システムアーキテクト試験 2018年 午後102


情報開示システムの構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。

 F法人は、関東に所在する公的業務を行う団体である。このたび、個人、事業者などからの要望を踏まえて、インターネットからF法人が保有する文書を情報提供する情報開示システム(以下、新システムという)を構築することにした。   〔現行業務の概要〕  F法人は、保有する文書について、個人、事業者などからの開示請求に基づき情報開示を行っている。現在の開示請求から情報開示までの流れは、次のとおりである。
 (1)開示請求を行う文書の特定   開示請求を行う個人、事業者など(以下、開示請求者という)は、F法人の情報公開窓口(以下、窓口という)を訪れ、F法人が保有する文書の件名、分類などが記録された文書管理簿を閲覧し、開示請求を行う文書を特定する。文書管理簿については、インターネットから文書検索システムを利用して、文書件名のキーワード、文書作成年度などの条件を指定し、検索することもできる。  (2)開示請求   開示請求者は、開示請求を行う文書を特定した後、開示請求書に(1)で特定した文書件名のほか、個人の場合は氏名、自宅の住所、電話番号及び携帯電話番号を、事業者の場合は事業者の名称、担当者の氏名、事業所の住所及び電話番号を必要事項として記入し、窓口に提出する。提出の際、開示請求に必要な手数料を納付する。  (3)開示、不開示の決定   開示請求書を受け付けた窓口は、文書を所管する部署(以下、文書所管部署という)に請求内容を通知する。文書所管部署では、個別に文書の内容を確認し、開示、不開示又は一部開示を決定する。決定内容について、開示決定通知書を作成し、開示請求者に対して郵送で通知する。  (4)開示実施申出書の提出   開示請求者は、開示決定通知書を受領した後、文書の閲覧、文書の写しの交付、電子データの交付などの開示方法を開示実施申出書に記載し、郵送で窓口に提出する。  (5)開示実施   開示請求者は、開示実施申出書で指定した方法によって、文書の閲覧、文書の写しの受領、電子媒体による電子データの受領などを行う。文書の写し、電子媒体による受領の場合、それぞれ指定の手数料を窓口に納付する。開示は来訪だけに対応しており、郵送などによる開示は行っていない。   なお、F法人では開示請求者に対して、開示後に必要に応じて電話で連絡することがある。  
〔新システム構築の背景、目的及び整備方針〕  F法人では、開示請求の件数が毎年増加傾向にあり、窓口及び請求件数が多い文書所管部署では業務処理量の増加に伴う開示請求対応の事務が負担になっている。特に年度初めの4月、5月に年間の開示請求数の約半数が集中しているので、通常業務が忙しい中、開示請求対応が重なり、開示までに多くの日数を要することがある。  開示請求は、特定種類の文書に対するものが全体の請求件数の約6割を占めている。F法人では、この特定種類の文書を現在約2、000件保有している。主に市場調査や営業目的で利用する事業者からの開示請求がほとんどであり、文書1件当たりの枚数が多いことから、開示の際は電子媒体で交付することが多くなっている。  開示請求者からは、開示請求手続の煩雑さ、訪問が必要なこと、各種手数料の負担開示までに時間を要することへの不満が挙がっている。  そこでF法人では、現在の開示請求手続に加えて、開示請求なしでインターネットを利用して、手数料が不要で、場所や時間の制限がなく、初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できる新システムを構築することにした。  なお、新システムでは、まず、開示請求が多く開示可能な文書だけを対象に情報提供を行い、利用状況を見ながら順次取り扱う文書を増やしていく方針にした。  
〔新システムに対する要望〕  多くの開示請求に対応している文書所管部署に確認したところ、新システムを用いた情報提供に関して、次の要望が挙げられた。  ・開示請求の多い特定種類の文書は、他団体から提供を受けた情報を基にF法人が独自に加工、編集している文書である。情報提供元の団体と協議した結果、不特定多数の個人、事業者などに対して情報提供するのではなく、あらかじめ利用者登録した上で、特定された個人、事業者などに対して情報提供を行うようにしたい。  ・従来の開示請求手続とは異なり、請求のたびに開示する文書の内容を確認しないので、①開示する情報に不備がないかどうかを、複数人で確認した上で、新システムに登録し、情報提供するようにしたい。  ・現在の開示請求手続と同様に、必要に応じて情報提供先に電話で連絡することができるよう、連絡先に間違いがないことを確認したい。  ・F法人の職員の所属、役職に応じた権限の管理ができるよう、所属、役職などの情報については、社内システムと同じ情報を取り扱えるようにしてほしい。人事異動などが発生した場合は、翌営業日中には新システムに情報を反映させてほしい。  
〔新システムの方式検討〕  F法人では、現在運用している各情報システムのサーバ機器などを、F法人が契約するデータセンタ内に導入して運用している。新システムにおいても同様の形態にすることを検討したが、業務上の特性から業務処理量の変動が大きいことが予想されることと、将来の拡張に柔軟に対応できることから、クラウドサービスを利用することにした。  F法人の職員が新システムを利用する際は、費用対効果を考慮し、既設のインターネット回線を経由して、クラウドサービス上に構築する新システムにログインして利用することにした。また、F法人の職員向けの機能は、F法人が契約するデータセンタ内のプロキシサーバからのアクセスだけを許可する仕組みにした。新システム構築後の全体概要を図1に示す。  なお、F法人では近年、情報セキュリティ対策を強化しており、社内システムとインターネット上のシステムとの間を直接オンラインで連携することを禁止している。そこで、新システムと社内システムとの連携は、できる限り頻度を少なくした上で、新システムのシステム管理担当者が運用作業で実施することにした。
システムアーキテクト試験(平成30年度 午後I 問2 図1)
〔新システムで提供する機能の概要〕  新システムに対する要望などを踏まえて、次に示す機能を提供することにした。  ・個人、事業者などが新システムを利用するために、IDの発行及びパスワードを設定する利用者登録機能を用意する。  ・現行の文書検索システムと同様に、インターネットから文書管理簿の検索を行えるようにする。検索の結果、新システムに登録されている文書については、直接新システムから電子ファイルをダウンロードできるようにする。現行の文書検索システムの機能は、新システムの機能の一部として統合する。  ・検索に必要な文書管理簿の情報については、F法人の社内システムである文書管理システムから文書管理簿データをダウンロードし、新システムに運用作業で取り込む登録機能を用意する。更新頻度は、1週間に1回とする。  ・新システムで情報提供する文書については、F法人の職員が、文書に対応する文書管理簿の情報を選択し、文書に付随するそのほかの情報を新システムの登録画面で入力し、登録する。登録された文書は、文書登録者の上司が内容を新システム上で確認し、承認すると、個人、事業者などに向けて公開される。  ・情報提供の機能とは別に、ある理由から、電子フォームを用いて開示請求ができる機能を提供する。その際、開示請求に掛かる手数料は別納とする。  ・職員の所属、役職などの情報については、F法人の社内システムである職員認証システムからデータをダウンロードし、新システムに運用作業で取り込む登録機能を用意する。職員認証システムでは、職員の所属、役職などの職員基本情報の更新は月1回程度である。一方で、②職員認証システムのパスワードは職員が随時変更できるので、パスワード情報は新システムに取り込まず、職員基本情報だけを反映し、新システムのパスワードについては職員が新システムで新たに設定し、管理することにする。  ・個人、事業者など、新システムの利用者の情報については、新規登録時に、現在の開示請求書で記入を求めている項目に加えて、電子メールアドレスを登録する。  
〔利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式の検討〕  新システムの利用者を新規登録する際の連絡先の確認方式について、検討を行った。  検討した、利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式案を表1に示す。
システムアーキテクト試験(平成30年度 午後I 問2 表1)
 各案を比較した結果、案1の方式については、簡易に利用者の新規登録ができるが、③文書所管部署の要望を満たすことができないという評価になった。一方、案3の方式については、より厳格な連絡先の確認ができる点はよいが、利便性に欠け、新システムの目的にも合致しないという評価になった。  そこで、案2の方式を採用することにした。ただし、新システムの利用者特性を踏まえると、このままでは問題が生じる場合があるので、ショートメッセージで本登録用の認証コードを通知する方式に加えて、利用者が新規登録時に入力した電話番号宛てに新システムが電話をかけて自動音声で本登録用の認証コードを読み上げる方式も選択できることにした。

設問1

本文中の下線①の要望に基づき、新システムで提供することにした機能は何か。25字以内で述べよ。
模範解答
登録された文書を上司が確認し,承認する機能
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 登録された文書の内容に「不備がないかどうかを複数人で確認」すること
  • 登録された文書を「上司が確認し、承認」するプロセス
  • 承認後、新システムに登録し、情報提供を開始する機能

解答になる理由の論理的説明

問題文の下線①の部分には次の記述があります。
「従来の開示請求手続とは異なり、請求のたびに開示する文書の内容を確認しないので、①開示する情報に不備がないかどうかを、複数人で確認した上で、新システムに登録し、情報提供するようにしたい。」
したがって、新システムでは「不備のない情報提供」を実現するために、文書登録後に内容確認の仕組みが必要です。
これに対応した新システムの機能概要には、
「登録された文書は、文書登録者の上司が内容を新システム上で確認し、承認すると、個人、事業者などに向けて公開される。」
という記述があります。
この承認機能により、複数人で内容を確認する体制をシステム内に組み入れることで、情報の不備を防ぎ、適正な情報提供を保証します。
よって、設問に対する解答は「登録された文書を上司が確認し,承認する機能」となります。

受験者が誤りやすいポイント

  • 「複数人で確認」とあるが、問題文の機能概要では「上司が確認し、承認」とされているため、「複数人=複数の上司」や「委員会で確認」など範囲を広げて捉えないこと。
  • 「登録」や「公開」などのプロセスが混同しやすい。確認承認は「登録受理後の段階」であり、単に「文書を登録する機能」では不十分。
  • 「不備の有無を確認する」という点に注目せずに内容の「編集」や「加工」機能を答えてしまう点。
  • 文章が長く設問と問題文の対応部分が分かりづらく、要望と機能の関係を読み違うこと。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 「承認機能」や「ワークフロー機能」は情報提供システムにおいて、「誤情報提供の防止」など品質管理で重要な役割を担うことが多い。
  • 要望文の表現(例:複数人での確認、不備のチェック)と機能説明文の対応を正確に結び付ける訓練をする。
  • 複雑な業務フロー問題では、システム化に際し「誰がどの段階で何を確認し、承認するのか?」に注目して解答を組み立てる。
  • 設問文の字数制限(今回は25字以内)があるため、機能名や主語・動詞を簡潔にまとめる力をつける。

まとめ

ポイント内容
要望の核不備のない情報提供のため複数人が文書内容を確認したい
新システム機能対応文書登録者の上司が内容を確認し、承認して情報公開を許可する機能
誤解しやすい点「複数人」と「上司1人」、登録と承認の区別
試験対策要点要望と機能の対応付け、承認ワークフロー理解、簡潔記述習得
このように、新システムにおける「確認承認機能」は、公的機関の情報公開業務において「誤情報の公開防止」と「業務効率化」の両立に不可欠なものとして位置付けられます。今回の問題文から正確に読み取り、答案に反映しましょう。

設問2

新システムでクラウドサービスを利用することを判断した理由の一つに、業務処理量の変動が大きいと予想したことが挙げられる。業務処理量の変動が大きいと予想した業務上の特性とは何か。30字以内で述べよ
模範解答
年度初めに年間の開示請求件数の約半数が集中すること
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 「年度初め」
  • 「年間の開示請求件数の約半数が集中」
  • これにより「業務処理量の変動が大きい」となる点

なぜその解答になるのか(論理的な説明)

問題文の〔新システム構築の背景、目的及び整備方針〕に次の記述があります。
「特に年度初めの4月、5月に年間の開示請求数の約半数が集中しているので、通常業務が忙しい中、開示請求対応が重なり、開示までに多くの日数を要することがある。」
この記述から、F法人の開示請求の業務負荷が特定の時期(年度初め)に大きく高まることが明示されています。
業務処理量が「変動が大きい」とは、1年間を通じて均一ではなく、ある時期に集中して負荷が高まることを意味します。年度初めに請求件数が半数も集中すれば、その時期の処理負荷は非常に大きくなり、それ以外の期間とは大きな差が生じます。これが「業務処理量の変動が大きい」業務上の特性です。
こうした業務特性に対応するため、処理能力やシステムの柔軟な拡張が容易なクラウドサービスの利用がふさわしいと判断されています。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「単に開示請求件数が多い」だけではない
    業務処理量の変動が問題であり、常に多いこと自体は理由になりません。均一に多くても「変動が大きい」とは言いません。
  • 「請求件数の集中時期」を正確に把握する必要がある
    「年度初めの4月、5月に集中」という具体的な時期を答えずに抽象的に「多い時期がある」とだけ答えるのは不足です。
  • クラウド利用の理由を「コストが安い」など別の視点で誤答しないこと
    問題文ではクラウドを選ぶ理由として「業務処理量の変動」と「将来の拡張性」をあげているため、そこに合わせた回答が必要です。

試験対策として覚えておくべきポイントや知識

ポイント解説
業務処理量の変動とクラウドの親和性業務処理量が一定でなく変動が大きい場合、柔軟なリソース調整が可能なクラウドが適する。
時期集中型の業務負荷特定の時期に負荷が集中する業務は、ピーク処理能力に対応できる仕組みが重要。
問題文の具体的な記述を重視解答は問題文の具体的な表現に沿うべき。例えば「4月、5月に請求が半数集中」といった具体性を持たせる。
変動と負荷の違い「単純に多い」ではなく「変動が大きい」がポイント。年間を通じて負荷が一定かどうかを区別する。

まとめ

  • 新システムでクラウドサービスを活用する理由の一つは、開示請求数が年度初めの4~5月に年間の約半数集中し、この時期に業務処理量が大きく増加するからである。
  • これが「業務処理量の変動が大きい」という業務上の特性であり、クラウドの伸縮自在なリソース活用が適している。
  • 問題文の記述に忠実で具体的な解答を心がけることが重要。

以上の視点で解答を準備すると、論理的かつ具体的な回答が可能となります。

設問3(1)〔新システムで提供する機能の概要〕について、(1),(2)に答えよ。

情報提供の機能とは別に、電子フォームを用いて開示請求ができる機能を提供することにした理由を40字以内で述べよ。
模範解答
新システムでは,まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にするから
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点整理

  • 「開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にする」
  • 新システムは 「手数料不要で開示請求なしで情報提供できる」 が、同時に
  • 「従来の開示請求手続も継続して提供する」
  • 電子フォームによる開示請求機能は 「情報提供の機能とは別に設ける」

解答がこのようになる理由(問題文引用による論理的説明)

問題文に、新システムの整備方針として次の記述があります。
「なお、新システムでは、まず、開示請求が多く開示可能な文書だけを対象に情報提供を行い、利用状況を見ながら順次取り扱う文書を増やしていく方針にした。」
つまり、新システムでインターネットを通じて「即時に文書取得できる」公開範囲は、限定された文書に絞られています。一方で、従来の開示請求手続は継続運用され、次の記述があります。
「情報提供の機能とは別に、ある理由から、電子フォームを用いて開示請求ができる機能を提供する。」
この「ある理由」とは、新システムの情報提供機能対象から外れる文書や、より複雑な手続きの必要な文書の開示請求に対応するためであると理解できます。新システムの公開対象が限定的なため、残りの文書については従来の開示請求対応も必要ということです。
従って、
「新システムでは,まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にするから」
電子フォームによる開示請求機能を別途提供し、従来の開示請求手続きの効率化や電子化を図る必要があるのです。

受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢

  • 「電子フォームの開示請求は、新システムでの即時情報提供と同一の意思で提供される」と勘違いする
    → 実際は電子フォームによる開示請求は従来の開示請求の電子化であり、新システムの即時提供機能とは別物である。
  • 「電子フォーム利用で手数料が不要になる」と理解する誤り
    → 問題文中には「開示請求に掛かる手数料は別納とする」と明記されているので、無料とは限らない。
  • 「全ての文書を新システムの情報提供機能で対応する」と誤解する
    → 初期は特定種類の文書のみに限定し、他は引き続き従来方式(開示請求)による提供が必要。

試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • 新システムの情報提供機能は「開示請求なしで無料かつ即時提供可能な文書の限定した範囲」を対象にすることがある。
  • 電子フォームによる開示請求機能は「従来の開示請求手続きを効率化・電子化するため別に用意される」場合が多い。
  • 手数料の取扱いや開示対象文書の範囲は明確に規定されていることが多いので、問題文の記述に注視する。
  • 「新設システムの対象範囲と従来の手続きの併用」や「クラウド利用、権限管理、新規登録フロー」など複数の業務要件が混在するシステム問題での区別が大切である。
このポイントを押さえることで、設問の趣旨に沿った簡潔かつ正確な解答がしやすくなります。

設問3(2)〔新システムで提供する機能の概要〕について、(1),(2)に答えよ。

新システムにおけるパスワードについて、本文中の下線②のようにした運用上の理由を、25字以内で述べよ。
模範解答
運用作業による連携頻度を少なくしたいから
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 運用作業による連携頻度を少なくしたい
  • パスワード情報は新システムに取り込まない
  • 職員認証システムのパスワードは随時変更可能
  • 社内システムと新システムの直接オンライン連携を禁止
  • 新システムは職員が独自にパスワードを設定・管理

なぜこの解答になるのか(論理的説明)

問題文の下線②では、新システムのパスワード運用に関して以下の記述があります。
「職員認証システムのパスワードは職員が随時変更できるので、パスワード情報は新システムに取り込まず、職員基本情報だけを反映し、新システムのパスワードについては職員が新システムで新たに設定し、管理することにする。」
さらに、
「近年、情報セキュリティ対策を強化しており、社内システムとインターネット上のシステムとの間を直接オンラインで連携することを禁止している。そこで、新システムと社内システムとの連携は、できる限り頻度を少なくした上で、新システムのシステム管理担当者が運用作業で実施することにした。」
このことから、職員認証システムのパスワードは頻繁に変更されるため、常に最新を保つにはシステム間でのリアルタイムもしくは頻繁な連携が必要になります。しかし、連携頻度を増やすことはセキュリティ上のリスクを高める可能性があるため、「できる限り頻度を少なく」する方針を採っています。
したがって、パスワード情報は新システムに取り込まず、職員は新システムで独自にパスワードを設定・管理させることで、不要なシステム間連携を抑制できるという運用上の理由に基づくものです。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「パスワードを共有しないのはセキュリティ強化のため」という選択肢
    → セキュリティ強化は理由の一部ですが、本文で強調されているのは「連携頻度を減らしたい」ための運用面の理由です。単なる「セキュリティ強化」だけで説明すると不十分です。
  • 「職員が随時変更できるから連携しない」という理解
    → これは「パスワードが頻繁に変更されるため、都度連携すると運用負荷が大きいため連携を控える」という意味です。「変更できるから」だけでは意味が伝わりません。
  • 「パスワード情報の漏洩を防ぐため」などの誤った解釈
    → パスワードを取り込まない最大の理由は連携負荷を減らすためであって、取り込まないことだけで漏洩リスクを明確に減らすという説明はされていません。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
システム間連携の負荷管理システム間で頻繁に変動する情報を共有すると、連携頻度や運用負荷が増加し、業務に支障をきたす場合がある。
運用作業による連携の最適化セキュリティ対策上、オンライン連携を制限し、必要に応じて運用者による手動連携とするケースがある。
パスワード管理の分離運用パスワードは敏感情報のため、別管理としシステム間での自動同期を控えることがある。
記述解釈の正確さ問題文の表現に注意し、「連携頻度」を減らす理由が最も重要な論点であることを理解する。

このように、【問題文の記述】を正しく読み解き、「パスワードの情報を取り込まない理由は運用上の連携頻度を減らすため」という点をきちんと押さえておくことが合格につながります。

設問4(1)〔利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式の検討〕について、(1)~(3)に答えよ

本文中の下線③の文書所管部署の要望とは何か。30字以内で述べよ。
模範解答
情報提供先に電話で連絡することができるようにすること
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 電話での連絡手段の確保
  • 情報提供先への連絡を可能にすること
  • 文書所管部署の要望(連絡に関する部分)

なぜこの解答になるのか(問題文引用を交えた論理的説明)

問題文の〔新システムに対する要望〕において、文書所管部署からの次の要望があります。
・「従来の開示請求手続と同様に、必要に応じて情報提供先に電話で連絡することができるよう、連絡先に間違いがないことを確認したい。」
つまり、新システムでは開示請求を伴わずに文書を提供するため、内容の個別確認が行われない代わりに、何かトラブルや確認が必要な場合に備えて「情報提供先に電話で連絡できる仕組み」が必須とされています。
これが本文中の下線③「文書所管部署の要望」です。
したがって、「情報提供先に電話で連絡することができるようにすること」が答えとなります。

受験者が誤りやすいポイント・注意点

  • 「電話連絡ができる」という要望は、「単なる連絡先の登録」や「メールでの連絡」ではなく、実際に電話連絡が可能なことが肝要です。単に電話番号を登録するだけでは足りません。
  • 利用者登録時の連絡先確認方式(案1〜3)でも、電話を使う方式(案2や自動音声による電話確認)を採用した点が、この要望を満たすための対応です。
  • 「開示請求なし」「手数料不要」など新システムの利便性向上が話題で混乱しやすいですが、電話連絡のニーズはセキュリティと連絡確実性の観点からも重要と理解しましょう。
  • 問題文における「電話での連絡」とは、電話番号の正当性を担保し、確実な連絡手段を保証することを指している点を明確に把握する必要があります。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
文書所管部署からの要望電話連絡可能な連絡先の確認を重視していること
新システムの特徴利用者登録時に電話番号の正当性確認が必須であること
電話連絡の重要性文書の直接確認なしに情報提供を行う分、連絡手段の確保が安全対策になる
問題文の設問解答は端的に「電話で連絡できるようにすること」が質問の趣旨に正確に対応する
類似選択肢の誤りの見抜き方「メール送信」や「手紙通知」など他の連絡手段と混同しないこと
以上から、設問では「情報提供先に電話で連絡することができるようにすること」と述べることが正解とされます。
この点を押さえれば、解答で迷うことはありません。

設問4(2)〔利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式の検討〕について、(1)~(3)に答えよ

案3の方式を採用しないと評価した際に考慮した新システムの目的とは何か。35字以内で述べよ。
模範解答
初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できること
解説

1. 模範解答の核心キーワードと論点整理

  • 核心キーワード
    • 「初めての利用でも手続が簡単」
    • 「即時に文書を取得できる」
    • 「利便性」
    • 「新システムの目的」
  • 論点
    • 新システムは利用者の利便性向上を重視しており、特に手続の簡便さとアクセスの即時性が求められている。
    • 案3のように郵送(封書で認証コード送付)を用いる方法は手続きが煩雑で時間がかかるため、新システムの目的に反する。

2. なぜその解答になるのかの説明

【問題文】の新システムに関する部分に次の記述があります。
「開示請求なしでインターネットを利用して、手数料が不要で、場所や時間の制限がなく、初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できる新システムを構築することにした。」
さらに、利用者登録方式の検討において、表1の案3(封書で認証コードを送る方式)は、
「利便性に欠け、新システムの目的にも合致しないため採用しない評価となった。」
つまり、郵送による認証コード送付は利用者が初回登録に時間や手間をかけることになり、新システムの特徴・目的である「簡単で即時に文書取得」を損ねるため不適切と判断されました。

3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢

  • 誤りやすいポイント
    • 「より厳格な連絡先の確認ができるから案3が良いのでは」と考えがちですが、問題は「新システムの目的との整合性」です。
    • 「利便性」や「即時性」というキーワードを正しく重視しないと、案3を良しとしてしまう誤りがあります。
  • ひっかけの選択肢
    • 案1(メールによるURL送付)は手続きが簡便ですが、文書所管部署の要望(利用者の特定など)を満たせないという理由で評価が低いです。
    • 受験者は「簡便さ=案1でよい」と思いがちですが、安全性や利用者特定の観点も考慮する必要があります。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント説明
新システム構築の目的理解利用者目線で「簡単で即時に文書取得」が最重要であること
登録・認証方式の評価基準「利便性」と「安全性・特定可能性」のバランスを取る重要性
案3方式の特徴と問題点郵送は厳格だが煩雑・遅延を招き、即時性に反する
案1~3の比較把握評価理由を目的の観点から説明できることが重要
問題文の「新システムの方式検討」と「要望」部分の読み込み問題の背景や方針が解答ヒントとして必須

以上を踏まえて、問題文の趣旨を正確に理解し、「新システムが利用者の利便性を重視し、初めて利用する人でも簡単・即時に文書を取得できること」が評価基準であることを確実に押さえましょう。

設問4(3)〔利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式の検討〕について、(1)~(3)に答えよ

自動音声で本登録用の認証コードを読み上げる方式も選択できることにした理由を、新システムの利用者の特性を含めて35字以内で述べよ
模範解答
利用者には事業者が多く,携帯電話番号を入力できない場合があるから
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 利用者の多くが「事業者」であること
  • 事業者が携帯電話番号を入力できない場合がある点
  • そのため、SMS(ショートメッセージ)だけでなく「自動音声読み上げ」方式も必要

なぜこの解答になるのか(問題文の引用・論理的説明)

問題文の〔利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式の検討〕の箇所に以下の記述があります。
「案2の方式を採用することにした。ただし、新システムの利用者特性を踏まえると、このままでは問題が生じる場合があるので、
ショートメッセージで本登録用の認証コードを通知する方式に加えて、利用者が新規登録時に入力した電話番号宛てに新システムが電話をかけて自動音声で本登録用の認証コードを読み上げる方式も選択できることにした。」
さらに要望を踏まえた利用者の特性については、
「主に市場調査や営業目的で利用する事業者からの開示請求がほとんどであり、文書1件当たりの枚数が多いことから、開示の際は電子媒体で交付することが多くなっている。」
このことから、利用者の多数は事業者であり、携帯電話を持っていない、あるいは携帯電話番号を入力できない(会社の固定電話番号を入力することが予想される)ケースがあるため、SMSによる認証だけでは不十分という事情が読み取れます。
SMSは携帯電話番号に送信される仕組みであり、固定電話や携帯番号を持たない利用者には届きません。そこで音声自動応答によって認証コードを読み上げる方式を追加することで、携帯電話番号を持っていない、あるいは入力できない利用者にも対応を図っています。

受験者が誤りやすいポイント・注意点

  • 案1(メールでURL送付)方式の課題の理解不足
    案1は簡便ですが、「文書所管部署の要望」を満たせないとあり、単に手軽さだけでなく厳格な本人確認や連絡先確認が必要である点を見落としやすいです。
  • SMS(ショートメッセージ)と携帯電話番号の関係
    「SMSは携帯電話番号宛限定」だが、事業者の場合は携帯電話番号を登録しないことが多いという理解不足。
  • 自動音声読み上げの役割の誤解
    自動音声は「利便性向上」ではなく「多様な電話番号種別への対応(固定電話など)」が目的であることを押さえること。

試験対策として覚えておくべきポイント・知識

ポイント内容
利用者の特性把握実際のシステム利用者属性(例:事業者、多様な電話番号)に応じた認証方式の選択が重要
SMSの制約SMSは携帯電話番号に限定されるため、固定電話等には送れない
多要素認証・多チャネル認証電話自動音声など別チャネルを用いた認証方式の追加が本人確認精度向上に有効
業務要望との整合システム構築では現場の要望(例:連絡先の正確性や利用者の本人確認)を満たすことが重要
システム利用者登録本登録の本人認証方式は、利便性だけでなくセキュリティ・正確性も考慮される

この設問は、「利用者の事情・特性に応じた認証手段の多様化」という設計思想を理解し、その理由を35字以内で的確に表現する力を問う問題です。
根拠を問題文から正確に読み取り、認証方式の技術的制約と利用者属性の関係を整理して解答しましょう。
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