ホーム > システムアーキテクト試験 > 2018年
システムアーキテクト試験 2018年 午後1 問01
システムの改善に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
A社は、従業員2、000名を抱えるシステムインテグレータである。このたび、新中期計画において、情報技術の進展と競争激化に対応するために、人材開発の高度化が打ち出された。A社の人材開発部と情報システム部は、この新中期計画を受けて、現在稼働中の目標管理システム、受講管理システム及び資格管理システム(以下、現行システムという)の機能の改善と連携の強化を行うことにした。
〔現行システムの概要〕
現行システムの概要は次のとおりである。また、現行システムで管理している主な情報を表1に示す。
(1)目標管理システム
A社では、目標管理システムを使って、半年ごとの社員の業績及び能力開発の目標と実績を管理している。社員が設定した目標は、上司と協議して決定され、半年ごとにその達成状況の評価が行われている。能力開発の目標設定では、その期に受講予定の講座や取得を目指す資格について合意し、社員の能力開発に役立てる。
目標設定は、4月中旬及び10月中旬に行う。社員が目標を目標管理システムに入力し、その後、上司と画面を見ながら協議し、合意した内容で目標を決定する。達成状況の評価は、9月下旬及び3月下旬に行う。社員が実績を目標管理システムに入力し、その後、上司と画面を見ながら協議し、合意した内容で達成状況の評価を決定する。
なお、A社の組織変更は4月1日と10月1日に行われる。人事異動は、毎月1日に発令され、昇進は年に1回、4月1日に発令される。
(2)受講理システム
A社では、年間約100講座の研修を開催している。各講座は、それぞれ年に数回開催され、社員は年間10日の受講を目標にしている。
・講座の情報として、講座基本情報と、開催スケジュール情報をもつ。開催スケジュール情報は、その講座の開催回ごとに、開催日、開催場所などの属性をもつ。
・社員が講座を申し込むと、受講履歴情報が作成される。受講履歴情報は、申込状況、受講状況及び受講結果に関する情報をもつ
・社員が講座を修了すると、修了履歴情報が作成される。
・講座の開催に当たり、受講者に講座実施案内の電子メール(以下、案内メールという)を送付し、受講者名簿、名札、座席表などの出力を行う。
・社員の社員番号、漢字氏名、かな氏名、生年月日、所属及び役職の情報(以下、社員基本情報という)は、人事部が、別途稼働している人事システムで管理している。人事異動で社員基本情報が変更される場合は、本人に内示された後、発令日の3営業日前の業務開始前に人事システムから変更情報が連携され、直ちに更新している。
・年度末に、受講管理システムから、社員個人別に過去3年間の年間受講日数一覧表を出力し、年間目標の達成状況を確認している。
(3)資格管理システム
A社では、資格の取得を上位役職への昇進の必要条件としている。このため、社員は資格を取得すると、資格管理システムで登録申請を行い、合格証書の写しを人事部に送付する。人事部では、合格証書の写しを確認し、登録申請を承認する。
1年間に登録される件数は約700件であり、そのうち約6割が会社で団体申込みを行っている情報技術関連の資格である。

〔実施している研修の概要〕 A社では新入社員を対象にした新入社員研修のほか、昇進した際に受講する昇進時研修、特定分野のスキル向上を目的としたスキル研修を実施している
新入社員研修は、4月1日から5月末日まで実施される。昇進時研修は、4月上旬に実施される。昇進者は、3月中旬の役員会で決定され、3月20日までに昇進者本人に昇進が内示されて、その全員が昇進時研修の受講対象者となる。
新入社員研修及び昇進時研修は、受講対象者による申込みを行わず、人事部から情報を入手し次第、人材開発部で受講者を登録する。
スキル研修は、4月中旬から受講申込みを募集し、6月から翌年2月までの間に開催する。募集の受付は、各講座の定員に達したとき、又は各講座の開催5週間前に一旦締め切るが、定員に満たないときは、開催1週間前まで受け付ける。スキル研修は、毎年、数講座を入れ替えている。それ以外の講座については、プログラムや教材の部分的な改訂を行っているが、講座日数などの大きな変更は行っていない。
〔現在の講座の運用〕
講座の開催に当たっては、受講管理システムを用いて次のような運用を行っている。
・業務の調整及び講座の受講準備を促すために、開催5週間前に、受講者に案内メールを送付する。ただし、新入社員研修では、受講者である新入社員に入社式で詳細を説明するので、案内メールは送付しない。
・開催5週間前を過ぎて申込みがあった場合は、翌営業日に案内メールを送付する。
・開催3営業日前に、開催準備作業として、受講者名簿、名札及び座席表を出力する。
・講座を受講し、その講師が修了と判定した場合は、修了履歴に登録される。
・開催1週間前を過ぎてからの申込みは受け付けないが、部長から特別に要請があれば、例外的に受講者の追加や変更を認めている。この場合、開催準備作業後であれば、追加や変更が行われた時点で受講者名簿及び名札を再出力するが、①再出力する受講者名簿や名札に、開催日時点の正しい所属が表示されないことがあり、手作業で修正している。
・昇進時研修においては、上記の内容では対応できない運用があるので、特別な措置として、運用タイミングの変更を行っている。
〔システム改善の要望〕
情報システム部のB課長が、経営層及び人材開発部にヒアリングを行ったところ、次のような要望が提示された。
・情報技術の進展に備え、社員を特定分野の専門家として育成するために、社員ごとに主たる専門分野とそのレベルを設定し、社員基本情報に追加したい。
・各講座の講座基本情報にも、受講対象とする社員の専門分野とそのレベルを設定し、社員の専門分野とそのレベルに合致した講座を推奨講座として、受講を推奨できるようにしたい。一つの講座が複数の専門分野を対象とすることもある。
・半年に1回実施している目標設定面談において、上司が部下に受講を促すことができるように、目標確認画面から、当該社員の受講履歴一覧、修了履歴一覧、当期推奨講座一覧及び取得資格一覧を参照できるようにしたい。
・取得資格の登録業務の効率向上を図るために、団体申込みを行っている情報技術関連の資格については、資格試験を実施する主催者(以下、試験主催者という)から送付される出願及び合否の電子データを取り込むことができるようにしたい。
・現行システムにおける手作業は、できるだけ削減したい。
〔機能改善と連携の強化についての要件〕
B課長は機能改善と連携の強化についての要件を、次のように整理した。この際に、現行システムの問題点の解決を図ることに加えて、②システムの利用シーンを想定して、システム改善の要望にはなかった新たな要件の追加を行っている。
・社員基本情報に、専門分野とレベルの二つの属性を追加する。
・新たに、講座番号、専門分野を主キーとし、その他の属性としてレベルをもつ、講座レベル情報を設ける。
・現在、開催1週間前を過ぎてから申込みを受け付けた際に行っている手作業を、受講管理システムで行う。そのために、人事システムから連携される社員基本情報に適用開始日を加えて、1人の社員について複数件の情報を保持できるようにする。
・資格管理システムで、試験主催者から送付される電子データを取り込んで、合格者の情報を登録できるようにする。ここで、試験主催者から送付される情報は、受験番号が主キーであり、属性として漢字氏名、生年月日、試験の合否区分をもっている。
・受講管受講履歴報を、理システムから情報及び修了履歴情資格管理システムから取得資格情報を、目標管理システムへ連携して、目標管理システムの画面でそれらの情報を一覧で参照できるようにする。
・目標管理システムで、推奨講座の中で当該社員が修了していない講座の一覧を、当期推奨講座一覧として、表2に示す手順で表示する。半年ごとの目標設定時に、当期推奨講座一覧を見ながら上司と当期に受講する講座について協議し、その場で合意した場合は、当期推奨講座一覧の当該講座を選択することによって、受講管理システムに連携し、申込手続を行うことができるようにする

〔要望の追加〕 B課長が整理した要件について、関係者に確認を行ったところ、“情報技術の急速な進展に対応するために、今後は、年度ごとに、講座の改廃、講座内容・講座日数の変更が行われることを前提に、新設講座や変更があった講座を識別できるようにしてほしい”という追加要望が提示された。これを受けて、B課長は追加する要件を次のように整理した。 ・講座基本情報に、登録日、適用開始日及び廃止日の属性を追加する。 ・③適用開始日を講座基本情報の主キーに加える。 ・講座情報を表示する画面で、新設講座は赤色で、変更があった講座は青色で表示して、他の講座と区別できるようにする。
設問1(1):〔現在の講座の運用〕について、(1)~(3)に答えよ。
昇進時研修において、対応できない運用とは何か。25字以内で述べよ
模範解答
開催 5週間前に案内メールを送付する運用
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- 「開催5週間前に案内メールを送付する運用」
- 昇進時研修における例外的な運用
- 現行システムの案内メール送付タイミングと運用ルールの違い
2. なぜその解答になるのか:論理的説明
問題文の「〔現在の講座の運用〕」の記述を見てみましょう。
・業務の調整及び講座の受講準備を促すために、開催5週間前に受講者に案内メールを送付する。しかし、
・新入社員研修では、案内メールを送らず、入社式で詳細を説明する。
・昇進時研修においては、上記の内容では対応できない運用があるため、特別な措置として運用タイミングの変更を行っている。
つまり、現行運用では各講座について「開催5週間前に案内メールを送る」と定められていますが、新入社員研修や昇進時研修はこの運用と異なります。特に、昇進時研修では開催5週間前案内メール送付は行われず、別の方法(特別な措置)を採用しています。
このため、「昇進時研修において、対応できない運用」とは、
「開催5週間前に案内メールを送付する運用」
であると判断できます。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
「案内メールを送らない」という表現の混同
新入社員研修は案内メールを送らない理由が明確に説明されていますが、昇進時研修は「対応できない運用があり、特別措置を行っている」とあり、「案内メールを送らない」とは明示されていません。したがって「送らない」こと自体が誤りの選択肢になりやすいです。 -
「受講者の申込みを行わない」運用の混同
昇進時研修は申込みを受講者側から行わず、人事部から情報を入手して人材開発部が登録します。ここを「申込み運用」と混同すると、問題の「対応できない運用」が案内メールに関するものとは別と考えやすくなります。 -
開催準備にかかわるその他の業務と混同
開催3営業日前の名簿出力や手作業の有無などの業務と混同すると、特に問題の意図とずれてしまいます。
4. 試験対策で覚えておくべきポイント・知識
-
運用ルールの例外に注意
「現行の一般的な運用ルール」と「特定状況下での例外的運用」は問題文で明確に区別して記述されることが多いです。
→ 例外的な事例(昇進時研修・新入社員研修)があれば、それを正しく理解し、違いを把握しましょう。 -
案内メール送付のタイミングとその重要性を把握する
案内メールは業務調整や受講準備を促す重要な手段であり、送付タイミングが守れないことは運用上の問題になります。 -
問題文中のキーワード(例:「対応できない運用」)を正確に読む
問題の問いが「対応できない運用」となっている場合、現行ルールで定められており実施できていない点に着目しましょう。
以上の理解を持ちながら、現行システムの運用と例外的運用に関する記述を正確に把握することが合格につながります。
設問1(2):〔現在の講座の運用〕について、(1)~(3)に答えよ。
(1)で対応できない運用のために、特別な措置として行っている運用タイミングの変更の内容を、35字以内で述べよ。
模範解答
人事部から情報を入手し次第,受講者に案内メールを送付する。
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 「人事部から情報を入手し次第、受講者に案内メールを送付する」
- 運用タイミングの変更
- 昇進時研修における受講対象者の登録と案内メールの送付タイミング
- 現行では「開催5週間前に案内メール送付」が原則だが、それが困難な場合の特別措置
なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えて論理的説明)
問題文の「現在の講座の運用」および「実施している研修の概要」から、一般の講座は開催5週間前に案内メールを送付するスケジュールとなっています。
一方、昇進時研修は以下のように特別な運用をしていることが明示されています。
「昇進時研修は、4月上旬に実施される。昇進者は3月中旬の役員会で決定され、3月20日までに昇進者本人に昇進が内示され、その全員が昇進時研修の受講対象者となる。」
「新入社員研修及び昇進時研修は、受講対象者による申込みを行わず、人事部から情報を入手し次第、人材開発部で受講者を登録する。」
「昇進時研修においては、上記の内容(開催5週間前に案内メール送付)では対応できない運用があるので、特別な措置として、運用タイミングの変更を行っている。」
昇進内示は3月20日と直前であり、4月上旬の開催まで時間が少ないため、5週間前に案内メールを送ることができません。このため、運用タイミングを早めることはできません。
よって、通常の「開催5週間前に一斉送信」方式は使えず、受講者リストの確定や案内も、
「人事部から情報を入手し次第、受講者に案内メールを送付する」
ことになります。
この特別措置によって、原則の一斉案内とは異なり、対象者を人事部から受け取った時点で案内メールを随時送る運用に変更されています。これが解答の「人事部から情報を入手し次第,受講者に案内メールを送付する。」に相当するわけです。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
これらの誤答は、問題文の「昇進時研修の運用が通常と異なる」という部分を正確に理解せず、原則運用をそのまま書いてしまうことが原因です。
試験対策として覚えておくべきポイント
- 問題文で「特別な措置」「運用の例外」と書かれていたら、原則とは違うことをしたい状況だと理解する。
- 実務系の問題では「スケジュールや運用手順の差異」が聞かれることが多いため、各研修やシステムの運用フローの時間軸に注意する。
- 「案内メールの送付タイミング」「申込み受付期間」「情報連携のタイミング」などは、本試験でよく出題されるテーマである。
- 問題文から正確に情報を読み取り、設問の範囲に合わせた解答の粒度・具体性を心がける。
以上を踏まえ、今回の問題では昇進時研修特有の事情により案内メール送付のタイミングが通常とは異なり、
「人事部から情報を入手し次第,受講者に案内メールを送付する」
が正答となります。問題文の要点を整理して論理的に対応しましょう。
設問1(3):〔現在の講座の運用〕について、(1)~(3)に答えよ。
本文中の下線①で、正しい所属が表示されないのは、どのような受講者がどのようなタイミングに開催される講座を受講したときか。受講者に関する条件を20字以内で、講座開催のタイミングに関する条件を30字以内で述べよ。
模範解答
受講者:人事異動の発令を受けた社員
タイミング:異動発令日の 3 営業日前から前日までに開催される講座
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 受講者の条件:「人事異動の発令を受けた社員」
- 講座開催のタイミング:「異動発令日の3営業日前から前日までに開催される講座」
- 正しい所属が表示されない原因:受講管理システムは、人事システムからの変更情報(所属など)を異動発令日の3営業日前の業務開始前に受け取り直ちに更新しているが、講座開催準備資料を作成するタイミングや申込タイミングにより、所属情報が一時的に正確に反映されない状態が発生している。
なぜその解答になるのか(問題文の記述を引用しながら)
本文中に下記の記載があります。
「社員の社員番号、...所属及び役職の情報(以下、社員基本情報という)は、人事部が、別途稼働している人事システムで管理している。
人事異動で社員基本情報が変更される場合は、本人に内示された後、発令日の3営業日前の業務開始前に人事システムから変更情報が連携され、直ちに更新している。」
このことから、直前の3営業日前の時点で、受講管理システムの所属情報は最新のものに更新されることになります。
一方で、
「開催1週間前を過ぎてからの申込みは受け付けないが、部長から特別に要請があれば、例外的に受講者の追加や変更を認めている。この場合、開催準備作業後であれば、追加や変更が行われた時点で受講者名簿及び名札を再出力するが、①再出力する受講者名簿や名札に、開催日時点の正しい所属が表示されないことがあり、手作業で修正している。」
この運用では、講座開催準備後(開催3営業日前に名簿等を出力)に、所属異動前の情報で一旦名簿を作成しています。そこから人事異動の情報が反映された社員が追加され、再出力される際に所属情報がずれる問題が起きています。
問題となる受講者は「人事異動の発令を受けた社員」であり、その異動情報が発令日の3営業日前の業務開始前に更新される点と照らし合わせると、
- 受講者条件:人事異動が発令された社員(=所属が変わる社員)
- 講座開催のタイミング条件:異動発令日の3営業日前(含む)〜前日までの期間に開催される講座。なぜならこの期間は、受講管理システムがまだ異動後情報で完全に所属変更を反映できない場合があるため
よって、「人事異動の発令を受けた社員が、異動発令日の3営業日前から前日までに開催される講座を受講したとき」に正しい所属が表示されない、と判断されます。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
「いつのタイミングで所属情報が更新されるか」を混同する
→ 「人事異動の発令は毎月1日に行われる」とあるが、異動が確定してから実際のシステム反映タイミングは発令日の3営業日前の業務開始前である。そこを勘違いしやすい。 -
「開催1週間前までの申込み締切」と「特例での追加受講者」
→ 通常の申込み締切と例外処理の運用フローの違いに注意。問題となる所属情報のズレは「追加や変更の場合」に起きやすい。 -
所属が変わる社員以外が対象と誤解する
→ 全社員ではなく、特に「人事異動により所属が変更された社員」に限定される点。 -
開催日時の期間が長い・短いと選んでしまう
→ 「発令日の3営業日前から前日まで」と期間が限定的であること。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
**人事異動の異動情報がシステムに反映される「発令日の3営業日前の業務開始前」**という重要なタイミング。
これにより、異動前後の情報が混在しやすい時期がある。 -
講座申込みの締切タイミング(通常は「開催1週間前」まで)があるが、例外処理で「開催準備後にも受講者追加や変更が可能」なこと。
-
手作業を減らすための再出力処理がある一方で、開催日時点の「所属情報」が最新でない可能性があること。
-
システム連携の課題として「同じ社員の情報でも適用期間が異なる複数のデータを保持すること」が要件に含まれる場合がある。
これらはシステム設計や運用改善において重要なポイントであり、問題文の条件を正確に読み取る力を養うことが合格の鍵となります。
まとめ
これらの条件で正しい所属が表示されず手作業が発生しているため、システム改善の要望となっています。問題文の「発令日の3営業日前の業務開始前に変更情報が連携され、直ちに更新している」という記述が論理の根拠です。
設問2(1):〔機能改善と連携の強化についての要件〕について、(1)~(3)に答えよ。
本文中の下線②で,システムの利用シーンを想定して追加した新たな要件とは何か。30字以内で述べよ。
模範解答
当期推奨講座一覧から受講管理システムに連携すること
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 「当期推奨講座一覧から受講管理システムに連携すること」
- システムの利用シーン(目標設定面談)に基づく追加要件
- 目標管理システムで推奨講座を確認し、その場で受講申込が可能となる連携機能
- 利便性向上と手作業削減を目的とした機能追加
なぜその解答になるのか:論理的説明
問題文の下線②箇所には、「システムの利用シーンを想定して、システム改善の要望にはなかった新たな要件の追加」と記されています。この下に続く要件として、
「目標管理システムで、推奨講座の中で当該社員が修了していない講座の一覧を、当期推奨講座一覧として...その場で合意した場合は、当期推奨講座一覧の当該講座を選択することによって、受講管理システムに連携し、申込手続を行うことができるようにする」
(原文より抜粋)
と明確に記述されています。
これまでのシステムは、受講申込みと目標管理を別々に行い、連携されていなかったため、申込対応は手作業が多い状況でした。しかし、目標設定面談という日常の利用シーンを想定し、 推奨講座の選択から申込まで一連の作業をシームレスに行える機能を追加したことが新要件です。
この機能により、
- 上司と社員が目標面談時に講座を確認しやすくなる
- 受講申込がシステム間連携で自動化され、手作業が減る
- 利用者の利便性が大きく向上する
というメリットが生まれます。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
単なる情報参照の連携と勘違いする
→ 目標管理システムから受講履歴や修了履歴を「参照」できるだけでなく、受講申込まで「連携」して実行する点が新要件であるため、単なる「参照可能にすること」は当てはまりません。 -
専門分野やレベル情報の追加と混同する
→ これらは利用者の利便性向上のための前提条件ですが、新たな利用場面を想定して追加された要件ではありません。 -
団体申込み資格の電子データ取り込みを指摘する
→ こちらは資格管理システムの改善要望ですが、システムの利用シーンを踏まえた「新たな要件の追加」の指摘箇所ではありません。 -
手作業削減だけを答える
→ 手作業削減も目的の一つですが、具体的にどの作業を削減するか(=当期推奨講座からの申込連携)が重要であり、抽象的な表現は不十分です。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
課題文の「新たな要件の追加」は単なる機能改善とは異なる
「システムの利用シーン」を想定した新たな機能追加や業務フローの改善を指す場合が多い。本文の具体的な記述内容を確認すること。 -
連携の範囲を正確に把握する
「参照」だけではなく、「連携して申込操作ができる」など具体的な操作連携がある場合は重点的に注目すべき。 -
多機能・多システムの関係図や表の理解
複数のシステムが関係する場合、どのシステムでどのデータを管理しどのような連携が必要か、正確に整理することが合格の鍵。 -
問題文では、「利用の場面(シーン)」に着目した設問が頻出
問題文の業務内容の流れや改善後の利用イメージをしっかり把握し、システム改善が業務にどう貢献するかを意識する。
まとめ
このように、設問の趣旨は「単なる機能改善を超えた利用シーンに基づく新しい要件の追加」を問うものです。本文をよく読んで、この具体的な追加内容を正確に理解しましょう。
設問2(2):〔機能改善と連携の強化についての要件〕について、(1)~(3)に答えよ。
表2中の(a)~(d)に入れる適切な字句を答えよ。(a,bは順不同)
模範解答
a:専門分野
b:レベル
c:修了履歴
d:修了した講座
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
なぜこの解答になるのか【問題文の記述引用と論理的説明】
表2は、「当期推奨講座一覧の表示手順」を示しています。この手順から、(a)~(d)に入る適切な言葉を選ぶポイントは、どの情報を基に講座を抽出し、その後どの履歴に基づいて表示候補から除外するか、という点にあります。
-
a,b:「社員基本情報」から取得するものとして、「専門分野」と「レベル」
-
問題文「〔機能改善と連携の強化についての要件〕」にて、・社員基本情報に、専門分野とレベルの二つの属性を追加する。
-
表2の手順1にある社員基本情報から、当該社員の a、b を取得する。
-
これから、社員の専門性レベルに基づいて受講すべき講座を絞り込む狙いがわかります。
-
-
c:「修了履歴」情報
-
表2の手順3:c 情報から、当該社員の d を取得し、それらの講座を項番2で取得した講座から除く。
-
「修了履歴 情報」は社員が既に修了した講座に関するデータであり、修了した講座を特定するのに用います。
-
問題文の「〔現行システムの概要〕(2)受講管理システム」によると、修了履歴情報は、社員番号、講座番号、開催回、成績をもつ。
-
修了履歴で特定した講座を推奨候補から除外することで、既に受講済みの講座の再受講を避けます。
-
-
d:「修了した講座」
- 修了履歴情報から得られる具体的な情報として「修了した講座」(修了済みの講座のリスト)が該当します。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
社員基本情報と講座レベル情報の混同
- 社員基本情報に「専門分野」と「レベル」が追加されるとありますが、講座レベル情報にも「専門分野」「レベル」があります。
- 表2の手順では、「社員基本情報」から(a)(b)を取得するため、ここで「講座レベル情報」の情報を選ぶのは誤りです。
-
(c)に修了履歴ではなく受講履歴を選んでしまう
- 受講履歴は申込みや進捗状況を管理していますが、修了状況の判定は「修了履歴」から行うため、重複排除には「修了履歴」が正しい。
-
(d)は単に「講座」とだけ答えてしまう
- 「修了履歴」から得るのは「修了した講座」であり、受講中や申込み中の講座を含めない点が重要です。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
システム間の情報連携で使う情報がどこにあるかを整理すること
- 「社員基本情報」「講座レベル情報」「修了履歴」「受講履歴」など、用途に応じて使い分けられています。
-
推奨講座の提示では、社員の専門分野とレベルにマッチした講座から、すでに修了済みの講座を除外する
-
システム改善の要件や追加要望に基づき、新設や変更情報など属性の追加・主キー化が行われるが、基本的なデータの抽出・除外処理は概念として理解すること
-
表での提示手順やフローを読み解いて、どの情報を基に処理が進んでいるかを正確に特定できる力を養う
以上を踏まえ、情報処理技術者試験の午後問題は、システム間でどう情報が連携し役割分担しているかを正しく理解することが合格の鍵です。今回の問題はその理解を深める良い例となっています。
設問2(3):〔機能改善と連携の強化についての要件〕について、(1)~(3)に答えよ。
資格管理システムにおいて、試験主催者から送付される情報を取り込む際に留意しなければならないシステム上の課題は何か。30字以内で述べよ。
模範解答
主キーが異なる二つの情報を,どう照合するかという課題
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- 「主キーが異なる二つの情報」
- 「どう照合するか」
- システム間データ連携の際の「キーの整合性」
- 試験主催者情報と資格管理システム情報の「データ統合上の課題」
2. 解答になる理由の論理的説明
試験主催者から送付される電子データの特徴
問題文の【機能改善と連携の強化についての要件】には以下の記述があります:
・資格管理システムで、試験主催者から送付される電子データを取り込んで、合格者の情報を登録できるようにする。ここで、試験主催者から送付される情報は、受験番号が主キーであり、属性として漢字氏名、生年月日、試験の合否区分をもっている。
資格管理システムの既存データの構成
資格管理システムの主な情報は以下の通りです(表1より引用):
このシステムでは、資格取得情報が「社員番号」をキーとして管理されています。
主キーの不一致が生じる課題
- 試験主催者データでは「受験番号」が主キーであるのに対し、
- 資格管理システムでは「社員番号」が主キーである。
連携のためには「受験番号」と「社員番号」を関連づけ、正確に照合できなければなりません。
しかし「受験番号」と「社員番号」は別の管理番号であり、対応関係が即座に分かるわけではありません。また、名前や生年月日などの属性名は共通しているものの、一致しない場合も想定されます(例えば、氏名の表記揺れなど)。
ゆえに、「異なる主キーを持つ二つの情報をどう照合するか」が連携の大きな課題となるのです。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけ選択肢の理由
ポイント1:データの単純な取り込みだけでは済まない
「電子データを取り込む」とだけ聞くと、単純にファイルインポートやデータ読み込みと誤解しやすいですが、実際はキーが異なり、誰の情報かを正確に結びつける照合作業が必要です。
ポイント2:「電子データの形式の違い」や「項目名の違い」などは本質的課題ではない
「データ形式」や「項目名の違い」も課題ではありますが、より本質的な課題は「誰の資格情報かを正しく識別し同期すること」です。これは「主キーの違いに起因する照合問題」が根本原因です。
ポイント3:入力ミスや不整合の可能性を混乱させない
姓名の読みや生年月日の違いなどで合致しないデータがある可能性もあるため、誤って「入力ミス」や「データ不整合」が課題と考えてしまう誤りもありますが、それらは主キー照合の前提として解決すべき問題です。
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
以上の解説を踏まえると、「資格管理システムにおいて、試験主催者から送付される情報を取り込む際に留意しなければならないシステム上の課題」としては、
主キーが異なる二つの情報を、どう照合するか
が的確な回答となります。
設問3
〔要望の追加〕の下線③について、適用開始日を講座基本情報の主キーに加えない場合、現行システムのどの機能にどのような不具合が発生するか。機能を25字以内で、不具合の内容を40字以内で述べよ。
模範解答
機能:過去3年間の年間受講日数一覧表を出力する機能
不具合の内容:講座日数の変更が行われたときに年間受講日数が正しく計算できない不具合
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
2. なぜその解答になるのか
問題文の〔要望の追加〕に「年度ごとに、講座の改廃、講座内容・講座日数の変更が行われること」とあり、講座基本情報に「登録日」「適用開始日」「廃止日」の属性が追加されます。さらに、「適用開始日を講座基本情報の主キーに加える」ことが推奨されています。
現行システムの「受講管理システム」においては、
年度末に、受講管理システムから、社員個人別に過去3年間の年間受講日数一覧表を出力し、年間目標の達成状況を確認している。
とあり、講座に設定されている「講座日数」を元に年間受講日数を計算しています。
ここで、講座の日数が改定され、複数年度で異なる日数の講座が存在することを考えると、
適用開始日を主キーに含めずに管理すると、どの適用時点の講座日数を使うべきかが分からず、
過去3年分の受講履歴を集計する際に、本来の当時の講座日数が取得できなくなります。
適用開始日を主キーに含めずに管理すると、どの適用時点の講座日数を使うべきかが分からず、
過去3年分の受講履歴を集計する際に、本来の当時の講座日数が取得できなくなります。
つまり、
- 適用開始日を主キーに含めない → 過去の講座日数の変更履歴が管理できない
- その結果 → 講座日数の変更があっても、単一レコードしか扱えず、正しい日数が判断できず
- 不具合として → 年間受講日数集計が誤ってしまう
したがって、
「過去3年間の年間受講日数一覧表を出力する機能において、講座日数の変更が行われたときに年間受講日数が正しく計算できない」
という不具合が生じることになります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
ポイント1:講座基本情報の適用開始日の役割の理解不足
- 「適用開始日」という属性を「主キーに加える」とは「講座番号+適用開始日」で1レコードを識別し、同じ講座番号でも年度や時期別に異なる情報を管理できるということ。
- これをしないと、講座番号が主キーのままなので、日数の変更が新しい値で上書きされ、過去分が消えてしまう点を見落としがち。
ポイント2:年間受講日数の集計対象期間の理解不足
- 「過去3年間」分の集計となっているため、最新の日数情報だけでは不正確であることに気づきにくい。
- 講座日数が変わるケースを考慮していないと、単純に最新データで集計してしまう誤りが起こる。
ひっかけ
- 「案内メール送付」や「受講履歴管理」などの他の機能と混合させると誤りやすいです。
ここで問題にされているのは「講座日数の変更がある場合」に影響が出る集計機能であることに注目しましょう。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
-
主キー設計の重要性
主キーに「適用開始日」などの時点を示す属性を含めることで、変更履歴を正確に管理できる。これにより過去のデータの意味合いを保持できる。 -
変更管理された情報の履歴管理
マスタ情報(講座基本情報など)が年度や時期によって変わる場合は、履歴管理を考慮した設計を行う必要がある。 -
集計処理は履歴付きデータを正しく参照すること
過去期間の集計を行う場合は、その時点時点のマスタデータを用いる必要がある。最新の情報で集計することの危険性を認識する。 -
問題文にある「追加要望」や「要件の追加」は、現行の問題点を解消するための指示。
要求されている主キーへの属性追加は、不具合防止のための重要な工夫であることを理解する。
本問では、システム改善での主キー設計変更がシステムの信頼性と集計の正確性に直結する例として重要な知見が得られます。
特に過去データの集計処理では、その時点で有効なマスタ情報を参照することの重要性を覚えておきましょう。
特に過去データの集計処理では、その時点で有効なマスタ情報を参照することの重要性を覚えておきましょう。