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システムアーキテクト試験 2018年 午後1 問03
ETCサービス管理システムの構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
K社は、法人向けの自動車リース会社である。K社は、自動車リースを契約している法人を対象に、有料道路の通行料金の支払に利用するETCカードのサービス(以下、ETCサービスという)を提供している。昨今のETCカード(以下、カードという)の利用者増加に伴い、業務及びシステムを改善することにした。
〔現在の業務の概要〕
K社では、法人顧客(以下、顧客という)がETCサービスの契約を締結すると、リース車両1台につきカードを1枚発行する。カード利用者は、有料道路の通行料金の支払手段として、カードを利用することができる。有料道路の事業者(以下、道路事業者という)は、K社のカードを利用した通行料金をK社に請求する。K社は、道路事業者から送られてくる通行記録を基に通行料金を顧客に請求する。現在のETCサービスの契約締結から請求までの業務の概要は、次のとおりである。これらの業務に関連するシステムは、ETCサービス契約システム、リース契約管理システム及びETCサービス請求システムである。
(1)ETCサービス契約締結業務
K社は、顧客からETCサービスの申込書を受領し、契約締結の手続をする。申込書に記載する情報は、リース契約番号、顧客名、願客アルファベット名、住所、電話番号、代表者名及び口座振替に利用する顧客の預金口座情報である。ETCサービス契約システムに、申込書の情報を入力して登録する。リース契約管理システムを利用して、リース契約番号、顧客名、開始日及び満了日などのリース契約の情報とETCサービスの申込内容を照合し、契約を締結する。
(2)カード発行業務
K社は、顧客からカード発行依頼書を受領し、カード発行の手続をする。カード発行依頼書に記載された自動車登録番号から、リース契約管理システムを利用してリース契約とリース車両の情報を確認する。リース車両に対して利用中のカードがないことを台帳で確認し、カードの発行に必要な情報(以下、カード発行情報という)を書面で印刷会社に送付する。カード発行情報は、顧客アルファベット名、自動車登録番号、カードの色やデザインなどのカード種類、カード番号及びカード有効期限年月である。K社では、カードの有効期限を顧客のリース契約満了日の属する月の月末としている。カード発行業務で発行したカードについては、カード発行費の請求対象としている。
(3)カード更新業務
K社は、カードの有効期限の2か月前までに有効期限更新の案内書を顧客に送付する。リース車両を継続利用してカードの有効期限の更新を希望する場合、顧客は、指定する期日までに更新依頼書をK社に送付する。指定する期日までにカードの更新を希望する旨の通知がなく、有効期限を迎えた場合は、カードを解約扱いとする。K社は、更新の希望があったカードについて、カード発行情報を書面で印刷会社に送付する。カード更新業務で発行したカードについては、カード発行費の請求対象としている。
(4)カード再発行業務
K社は、顧客からカード再発行依頼書を受領し、カードの再発行の手続をする。顧客は、カードの再発行を依頼する際、再発行の理由を“紛失”、“カード種類変更”、“磁気不良”及び“破損”の四つから一つ選択しカード再発行依頼書に記載する必要がある。K社は、カード再発行依頼書の確認後、それまで利用していたカードを無効にし、カード発行情報を書面で印刷会社に送付する。再発行の理由が“磁気不良”又は“破損”である場合、カード発行費の請求対象外としている。
(5)請求業務
K社は、毎月、道路事業者から送付される通行記録に基づき、道路事業者に対して通行料金を立替払する。立替払した通行料金、カード発行費及びカード年会費をETCサービス請求システムに登録する。毎月月末にETCサービス請求システムを利用して請求書を発行し、顧客に請求する。カード発行費は、カード1枚につき500円とし、請求の対象となる月に発行したカードの代金を請求する。カード年会費は、現在有効であるカードを対象として、カード発行依頼書に基づいて初回にカードを発行した月に年会費を請求し、その後、1年ごとに請求する。請求書は、請求金額の合計を記載した請求書サマリとカード番号ごとの利用明細を記載した請求書明細から構成される。利用明細には、有料道路のインターチェンジ(以下、ICという)に入った日を利用日として、出入口のIC名、自動車登録番号、出口を通過した時刻(以下、出口時刻という)と通行料金を表示する。請求書サマリの請求
金額欄の例を図1に、請求書明細の請求金額欄の例を図2に示す。


〔システムの改善要望〕 業務部とシステム部から、現在の業務に関わる次のような改善要望が出された。 ・リース契約管理システムを利用してリース契約とリース車両の情報を照合する作業を、システムで対応してほしい。 ・カード発行業務で、顧客から発行依頼されたリース車両に対して利用中のカードがないことを確認する作業をシステムで対応してほしい。 ・カード発行情報をシステムで印刷会社に連携してほしい。 ・カード利用者は、いつでもカードを利用することができるが、顧客の営業日以外に有料道路のICに入ったことが分かる帳票(以下、利用日確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。 ・カード利用者は、どんな車両でもカードを利用することができるが、発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことが確認できる帳票(以下、利用車両確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。
〔改善後のシステムの内容〕
K社では、システム改善要望を踏まえETCサービス契約システムとETCサービス請求システムを続合したETCサービス管理システム(以下、新システムという)の機能とデータを次のように検討している。新システムの主要なデータを表1に示す。

(1)契約管理機能 顧客から受領したETCサービスの申込書の情報を新システムに入力する。新システムは、リース契約管理システムと連携して、入力した情報からリース契約情報を参照する。申込内容に問題がなければ、ETCサービス契約データにレコードを登録する。 (2)カード発行機能 顧客から受領したカード発行依頼書の情報を新システムに入力する。新システムは、リース契約管理システムと連携して、入力した情報からリース契約情報とリース車両情報を取得する。また、①カードデータのレコードのうちカード状態が“利用中”であるレコードを対象に、発行依頼されたリース車両に関するチェックを行う。チェック結果に問題がなければ、カードデータにレコードを登録する。その際、カード状態に“利用中”、初回カード発行日及びカード発行日に処理日、発行理由に“新規発行”を設定する。その後、カード発行情報をEDIで印刷会社に連携する。 (3)カード更新機能 新システムで有効期限更新の案内書を発行する。顧客から有効期限の更新を希望された場合、新システムに入力することによって、カード有効期限年月を算出してカードデータにレコードを登録する。その際、カード状態に“利用中”、初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値、カード発行日に処理日、発行理由に“更新発行”を設定する。また、それまで利用していたカードに係るカードデータのレコードのカード状態を“利用中”から“更新済み”に変更する。その後、カード発行情報をEDIで印刷会社に連携する。また、月末に、カードデータのレコードのうち、カード有効期限年月が当月であり、カード状態が“利用中”であるレコードのカード状態を“解約”にし括で変更する。 (4)カード再発行機能 顧客からのカード再発行依頼書の情報を新システムに入力する。新システムは、カード番号を新たに採番してカードデータにレコードを登録する。その際、カード状態に“利用中”、初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値、カード発行日に処理日、発行理由に再発行の理由を設定する。また、それまで利用していたカードに係るカードデータのレコードのカード状態を“利用中”から“無効”に変更する。その後、カード発行情報をEDIで印刷会社に連携する。 (5)請求機能 毎月、道路事業者からEDIで連携される通行記録を新システムに一括で登録し、顧客ごとに通行料金を計算する。また、カード発行費及びカード年会費の請求の対象となるカードデータのレコードを抽出し、それぞれの請求金額を計算する。通行料金、カード発行費及びカード年会費の合計を合計請求金額として請求書を発行する。請求書のフォーマットは、現行業務と同じとする。EDIで連携される通行記録の主要な項目を図3に示す。

(6)ETC利用情報レポート機能 通行記録から利用日確認帳票と利用車両確認帳票に必要なデータを抽出し、帳票を作成して顧客に送付する。利用日確認帳票を顧客に提供するために、ETCサービス契約申込時に、顧客からある情報を提供してもらい、新システムで保有する。
設問1(1):カード発行機能について、(1),(2)に答えよ。
本文中の下線①のチェック内容を、表1の属性を用いて40字以内で述べよ。また、そのチェックを行う業務上の理由を25字以内で述べよ。
模範解答
チェック内容:カード発行依頼書に記載された自動車登録番号と一致するレコードがないこと
業務上の理由:1車両につきカードを1枚だけ発行するから
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点整理
チェック内容がこのようになる理由の論理的説明
問題文(改善後のシステムの内容)にあるカード発行機能の説明部分で、下線①には次の記述があります。
「カードデータのレコードのうちカード状態が“利用中”であるレコードを対象に、発行依頼されたリース車両に関するチェックを行う。」
これは、「現在利用中のカードデータ」の中に、発行依頼のあった自動車登録番号が既に使われているかを照合するチェックです。
なぜこのチェックが必要かというと、問題文冒頭の「現在の業務の概要」内に記載があります。
「リース車両1台につきカードを1枚発行する。」
また、カード発行業務においても、
「リース車両に対して利用中のカードがないことを台帳で確認する。」
つまり、同じ自動車登録番号(リース車両)に複数の「利用中」カードが存在してしまうと、カード発行ルールに違反する状態となるため、システムでの自動チェックを導入し、重複発行を防止する必要があるのです。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの理由
- カード状態を確認するポイント
- 誤りやすいのは「カード状態“利用中”」であることを見落とすことです。過去に発行されて既に解約・無効・更新済みになっているカードは対象外です。
- チェック対象の属性の誤認
- 「自動車登録番号」と「カード番号」の混同。実際は「カード番号」が複数あっても、同じ車両(自動車登録番号)に複数「利用中」カードがあってはならないため、こちらを基準に重複を判断します。
- 業務上の理由の簡潔表現
- 「1対1の管理」や「重複禁止」など短い言葉で済まそうとすると不十分。ポイントは「1車両につきカードは1枚だけ発行するルール」と明示すること。
試験対策として覚えておくべきポイント
- カード発行業務のルール理解
- 「リース車両1台につきカードは1枚のみ発行する」という業務ルールは必ず抑える。
- 状態管理の重要性
- 「カード状態」によって利用中・解約・無効など管理し、状態に応じて業務処理やチェックを設計すること。
- システム連携でのチェック責任
- 申込時システムは重複や契約不整合を検出し、業務負荷やミスを減らすように設計されていること。
- データ属性の役割把握
- 問題文で詳細に示された表を読んで、どの属性がチェックに関連するか把握する力が問われる。
- 表現は要件に沿って簡潔に
- 問題の指示字数内で的確に説明する練習をする。
以上のポイントを踏まえて、下記の模範解答のように要件を具体的に反映した表現を準備しましょう。
※字数制限のため、「カード発行依頼書に記載された自動車登録番号と一致するカード状態“利用中”レコードの不存在確認」といった表現で要件をコンパクトにまとめられます。
設問1(2):カード発行機能について、(1),(2)に答えよ。
EDIで印刷会社に連携するカード発行情報を作成するために、リース契約管理システムから取得が必要なリース契約の情報を挙げよ。また、その情報の利用目的を20字以内で述べよ。
模範解答
情報:リース契約の満了日
利用目的:カード有効期限年月を算出すること
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 情報:リース契約の満了日
- 利用目的:カード有効期限年月の算出
- リース契約管理システムから取得する必要があるリース契約情報
- カード発行業務およびカード更新業務における有効期限の設定
なぜこの解答になるのか
問題文の「カード発行業務」の記述に、「K社では、カードの有効期限を顧客のリース契約満了日の属する月の月末としている」と明確に書かれています。
また、「改善後のシステムの内容」でもカード発行機能の仕組みとして:
「カード有効期限年月を算出してカードデータに登録する」
とあり、カードの有効期限はリース契約の満了日を基に設定されることがわかります。
したがって、カード発行情報を印刷会社に連携するためのデータ作成には、カード有効期限を正しく設定する必要があり、そのカード有効期限の算出のためにリース契約の満了日をリース契約管理システムから取得する必要があります。
まとめると:
このように、カード発行時にカードの有効期限を「リース契約の満了日を属する月の月末」として設定するため、リース契約の満了日が必須情報となります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢について
-
リース契約の開始日を選ぶ誤り
- リース契約開始日は「契約の開始日」であり、カードの有効期限設定に直接関係しません。
- 問題文もカード有効期限については満了日に基づくと明示しているため、開始日は誤答になります。
-
顧客名や自動車登録番号と混同する誤り
- 顧客名や自動車登録番号はカード発行情報に含まれますが、有効期限の算出に使うのはリース契約の満了日であって、これらは直接の利用目的としては不適切です。
-
カード発行情報の他の属性と混同
- 「カード番号」「カード種類」「カード有効期限年月」などはカード発行情報の属性ですが、システムがカード有効期限年月を作成するために必要なリース契約情報は満了日のみであるため、他のリース契約情報は本設問の答えとしては不要です。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
カードの有効期限は「リース契約の満了日」が基準であり、満了日の月の月末を有効期限年月として設定する
→ リース契約満了日とカード有効期限の関係はシステム設計・運用における基本ルールとして必須理解。 -
リース契約管理システムとETCサービス管理システムは連携が必要で、リース契約の重要な情報を参照してカード発行情報を正確に生成すること。
-
カード発行情報にはカード有効期限年月が必須であり、これを算出するためのリース契約情報が何かを問われたら「満了日」を思い出すこと。
-
問題文中に表現される「利用目的」は手続きや処理の要点であり、20字以内で簡潔に述べること。
以上の観点から、本問では「リース契約の満了日」こそがカード発行情報作成のため取得するリース契約情報であり、その目的が「カード有効期限年月を算出すること」であると論理的に導き出せます。
設問2(1):請求機能について、(1),(2)に答えよ
請求対象の月にカード年会費の徴収が必要なカードデータのレコードを抽出し、請求金額を計算する。顧客ごとのカードデータから、カード年会費の請求対象を抽出する際に用いる属性を表1中から二つ挙げ、その属性が満たすべき抽出条件をそれぞれ20字以内で述べよ。(①、②は順不同)
模範解答
①:属性:カード状態
抽出条件:“利用中”であること
②:属性:初回カード発行日
抽出条件:請求対象の月と同一の月であること
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
なぜこの解答になるのか(問題文の記述からの説明)
カード年会費の請求については、問題文の【請求業務】の説明に以下の記述があります。
「カード年会費は、現在有効であるカードを対象として、カード発行依頼書に基づいて初回にカードを発行した月に年会費を請求し、その後、1年ごとに請求する。」
ここで「現在有効であるカード」とは、カードの状態が「利用中」など、まだ有効なカードを示しています。したがって、カード状態が「利用中」であることは、請求対象カードの条件の一つです。
また、カード年会費は初回カード発行月に年会費を請求するので、カードデータの「初回カード発行日」の月が請求対象の月に当てはまることが請求対象抽出条件になります。
つまり、
- カード状態が「利用中」であること
- 初回カード発行日の月が請求対象の月と一致していること
が請求対象カードの抽出条件となるため、この二つの属性と条件が模範解答となっています。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
カード状態が“利用中”以外の状態を含めてしまう誤り
問題文には、カード状態の種類として「利用中」「更新済み」「解約」「無効」などがあり、それぞれ意味が異なります。特に「更新済み」「解約」等を含めて請求対象にしてしまうと誤りです。年会費は「現在有効なカード」に対して請求するため、必ず「利用中」であるカードに限定することが重要です。 -
初回カード発行日の取り扱いの誤り
初回カード発行日は請求の判定基準として「請求対象の月と同一月」であることが指定されています。請求月と異なる月のカードを含めると誤る原因になります。 -
請求対象の月の基準の混同
例えば「カード発行日」や「カード有効期限年月」など、他の日付属性を請求対象判定に用いることは問題文の条件と合いません。正しく「初回カード発行日」がキーになります。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
請求対象のカードは「カード状態」が「利用中」であるものと限定すること
→ 解約済や無効のカードは請求対象外。 -
カード年会費は初回カード発行月と請求月が一致するカードに対して請求されることが多い
→ 初回カード発行日を判定基準として必ず確認。 -
日付/状態を含む属性の役割を正確に理解すること
→ たとえば、「カード発行日」と「初回カード発行日」は異なる意味合いを持つため用途に応じて使い分け。 -
要望や設問の表現を正確に読み取る練習をする
→ 特に「現在有効」「請求対象月」など期間や状態を示す用語に注目すること。 -
請求書のフォーマットや請求対象の条件が問題文中で示されているので、そこを確実に理解する訓練をする
→ 曖昧にせず、条件にマッチするデータ抽出の要件を正確に把握。
以上のポイントを押さえれば、カード年会費請求対象カードの抽出条件が理解でき、当該試験問題の回答に自信を持てるようになります。
設問2(2):請求機能について、(1),(2)に答えよ
カード発行費は、請求の対象となる月に発行したカードの件数から計算するが、請求対象外とするカードがある。どのようなカードか。表1の属性を用いて30字以内で述べよ。
模範解答
発行理由が“磁気不良”又は“破損”であるカード
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- カード発行費の請求対象となるカードの判定基準
- 発行理由("磁気不良"、"破損"など)によるカードの区分
- 表1のカードデータの「発行理由」属性の利用
- 「カード発行費は請求対象外となるカードがある」点
なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文中の【現在の業務の概要】で、カード再発行業務に関して以下の記述があります。
「再発行の理由が“磁気不良”又は“破損”である場合、カード発行費の請求対象外としている。」
これは、カードの再発行が「磁気不良」や「破損」といった利用者の責によらないカードの問題の場合は、カード発行の代金を顧客に請求しないという方針を表しています。
さらに【改善後のシステムの内容】の表1「カードデータ」の属性には、
とあり、それぞれのカード発行に対して「発行理由」が明確に登録されることがわかります。
このため、請求対象となるカードの判定は、カードデータの発行理由によって行っていることが想定され、具体的に発行理由が「磁気不良」又は「破損」のカードは、カード発行費の請求対象外とされます。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの理由
- 「カード種類」や「カード状態」、「リース車両かどうか」など他の属性と混同すること
→ これらはカード管理に関係するが、カード発行費の請求対象除外の条件としては出てきません。 - 再発行の理由の「紛失」や「カード種類変更」も該当しないという点
→ これらは請求対象に含まれます。 - 「カード発行日が請求対象の月に含まれるカード」という条件にのみ着目して、理由の考慮を忘れること
→ 発行年月だけでなく発行理由も必須です。
試験対策として覚えておくべきポイント
- カード発行費の請求対象となるカードは、「発行理由」が“磁気不良”や“破損”以外で、かつ請求対象月に発行されたカードであること
- 「発行理由」はカードごとに管理されており、料金請求に直接関わる重要な属性である
- 請求業務では、システムのレコードの属性を用いて除外や抽出を行うため、リレーショナルデータの活用方法を理解しておく
- 「利用者都合によらない故障や損傷の場合は発行費を請求しない」という業務ルールをシステムで明示的に表現していると理解
まとめ
したがって、カード発行費の請求対象外のカードは、表1のカードデータの「発行理由」が“磁気不良”又は“破損”であるカードとなります。
設問3(1):ETC利用情報レポート機能について、(1),(2)に答えよ。
利用日確認帳票を顧客に提供するために、ETCサービス契約申込時に、顧客から提供してもらう情報は何か。その情報を10字以内で述べよ。また、通行記録からどのような条件のデータを抽出するか。30字以内で述べよ
模範解答
情報:顧客の営業日
データ:通行記録の利用日が顧客の営業日以外であるデータ
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 利用日確認帳票提供のために顧客から必要な情報は「顧客の営業日」である。
- 帳票作成時のデータ抽出条件は、通行記録の利用日が「顧客の営業日以外」であるものを抽出すること。
解答がなぜ正しいのか(論理的説明)
問題文の「〔システムの改善要望〕」には以下の記述があります。
・カード利用者は、いつでもカードを利用することができるが、顧客の営業日以外に有料道路のICに入ったことが分かる帳票(以下、利用日確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。
つまり、
-
利用日確認帳票とは、法人顧客の「営業日以外」にカード利用(=有料道路のIC入場)があったことを知らせるための帳票である。
-
そのためには、システムは「顧客の営業日」を把握しておく必要がある。
-
顧客の営業日情報は、ETCサービス契約申込時に顧客から提供してもらい、新システムで保有することになっている。
したがって、
-
顧客の営業日という「基準情報」を申込時に取得すること。
-
通行記録の「利用日」がその営業日でないもの(つまり、営業日以外の日)を抽出し、そのデータで帳票を作成すること。
が求められています。
受験者が誤りやすいポイントや注意点
-
「顧客の営業日」という情報はどこで取得するか:
顧客の申込み情報として取得されるため、営業日そのものをリース契約管理、カード発行等の他の既存情報から自動的に取得するわけではありません。よくリース車両情報や契約日時と混同しがちです。 -
**抽出条件の「利用日が顧客の営業日以外」**についての誤解:
「営業日の利用」を抽出するのではなく、「営業日以外に利用があった」ことを確認したい点に注意しましょう。問題文は明確に「営業日以外」としています。 -
利用日確認帳票の目的を混同すること:
利用車両確認帳票との違いを理解し、利用日確認帳票は「違反チェック」や「変則利用の把握」として顧客サービス提供を兼ねている点を押さえてください。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
顧客からの申込時に取得する情報は、システム上の基準データとなる場合が多い。特に「営業日」や「営業時間」など、顧客の業務時間帯に関する情報は、利用調査や異常利用検出に活用されることが多い。
-
データ抽出条件は問題文のキーワードを正確に理解すること。
問題文で「営業日以外」という否定形の条件があれば、逆の条件「営業日」での抽出では誤答となる。 -
システムから顧客サービスとして提供する帳票は、単に記録を示すだけでなく、顧客が必要とする「付加価値情報」を抽出していることが多い。
そのため、業務目的を意識しながら、どのような情報を顧客に示すのかを理解することが必要。
以上の点を押さえて、設問の答えを導くことが重要です。
設問3(2):ETC利用情報レポート機能について、(1),(2)に答えよ。
利用車両確認帳票について、どのような条件の通行記録のデータを抽出するか。45字以内で述べよ。
模範解答
通行記録のカード番号と自動車登録番号の組合せが,カードデータの情報と異なるデータ
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 通行記録のカード番号と自動車登録番号の組合せがカードデータと異なること
- 利用車両確認帳票は、発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用した事例を顧客に通知する帳票
- カードデータに登録されている「カード番号」と「自動車登録番号」の組合せが正しい基準
- 通行記録のデータ抽出条件=カード利用状況と車両情報の不一致
なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文には「利用車両確認帳票」という、顧客へ提供するサービス帳票の説明があります。
- 「カード利用者は、どんな車両でもカードを利用することができるが、発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことが確認できる帳票」(改善要望)
これは、カードは本来「リース契約に紐づく特定の車両」で利用することを目的としていますが、実情としては別の車両でもカードが使われる可能性があるため、その実態を「顧客に知らせる」帳票です。
新システムでは、カード1枚ごとに関連付けられた自動車登録番号が「カードデータ」として管理されています(表1参照)。
ここで重要なのは、「カード番号」と「自動車登録番号」の組合せが正しい利用条件を示しています。
一方、道路事業者からEDIで連携される「通行記録」には、実際にカードが使われた車両の自動車登録番号が含まれます(図3より)。
帳票作成時に、通行記録の「カード番号」と「自動車登録番号」の組合せが、カードデータの同組合せと「異なる」場合に抽出します。これが「発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことの確認」となるからです。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢の注意点
-
「カード番号だけ」や「自動車登録番号だけ」の不一致を確認するのが正しいのか?→ 不正利用の状況は、「カード番号」と「登録番号」の「組合せ」が違うことにより判明する。単一のみの違いでは意味が異なる。
-
「カード状態」や「カード有効期限」などの他情報と混同しない→ 問題文の改善要望はカードが使われた車両が「発行依頼されたものかどうか」に注目しているので、カードの状態等は直接関係しない。
-
「カードが利用停止状態」など利用不能状態のカードの通行記録は対象になるか?→ 通行料金の請求はカード状態も踏まえるが、利用車両確認帳票の抽出条件自体は「カード番号と自動車登録番号の組合せの相違」なので状態は関係ない。
-
「カード利用者が任意の車両で使ってもよいが、その事実を知らせるもの」との理解を持つ→ 「不正利用」というより「実態把握と顧客サービス」という意図がある点も押さえる。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
「利用車両確認帳票」は、「カード番号」と「自動車登録番号」の組合せの一致・不一致によって発行される帳票であること。
-
カード番号単独、または車両番号単独ではなく、両者の組合せが重要な判定基準であること。
-
システム設計やデータ連携において、実際の利用記録と管理しているカード車両情報を照合することがポイント。
-
顧客に提供する帳票はサービス改善の一環であり、単に誤利用を防ぐだけでなく、利用状況を「見える化」することも目的であること。
-
ETCサービスに関する帳票や請求業務では、主キーや関連情報を精確に理解し、矛盾や不一致を検出するロジックが求められる。
以上の理解で、「利用車両確認帳票」作成のためのデータ抽出条件について、明確かつ簡潔に答えられるようにしましょう。