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システムアーキテクト試験 2019年 午後1 問02
容器管理システムの開発に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
D社は、化学品を製造・販売するメーカである。製造した化学品を、様々な形状・容量の瓶(以下、容器という)に充填し、製品として顧客へ出荷する。顧客が製品を使用し、空になった容器は、D社が回収して再利用している。
現在は、生産管理システムから受領する製造計画に基づいて化学品を充填し、販売管理システムで製品の販売管理を行っている。このたび、顧客サービスの向上、容器の管理強化及び作業の効率向上のために、容器管理システムを新規に開発することにした。
〔現行業務の概要〕
現行業務の概要は、次のとおりである。
(1)充填
・D社の化学品は見込生産で、日ごとに生産する総量を、生産管理システムで製造計画として決定している。化学品は、製造の最終工程のラインで、化学品ごとに一意に定められた容器種の容器に充填されて、製品となる。“容器種”とは、どのような形状と容量の容器かを表す。
・充填に必要な容器は、製造計画に従って、容器倉庫から出庫される。同じ容器種が、異なる化学品の充填に用いられることもある。
・製品コード、化学品名、ロット番号、充填日を印刷した製品ラベルを生産管理システムから出力し、製品の容器に貼る。
・製品ラベルが貼られた製品を、製品倉庫に入庫・保管する。入庫時に、販売管理システムに入庫登録を行う。
(2)ピッキング
・製品倉庫では、受注した製品の出荷準備のために、販売管理システムから、ピッキングリストを出力する。
・倉庫作業者は、ピッキングリストの指示に従って、製品ラベルを目視確認しながら出荷すべき製品を集める。
・倉庫作業者は、ピッキングされた製品を、出荷場所に移動する。移動時に、販売管理システムに出庫登録を行う。
(3)積込・出荷
・出荷場所では、出荷のために手配された配送のトラック便ごとに、販売管理システムから、積込リスト及び出荷伝票を出力する。
・出荷作業者は、積込リストの指示どおり製品がそろっているかどうかのチェックと、配送業者が積込リストの指示どおり積込みを行ったかどうかの検品を行う。検品に合格したトラック便から出発し、顧客に製品を納品する。
・出荷作業者は、出荷実績を計上するために、出荷場所の端末から、出荷した製品の情報を販売管理システムに入力する。
(4)容器回収
・配送業者は、顧客が空になった容器を保管していた場合、容器返却書を起票して容器を回収し、D社の容器回収場所へ持ち帰る。
・回収作業者は、容器回収場所で、回収された容器と容器返却書の照合を行う。
(5)容器洗浄・検査
・回収された容器は洗浄され、検査担当者が検査を行う。
・検査に合格した容器は、再利用が可能になり、次の化学品の充填に利用されるまで、容器倉庫に保管される。
〔関連部門からの要望〕
容器管理システムを開発するに当たり、関連部門から次のような要望が出された。
(1)容器一つ一つが、今どのような状態にあるのかを管理できるようにしてほしい。
(2)作業者が行っている入力などの作業の負担を軽減してほしい。
(3)顧客が誤って使用期限を過ぎた製品を使ってしまわないように、顧客の下に使用期限間際の製品があれば、その期限の1週間前を過ぎたら、システムで警告を出せるようにしてほしい。
〔容器管理システムの開発方針〕
(1)容器管理システムは、購入、容器倉庫での保管、充填、製品倉庫での保管、出荷、回収、検査などの容器利用サイクルの状態を、容器単位に管理する。
(2)容器一つ一つの管理を行う手段として、無線通信方式のICタグ(以下、RFタグという)を採用する。
(3)容器倉庫、製造の最終工程のライン及び容器回収場所に、ゲート型のRFタグリーダライタ(以下、ゲートアンテナという)を設置する。
(4)製品倉庫、出荷場所、容器回収場所及び容器洗浄場所に、ハンディ型のRFタグリーダライタ(以下、HTという)を導入する。HTは、バーコードの読取りもできる機種とする。
(5)容器管理システムとして、容器購入処理、容器保管処理、充填処理、容器回収処理、容器洗浄・検査処理、及び容器状態検索処理の各機能を新規に開発する。
(6)ピッキング処理、積込・出荷処理、製品在庫管理処理、及び使用期限警告処理は、現行の販売管理システムの改修で対応する。
〔D社で採用したRFタグ及び関連する機器などの説明〕
(1)RFタグの通信距離は数メートルである。
(2)RFタグのデータレイアウトを、図1に示す。RFタグ番号は、RFタグの製造時に書き込まれるタグ固有の番号であり、書換えはできない。容器情報領域は、RFタグを容器に貼付する際に書き込み、書込み口ックを掛ける。書込みロックが掛けられた領域は、ロックを外さない限り値を変更できない。製品情報領域は、書込みが可能で、RFタグ購入時はクリアされている。
(3)ゲートアンテナは、ゲートを通過するRFタグを一括で読み書きできる。RFタグの一括読み書きでは、環境によって数%程度の漏れが発生することを事前検証で確認している。書込みについては、エラーを訂正する機能を備えているので、書込み時の異常は考慮しなくてよい。
(4)HTはRFタグを個別に読み書きでき、バーコードの読取りも可能である。
(5)D社は、容器の誤使用を防ぐために、RFタグへの書込み処理では、対象項目がクリアされていない場合は書き込みできないよう、プログラムでガードする。

〔容器管理システムの処理概要〕 容器管理システムの処理概要は、次のとおりである。
なお、容器一つ一つが、今どのような状態にあるかの管理を行うために、容器状態管理ファイルを設ける。
(1)容器購入処理
・容器の購入時に、RFタグに容器種コード、容器番号を書き込み、容器に貼付して、容器倉庫へ運ぶ。RFタグに書き込む際、容器種コード、容器番号をキーにして容器状態管理ファイルに登録し、容器状態区分を“未使用”にする。
(2)容器保管処理
・化学品の充填が可能になった容器を容器倉庫に入庫する。その際に、ゲートアンテナでRFタグを読み込んで、容器状態管理ファイルによるチェックを行い、充填可能な状態であることを確認する。その後、入庫処理を行い、それぞれの容器について、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“容器倉庫入庫”にする。
・容器の出庫は、製造計画で決定した化学品の当日分の生産総量と製品マスタに登録されている情報を用いて、①どの容器が何個必要かを計算し、出庫指示を出す。出庫時に、ゲートアンテナでRFタグを読み込んで、それぞれの容器について、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“容器倉庫出庫”にする。
(3)充填処理
・製造の最終工程で、製品がゲートアンテナを通過する際に、一つ一つのRFタグの製品情報領域へ製品コード、ロット番号、充填日の書込みを行う。この際、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“充填済”にする。
・製品は製品倉庫に運ぶ。
(4)容器回収処理
・容器回収場所のゲートアンテナで、回収した容器のRFタグを一括して読み込む。
・容器返却書に記載された容器返却数をシステムに入力して、RFタグの読込み件数とのチェックをシステムで行い、数が一致したら、それぞれの容器について、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“回収”にする。
・数が不一致の場合は、まず、容器返却数のシステムへの入力が正しいことを確認して、その後、HTによる個別の読込みに切り替える。個別読込み時に、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“回収”にする。個別読込み件数と容器返却書に記載された容器返却数が不一致の場合は、エラー処理を行う。
(5)容器洗浄・検査処理
・回収した容器は、容器洗浄場所で洗浄され、検査担当者が再利用の可否についての検査を行った後、RFタグの製品情報領域をクリアする。検査に合格した容器は容器倉庫へ運び、不合格となった容器は廃棄する。検査結果によって、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“合格”又は“廃棄”にする。
・廃棄した容器に貼付してあったRFタグは、容器からはがして、再利用できるように、HTを用いて、②ある処理を行う。
(6)容器状態検索処理
・容器状態管理ファイルの情報を任意の条件で検索する。
容器管理システムで使用する主要なファイルを表1に示す。

〔販売管理システムの改修〕 容器管理システムの新規開発に伴い、販売管理システムを、次のとおり改修する。 (1)ピッキング処理 ・ピッキングリストへバーコードを印字し、HTでピッキング指示データを受ける。 ・ピッキング指示データに基づき、HTで、ピッキング対象となる容器のRFタグを読み込む。ピッキング指示データとRFタグ情報をチェックし、製品コードが合っていればRFタグへ受注伝票番号を書き込み、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“ピッキング済”にする。合っていなければエラー処理を行う。 (2)積込・出荷処理 ・積込リストへバーコードを印字し、HTで積込指示データを受ける。 ・HTで、積込対象となる製品のRFタグを読み込み、積込指示データとRFタグ情報をチェックする。③データ内容及び数が合っていれば、検品を完了して出荷する。この際、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“出荷”にする。合っていなければエラー処理を行う。 ・HTの検品を完了した実績データを取り込んで、(a)。 (3)製品在庫管理処理 ・製品倉庫への入庫時に、HTでRFタグを読み、読み込んだデータで入庫実績を計上できるようにする。この際、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“製品倉庫入庫”にする。 ・製品倉庫からの出庫時に、HTでRFタグを読み、読み込んだデータで出庫実績を計上できるようにする。この際、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“製品倉庫出庫”にする。 (4)使用期限警告処理 ・顧客の下にある、使用期限が過ぎそうな製品及び使用期限が過ぎた製品を、容器管理システムの容器状態検索処理を利用して次の条件で検索し、顧客に警告を発することができるようにする。 条件:容器状態管理ファイルの容器状態区分の値が “(b)”で、(c) が本日日付の1週間後より前の日付である容器
設問1(1):容器管理システムの処理について、(1),(2)に答えよ
容器倉庫へ入庫可能な容器の容器状態区分の値を全て答えよ。
模範解答
未使用,合格
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点の整理
- 「容器倉庫へ入庫可能な容器」とは、「充填に使える状態で容器倉庫に入庫できる容器」であること。
- 容器状態区分で容器の現在状態が管理されている。
- 問題文より、「容器倉庫へ入庫可能な容器状態区分は何か?」を答える。
- 模範解答は「未使用」「合格」。
- 容器状態区分は、容器状態管理ファイルの属性の一つ。
2. なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文の「容器保管処理」(〔容器管理システムの処理概要〕の(2))に次の記述があります。
・化学品の充填が可能になった容器を容器倉庫に入庫する。その際に、ゲートアンテナでRFタグを読み込み…充填可能な状態であることを確認する。その後、入庫処理を行い、それぞれの容器について、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“容器倉庫入庫”にする。
つまり、入庫時点で「充填可能な状態の容器」が対象となります。
さらに、「容器購入処理」(〔容器管理システムの処理概要〕の(1))には、
容器状態区分を“未使用”にする。
また、「容器洗浄・検査処理」(〔容器管理システムの処理概要〕の(5))には、
検査に合格した容器は容器倉庫へ運び…容器状態管理ファイルの容器状態区分を“合格”にする。
以上より、容器倉庫へ入庫できる容器は、
- 新規購入されたまだ一度も使用されていない「未使用」状態の容器
- 回収・洗浄・検査を経て再利用可能となった「合格」状態の容器
であることがわかります。
これら以外の状態(例:「充填済」「出荷」「回収」「廃棄」など)は、
容器倉庫に入庫すべき状態ではないということです。
容器倉庫に入庫すべき状態ではないということです。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
「容器状態区分は多数存在する」ことに注意:
容器が利用サイクルのどの段階にあるかを表す多様な状態があり、それら多くは容器倉庫入庫に適さないものです。 -
「充填済」や「出荷済」などは混同しやすい:
充填済の容器は製品として製品倉庫にあり、容器倉庫に入庫できません。
出荷済みや回収済みの容器も同様に、別の状態で管理されます。 -
「誤って“回収”や“廃棄”を選ばないように」:
「回収」は顧客から戻された状態であり、「廃棄」は使えない容器の状態なので入庫可能ではありません。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
- 容器管理システムでは「容器状態区分」で容器単位の状態を管理している。
- 容器倉庫へ入庫できる容器状態は「未使用」と「合格」である。
- 「未使用」は新品購入時、「合格」は回収後の洗浄・検査に合格した状態を示す。
- 生産工程や物流工程のどの段階の容器かを状態区分で押さえておくことは必須。
- 状態によってどこでどのように扱うか(倉庫入庫、出庫、充填、回収等)のフロー理解が重要。
参考:容器状態管理ファイルの主な属性(表1より抜粋)
このように「未使用」と「合格」の状態の容器だけが、容器倉庫に入庫可能な状態であるというのが、出題意図の核心です。問題文の工程説明に沿って、各段階の容器状態を理解できるようにしましょう。
設問1(2):容器管理システムの処理について、(1),(2)に答えよ
本文中の下線①で用いる、製品マスタに登録されている情報は何か。表1中の属性名を用いて全て答えよ。
模範解答
容器種コード,容器一個当たり標準充填量
解説
模範解答の核心となるキーワード・論点
- 製造計画に基づく「どの容器が何個必要かの計算」
- 製品マスタの情報利用
- 表1の属性のうち「容器種コード」「容器一個当たり標準充填量」
なぜこの解答になるかの説明
本文の〔容器保管処理〕において次の記述があります。
・容器の出庫は、製造計画で決定した化学品の当日分の生産総量と製品マスタに登録されている情報を用いて、①どの容器が何個必要かを計算し、出庫指示を出す。
つまり、どの容器を何個出荷するか(必要数の計算)をするために、「製造計画で決定した化学品の当日分の生産総量」と「製品マスタに登録されている情報」を組み合わせています。
ここで「製品マスタ」に記載されている情報のうち、
のうち、「どの容器が必要か」評価に必要なものは、
- 容器種コード:どの容器種を使うかを示す情報
- 容器一個当たり標準充填量:1個あたりの充填量(生産総量を充填量で割ることで必要数が算出できる)
だからです。
製造計画の「当日分の生産総量」を「容器一個当たり標準充填量」で割ることで、その日に必要な容器数を割り出し、「容器種コード」で種類を特定して出庫指示につなげることができます。
一方、
- 製品コードや化学品名は、「化学品の種類を特定」する役割はあるが、容器数の算出には直接使わない
- 製品使用可能日数は使用期限管理のための属性であり、今回の計算とは別の用途
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
製品コードや化学品名を含めてしまう誤り
製品の種類を特定するのは大切ですが、計算で使うのは「容器種コード」と「標準充填量」である点を混同しやすいです。 -
「製品使用可能日数」を選ぶ誤り
これは使用期限警告処理で使う属性で、「どれだけの容器が必要か計算する」とは直接関係しません。 -
問題文中の「製造計画で決定した化学品の当日分の生産総量と製品マスタに登録されている情報を用いて」という文言に注目し、「容器数の算出」につながる属性を見極めることが重要です。
試験対策におけるポイント
-
製品マスタの属性は用途に応じて活用されることを理解する
生産数量計算では「容器種コード」と「容器一個当たり標準充填量」を使う旨を押さえましょう。 -
問題文のキーになるフレーズを正確に読み取る訓練をする
「どの容器が何個必要かの計算」に直結する情報は何かを、論理的に考えて選ぶことが大切です。 -
類似の設問で属性名を正確に答える必要があるため、表に示された用語は正確に記憶する
以上から、下線①の解答は、
容器種コード,容器一個当たり標準充填量
となります。
設問2(1):〔容器管理システムの処理概要〕について、(1),(2)に答えよ。
容器回収処理において、HTによる個別読込み時に、数が一致するケースと不一致になるケースがある。それらはどのようなときに起きるか、それぞれ30字以内で述べよ
模範解答
一致するケース:RFタグの一括読込みで読込み漏れが発生したとき、
不一致になるケース:容器返却書の容器返却数と実際の容器の数が違っているとき
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
-
一致するケース:
「RFタグの一括読込みで読込み漏れが発生したとき」 -
不一致になるケース:
「容器返却書の容器返却数と実際の容器の数が違っているとき」
この2つのケースは、容器回収処理の「個別読込み」に移行する理由や状況に直結しています。
なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文の「容器回収処理」部分には、以下の記述があります。
・容器回収場所のゲートアンテナで、回収した容器のRFタグを一括して読み込む。
・容器返却書に記載された容器返却数をシステムに入力して、RFタグの読込み件数とのチェックをシステムで行い、数が一致したら、それぞれの容器について、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“回収”にする。
・数が不一致の場合は、まず、容器返却数のシステムへの入力が正しいことを確認して、その後、HTによる個別の読込みに切り替える。個別読込み時に、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“回収”にする。個別読込み件数と容器返却書に記載された容器返却数が不一致の場合は、エラー処理を行う。
この流れを読み解くと、まず、ゲートアンテナを使って一括読込みを行ないますが、
-
**一括読込みでは、数%程度の読込み漏れが発生することが事前検証で確認されている(装置の特性)**ため、読込み件数が容器返却書の返却数未満となることがあります。
このときは、容器返却書の数とRFタグの読込み件数が「不一致」になり、個別にHTで読み直すことになります。 -
HTによる個別読み込みは、一つずつ読み取るため漏れが少なく信頼性が高いです。ただしそのとき、
-
HTで読み取った個数が容器返却書の数と一致すれば、当該回収数は間違いなく揃っていると判断して処理を正常終了します。
→これが「一致するケース」で、「RFタグの一括読込みで読込み漏れが発生したとき」に該当します。 -
HTで読み取った個数も容器返却書の返却数と不一致であれば、実際に回収されている数量が誤っている、あるいは記録ミスと判断し、エラー処理を行うことになります。
→これが「不一致になるケース」で、「容器返却書の容器返却数と実際の容器の数が違っているとき」に該当します。
-
つまり、
- 一括読込みの仕組みの特性(漏れ)によって誤差が生じ、個別読込みで本当の数に合わせるための運用
- 実際の容器数量と記録(容器返却書)が食い違う場合はエラー
で区別されるわけです。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
「一括読込みは必ず正確に読める」ではないことに注意
一括読込みの利便性や高速性に惑わされ、漏れが起きないと思い込む受験者がいること。問題文で「数%程度の漏れが発生する」ことが明記されているため、これを理解することが大切です。 -
「個別読込みは間違いなし」という誤認
個別読込みは基本的には正確ですが、容器返却書の数と実際の容器が物理的に違っている場合は不一致になる。読取装置の問題だけに起因しない、実際の数の違いもあることを把握する必要があります。 -
「数が合わなければ即エラー」と誤解しやすい
一括読み取り時の数のズレであっても、HT個別読込みで修正可能な場合はエラー処理にならず正常処理される点を理解しましょう。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- RFタグの一括読込みには一定の読取り漏れが生じることがある(数%の漏れ)という事実。
- 読込み漏れ等の問題が発生した場合は、ハンディタイプRFタグリーダライタ(HT)による個別読み込みに切り替えて精度向上を図る運用が一般的である。
- 容器返却書との数量チェックは、システムの出荷・回収実務上の重要な整合確認であり、双方の数量が合わなければエラー処理を行うことになる。
- システムの物理的制約(漏れ)と実際の取扱ミス(数量違い)を区別し、それぞれの対策を理解することが業務システム構築の要となる。
これらを踏まえ、問題文の記述を正確に読み取り、RFタグ技術の特性や現場の運用ルールに基づいて解答することが合格への近道です。
設問2(2):〔容器管理システムの処理概要〕について、(1),(2)に答えよ。
本文中の下線②のある処理とは何か。30字以内で述べよ。
模範解答
書込みロックを外して,容器情報領域をクリアする処理
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 書込みロックを外す
- 容器情報領域をクリアする
- RFタグの管理と再利用準備のための処理
- 廃棄した容器のRFタグを再利用可能にする手順
2. なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文の「〔容器洗浄・検査処理〕」の記述にある通り、検査に合格しなかった容器は「廃棄」されます。
・廃棄した容器に貼付してあったRFタグは、容器からはがして、再利用できるように、HTを用いて、②ある処理を行う。
ここで重要なのは、RFタグ自体は再利用可能であることです。しかし、RFタグに書き込まれている「容器情報領域」は、容器ごとに固有の情報(容器種コード、容器番号)が書き込まれています。この情報は、購入時に書き込みロック(書込み口ック)がかけられており、通常は変更できません。
したがって、廃棄した容器のRFタグを再利用可能にするためには、
- 書込みロックを外して、
- 容器情報領域の内容をクリア(消去)する必要があります。
この処理によって、RFタグは新たな容器情報を書き込む準備ができる状態になり、新規購入時と同様に容器管理が行えます。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ注意点
-
「製品情報領域」をクリアする処理と混同しないこと
製品情報領域は書き換え可能であり、洗浄・検査でクリアされますが、「廃棄容器のRFタグの再利用のため」に必要なのは「容器情報領域」の処理です。 -
「書込みロック」を外すことの重要性
容器情報領域は書込みロック付きで、通常は書き換えできません。そのため、単にクリアするだけではなく、まずロックを外す操作が不可欠です。 -
RFタグの再利用について混同しないこと
容器とRFタグは別々に管理されます。「廃棄」とは容器自体の廃棄であり、RFタグは再利用のためにクリアされる、と区別しましょう。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
この処理の理解は、RFIDを用いたトレーサビリティ管理の基本理解にもつながります。
「書込みロックの解除」 + 「情報クリア」は、RFIDタグの再利用における重要なメンテナンス作業と覚えておきましょう。
「書込みロックの解除」 + 「情報クリア」は、RFIDタグの再利用における重要なメンテナンス作業と覚えておきましょう。
設問3(1):〔販売管理システムの改修〕について、(1)~(3)に答えよ。
本文中の下線③のデータ内容を、表1中の属性名を用いて全て答えよ。
模範解答
受注伝票番号,製品コード
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
- 【下線③の場所】:積込・出荷処理における「HTで、積込対象となる製品のRFタグを読み込み、積込指示データとRFタグ情報をチェックする部分」に関連。
- 【データの具体的内容】:販売管理システムの改修説明上、チェック対象の「データ内容」が何であるか。
- 【表1の属性名使用】:「受注伝票番号」「製品コード」が積込・出荷処理に一致するキー属性として使用されている。
2. なぜその解答になるのか(論理的な説明)
【問題文】の該当箇所の記述を順に確認します。
-
「積込・出荷処理」では、
- 「HTで、積込対象となる製品のRFタグを読み込み、積込指示データとRFタグ情報をチェックする」
- チェックの具体的な内容は明記されていませんが、直前でピッキング処理の説明に注目です。
-
「ピッキング処理」では、
- 「ピッキング対象となる容器のRFタグを読み込む」
- 「ピッキング指示データとRFタグ情報をチェックし、製品コードが合っていればRFタグへ受注伝票番号を書き込み、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“ピッキング済”にする」
-
つまり、積込・出荷処理でもチェックされるのは、「受注伝票番号」と「製品コード」が主要な照合項目であることが推測されます。
-
また、表1の「容器状態管理ファイル」の構成を見ます。
-
ここで、積込・出荷の対象はどの受注に対応した製品か(受注伝票番号)、および該当製品の品目(製品コード)のチェックが重要です。
-
特に「受注伝票番号」は、注文ごとの管理に不可欠なので積込時の一致確認に用いられます。
-
よって、この下線③の部分は「受注伝票番号」と「製品コード」であると判断できます。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
誤りやすい例1:ロット番号や充填日を選んでしまう。
これらもRFタグの製品情報領域には記録されていますが、積込時の指示データと合致させるために必須なのは「受注伝票番号」と「製品コード」です。ロット番号や充填日はトレーサビリティ用で管理重要ですが、積込み検品のキー項目としては使いません。 -
誤りやすい例2:顧客コードや容器番号などを含める。
顧客コードは販売管理には重要ですが、積込・出荷の検品としては個々の製品単位のトラッキング(受注伝票番号)と品目単位(製品コード)のチェックに絞られます。容器番号は一意管理されますが、注文単位のチェックには使いません。 -
誤りやすい例3:積込リストや出荷伝票の情報と混同する
出荷伝票などの帳票情報は管理に用いますが、本問の記述において「データ内容」はRFタグの中のものを指します。ここを混同しないこと。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
-
容器・製品管理にRFタグを用いる場合、
製品コード・受注伝票番号は、出荷検品や積込管理での必須一致項目と覚える。
→ これらは注文の内容の正しさを確認するためのキー情報。 -
ロット番号や充填日は品質管理とトレーサビリティに重要だが、
出荷の数合わせや注文単位の管理には主に「受注伝票番号」で行う。 -
RFIDタグ管理では、書込み済みのデータの取扱いに注意が必要。
→ 書込みロックされた内容の読み取りや変更が制限されている点も押さえておく。 -
問題文中で「○○処理で何をするか」といった設問の場合は、
それぞれの業務の目的(例えば、出荷検品は「注文単位の正確な出荷確認」)を意識して考えると、本質的な回答にたどり着きやすい。
まとめ
- 積込・出荷検品では「受注伝票番号」「製品コード」をRFタグ情報と積込指示データで突き合わせ、正しい出荷を保証する。
- これは容器単位で製品が正しく対応しているかどうかを見極める重要なチェックポイントである。
- 出題文やシステム概要の記述をくまなく読み、「何のために行う処理なのか」から判断すると迷いにくい。
設問3(2):〔販売管理システムの改修〕について、(1)~(3)に答えよ。
積込・出荷処理について、(a)に入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
a:出荷実績を計上する
解説
コアキーワード・論点整理
- 「積込・出荷処理」後に行う処理としての「(a) 出荷実績を計上する」
- 販売管理システムの改修点の一つである出荷実績の計上
- 「HTの検品を完了した実績データを取り込んで」→ 何を行うべきか
- 出荷作業の最終目的が「正確な出荷実績の管理」であること
解答の根拠と論理的説明
問題文の【販売管理システムの改修】にて、積込・出荷処理の記述部分では次のように述べられています。
「HTの検品を完了した実績データを取り込んで、(a)。」
また積込・出荷処理の前半には、
「積込リストへバーコードを印字し、HTで積込指示データを受ける。
HTで、積込対象となる製品のRFタグを読み込み、積込指示データとRFタグ情報をチェックする。データ内容及び数が合っていれば、検品を完了して出荷する。この際、容器状態管理ファイルの容器状態区分を“出荷”にする。合っていなければエラー処理を行う。」
つまり、
- HTで積込対象品のRFタグをスキャンして検品をする。
- 検品が完了すれば、容器状態管理ファイルを「出荷」に更新する。
- 検品完了データを販売管理システムに取り込むことにより、
- 「出荷実績を計上する」ことが必要である。
これは、「実際に製品が顧客へ出荷された履歴をシステム上で記録し、販売管理の正確なデータとする」ためです。
また問題文の〔現行業務の概要〕(3)積込・出荷では、
「出荷作業者は、出荷実績を計上するために、出荷場所の端末から、出荷した製品の情報を販売管理システムに入力する。」
とあり、今回のシステム改修によって「HTで読み取ったデータを取り込んで」この出荷実績の計上を自動化・効率化させることが求められていることがわかります。
従って、(a)に入るべき内容は「出荷実績を計上する」です。
受験者が誤りやすいポイント・注意点
- 「出荷実績を計上する」以外の表現として、「販売管理システムへデータ転送」や「在庫更新」などを想起するかもしれませんが、設問は販売管理システムの改修内容への記述なので一番重要かつ広義の目的である「出荷実績の計上」が適切です。
- 「容器状態管理ファイルの更新」は容器管理システム側で行い、「出荷実績の計上」は販売管理システム側の処理であるため混同しないように注意しましょう。
- HTの検品結果を取り込むだけで「完了」ではなく、そのデータをもとに正確に「出荷実績を計上」してはじめて業務が完結します。
試験対策ポイント
- 出荷作業の流れでの各システム(容器管理システム・販売管理システム)の役割を理解する。
- HT(ハンディターミナル)の役割は、RFタグの読み取りとバーコード読み取りにより現場作業のデジタル化・効率化を図ること。これを基に正確な実績管理が行われる。
- 「実績計上」「状態管理」などの用語は、それぞれのシステム機能と対応付けて覚える。
- 容器管理システムは容器単位での状態追跡が主な役割であり、出荷の最終実績は販売管理システムで管理する点を押さえる。
まとめ
この理解があれば、出荷実績の計上がシステム連携における肝であることを押さえられます。
設問3(3):〔販売管理システムの改修〕について、(1)~(3)に答えよ。
使用期限告処理について、(b),(c)に入れる適切な字句を答えよ。ここで、(b)は本文中の容器状態区分の値を答えよ。また,(c)は表1中の属性名を用いて述べよ。
模範解答
b:出荷
c:充填日から製品使用可能日数後の日付
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
-
(b) : 「出荷」
→ 容器状態区分の値の一つ。顧客に渡った製品の状態を示す。 -
(c) : 「充填日から製品使用可能日数後の日付」
→ 使用期限を計算するための基準日。
→ 具体的には、製品の製造日時(充填日)と製品ごとに設定された使用可能期間(製品使用可能日数)から算出される。 -
使用期限警告処理の条件
→ 容器状態管理ファイルの中で、(b)状態にある製品のうち、(c)が本日の日付の1週間前(本日+7日より前)であるものを検索し、警告を出す。
2. なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えた解説)
問題文中の「〔販売管理システムの改修〕(4)使用期限警告処理」の記述をみると、次の点が重要です。
「顧客の下にある、使用期限が過ぎそうな製品及び使用期限が過ぎた製品を、容器管理システムの容器状態検索処理を利用して次の条件で検索し、顧客に警告を発することができるようにする。
条件:容器状態管理ファイルの容器状態区分の値が”(b)”で、(c) が本日日付の1週間後より前の日付である容器」
(b)について
ここで「顧客の下にある製品」とは、すでに出荷されて顧客側にある製品を指します。
製品の状態は容器状態区分で管理されているため、「顧客に渡っている状態を示す容器状態区分」を設定する必要があります。
製品の状態は容器状態区分で管理されているため、「顧客に渡っている状態を示す容器状態区分」を設定する必要があります。
設問の模範解答は(b)=「出荷」としていますが、これが妥当な理由は以下の通りです。
- 現行業務概要の(3)積込・出荷で、製品が顧客へ納品された状態を「出荷」と呼んでいる。
- 容器状態管理ファイルの状態区分に「出荷」があり、その状態が「顧客の手元にある」ことを示すため、使用期限警告の対象として適切。
したがって、(b)は「出荷」となります。
(c)について
使用期限を警告するには、単に「充填日」や「製品コード」ではなく、「製品の使用可能期限」を計算できる情報が必要です。
問題文にある製品マスタの情報から確認します。
ここで「製品使用可能日数」は「製品が使用できる期間(日数)」を示しており、
充填日と足し合わせることで「使用期限日(=充填日+使用可能日数)」が計算可能となります。
充填日と足し合わせることで「使用期限日(=充填日+使用可能日数)」が計算可能となります。
したがって、日付条件として「充填日から製品使用可能日数を加えた日付」が、使用期限の目安となるため、条件(c)にはこれを示す「充填日から製品使用可能日数後の日付」が入ります。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの解説
-
「容器状態区分(b)」で誤りやすい点
「保管中」や「出庫済み」といった状態も考えられるが、顧客に渡った実際の状態でなければ意味がない。
→ 「出荷」 の状態こそが顧客に製品がある状態として正しい。 -
「使用期限(c)」での誤解
「充填日」だけで判断しやすいが、製品ごとに異なる「使用可能日数」を考慮しなければ正確な判定ができない。
→ 「充填日」と「製品使用可能日数」の両方を考慮する必要がある。 -
「顧客コード」や「受注伝票番号」が条件になっていると誤回答することがあるが、使用期限判定にはこれらは直接使わない。
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使用期限警告は「顧客の下にある製品」が対象なので、倉庫中や回収済みの容器は含まれない。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント・知識
- 容器や製品のライフサイクル(製造→保管→出荷→顧客→回収→再利用)を把握し、どの状態が何を意味するか理解する。
- 容器状態区分は製品のトレーサビリティ管理上、非常に重要であり、具体的な状態名称(例:未使用、充填済、出荷、回収、合格、廃棄)を正確に覚えること。
- 製品の使用期限管理には、「製造(充填)日」と「使用可能日数」の二つの情報が必須で、それらの計算方法も理解する。
- RFIDやRFタグシステムでは、どの情報が固定で書き換え不可か、どの領域が更新可能かを把握することが必要。
- システム設計では、状態管理ファイルの検索条件がどのように設定されるか(状態区分、日時条件)を論理的に読み解く力を養う。
以上の観点を理解すれば、小問の(b)と(c)に適した正答「出荷」「充填日から製品使用可能日数後の日付」が納得できます。