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システムアーキテクト試験 2022年 午後1 問02
品質管理システムの構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
D社は、スーパーマーケットなどの小売店向けの弁当、総菜の製造及び販売を行うメーカである。このたび、品質管理の効率化を図るため、品質管理システム(以下、新システムという)を構築することになった。
〔製造から出荷までの流れ〕
D社の製品は、仕込、加熱、冷却、包装という工程を経て完成する。各工程に対して、原材料や前工程で製造された仕掛品の投入を行う。仕込から冷却までの工程では仕掛品を製造し、最後の包装工程では製品を製造する。それぞれの原材料、仕掛品、製品を品目と呼ぶ。原材料や仕掛品は工程に投入され、異なる品目の仕掛品や製品が製造される。出荷は1日に3回行い、その単位を便と呼ぶ。その便で出荷する全ての製品を製造し、品質管理規定に従った最終確認を行った後に、出荷を開始する。
〔現行の製造及び品質管理の概要〕
D社では、品質検査担当者(以下、検査担当者という)が各工程で製造された仕掛品及び製品の品質検査を行っている。あらかじめ定められた検査基準に基づき、仕掛品及び製品の製造後の状態や異常の有無を、検査用の機器や目視確認などによって検査する。
現在の品質検査実施準備から出荷前承認までの各業務は、次のとおりである。
(ア) 品質検査実施準備
品質検査責任者(以下、検査責任者という)は各品目の品質検査における検査基準を定める。D社では複数の検査担当者が従事しており、曜日、便、及び品目ごとに検査担当者を1人ずつ割り当てている。しかし、特定の製造日と便における検査担当者の都合などによって、担当する一部又は全部の品目の品質検査を実施できない場合がある。その場合、検査責任者はその製造日、便の製造指示が出る直前に、品目ごとに他の検査担当者への変更を行う。
検査担当者は、検査結果記入用の帳票(以下、品質記録票という)を品質検査の各実施場所に持参する。品質記録票は品目ごとに作成し、1枚に複数回の検査結果を記入する。
(イ) 製造指示作成
製造管理システムが、各品目の製造すべき数を算出し、製造日、便ごとの製造開始までに、自動で製造指示を作成する。通常、必要な数を複数回に分けて製造する。1回で製造する品目のまとまりをロットと呼び、ロットNo.と呼ぶ連番を付番する。
製造指示は、製造日便、品目、ロットNo.の組合せで一意となる。
(ウ) 製造実績入力
製造担当者はロットごとに製造を行い、直ちにその実績を製造管理システムに入力する。さらに製造管理システムから製造日、便、品目コード、品目名称、ロットNo.、製造完了日時を記載したラベルを出力し、ロットを運搬する容器に貼付した上で、検査担当者に渡す。
(エ) 品質檢查
検査担当者は、受け取った全てのロットに対して製造完了日時が古い順にロットの品質検査を実施し、ロットごとの検査結果を1回分の実績として品質記録票に記入する。品質検査のうち、製品の品質検査を製品検査という。検査の結果によって、次のいずれかの対応を行う。
(a) 合格:
品質検査結果に問題がない場合、検査担当者は品質記録票に合格となった旨を記入し、合格したロットを、仕掛品の場合は次工程の製造担当者に、製品の場合は出荷担当者に渡す。
(b) 不合格:
品質検査結果に問題がある場合、品質記録票に不合格になった旨を記入し、製造担当者に通知する。不合格になったロットは以降の製造には使用しない。製造担当者は直ちに、製造管理システムで、不合格になったロットと同じ製造指示数で新たなロットNo.の製造指示を作成し、追加製造を行う。
なお、加熱工程以降の製造指示を作成した場合、前工程の製造指示も自動で作成される。
(オ) 製品検査完了確認
製品検査を担当する検査担当者は、検査責任者に製品検査が完了した旨を報告するために、その便で担当する全ての製品の製品検査が終わった時に、製品ごとに、品質記録票の合格数の合計と、製造管理システムが製造開始までに自動で作成した製造指示数の合計が一致することを確認する。
(カ) 製品檢查完了報告
製品検査を担当する検査担当者は、製品検査の実施場所から電話などを用い、製品検査完了確認を実施した旨を事務所の検査責任者に報告する。
(キ) 出荷前承認
検査責任者は、その製造日、便において、製造すべき製品の製品検査を担当する全ての検査担当者から、製品検査完了報告を事務所で受け、製品検査が完了したことを確認する。加えて、品質管理規定に従い、製造設備の異常有無、従業員の衛生チェック結果など、各部署からの報告に基づいた最終確認を行った上で、出荷前承認記録票に承認日時と承認者を記録する。
〔新システムへの要望〕
新システムを構築するに当たり、検査責任者から次のような要望が出された。
・検査担当者が品質検査指示に基づいて品質検査を実施し、品質検査結果を入力する仕組みとしたい。
・検査担当者の変更時に、変更する製造日、便における各検査担当者の作業負荷を確認したい。そのために、作業負荷の目安となる品質検査の実施見込回数(以下、見込回数という)を参照したい。このとき、変更元となる検査担当者については品目ごと、変更先の検査担当者については検査担当者ごとの見込回数を参照したい。品目ごとの品質検査の回数には曜日、便ごとの傾向がある。また、不合格による追加製造も毎日ある程度発生する。そのため、見込回数は、変更する製造日の前週の同じ曜日、かつ同じ便の、不合格による追加製造分も含めた品質検査の実績回数とする。
・品質検査の実績の中で他の検査担当者への変更が行われていた場合でも、変更前の検査担当者の割当てに従って集計してほしい。
なお、検査担当者の変更は製造日当日にも発生することがあるので、検査担当者変更の登録は製造指示が出る直前に行う。一度変更した検査担当者の内容は、再度変更しない。
・品質記録票や出荷前承認記録票を廃止し、加えて、製品検査の完了状況を事務所でもすぐに参照できるようにすることで、品質検査実施準備から出荷前承認までの業務を効率化したい。
〔新システムの設計〕
新システムへの要望を踏まえ、新システムの設計を行った。
品質検査の実施場所と事務所の両方にPCを設置し、新システムに接続する。新システムの主要なファイルと属性を表1に、機能概要を表2に示す。


設問1(1):検査担当者変更機能,及び品質検査指示作成機能について,(1)~(3)に答えよ。
表1中の検査担当者変更ファイルの(a)に入れる,主キーとなる属性を全て答えよ。
模範解答
a:製造日,便コード,品目コード
解説
模範解答の核心キーワード・論点整理
- 検査担当者変更ファイルの主キーとは何か?
- 品目ごとに検査担当者の割当変更を管理する。
- ロット情報はなく、製造日・便コード・品目コードの組み合わせで一意となる。
- 「a」に該当するのは、製造日、便コード、品目コードである。
解答の根拠となる論理的説明
問題文の設計部分(表1)では、検査担当者変更ファイルの属性が以下のように示されています。
この「a」が何かを問う問題です。新システムの要望や機能概要の説明部分に、「検査担当者変更」機能に関する説明があります。そこに下記の文言があります。
「検査担当者の変更は製造日当日にも発生することがあるので、検査担当者変更の登録は製造指示が出る直前に行う。一度変更した検査担当者の内容は再度変更しない。」
また、要望では以下のように記述されています。
「検査担当者の変更時に、変更する製造日、便における各検査担当者の作業負荷を確認したい。」
「品目ごとに検査担当者の変更を登録する。」
製造指示は「製造日」「便」「品目」「ロットNo.」で一意にされており、変更はロット単位ではなく、製造日・便・品目の単位で行われます。したがって、検査担当者変更の主キーとしてふさわしいのは製造日, 便コード, 品目コードの組み合わせです。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
ロットNo.を含めたくなる落とし穴
製造指示の単位にロットNo.が含まれているため、ロットNo.が主キーに含まれると考えがちですが、検査担当者の変更はロット単位でなく品目単位で行われるため含みません。 -
社員コードを主キーと誤解する
社員コードは担当者を表しますが、変更履歴の主キーには含まれません。なぜなら、同じ社員が複数品目・便を担当できるためです。 -
曜日や部門コードを混同する
曜日や部門はマスタ等で管理されますが、変更ファイルの主キーには含まれません。
試験対策として覚えておくべきポイント
- 主キーは「一意にレコードを識別する最小のキー」であることを理解する。
- 検査担当者変更の粒度(管理単位)を問題文のロジックから読み取る。「製造日+便+品目」単位で変更管理していることに注意する。
- 複数レコードにまたがる情報はマスタ管理で済ませるケースが多いことを認識する(例:社員コードはマスタ管理)。
- D社のような製造業務システムでは、ロット毎の製造指示と、検査担当者変更の管理単位の違いに注意する。
- 問題文に記述された業務フローや設計の箇所を丁寧に読むクセをつける。
まとめ
- このうち主キーは「製造日、便コード、品目コード」であり、社員コードは変更担当者の属性として含めるが主キーにはしない。
- 主キーは「製造日、便コード、品目コード」である理由は、変更の粒度がこの3つの組み合わせで唯一の変更履歴を判別できるため。
- 業務上のロジックを踏まえた設計理解が正答の鍵。
この理解があれば、主キーとして正しく「製造日、便コード、品目コード」を選択でき、業務システムの設計思想も掴めるため、確実に得点できる問題となります。
設問1(2):検査担当者変更機能,及び品質検査指示作成機能について,(1)~(3)に答えよ。
表2中のbに入れる適切な字句を20字以内で述べよ。
模範解答
b:各検査担当者の作業負荷の確認
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点の整理
- 核心キーワード:作業負荷の確認、検査担当者の変更、見込回数の参照
- 論点の主旨:
新システムでは、検査担当者の変更時に「検査担当者の作業負荷」を確認し、その情報を基に担当者の割り当てを決定することが求められている。
なぜその解答になるのか
問題文の【新システムへの要望】において、検査責任者からの要望として以下の記述があります。
「検査担当者の変更時に, 変更する製造日, 便における各検査担当者の 作業負荷 を確認したい。そのために, 作業負荷の目安となる品質検査の実施見込回数(以下,見込回数という)を参照したい。」
また新システムの機能概要「検査担当者変更」の説明(表2)には、
(A)〜(C)の処理により、指定した製造日の前週の同曜日・便コードをキーに品目コード・社員コードを抽出し、
(D)にて「指定した変更元検査担当者の社員コードをもつレコードから、品目コードごとにレコード数を集計して表示する」処理がありさ、
表2の(b)には、
「検査責任者が変更対象を決定する。」
とあります。つまり、検査担当者変更の際に検査責任者が判断を行うための情報を表示し、そこでは「作業負荷」の目安である検査の見込回数(実績回数から算出)が活用されます。
以上より、(b)に入る字句は「各検査担当者の作業負荷の確認」が最も適合すると判断されます。
受験者が誤りやすいポイント
-
「見込回数」や「実績回数」そのものを書く誤り
見込回数は作業負荷の目安であり、実際の判断のための「確認」を行うことが重要です。「見込回数を算出する」や「集計する」と書くと処理の一部に偏り、意思決定を示しません。 -
「検査担当者の変更」そのものを書く誤り
(b)は検査担当者変更機能での「変更の判断や操作」を表現する部分なので、「検査担当者の割当変更」など広すぎる表現や単に「変更する」とだけ書くのは不十分です。 -
「検査結果の入力」や「検査実施」などの別作業を書く誤り
(b)は検査担当者の変更時の意思決定場面であり、検査活動や結果入力ではありません。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
用語の意味と役割を正しく理解すること
「作業負荷」や「見込回数」は単なる数値ではなく、判断材料や負荷の見積りを表す語であることを押さえる。 -
設問の指示に忠実に、必要な情報の範囲で解答すること
余計な情報を加えず、説明に沿った焦点を付ける習慣をつける。 -
表や問題文内のキーワードに着目すること
今回は問題文の「検査担当者の変更時に作業負荷を確認したい」という部分が解答のポイント。 -
情報処理試験の午後問題では、業務理解からシステム要件・機能設計の理解が重要
業務の流れと目的に沿った適切な用語を正確に使う練習を積む。
参考:新システム「検査担当者変更」機能概要(一部抜粋)
※(b)の部分に入る解答は「各検査担当者の作業負荷の確認」となります。
設問1(3):検査担当者変更機能,及び品質検査指示作成機能について,(1)~(3)に答えよ。
社員コードを,表2中の(A)で品質検査指示実績ファイルから抽出せずに,表2中の(B)で検査担当者マスタから抽出している理由を,新システムへの要望を踏まえて30字以内で述べよ。
模範解答
変更前の検査担当者の割当てに従って集計するから
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
- 変更前の検査担当者の割当てに従って集計
- 品目ごとの作業負荷(見込回数)を算出する際に、
- 「品質検査指示実績ファイル」ではなく「検査担当者マスタ」の社員コードを使う理由
- 検査担当者変更がある場合でも、変更前の担当者ベースでの集計を行う必要があること
2. なぜその解答になるのか(問題文の記述を引用しながら説明)
問題文の新システムへの要望に以下の記述があります。
・品質検査の実績の中で他の検査担当者への変更が行われていた場合でも、変更前の検査担当者の割当てに従って集計してほしい。
つまり、検査担当者が変更されている場合でも、実績集計は変更前の担当者ごとに行う必要があることが求められています。
一方で、表2の検査担当者変更機能の説明は以下の通りです。
ここで、社員コードの抽出に関しては(A)の品質検査指示実績ファイルでは行わず、(B)の検査担当者マスタからのみ抽出しています。
これは、品質検査指示実績ファイルの「社員コード」は、検査実績や検査後に担当者変更が反映されてしまっている可能性があるためです。変更後の担当者コードで紐づけると、変更前の担当者の作業負荷を正しく把握できません。
したがって、
- 検査担当者変更登録は製造指示が出る直前に行われること、そして一度変更した検査担当者内容は再度変更しないこと
- 変更前の検査担当者割り当て情報は「検査担当者マスタ」に保持されていること
- そのため、作業負荷(検査見込回数)集計では、「検査担当者マスタ」から抽出する社員コードを用い、
- 実績ファイルの社員コードは使用しない
これらの理由から、社員コードは表2の(B)で「検査担当者マスタ」から抽出し、変更前の担当者の割当てに従った集計を行うことになります。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
品質検査指示実績ファイルの社員コードを使う誤り→ このファイルの社員コードは変更後の担当者が登録されているため変更前の割当て情報を正確に反映しない。
-
変更後の担当者の作業負荷を見たいのではと誤解する
→ 変更後担当者の見込回数集計は「検査担当者ごと」で別途行う(要望記載)。
変更前担当者は「品目ごと」で集計するため、社員コードの取り方が異なる。
変更前担当者は「品目ごと」で集計するため、社員コードの取り方が異なる。
-
「検査担当者変更」登録のタイミングの認識不足→ 変更は製造指示が出る直前に行われ、その後は再変更されない点が重要。
-
社員コードの取得元の違いの理解不足→ ファイル間の社員コードの意味合いが異なる点は混乱しやすい。
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- 品質管理システムにおける検査担当者の変更管理はデータ整合性に注意すること
- 実績情報とマスタ情報が異なる目的で使われることがあることを理解する
- 変更が発生する業務で、変更前・変更後の担当者情報の扱いを明確にする要望に注意する
- 集計は、業務要件に従い、どの時点の担当情報を用いるかを正しく判断する
- システム設計では、要望が仕様にどう影響するかを正確に読み取り、適切に対応すること
以上を踏まえ、「社員コードを品質検査指示実績ファイルから抽出せず、検査担当者マスタから抽出する理由は、要望にあるように変更前の検査担当者の割当てに従って集計するため」であることが理解できます。
設問2
表2中の下線①における条件の対象となる二つの項目を、表1中の属性の中から答えよ。また,それぞれの項目が満たすべき条件を15字以内で述べよ。
模範解答
①:項目:製造完了日時
条件:最も古いこと
②:項目:検査結果
条件:“未実施”であること
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 品質検査実績入力時の対象レコードの条件:
- 「製造完了日時」が「最も古いこと」
- 「検査結果」が「未実施」であること
- 表1の「品質検査指示実績」ファイルの属性の中から該当項目を特定
- 検査担当者が対象ロットの検査を入力する際に、どのレコードが対象になるかを示す条件
論理的な説明(問題文の記述を引用しながら)
新システムの機能概要の「品質検査実績入力」では次のように説明されています。
「品質検査実績入力
検査担当者が品質検査を実施後に入力し、対象ロットの検査結果を記録する機能。
① 品質検査指示実績ファイルの社員コードが検査担当者自身の社員コードと一致し、さらに二つの項目が、それぞれある条件を満たすロットである。
検査結果は「合格」または「不合格」を登録とする。」
この二つの条件は、
- 製造完了日時が最も古いこと(これによって検査は製造完了の古いロットから順に行うことができる。)
- 検査結果が“未実施”であること(これにより、まだ検査が実施されていないロットのみを対象にできる。)
と定められています。
この条件は、問題文の現行の運用内容に基づいています。
現行運用からの対応
問題文の現行の品質検査の説明では、
「検査担当者は、受け取った全てのロットに対して製造完了日時が古い順にロットの品質検査を実施し、…」
とあり、品質検査は製造完了の時系列で古いものから行われることが明示されています。また、
「品質検査指示実績ファイルの…検査結果が“未実施”のものは未検査である」
という扱いに相当します。
したがって、受験者は
- 「対象レコードは製造完了日時が最も古いもの」
- 「かつ検査結果が未実施のもの」
という条件を導き出せます。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
製造指示数やロットNo.など他の属性を混同しやすい受験者は「製造指示数」や「ロットNo.」の情報が重要だと感じ選択しがちです。しかし本問は「品質検査実績入力機能がどのレコードに対して検査結果を入力するか」という条件に絞っており、製造日時順や検査結果状態が直接の対象選定条件です。
-
検査結果の条件を「合格」や「不合格」と混同する検査を実施するロットはまだ「未実施」(未検査)です。「合格」や「不合格」は検査済みで結果が決まっている状態のため対象にできません。
-
「品質検査指示実績」ファイルの属性名を正確に覚えていない試験では表1のようにファイル構成と属性名が明示されているため、正しい属性名(例:製造完了日時、検査結果)を確認することができますが、曖昧にしていると選択ミスの原因になります。
試験対策としてのポイントまとめ
この問題は、品質検査の運用ルールをITシステムに落とし込む際の基本的思考力を問うものです。運用ルールと具体的なファイル属性の理解を確実にしておきましょう。
参考:新システムの「品質検査指示実績」ファイルと属性(一部抜粋)
以上から、設問の答えは模範解答通り
- ①項目:製造完了日時
条件:最も古いこと - ②項目:検査結果
条件:“未実施”であること
となります。
設問3(1):出荷前承認機能について,(1)~(3)に答えよ。
〔現行の製造及び品質管理の概要〕の(ア)〜(キ)までの業務のうち、新システムでは不要となる業務が二つある。不要となる業務を(ア)〜(キ)の記号で二つ答えよ。また,その理由を30字以内で述べよ。
模範解答
業務:(オ),(カ)
理由:検査責任者が直接,製品検査の完了状況を確認できるから
解説
模範解答の核心キーワードと論点整理
-
不要となる業務:
(オ) 製品検査完了確認
(カ) 製品検査完了報告 -
理由の核心キーワード:
「検査責任者が直接,製品検査の完了状況を確認できるから」 -
関連するシステム機能や設計ポイント:
- 出荷前承認機能で、「製品の製品検査完了状況を事務所で直接参照できる」こと
- 品質記録票や出荷前承認記録票の廃止による業務簡素化
- システムによるリアルタイムデータ連携と集計
解答に至る論理的説明
【問題文】の「新システムへの要望」より:
・品質記録票や出荷前承認記録票を廃止し、加えて、製品検査の完了状況を事務所でもすぐに参照できるようにすることで、品質検査実施準備から出荷前承認までの業務を効率化したい。
これにより、従来は検査担当者が製品検査完了時に合格数の合計と製造指示数を手作業で照合・報告する手間が削減されます。つまり、
-
(オ) 製品検査完了確認:
従来は検査担当者が品質記録票の数字と製造指示数の合計を突き合わせて完了確認を行っていたが、 新システムでは事務所のPCからリアルタイムに完了状況を確認可能となるためこの作業は不要。 -
(カ) 製品検査完了報告:
従来は電話等で事務所の検査責任者に完了報告をする必要があったが、 新システムのリアルタイムなデータ共有により、検査責任者は報告を待つ必要がなくなるため不要。
さらに、【新システムの設計】表2「出荷前承認」機能概要に、
品質検査指示実績ファイルから…全ての製品の製品検査が完了した状態になった後、検査責任者の承認入力の操作によって出荷前承認記録ファイルのレコードを作成する。
と記載があります。これにより、検査責任者は直接データを用いて判断が可能となり、手続きの簡略化が実現しています。
受験者が誤りやすいポイント
-
(キ) 出荷前承認を「不要な業務」と勘違いしやすい
→ 出荷前承認は最終的な品質管理上の重要な承認業務であり、新システムでも継続するため不要ではありません。 -
(ア) 品質検査実施準備の業務(検査担当者の割当て変更など)も不要とはならない
→ 品質検査担当者の管理や割当て調整はシステムで支援するものの、業務自体は引き続き必要です。 -
(イ)~(ウ)や(エ)の検査自体や製造実績の入力業務は、システム化されても続きます。
したがって、業務フローの合理化やデータのリアルタイム共有によって終了するのは「製品検査完了を目視や電話で確認・報告する手順」という点に限定されることに注意が必要です。
試験対策として覚えておくべきポイント
本問題では、システム導入によって何が効率化されるかを正確に理解し、「業務」と「システム対応機能」の関係に着目して選択肢を判断することが重要です。
設問3(2):出荷前承認機能について,(1)~(3)に答えよ。
表2中の(c),(d)に入れる抽出条件を、表1中の属性を用いて15字以内で述べよ
模範解答
c:追加フラグが“通常”
d:検査結果が“合格”
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
2. なぜその解答になるのか(論理的説明)
本問題は「出荷前承認」機能に関する条件設定です。新システムは、表2の機能概要のうち「出荷前承認」機能で、
品質検査指示実績ファイルから出荷前承認の対象となる製造日、便に該当するレコードを抽出し、それぞれの製品について、次の(1)と(2)の値が一致した場合にその製品の製品検査が完了した状態になる。
と記述されています。
ここで、
- (1)製造開始時の製造指示数の合計 に対応する条件は「(c)であるレコードの製造指示数の合計」とあり、
- (2)出荷可能な製品の製造数 に対応する条件は「(d)であるレコードの製造指示数の合計」とあります。
この2つの値を一致させることで、その品目について製品検査がすべて完了した(かつ合格)ことを確認します。
(c)について:
- 「製造開始時の製造指示数」は、製造指示が最初に出された数、すなわち**「通常」**の製造指示のみをカウントします。
- 追加製造の分(不合格になったロットの追加分)は含めません。
- 説明文中の「品質検査指示実績ファイルの『追加フラグ』は、『通常』『追加』に分類」とあり、ここで追加は除く意味も込めています。
(d)について:
- 「出荷可能な製品」は、品質検査に合格した製品の数です。
- よって、品質検査指示実績ファイルの「検査結果」が**「合格」**であるレコードのみを対象にします。
3. 誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
追加フラグを誤って「追加」も含めてしまうケース
→ 出荷前承認で「製造開始時の製造指示数」と比較するためには、「追加」ではなく「通常」の製造指示だけ集計する必要があります。 -
検査結果を「不合格」や「未実施」としてしまうケース
→ 出荷可能数は「合格」の製品に限定します。合格していないロットは出荷できません。 -
製造日や便の抽出条件を意識せず全データを集計するミス
→ 出荷前承認は製造日,便ごとに管理します。日付や便を考慮しないと誤った判定になります。 -
検査担当者変更を考慮しないケース(集計は変更前担当者ベース)
→ 品質検査の実績集計は変更前の担当者割当てに従いますが、この設問の抽出条件には直接影響しません。
4. 試験対策で覚えておくべきポイントや知識
-
**出荷前承認の「製造開始時の製造指示数」と「出荷可能な製品の製造数」**はシステム上で厳密に一致が求められる。
→ 品目別に「通常」製造指示かつ「合格」検査結果の製造数を正確に把握することが重要。 -
「追加製造分」はあくまで補正用であり、承認審査においては「通常」のものと区別しましょう。
-
品質検査の結果は必ず「合格」「不合格」「未実施」で管理されること
→ 「合格」だけが出荷可能な製品として判定される。 -
システムでの「フラグ」管理や「検査結果」の用語を正確に理解し、条件文に落とし込む力が必要。
→ 問題文中の属性や説明を丁寧に読み解く練習をすること。
まとめ
- (c)は「追加フラグが“通常”」 → 製造開始時の基本製造指示を示す。
- (d)は「検査結果が“合格”」 → 出荷可能な検査済み製品を示す。
- 出荷前承認は、通常の製造指示と合格品の数が一致することが条件。
- 不合格や追加製造の分はこの判定に含めない。
- 問題文の条件と属性の意味を正確に読み取り整理する力が合格の鍵。
このように、新システムの品質検査工程において、品質検査結果の集計条件を理解し、システムの要件を満たすデータの抽出条件を正確に把握することが求められています。情報処理技術者試験における午後問題は、現実の業務知識の理解とシステム設計の両方を問うため、問題文とマスタの内容を丁寧に照合して考える習慣をつけてください。
設問3(3):出荷前承認機能について,(1)~(3)に答えよ。
製品検査の完了後、承認入力の操作を必須とした理由は二つある。一つは出荷前承認記録ファイルのレコードを作成し出荷前承認の記録を残すためである。もう一つの理由を35字以内で述べよ。
模範解答
出荷前承認には,各部署からの報告に基づいた最終確認が必要だから
解説
1. 模範解答の核心キーワード・論点整理
- 出荷前承認を「承認入力の操作を必須とする理由」の二つ目
- 「各部署からの報告に基づいた最終確認」
- 単に製品検査の完了を示すだけでなく、組織全体での品質管理チェックを担保するための承認行為
2. なぜその解答になるのか
問題文の「〔現行の製造及び品質管理の概要〕」の(キ)出荷前承認の説明に以下の記述があります。
検査責任者は、その製造日・便において、製造すべき製品の製品検査を担当する全ての検査担当者からの製品検査完了報告を受ける。
さらに、品質管理規定に従い、製造設備の異常有無や従業員の衛生チェック結果など、各部署からの報告に基づいた最終確認を行った上で承認を記録する。
このことから、承認入力が必須の理由は単なるチェックリストの完了を超え、各部署による設備・衛生などのトータルな品質管理状況の確認を最終的に検査責任者が行うためです。
また「〔新システムへの要望〕」では、
品質記録票や出荷前承認記録票を廃止し、各拠点からの情報共有を迅速化しつつ、出荷前承認を効率化したい。
つまり、電子的に承認記録を残すために「承認入力の操作」が必要であり、組織として品質保証の最終責任を明確化する役割も担っています。
3. 受験者が誤りやすいポイント・注意事項
-
【誤りやすい点】
「承認入力の操作=単なる製品検査の完了記録」と誤解しがち。
→ しかし問題文には、製品検査完了報告とは別に「各部署の報告に基づく最終的な品質管理確認」があるため、承認入力はそれを踏まえた正式な確定手続きである。 -
【誤解されやすい用語】
「品質検査結果を入力=承認入力」という解釈。品質検査は検査担当者、承認は検査責任者が行う別の操作。 -
【現行管理との関係】
手書きの品質記録票や出荷前承認記録票の廃止に伴う電子記録の必要性も含めて理解する。
4. 試験対策として覚えておくべきポイント
補足:新システム主要ファイルの抜粋
まとめると、承認入力操作の必須理由は単に製品検査完了を記録するだけでなく、「各部署からの報告に基づく最終的な品質状況の総合確認と公式な承認記録のため」という組織的かつ管理的な意義があるためです。問題文の該当箇所をよく理解し、この点を正確に認識することが重要です。