮している。
基準生産計画の立案結果は、生産管理部門が現行システムに登録している。注文情報、販売計画情報、製品在庫状況情報は、営業部門が主として利用している販売管理システムで管理しているが、現行システムとは連携していない。
②資材所要量計画
資材所要量計画においては、基準生産計画を基に、現行システムを利用して次の業務を行っている。
・製品の組立オーダの決定と発行
・製品を構成する材料、購入部品及び加工部品(以下、材料、購入部品及び加工部品を資材という)の所要量の計算
・材料と購入部品の購買オーダ及び加工部品の加工オーダの決定と発行
(2)購買部門での業務
購買部門では、生産管理部門から発行された購買オーダに基づく材料と購入部品の購買、及び購買した材料と購入部品の在庫管理を行っている。現行システムでは、発注、検収、材料と購入部品の在庫管理及び買掛金管理を行っている。
(3)生産技術部門での業務
生産技術部門では、設計部門で設計された加工部品及び製品の製造方法として、加工工程と組立工程の中で、どのような作業工程を経て製造するかの工程手順を設定している。また、製造対象品の個々の作業工程の中での、作業標準、単位当たりの標準作業時間、使用する設備機械とその能力基準などの製造基準の設定を行い、それぞれ設計技術システムで管理している。また、製造現場の作業実態及び作業実績データを収集・分析し、製造基準の見直しや製造方法の改善を行っている。
(4)製造部門での業務
製造部門では、生産管理部門から発行された組立オーダ及び加工オーダに対して、製造実施計画の立案、作業指示、製造作業、作業実績収集、作業進捗管理及び加工部品の在庫管理を行っている。
製造実施計画は週次で作成する。組立工程については、組立オーダごとに、1週間分の組立ライン別作業順序計画を日単位で立案している。加工工程については、加工オーダごとに、1週間分の各作業工程への加工オーダ割付けを日単位で行っている。製造実施計画に必要な製造基準の情報は、生産技術部門から入手し、製造部門のPCで管理している。
現行システムでは、製造実施計画の立案結果の登録、作業指示票の発行、作業実績の製造現場での入力、作業進捗管理及び加工部品の在庫管理を行っている。作業者及び設備機械の作業実績データを、作業進捗管理に利用するとともに、生産技術部門及び経理部門に提出している。
〔現行システムへの改善要望〕
各部門からの改善要望として、次の要望が挙げられた。
(1)生産管理部門からの要望
・基準生産計画立案の効率向上のために、現行の販売管理システムの注文情報、販売計画情報、製品在庫状況情報をシステム間で連携してほしい。
・基準生産計画の立案に当たっては、工場全体の稼働率の視点から、工場の設備機械、作業者などの生産能力とのバランスを調整する必要があるので、立案時にその調整をシステムで支援してほしい。
(2)製造部門からの要望
・製造実施計画の立案に、大きな工数が掛かっている。設備機械や作業者などの資源の最適稼働を図るためにも、システムで支援してほしい。
・作業実績データは、生産技術部門及び経理部門にも提出しているが、提出用データの集計に手間が掛かっている。システム間で情報を連携してほしい。
(3)経理部門からの要望
・現行の会計システムの原価計算処理で、加工費計算に作業実績データの中の作業時間実績が必要となる。これが会計システムに反映されるようにしてほしい
〔改善後の生産管理システム〕
改善要望を踏まえ、プロジェクトチームで、改善後の生産管理システム(以下、新システムという)の機能を整理し、機能の詳細について検討を行った。また、新システムでは、現行システムで利用している生産管理パッケージの中でまだ使用していない機能を、できるだけ活用することにした。
加工工程はF社の生産に占める比率が高く、改善効果も大きいことから、新システムでの最も大きな変更である製造実施計画立案のシステム化は、加工工程を対象とした。組立工程については、人手で計画した作業日程の登録と変更の機能を設けた。
新システムの機能概要と現行システムからの改善内容を表1に、新システムの機能構造を図2に示す。


〔製造実施計画のシステム要件検討〕
新システムで新規に利用する、製造実施計画機能の加工オーダの処理に関するシステム要件について、プロジェクトチームで検討を行った。
(1)作業日程計算
作業日程計算に必要な製造基準は、工程手順表マスタに定義されている。
加工オーダの作業工程について、工程手順を参照する。次に、加工対象品の単位当たりの標準作業時間を基に、各作業工程の作業時間を見積もり、加工オーダの作業工程ごとの着手予定日、完了予定日を計算する。
(2)作業負荷の山積み、作業負荷調整
全ての加工オーダの作業日程計算後、設備機械ごとに、その設備機械で加工対象となる各加工オーダの作業時間を日単位に累積していく。これを作業負荷の山積みという。
設備機械がもつ生産能力に対し、作業負荷がオーバした場合は、製造部門管理者の判断で、加工オーダの代替設備機械への振替、作業者のシフト調整などの負荷調整を行う。
設問1(1):基準生産計画について、(1),(2)に答えよ。
現在の基準生産計画の立案において、計画の対象時期や生産リードタイムなどの時間的要素及び営業部門からの情報の他に考慮していることは何か。20字以内で述べよ。
模範解答
設備機械,作業者などの生産能力の状況
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- 設備機械,作業者などの生産能力の状況
=生産計画を立てる際に「物理的にどれだけ生産できるか」という工場側の能力を考慮すること - 「基準生産計画立案時の考慮要素」
- 「時間的要素(計画対象時期や生産リードタイム)」に加えてのポイント
- 生産能力とのバランス調整の必要性
2. 解答となる理由の論理的説明
問題文の該当箇所を引用すると:
「基準生産計画の立案結果は、生産管理部門が現行システムに登録している。注文情報,販売計画情報,製品在庫状況情報は、営業部門が主として利用している販売管理システムで管理しているが、現行システムとは連携していない。
基準生産計画の立案に当たっては、工場側の状況も考慮している。」
さらに、改善要望の中で:
・基準生産計画の立案に当たっては、工場全体の稼働率の視点から、工場の設備機械,作業者などの生産能力とのバランスを調整する必要があるので、立案時にその調整をシステムで支援してほしい。
上記のように、機械や人員などの「生産能力の状況」を併せて考慮することが明記されています。
つまり、単に顧客の注文や販売計画の「数」や「時期」のみで生産計画を立てるのではなく、実際にどの程度の生産が物理的に可能か=「設備機械,作業者などの生産能力」を踏まえた調整も重要なポイントです。
つまり、単に顧客の注文や販売計画の「数」や「時期」のみで生産計画を立てるのではなく、実際にどの程度の生産が物理的に可能か=「設備機械,作業者などの生産能力」を踏まえた調整も重要なポイントです。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
時間的要素だけではないことを見落とす
受験者は「基準生産計画は時間軸(いつ生産するか)を考慮する」とだけ理解しがちですが、単に計画対象期間の設定やリードタイムだけではなく、設備の能力の限界や人員のキャパシティも考える必要がある点を押さえるべきです。 -
営業部門の情報だけを考慮する誤解
問題文では、営業部門の注文情報や販売計画情報は重要ですが、生産計画立案には「工場側の状況」も重要な情報であるため、この部分を見落とすと誤答になります。 -
「工場状況」=「生産能力」以外の抽象的表現の混乱
「工場側の状況」とは具体的には「設備機械の状態」や「作業者の数や能力」などです。漠然と「工場の事情」という表現だけで捉えると具体性が薄くなるため、正しく「生産能力」と明言できることが重要です。
4. 試験対策としての覚えておくべきポイント・知識
この問題では、「生産計画は営業の受注情報だけではなく、実際の生産現場の設備や人員の能力も考慮しなければいけない」ことを正確に理解し、解答で明確に示すことが合格のポイントとなります。
設問1(2):基準生産計画について、(1),(2)に答えよ。
新システムで追加する情報連携機能において、見込生産の製品の基準生産計画立案のために、販売管理システムから受け取るべき情報を、二つ答えよ
模範解答
①:販売計画情報
②:製品在庫状況情報
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 見込生産の製品の基準生産計画立案に必要な情報
- 販売管理システムから連携すべき情報として
- 「販売計画情報」
- 「製品在庫状況情報」
解答の根拠と論理的説明
問題文の「〔現在の生産管理の業務内容〕(1)生産管理部門での業務」には、基準生産計画の立案に必要な情報についてこう記載されています。
見込生産の製品については、販売計画及び製品在庫状況の情報を営業部門から入手する。
これらを基に基準生産計画を月次で立案している。
また、現状はこの「販売計画情報」と「製品在庫状況情報」は販売管理システムに管理されているが、現行システム(生産管理システム)とは連携していません。
改善要望としても、
基準生産計画立案の効率向上のために、販売管理システムの注文情報、販売計画情報、製品在庫状況情報をシステム間で連携してほしい。
と明確に記されています。
つまり、見込生産の基準生産計画を立てるためには、「販売計画情報」と「製品在庫状況情報」が必須の連携情報であるため、この2つが答えとなります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢について
-
注文情報との混同
受注生産製品向けには「注文情報」が基準生産計画の基本情報ですが、問われているのは「見込生産の製品」に関する情報です。
見込生産では注文情報は基準生産計画の基礎情報には含まれず、誤って「注文情報」を選ぶと間違いとなります。 -
関連用語の混在
販売管理システムから入手すると言われる情報に「販売計画」「製品在庫状況」「注文情報」がありますが、それぞれ生産形態(受注生産・見込生産)で役割や利用目的が異なるため、見極めが必要です。
試験対策として覚えておくべきポイント
これらを押さえておくと、「見込生産の基準生産計画のために販売管理システムから受け取るべき情報」について正しい選択ができるようになります。
特に「見込生産と受注生産の違い」と「それぞれで必要な情報」が試験で頻出の論点ですので、きちんと理解しておきましょう。
特に「見込生産と受注生産の違い」と「それぞれで必要な情報」が試験で頻出の論点ですので、きちんと理解しておきましょう。
設問2(1):新システムで利用する製造基準について、(1),(2)に答えよ。
加工オーダの製造実施計画立案時の作業日程計算で参照される製造基準は、作業日程上の何を求めるために使用されるか。30字以内で述べよ
模範解答
加工オーダの作業工程ごとの着手予定日,完了予定日
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 「製造基準」
- 「作業日程計算」
- 「作業工程ごとの」
- 「着手予定日」
- 「完了予定日」
解答に至る論理的説明
問題文の「〔製造実施計画のシステム要件検討〕(1)作業日程計算」には以下の記述があります。
「作業日程計算に必要な製造基準は、工程手順表マスタに定義されている。
加工オーダの作業工程について、工程手順を参照する。次に、加工対象品の単位当たりの標準作業時間を基に、各作業工程の作業時間を見積もり、加工オーダの作業工程ごとの着手予定日,完了予定日を計算する。」
この文章から重要なポイントは、
- 作業日程計算には「製造基準」が必要
- 製造基準は工程手順・標準作業時間を含む
- それらを使って「作業工程ごとの着手予定日、完了予定日」を計算する
ということです。
つまり、製造基準は「どの作業をいつ開始し、いつ終えるか」=「作業日程の具体的なスケジュール(着手・完了予定日)」を求める際に用いられています。
誤りやすいポイント・ひっかけになりやすい部分
-
「製造基準=作業内容や手順そのもの」ではない点
「製造基準」には標準作業時間や設備能力も含まれますが、今回の問いでは「作業日程上で何を求めるか」という観点なので、「作業手順の内容」ではなく「日程(開始・終了予定日)」を答えることが必要です。 -
「作業時間の見積もり」や「負荷調整」と混同しないこと
作業時間の見積もりは作業日程計算の一部ですが、問いは「作業日程計算で参照される製造基準によって求められるもの」を問うています。
負荷調整(作業負荷の山積み、負荷調整)は作業日程計算の後の工程であり、直接の答えにはなりません。 -
作業日程の「予定日」なので、「実績日」とは異なる
実績データは実作業後に集められるもので、計画の段階(=作業日程計算)で求めるのはあくまで予定日です。
試験対策として覚えておくべきポイント
これらをしっかり理解すると、「製造基準は作業日程計算に使われ、具体的には作業工程ごとの予定開始日・終了日を求めるための情報」という点を正確に答えられます。
過去問などでも「標準作業時間」「工程手順」「作業予定日の計算」などはよく問われる基本事項なので、押さえておきましょう。
過去問などでも「標準作業時間」「工程手順」「作業予定日の計算」などはよく問われる基本事項なので、押さえておきましょう。
設問2(2):新システムで利用する製造基準について、(1),(2)に答えよ。
一つの作業工程において、加工オーダの作業負荷の山積み、負荷調整を行うときに、工程手順表マスタと設備機械マスタを関連付けるために、工程手順表マスタの作業工程に定義しておくべき情報は何か。15字以内で述べよ。
模範解答
作業工程で使用する設備機械
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 作業工程
- 設備機械
- 工程手順表マスタ
- 作業負荷の山積み(負荷の集計)
- 負荷調整(代替設備機械への振替など)
これらから導かれるキーワードは「作業工程で使用する設備機械」です。
なぜこの解答になるのか—論理的説明
問題文の該当箇所を整理しますと、
-
新システムの製造実施計画では「作業負荷の山積み」として、
「設備機械ごとに、その設備機械で加工対象となる各加工オーダの作業時間を日単位に累積していく」処理が行われています。
(【問題文】「設備機械ごとに、その設備機械で加工対象となる各加工オーダの作業時間を日単位に累積」) -
したがって、作業負荷の山積みを正しく行うためには、
どの作業工程がどの設備機械を使用しているか、という関連づけ情報が必要 となります。 -
そのため、設備機械マスタ(設備機械の情報を持つ)と工程手順表マスタ(作業工程の手順の情報を持つ)を関連付けるために、
工程手順表マスタに「作業工程で使用する設備機械」の情報が定義されている必要がある のです。
例えば、工程手順表に「切削」作業工程があり、それが「旋盤A」という設備機械で行われると定義していれば、
その工程に加工オーダの作業時間を割り当てる際に、旋盤Aという設備機械の負荷として計上可能になります。
その工程に加工オーダの作業時間を割り当てる際に、旋盤Aという設備機械の負荷として計上可能になります。
受験者が誤りやすいポイントや注意点
-
「作業工程」という言葉に惑わされて工程名や作業内容だけを答える誤り
作業工程そのものではなく、「その工程でどの設備を使うか」という関連付けの情報が求められている点を理解してください。 -
「作業者」「シフト」「作業時間」などを答えてしまう誤り
作業時間は計算に用いられますが、今回の設問は「工程手順表マスタに定義すべき情報」であり、
設備機械との紐付けがポイントなので、「作業者」などは該当しません。 -
「加工オーダの情報」と混同する恐れ
加工オーダは計画の対象ですが、「工程手順表マスタ」の定義対象は作業工程の構成情報です。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
これらのポイントを押さえることで、製造実施計画のシステム要件やマスタ設計の理解が深まり、同様の出題にも対応しやすくなります。
以上の内容を踏まえて、今回の設問では、
「作業工程で使用する設備機械」
を工程手順表マスタに定義しておくことが適切であると判断されます。
設問3
製造実施計画における作業日程計算の過程で、加工工程の中の,一つの作業工程の所要作業時間を計算するために必要な情報を、二つ答えよ。
模範解答
①:加工対象の数量
②:単位当たりの標準作業時間
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
-
作業時間の計算に必要な情報
① 加工対象の数量(加工オーダで指定された部品の個数など)
② 単位当たりの標準作業時間(製造基準として設定されている、1単位の製品や部品を加工するのにかかる標準時間) -
これらから、
「所要作業時間」=「数量」×「単位当たりの作業時間」
という関係性が成り立つ。
解答がそうなる論理的説明
問題文〔製造実施計画のシステム要件検討〕の(1)作業日程計算の記述には以下のようにあります。
「作業日程計算に必要な製造基準は、工程手順表マスタに定義されている。
加工オーダの作業工程について、工程手順を参照する。
次に、加工対象品の単位当たりの標準作業時間を基に、各作業工程の作業時間を見積もり、加工オーダの作業工程ごとの着手予定日,完了予定日を計算する。」
文章中の「加工対象品の単位当たりの標準作業時間」とは、1つの加工部品を作るのにかかる標準作業時間です。ここに個数(加工対象の数量)がかかることは合理的に理解できます。
つまり、作業時間を計算するためには、
- いくつ作るのか ⇒ 「加工対象の数量」
- 1つ作るのにどれだけかかるのか ⇒ 「単位当たりの標準作業時間」
この2つの情報が最低限必要です。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ解説
-
単位当たり作業時間だけでよいと思う誤解
「標準作業時間だけわかれば良い」と考えると誤りです。数量がわからなければ総所要時間は算出できません。 -
数量のみでよいと思う誤解
数量はわかっても、単位当たり作業時間なしではどれだけかかるかわかりません。 -
作業者のスキルや設備の能力を答えてしまう誤り
作業者のスキルや設備の能力も計画上重要な要素ですが、今回の「作業時間の見積もり」という観点では直接必要な情報ではないため条件に合いません。 -
あいまいな「生産能力」や「設備稼働率」なども誤答になりやすい
「作業負荷の山積み」や「調整」は別フェーズの業務であり、所要時間計算の直接情報ではありません。
試験対策として覚えておくべきポイント
まとめ
- 作業日程計算において所要時間を計算するためには
「加工対象の数量」 と 「単位当たりの標準作業時間」 が必須。 - この二つから総作業時間が算出できる。
- 他の情報は計画の後段階(例:作業負荷調整など)のため、作業時間の計算には含まれない。
この基本理解は、生産管理システムの改善や製造実施計画機能の設計においても重要なので、しっかり押さえておきましょう。
設問4
新システムでは、作業実績データは、設計技術システムと会計システムに連携され、生産技術部門及び経理部門で活用される。二つの部門で何に活用されるか。それぞれ20字以内で述べよ。
模範解答
生産技術部門:製造基準の見直しや製造方法の改善
経理部門:原価計算処理の加工費計算
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えた論理的説明)
新システムで作業実績データは「設計技術システム」と「会計システム」に連携され、それぞれの部門で異なる目的で活用されます。
生産技術部門(設計技術システム)
問題文に記載された「生産技術部門での業務」には次の記述があります。
「製造現場の作業実態及び作業実績データを収集・分析し、製造基準の見直しや製造方法の改善を行っている。」
このことから、作業実績データは実際の製造状況を数値的に捉えるものであり、生産技術部門はデータ分析を通じて製造基準(作業標準や設備能力など)を見直し、より効率的な製造方法へ改善する目的で活用しています。
経理部門(会計システム)
経理部門からの要望には以下の記述があります。
「現行の会計システムの原価計算処理で、加工費計算に作業実績データの中の作業時間実績が必要となる。これが会計システムに反映されるようにしてほしい」
したがって、経理部門では作業実績データ(特に作業時間の実績)を用いて、製造にかかった実際のコストを算出する原価計算のうち、加工費計算のために利用しています。これにより、生産コストのより正確な把握と管理が可能となります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由
-
同じ作業実績データを使うが、活用目的が異なることを理解できていない→ 作業実績データは複数部門で使うが、その目的に応じた言葉(「基準の見直し」「原価計算」など)を使い分ける必要があります。
-
「製造部門」や「製造現場」と混同する→ 作業実績データは製造現場で収集されますが、活用は生産技術部門(改善)と経理部門(原価計算)になる点で違います。回答時には部門名と活用内容を正確に区別しましょう。
-
言葉の字数制限を無視した長文回答になる→ 解答は20字以内と指定されているため、冗長な表現は避け、簡潔に要点を押さえた文章にすることが求められます。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
作業実績データの用途は部門ごとに異なる
- 生産技術部門では「製造基準の見直し」「製造方法の改善」がキーワード
- 経理部門では「原価計算」「加工費計算」がキーワード
-
「設計技術システム」と「会計システム」との連携役割を理解する生産管理システムはこれらのシステムと連携し、部門ごとの専門的な分析・計算に必要なデータを提供します。
-
解答の字数制限がある問題は、表現を簡潔にまとめる訓練が必要
-
体系的な業務の流れとシステム連携関係を押さえるどの業務がどのシステムで管理されているかを把握しておくと、正答の根拠をつかみやすくなります。
この問題は、システム間連携による生産管理の高度化という視点から業務システムの役割と目的を問うものです。現場データの活用先を押さえ、部門名と役割を明確に区別できるようにしておきましょう。