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システムアーキテクト試験 2021年 午後1 問03
融資りん議ワークフローシステムの構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
X銀行は、メインフレーム上で顧客情報、預金情報及び融資情報を管理するシステム(以下、基幹システムという)を利用してきた。
このたび、紙の帳票を回付していた融資りん議をペーパレス化するための融資りん議ワークフローシステム(以下、WFシステムという)を、基幹システムとは別に新規に構築することにした。
〔現状の融資りん議の業務〕
X銀行での融資りん議の業務の流れは次のとおりである。
(1) 融資申込受付業務:顧客は、営業店の窓口に融資案件(以下、案件という)の申込書を提出する。申込書を受け付けた営業店(以下、担当営業店という)の担当者(以下、案件担当者という)は、基幹システムで案件番号を発番し、基幹システムの顧客番号とともに申込書に記載する。取引実績のない新規顧客の場合には、基幹システムで顧客番号を発番してから記載する。
(2) りん議書作成業務:案件担当者は、案件番号を発番した日を作成基準日としてりん議書を作成する。りん議書には、融資対象の顧客の担保不動産の評価データ(以下、担保明細という)を記載した不動産担保評価帳票を、不動産担保評価システム(以下、担保評価システムという)から出力して必ず添付する。資金使途及び返済財源を確認し、基幹システムにある信用格付、財務分析結果及び過去のりん議結果を調査し、必要な検討をした上で、案件情報をりん議書に記載する。りん議書には基幹システムと担保評価システム以外の情報も必要であり、りん議書を作成するために複数のシステムを操作する。
(3) りん議書回付業務:案件担当者は、業務規程に従い回付経路を記載した回付書を添付して、りん議書を承認者へ回付する。承認者はりん議書に対して意見を付し、承認又は差戻しの判断をする。承認されたりん議書は決裁者へ回付される。決裁者は案件担当者、承認者の意見を踏まえ、融資の決裁、却下、又は差戻しの判断をする。決裁者が決裁又は却下の判断をすると、りん議が完了する。承認者及び決裁者は、可能な限り最新の情報を基に判断をする。りん議書の修正が必要な場合、承認者又は決裁者は修正せずに案件担当者に差し戻した後、案件担当者がりん議書を修正して再度回付する。申込書を受け付けてからりん議書の回付の開始までの標準的な所要日数及び回付されてから承認及び決裁の判断までの標準的な所要日数を踏まえ、回付の開始、承認及び決裁の期限(以下、目標期日という)を定めている。
担保明細は必要に応じて評価替えしている。承認者及び決裁者は、判断の際に融資対象の顧客の担保明細が更新されていないか、担保評価システムの評価日を確認するりん議書には最新の不動産担保評価帳票を添付する必要があるので、担保明細が更新されている場合は案件担当者に差し戻す。
融資希望金額が担当営業店の決裁可能金額を超える案件の場合、回付経路には担当営業店に加え本部が含まれる。担当営業店内での承認の後に本部に回付され、本部で承認決裁される。
〔現状の問題点〕
情報システム部のY課長は、WFシステム構築に当たり融資部にヒアリングをし、次の問題点を抽出した。
・回付経路に本部が含まれる場合、担当営業店で作成したりん議書一式を本部に送付し、本部での決裁完了後に担当営業店に決裁書類一式を返送する流れとなっている。担当営業店と本部ではお互いの処理状況が分からず、本部ではどの顧客のどの案件をいつまでに決裁する必要があるかが本部に回付されるまで分からないので、担当営業店内での回付状況を踏まえて承認決裁の体制を整えておくことができていない。
・目標期日の到来に気付かず期限を超過することがある。
・りん議書が案件ごとの管理となっているので、同一顧客の別案件の調査で確認した延滞発生などによる顧客の信用格付の変化に、案件担当者が即座に気付けない。
〔WFシステムの概要〕
Y課長はヒアリング結果を基にして、WFシステムを次のように設計した。
りん議書作成に必要な主なデータは複数の既存システムにある。これらのデータは、引き続き既存システムで管理する。①WFシステムは、既存システムの機能をサービスとして利用し、りん議書作成に必要なデータを一括で取得できる方式にした。
WFシステムの主な機能は次のとおりである。
(1) 融資申込の受付機能
顧客から受領した申込書を案件担当者がWFシステムに取り込むと、WFシステムは基幹システムから案件番号と顧客番号を取得し、案件データを作成して受付を完了する。この時点で案件ステータスは“受付”になる。WFシステムは案件の進行状況をりん議の完了まで管理する。
(2) 議書の作成機能
案件一覧画面で案件担当者が案件番号を選択すると、りん議書入力画面に遷移し、案件ステータスは“作成中”になる。りん議書入力画面の起動時に、WFシステムは必要なデータを複数の既存システムから一括で取得し、WFシステムに保存した後、りん議書入力画面に案件データとともに表示する。案件担当者は、必要に応じて不足している情報を入力し、りん議書をWFシステムに保存する。
(3) 議書の回付機能
案件担当者は、りん議書に回付経路を設定する。回付経路にはりん議書を処理する担当者(以下、回付先担当者という)の順番を定義する。回付経路の最初の回付先担当者には、案件担当者が自動的に設定される。最後の回付先担当者が決裁者、途中の回付先担当者は承認者になる。②ある条件を満たすりん議書の回付経路に本部の回付先担当者が含まれていない場合、WFシステムは案件担当者に修正を要求する。
りん議書に対し、処理が求められている案件担当者又は回付先担当者を処理者という。
案件担当者が回付の開始の操作をすると案件ステータスは“回付中”となり、りん議書を修正できなくなる。回付経路に本部の回付先担当者が含まれている場合、WFシステムは、顧客情報と融資期日を本部の回付先担当者に電子メールで通知する。
WFシステムは、回付経路に沿ってりん議書を順次回付し、回付したことを次の処理者に電子メールで通知する。
承認者は、りん議書審査画面でWFシステムに保存されたりん議書を閲覧し、承認又は差戻しの操作をする。承認者が承認の操作をするとWFシステムはりん議書を次の回付先担当者に回付する。差戻しの操作をするとWFシステムは案件担当者にりん議書を差し戻し、案件ステータスは“作成中”に戻り、案件担当者がりん議書を修正することができるようになる。
決裁者は、りん議書審査画面でWFシステムに保存されたりん議書を閲覧し、決裁、却下又は差戻しの操作をする。決裁者が決裁の操作をすると案件ステータスは“決裁”になる。却下の操作をすると案件ステータスは“謝絶”になる。決裁者が差戻しの操作をした場合、WFシステムは承認者が差戻しの操作をした時と同じ処理をする。
りん議書審査画面起動時にはWFシステムが担保評価システムに担保明細の最新情報を問い合わせる。担保評価システムの情報が、③ある条件に該当する場合、WFシステムは承認者が差戻しの操作をした時と同じ処理をする。
(4) アラーム通知機能
WFシステムは、顧客の信用格付の更新があったことや目標期日までの残り日数が3営業日以下になっていることを、処理者に通知する。
顧客の信用格付の更新があったことは、りん議書入力画面及びりん議書審査画面起動時に画面上で通知する。そのために、アラーム通知機能は、(a)にある最新の信用格付を問い合わせ、WFシステムに保存した案件ファイルの信用格付と比較する。
目標期日までの残り日数が3営業日以下になっていることは、りん議書入力画面及びりん議書審査画面起動時に画面上で通知するだけでなく、日次で処理者に電子メールで通知する。
WFシステムの主要なファイルを表1に示す。

〔追加要望への対応〕 Y課長が、WFシステムの設計内容のレビューを融資部に依頼したところ、大規模な顧客では複数の案件のりん議が並行することがあり、その場合はりん議の優先順位を協議するので、同一顧客で進行中の他の案件の内容を参照しやすくしてほしいという追加要望が提示された。 Y課長は追加要望を実現するために、④案件ファイルの当該案件番号を持つレコード以外の該当レコードを抽出する条件を検討した。その上で、該当レコードの案件番号をりん議書入力画面とりん議書審査画面に追加し、案件番号を選択することで必要な案件情報を参照できるようにした。
設問1
本文中の下線①によって,ある業務の一部の作業が不要になる。不用になる作業を30字以内で述べよ。
模範解答
りん議書を作成するために複数のシステムを操作する作業
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 「りん議書作成に必要な主なデータは複数の既存システムにある」
- 「WFシステムは、既存システムの機能をサービスとして利用し、一括でデータ取得可能」
- 結果として「複数のシステムを操作してりん議書を作成する作業が不要になる」
- 不要になる作業の内容は「りん議書を作成するために複数のシステムを操作する作業」
解答になる理由の論理的説明
問題文の①部分には以下の記述があります。
「りん議書作成に必要な主なデータは複数の既存システムにある。これらのデータは、引き続き既存システムで管理する。①WFシステムは,既存システムの機能をサービスとして利用し,りん議書作成に必要なデータを一括で取得できる方式にした。」
これに対し、【現状の融資りん議の業務】(2)りん議書作成業務に、
「りん議書を作成するために複数のシステムを操作する」
と明確に記載されています。
つまり、従来は担当者が必要な情報を複数の別システムから個別に取得していたため、手間がかかっていました。しかし新システム(WFシステム)の設計で、既存システムの機能をサービス化(API連携など)し、必要なデータを一括取得できる方式に統合されたため、この「複数システムを操作する」手間が削減されるということです。
以上から、不要になる作業は「りん議書を作成するために複数のシステムを操作する作業」となります。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ解説
-
「回付の操作など別の業務手順の作業が不要になる」と誤解する
問題文の①は「りん議書作成に必要なデータ取得」に関わる部分であり、回付操作や承認判断などの業務そのものの否定ではありません。これらは別の機能として設計されています。 -
「基幹システム上での作業が不要になる」と誤った理解
基幹システム自体で案件番号や顧客番号が発番される作業は引き続きあります。WFシステムでも基幹システムから番号を取得し作業を進めるため、基幹の操作が丸ごと不要になるわけではありません。 -
「データ入力全体が不要」と勘違いする
データ入力や確認の作業は残ります。一括取得は「複数システムを個別に操作して取得する」手間をなくすことに特化している点がポイントです。
試験対策としてのポイント・知識
-
「サービス指向アーキテクチャ(SOA)」や「API連携」により複数システムを横断したデータ取得が可能になると、利用者の操作負荷が軽減し、業務効率が向上することを理解する。
-
複雑な業務プロセスをシステムでどう効率化しているか、設計思想と業務へのインパクトを結びつけてイメージできるようにする。
-
出題される「業務上不要になる作業」を問う問題では、文中の「新システムによって可能になること」と「現状の作業」の違いに注目すること。
以上の理解をもとに具体的な出題文と答えをあてはめて、根拠ある解答ができるようにしましょう。
設問2(1):〔WFシステムの概要〕について(1)に答えよ。
本文中の下線②の条件を表1中のファイル名と属性を用いて40字以内で述べよ
模範解答
案件ファイルの融資希望金額が店ファイルの決裁可能金額を超えている場合
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
- 「案件ファイルの融資希望金額」
- 「店ファイルの決裁可能金額」
- 「超えている場合」
- WFシステムの回付経路に本部の回付先担当者が含まれていない場合に修正を要求する条件
これらのキーワードが問題文の下線②に関わる主要な論点です。
2. 根拠となる問題文の記述からの論理的説明
問題文の以下の記述がポイントです。
---(WFシステムの概要の一部)
(3)議書の回付機能
案件担当者は,りん議書に回付経路を設定する。回付経路にはりん議書を処理する担当者(以下,回付先担当者という)の順番を定義する。回付経路の最初の回付先担当者には、案件担当者が自動的に設定される。最後の回付先担当者が決裁者,途中の回付先担当者は承認者になる。
②ある条件を満たすりん議書の回付経路に本部の回付先担当者が含まれていない場合,WFシステムは案件担当者に修正を要求する。また、現状の融資りん議の業務の中では、
「融資希望金額が担当営業店の決裁可能金額を超える案件の場合,回付経路には担当営業店に加え本部が含まれる」
と明示されています。
このため、「ある条件」とは融資希望金額が担当営業店の決裁可能金額を超えている場合であると論理的に推測できます。
ここで重要なのは、対象ファイルと属性が次の通り整理できることです。
このうち、融資希望金額が案件ファイルの
職業希望金額
(模範解答の「融資希望金額」と同義)であり、店ファイルの決裁可能金額
と比較することになります。3. 受験者が誤りやすいポイントと注意点
- 類似語の誤用
「融資希望額」なのか、「融資期日」「融資期間」なのかを混同しやすい点。問題文での使用が「融資希望金額」(案件ファイル中の「職業希望金額」)であることを意識する必要があります。 - 担当部署の混同
「本部の回付先担当者が含まれていない場合」の意味を誤解し、単に「回付経路に営業店が含まれていない場合」としてしまう誤り。 - ファイルと属性の組み合わせミス
問題文で指定されたファイル・属性を使うことが要求されており、「顧客番号」や「信用格付」など無関係な属性と混同しないようにする。 - 条件理解の抜け
「融資希望金額が決裁可能金額を超える場合に本部が回付経路に含まれる」ルールが明確に示されているため、この条件を忘れてしまうと誤答に繋がる。
4. 覚えておくべきポイント・知識
- 回付経路の設計ルール
大きな案件では複数部署が関与し、担当営業店の決裁可能金額を超えると本部が追加される。システムはこのルールに沿って回付経路を自動チェックする。 - ファイル設計理解力
問題文に示された属性を基に条件を正しく組み立てられるかが求められる。属性名の正確な理解は必須。 - 条件文の表現方法
40字以内という制約があるため、「○○が△△を超えている場合」など簡潔な表現に慣れておく必要がある。 - WFシステムで管理される業務ルールと連携の理解
業務ルール(決裁可能金額)とシステム動作(回付経路の設定ルール)を結びつけて理解できるかが重要。
以上を踏まえた模範解答は、
案件ファイルの融資希望金額が店ファイルの決裁可能金額を超えている場合
となります。
設問2(2):〔WFシステムの概要〕について(2)に答えよ。
本文中の下線③の条件を表1中のファイル名と属性を用いて40字以内で述べよ。
模範解答
担保評価ファイルの評価日より担保評価システムにある評価日が新しい場合
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 「担保評価ファイルの評価日」と「担保評価システムにある評価日」の比較
- 「担保評価システムの評価日が新しい場合」に該当
- 条件発生時にWFシステムが「承認者が差戻しの操作をした時と同じ処理」を行う点
- 担保明細の最新情報のチェックに関する条件
2. 解答になる理由の論理的説明
問題文の該当部分を見ると、WFシステムはりん議書審査画面起動時に担保評価システムの最新の担保明細情報(特に評価日)を問い合わせています。
「りん議書審査画面起動時にはWFシステムが担保評価システムに担保明細の最新情報を問い合わせる。担保評価システムの情報が、③ある条件に該当する場合、WFシステムは承認者が差戻しの操作をした時と同じ処理をする。」
この③の条件とは、「担保評価ファイルの評価日」より「担保評価システムにある評価日」の方が新しい場合に該当すると解釈できます。つまり、既にWFシステムに保存されている担保明細情報よりも担保評価システムの情報が更新されている(新しい)場合です。
これにより、
- 担保明細の更新があったことが承認者や決裁者に確実に伝わるようにし、
- 最新の不動産担保評価帳票を添付させるようにするため、
- りん議書を一旦「差戻し」し、案件担当者に修正を促す。
という運用ルールに基づき、自動的に差戻し処理が行われます。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢の理由
-
「担保評価額」や「担保物件」などの評価内容に注目してしまう
→ 重要なのは最新性を判断するための「評価日」であり、評価額自体ではない。 -
「担保明細番号」と「案件番号」による単純な一致条件と勘違いすること
→ 比較しているのは評価日の新旧関係であり、単なるキーの一致ではない。 -
「WFシステムに保存されている担保評価ファイルの評価日」が新しい場合と反対に誤認すること
→ 「新しい」情報に差戻しを促すため、「担保評価システムの評価日が新しい」ことが条件。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
-
情報更新のチェックは「評価日」などのタイムスタンプ的な属性で判断する。
これは、最新の情報に基づいて意思決定をするために重要。 -
マスタやファイルの属性(表1参照)を正確に理解して、条件記述で使い分ける。
-
ワークフローにおいて、更新情報の不一致があれば自動差戻しを行い、最新情報を反映させる仕組みはよく出題されるテーマ。
-
本問では、「WFシステムの担保評価ファイルの評価日」と「担保評価システムの評価日」比較によってワークフローの次の処理を判断する点を覚えておく。
まとめ
このように、りん議書の承認プロセスにおいて、最新の担保評価情報が反映されているかを判断し、不整合があれば差戻し処理を促すための条件を問う問題です。試験でも似たような更新検知や差戻しの条件設定がよく出るので、しっかり理解しておきましょう。
設問2(3):〔WFシステムの概要〕について(2)に答えよ。
アラーム通知機能によって解決される現状の問題点は二つある。一つは,同一顧客の別案件の調査で確認した延滞発生などによる顧客の信用格付の変化に、案件担当者が即座に気付けないことである。もう一つの問題点を25字以内で述べよ。
模範解答
目標期日の到来に気付かず期限を超過すること
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 問題点は「アラーム通知機能が解決するもの」であること
- 一つ目は「同一顧客の別案件における信用格付の変化に即座に気付けない問題」
- 二つ目は「目標期日の到来に気付かず期限を超過する問題」
- 答えは「目標期日の到来に気付かず期限を超過すること」(25字以内)
2. なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文の〔現状の問題点〕に以下の記述があります。
・目標期日の到来に気付かず期限を超過することがある。
これは、りん議書の回付や承認・決裁における期限管理の未整備が原因で、業務プロセスに遅延が発生している点を示しています。
その後のWFシステム設計概要には、
(4)アラーム通知機能
WFシステムは、…目標期日までの残り日数が3営業日以下になっていることを、処理者に通知する。
…日次で処理者に電子メールで通知する。
この仕組みで「目標期日の到来に気付かない問題」を解決できることがわかります。
以上より、アラーム通知機能が解決する2つの問題点は、
- 「同一顧客の別案件の信用格付変化に即座に気付けない問題」
- 「目標期日の到来に気付かず期限を超過する問題」
であり、設問の問われている二つ目の問題点としては「目標期日の到来に気付かず期限を超過すること」が正解となります。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
誤りやすいポイント
「アラーム通知機能=期限管理の通知」と理解せず、単に信用格付の変化の通知だけだと考えてしまうことです。問題文には信用格付の通知以外に目標期日の通知も明記されています。 -
ひっかけになりやすい選択肢例
- 本部の回付状況が把握できるようになる
- 承認者や決裁者の情報修正や遅延による差戻し
などは「アラーム通知機能」の説明にはないため、誤答となります。
-
混同しやすい点
「複数の案件がある場合の参照が容易になる」「紙のやり取りが電子化される」などのシステムの他の利点はアラーム通知機能の効果ではありません。
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
アラーム通知機能の役割
業務処理の進行状況の遅延防止や重要なイベント(期限・重要情報の更新など)を関係者に早期に知らせる機能であること。 -
ワークフローシステムにおける期限管理
期限を過ぎないよう自動通知を設定し、業務の滞りや承認遅延を防止することは重要な要件である。 -
問題文のキーワードを正確に把握する重要性
問題文中の「目標期日」「アラーム通知」などの用語と設計概要の機能が対応する部分を確実に結び付けること。 -
似た問題が出る可能性
同様に、ワークフローの遅延防止策や通知機能に関する問題では「期限超過を防止する仕組み」が問われることが多い。
以上を踏まえ、問題文の該当部分の内容を整理しながら、的確に解答できるようにしましょう。
設問2(4):〔WFシステムの概要〕について(2)に答えよ。
(a)に入れる字句を10字以内で答えよ。
模範解答
a:基幹システム
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- キーワード:「基幹システム」
- 論点:
- WFシステムが最新の信用格付を取得するために問い合わせを行う対象システムはどれか
- 信用格付など顧客情報や信用情報が管理されているシステムの特定
- WFシステムは既存システムの機能をサービスとして利用し、必要データを取得する仕組みがあること
なぜ「基幹システム」になるのか?【問題文の記述を引用しながら説明】
【問題文】から以下の記述がポイントとなります。
- 「顧客情報、預金情報及び融資情報を管理するシステム(以下、基幹システム)」を利用してきた。
- 「資金使途及び返済財源を確認し、基幹システムにある信用格付、財務分析結果及び過去のりん議結果を調査し、必要な検討をした上で、案件情報をりん議書に記載する」
- 「アラーム通知機能は、(a)にある最新の信用格付を問い合わせ、WFシステムに保存した案件ファイルの信用格付と比較する」
つまり、最新の信用格付の情報は「基幹システム」で管理されています。WFシステムは基幹システムのサービス機能を利用し、その信用格付を最新のものに照会・取得する必要があります。ここで言う「(a)」とは最新の信用格付情報を持つシステムであり、問題文中でそれが「基幹システム」であると明言されています。
したがって、(a)に入る語句は「基幹システム」が適切です。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ選択肢について
-
「担保評価システム」と混同しやすい点問題文には担保評価システムが担保明細の最新情報を管理しているとありますが、信用格付や顧客信用情報は担保評価システムではなく基幹システムで管理されています。担保評価システムは担保に関わる評価情報を管理しているため、信用格付取得の問い合わせ先としては誤りです。
-
「WFシステム」自身が信用格付を管理していると誤解しやすい点問題文では「WFシステムは既存システムのデータをサービスとして利用し…」とあり、WFシステムはあくまでデータの仲介・統合役割であり、信用格付の最新情報を持つわけではありません。
-
「財務分析システム」も信用情報関連で誤解されやすいが、ここで信用格付とは別情報です。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- 銀行業務システムなど複数システム連携の問題では、「基幹システム」は顧客情報や信用情報の中核管理システムであることが多い。
- ワークフローシステム (WFシステム) は、既存システムの情報をサービスとして利用することが多く、信用情報や財務分析結果の最新データは基幹システムに問い合わせる。
- 担保評価情報は「担保評価システム」という別システムで管理されている。また、融資案件には複数システムの情報が絡むため、それぞれの役割を明確に理解し整理することが重要。
- システム間のデータ連携やサービス連携の仕組みを理解し、どのシステムにどの種別のデータが属しているかを把握しておくことが得点アップにつながる。
まとめ
以上から、(a)に入る語句は「基幹システム」(10字以内)となります。
設問3
〔追加要望への対応〕について,本文中の下線④の条件は三つある。一つは“案件番号が当該案件の案件番号と異なること”である。他の二つの条件を表1中の案件ファイルの属性を用いてそれぞれ35字以内で述べよ。
模範解答
①:顧客番号が当該案件の顧客番号と同一であること
②:案件ステータスが“受付”、“作成中”又は“回付中”であること
解説
模範解答の核心キーワードと論点整理
- 条件①:「案件番号が当該案件の案件番号と異なること」
- 条件②:「顧客番号が当該案件の顧客番号と同一であること」
- 条件③:「案件ステータスが“受付”、“作成中”又は“回付中”であること」
この三つの条件を満たす案件レコードを抽出し、同一顧客内の進行中の他の案件を参照しやすくする設計である。
解答がなぜそうなるのか(問題文の記述との関連)
-
「案件番号が当該案件の案件番号と異なること」
これは重複参照を避けるためで、同じ案件番号のレコードは自分自身なので除外する必要がある。 -
「顧客番号が当該案件の顧客番号と同一であること」
問題文の〔追加要望への対応〕では、「大規模な顧客では複数の案件のりん議が並行することがある」と記載されているので、同じ顧客に関する他の案件を参照する必要があるため、顧客番号で絞る。
具体的には表1「案件」ファイルの「顧客番号」で判別する。 -
「案件ステータスが“受付”、“作成中”又は“回付中”であること」
同一顧客の案件でも、既に完了したものや謝絶されたものは参照対象外。問題文の「進行中の他の案件の内容を参照しやすくしてほしい」とあるので、進行中の案件を指すステータスのみ抽出する。進行中の標準的ステータスは「受付」「作成中」「回付中」である。
関連データ構造(表1の抜粋)
- 「案件番号」は案件を一意に識別する主キー。
- 「顧客番号」は顧客を識別。
- 「案件ステータス」は案件の進行状態を示し、「受付」「作成中」「回付中」「決裁」「謝絶」などが存在。
受験者が誤りやすいポイントと留意点
-
案件番号の除外を忘れる
自分自身の案件も抽出条件に含めてしまい、重複表示になるミスがある。必ず案件番号が異なる条件を付ける。 -
顧客番号の条件を見落とす
同一顧客の案件に絞らないと、無関係な他顧客の案件が混入する。 -
案件ステータスの範囲を誤る
「決裁済」や「謝絶」なども表示してしまい、進行中案件ではなくなる誤り。この問題文では「受付」「作成中」「回付中」が進行中として明示されている。 -
他の属性での条件設定に惑わされる
「店番」や「信用格付」などは今回の条件には関係ないため、余計な条件を探す必要はない。
試験対策として覚えておくべきポイント
-
複数案件の同一顧客参照は「顧客番号の一致と案件番号の相違」を基本とする。
同一顧客かつ自分の案件以外で絞る論理はよく出題される。 -
案件の進行状況を示す「案件ステータス」を正確に判別できること。
複数ステータスから進行中を選ぶ問題が多いので、問題文の指定(または業務知識)を正しく理解する。 -
業務系問題でのファイル設計は条件を整理し、不要な情報を除く点に注力する。
「異なる案件番号」「同じ顧客番号」「案件ステータスが〇〇」のような条件の組合せが基本的。
以上のポイントを理解し、条件設定の意図を把握することがこの問題の攻略の鍵です。