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システムアーキテクト試験 2022年 午後1 問03
保険申込システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
K社は、代理店や金融機関などを通じて保険商品を販売する大手生命保険会社である。K社は、金融機関で顧客に保険商品を販売する際の業務効率化、利便性向上を目的として、保険申込システムを見直し、新たな保険申込システム(以下、新システムという)を構築することにした。
〔現在の業務とK社の保険申込システムの概要〕
金融機関の窓口で保険商品を販売する職員(以下、募集人という)はK社の保険申込システム(以下、現行システムという)を利用し、業務を実施している。現在の業務と現行システムの概要は、次のとおりである。
(1) ニーズ喚起業務
募集人は、保険募集のコンプライアンス指針にのっとり、取扱いのある保険商品から顧客に最適なプランを考え、顧客に合った保険商品を提案する。
(2) 保険提案書作成業務
募集人は、現行システムを利用して保障内容や保険料などが記載されている保険提案書(以下、提案書という)を作成する。
現行システムに保険商品、生年月日、性別、保険期間と保険料の払込期間といった保険条件を入力し、これらの保険条件に合った保険料を試算し提案書を作成する。提案書を作成する際、一意となる提案書の番号(以下、提案書番号という)を現行システムが付与する。
作成した提案書を印刷して顧客に保障内容や留意事項を説明する。K社では、顧客に提案書を説明する際、必ず印刷して説明することにしている。
(3) 保険提案書再作成業務
募集人は、同じ顧客で同じ保険商品の提案書を過去に作成したことがある場合、作成済みの提案書の保険条件を利用して、新しい提案書を作成する。
現行システムを利用して新しい提案書の基となる提案書を検索し、その提案書を選択して再作成することで、元の提案書の保険条件を引き継いだ新規の提案書が作成される。
その提案書の保険条件を変更し、新しい提案書を印刷して顧客に説明する。K社では、提案書を再作成する際に①同じ提案書番号で保険条件が異なる印刷物がないようにしている。
(4) 保険申込書作成業務
募集人は、顧客から申込みがあった場合、現行システムを利用して保険申込書(以下、申込書という)を作成する。申込書には提案書番号が記載されており、申込書の基になった提案書の内容と不整合にならないようにしている。募集人は、印刷済みの提案書の提案書番号を現行システムに入力し、提案書の内容から申込書を作成する。作成した申込書を印刷し、必要書類として、保険商品ごとの重要事項説明書、引受判断に必要な健康状態を記載する告知書、保険条件が顧客の意向と一致していることを確認してもらうための意向確認書を準備する。
(5) 申込手続業務
募集人は、保険申込書作成業務で印刷した申込書、重要事項説明書、告知書、及び意向確認書を顧客に提示し、必要な項目の記入と署名を依頼して記入内容を確認する。申込書には、保険契約を結ぶ顧客(以下、契約者という)と、保険の対象になる顧客(以下、被保険者という)が署名する。契約者と被保険者が別人の契約では、被保険者が同意した上で、契約者と被保険者それぞれが署名する必要がある。必要な項目の記入完了後、顧客控え書類を顧客に手渡しする。また、保険料の口座振替依頼書の記入を依頼して記入内容を確認する。
申込書を作成開始してから申込手続業務を完了するまでの時間を手続所要時間と呼ぶ。
(6) 申込手続事後業務
募集人は、申込手続業務完了後、契約時の確認内容や特記事項を取扱報告書に記入する。募集人は、責任者に申込書、告知書、意向確認書、及び取扱報告書を確認してもらう。責任者は、書類一式の内容をチェックし、問題がない場合はK社に郵送する。
(7) 契約手続業務
K社は、郵送された書類の内容を契約管理システムに入力する。入力した内容を査定し、問題がない場合は、保険証券を契約者に郵送する。現在の業務では、申込書を作成開始してからK社へ書類一式が到着し、契約管理システムに入力するまでの時間を申込書到着所要時間と呼ぶ。
〔新システムへの要望〕
新システムに対して、次のような要望が出された。
・タブレット端末で提案書を作成したり、保障内容などを顧客に説明したりできるようにしたい。
・申込書や告知書の作成で、顧客が入力する必要がある内容をタブレット端末で入力して手続(以下、ペーパレス手続という)できるようにしてほしい。ただし、顧客の希望によって書面での手続(以下、書面手続という)もできるようにしてほしい。また、ペーパレス手続の場合、手続の途中でも書面手続に切り替えられるようにしたいが、告知書に署名した後は、切り替えられないようにしてほしい。
・ペーパレス手続の場合、画面上で自署した筆跡を電子書類として保存したい。電子書類のうち顧客控え書類は、申込手続完了後に募集人が印刷して、顧客に手渡しする。そのため、顧客控え書類は、顧客が自署した画面と同様のレイアウトにしてほしい。また、保存する電子書類の真正性を確保するために、顧客控え書類に改ざん検知の仕組みを導入してほしい。
・申込手続事後業務の責任者の承認をシステムで支援してほしい。
・責任者が書類の記載内容をチェックして不備があった場合、対応に時間が掛かっているので、②その不備対応の時間を短縮したい。
・取扱報告書をシステムで入力できるようにしてほしい。書類では、募集人と責任者の押印をしている。システムでは、募集人名と責任者名を画面に表示してほしい。
・契約手続業務を効率化するために、ペーパレス手続の場合、顧客の申込手続と募集人の取扱報告入力、責任者承認の全ての手続が完了した後、申込書の内容をデータとイメージファイルの両方で契約管理システムに連携してほしい。
・ペーパレス手続の場合、手続の状態(以下、申込ステータスという)が画面で分かるようにしてほしい。
・保険料の払込方法として、口座振替かクレジットカード決済を選択できるようにしたい。また、申込時に払込方法の登録手続を電子的に完了できるようにしたい。
・③手続を円滑に進めるために募集人が手続の順番を把握できるようにしてほしい。
・保険申込の実績を集計したい。提案書作成件数、申込書作成件数、ペーパレス手続選択件数を知りたい。また、新システムでペーパレス化したことに伴う効率化の効果も知りたいので、当月にペーパレス手続で申込手続業務が完了した申込の-
・手続所要時間の平均と、当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込書到着所要時間の平均を算出してほしい。
〔新システムで実装する機能〕
新システムは、新システムへの要望を全て満たした上で、タブレット端末からも利用可能にする。新システムの機能概要を表1に示す。

設問1
〔現在の業務とK社の保険申込システムの概要〕について,本文中の下線①のようにしている理由を業務上の観点から40字以内で述べよ。
模範解答
申込書と基になった提案書の内容が不整合にならないようにしているから
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 提案書番号の一意性
- 保険条件の不整合防止
- 申込書との整合性
- 業務上のリスク回避
解答になる理由の論理的説明
設問の対象は、「現行システムにおいて、同じ提案書番号で保険条件が異なる印刷物が存在しないようにしている理由」です。
問題文の該当部分は以下です。
(3) 保険提案書再作成業務
現行システムは「同じ提案書番号で保険条件が異なる印刷物がないようにしている」。(4) 保険申込書作成業務
申込書には提案書番号が記載されており、「申込書の基になった提案書の内容と不整合にならないようにしている」。
募集人は、印刷済みの提案書の提案書番号を入力し、申込書の作成を行う。
これらからわかるのは、
- 提案書番号は提案書の内容を識別するための一意の番号である。
- 同じ番号で異なる条件(内容)の提案書が存在すると、番号の意味が曖昧になり、申込書との内容整合性が取れなくなる。
- そうした不整合を避けるために、同一提案書番号で異なる保険条件の印刷物を作らない管理をしている
という業務上の理由です。
つまり、提案書番号が信頼できる「提案書内容の識別子」として機能し、申込書作成時の元提案書の確認や整合性検証に役立っています。これにより誤申込みやオペレーションミスを減らして業務の正確性・信頼性を保っています。
受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ
-
「番号の重複」自体が問題でないという誤解
提案書番号の重複が問題なのではなく、重複した番号で異なる保険条件が存在することが問題です。
→番号は重複不可、かつ内容も異なっていてはいけない(番号が内容を一意に特定) -
システム的な番号重複防止と業務的理由を混同
単なるシステム上のエラー防止ではなく、業務上、申込書との整合のために数字の意味が重要である点を見失わない。 -
「印刷物が同じ番号で異なる」という文言の理解不足
印刷物(提案書の書面)が顧客に対して説明する重要な資料なので、複数の異なる内容が同じ番号で存在することは混乱のもと。
→提出時点で明確な識別と正確な情報提供が必要。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
-
提案書番号は提案書の内容を特定する唯一無二のIDであることが多い。
類似の申込や再作成もこの番号の管理が業務上の根幹を担う。 -
業務システムではデータの整合性と一意性が重要。
特に申込書と提案書のリンク関係では番号と内容の不整合が重大問題になる。 -
業務効率化とミス防止の観点から、一意の番号管理の重要性を理解する。
-
問題文中の指定語句(ここでは「同じ提案書番号で保険条件が異なる印刷物がないようにしている」)はそのままの意味で捉え、なぜそうするかの業務観点を説明することが問われる。
こちらの小問は、業務システムの運用において番号管理と内容の整合性を保つことが、顧客や契約管理上のミスやトラブルを回避するために重要であることを問う問題です。理解を深めることで、情報処理技術者試験の午後問題で問われる業務知識とシステム設計の関連づけが得意になります。
設問2:新システムの設計について(1)~(4)に答えよ。
ペーパレス手続から書面手続に切替え可能な状況にある申込書データの申し込みステータスを表1中の字句を用いて全て答えよ。
解説
設問2(1):新システムの設計について(1)~(4)に答えよ。
ペーパレス手続から書面手続に切替え可能な状況にある申込書データの申し込みステータスを表1中の字句を用いて全て答えよ。
模範解答
“ペーパレス手続選択済”,“申込確認済”,“申込書入力済”
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
-
申込ステータス(申込書データの状態)
-
ペーパレス手続から書面手続への切替可能な状況
-
候補となる申込ステータスは、
「ペーパレス手続選択済」「申込確認済」「申込書入力済」
の3つ。 -
**切替禁止の条件は「告知書に署名した後」**であるため、
「告知手続完了」以降のステータスでは切替不可。
なぜその解答になるのか(問題文の記述を引用し論理的説明)
問題文の要望に、
「ペーパレス手続の場合,手続の途中でも書面手続に切り替えられるようにしてほしい。ただし、告知書に署名した後は切り替えられないようにしてほしい。」
と明示されています。
新システムの機能概要表1から、ペーパレス手続の各ステータスとその順序を整理すると以下の通りです。
「告知手続完了」が「告知書に署名した後」の状態と対応しています。この時点以降は書面手続への切替不可と明記されています。
したがって、切替可能な申込ステータスは「告知書署名前」の、
- ペーパレス手続選択済
- 申込確認済
- 申込書入力済
の3つになります。
受験者が誤りやすいポイントや、ひっかけの選択肢
-
「告知手続完了」も切替可能と思い込むミス
「告知手続完了」は要望文中で切替不可になる「告知書に署名した後」と合致します。
したがって、これ以降(告知手続完了や払込方法選択済、取扱報告書作成済などの状態)は切替不可。 -
「申込書承認済」や「承認待ち」を含めてしまう誤り
申込書承認フェーズは、申込手続後の契約管理のための段階であり、ペーパレスから書面への切替とは無関係です。 -
ステータス名の正確な把握不足
問題文と表1で提示されている正確なステータス名を理解していないと誤答につながります。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
申込ステータスは新システムの状態管理を示し、名称は必ず正しく確認する。
選択肢に似た用語が多いので混同しない。 -
重要な業務ルールのタイミングを押さえる。
「告知書への署名」が切替可能から不可への境目となるため、そこを基準に考える癖をつける。 -
ペーパレス手続の流れを理解する。
手続の進捗に応じて申込ステータスは変わり、どこまでが切替可能か区別できることが重要。 -
問題文の要望部分は詳細に読む。
特に「○○以降は切替不可」のような条件が問題文に直接書かれていることが多く、見落としやすいため要注意。
以上の点をふまえ、本問は「ペーパレス手続の途中で書面切替可能」かつ「告知書署名前」の申込ステータスが問われており、模範解答の
“ペーパレス手続選択済”,“申込確認済”,“申込書入力済”
が正解となります。
設問2(2):新システムの設計について(1)~(4)に答えよ。
改ざん検知を考慮した設計が必要な新システムの機能を、表1中の機能名を用いて全て答えよ。
模範解答
申込書入力,告知手続
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点整理
- 改ざん検知(Integrity or Tamper Detection)
- 電子書類の保存
- 顧客控え書類を同様のレイアウトで印刷
- 署名(自署)情報の電子保存
- 新システムの機能の中で、「申込書入力」と「告知手続」に関連
- 新システム要望の「ペーパレス手続」の中で、電子的に署名し保存する部分
解答理由の論理的説明(問題文引用を含む)
本問題は「改ざん検知を考慮した設計が必要な新システムの機能」を問うています。問題文から該当内容を整理します。
1. 改ざん検知の要望箇所
「ペーパレス手続の場合,画面上で自署した筆跡を電子書類として保存したい。電子書類のうち顧客控え書類は,申込手続完了後に募集人が印刷して,顧客に手渡しする。そのため,顧客控え書類は、顧客が自署した画面と同様のレイアウトにしてほしい。また,保存する電子書類の真正性を確保するために,顧客控え書類に改ざん検知の仕組みを導入してほしい。」
この「改ざん検知」要求に直接関わるのは、電子書類の保存と署名の取り扱いです。
2. これらの機能概要(表1に基づく)
この2つの機能で、顧客の署名を含む「申込書」および「告知書」の電子文書を保存し、顧客控えとして印刷し提供する役割を持ちます。そのため改ざん検知の仕組みを導入する対象となります。
3. 他の機能では改ざん検知は明示されていない
- 「提案書作成」や「取扱報告書作成」など、電子文書の保存はあるが「改ざん検知を導入してほしい」という記載はありません。
- 「申込確認」や「払込方法選択」などは入力や状態遷移管理であり、改ざん検知の要件対象外。
- 「書類印刷」はあくまで保存済み電子文書の印刷であり、「改ざん検知を考慮した設計」の主要部分ではありません。
受験者の誤りやすいポイント・ひっかけ
- 「申込書入力」と「告知手続」以外にも改ざん検知該当と勘違いしやすい機能
- 例えば「取扱報告書作成」「提案書作成」など重要書類の作成機能があるため、改ざん検知も必要と思い込みやすい。
- しかし問題文の要望で「改ざん検知」の導入を明示的に求めているのは「顧客控え書類」(申込書・告知書)に対してのみ。
- 電子署名や筆跡保存と改ざん検知の違い
- 「署名の電子保存」は改ざん検知の前提条件ではあるが、単なる電子保存と改ざん検知は別物。
- 署名を取る機能があるからといってすべての機能に改ざん検知が必要と判断してしまう誤り。
- 印刷時点でのチェックと電子データの改ざん検知は混同しないこと
- 手書き署名を画面に表示する機能と、後からデータの改ざんを検知する仕組みは別。
試験対策として覚えておくべきポイント・知識
- 改ざん検知のターゲットは「真正性を確保すべき電子文書」
- 顧客が署名した電子文書(申込書・告知書など)が対象であることが多い。
- 改ざん検知は署名付き電子文書の保存に必須
- 電子署名やハッシュ値の管理などでデータの完全性を保証する仕組みを求められる。
- システム要望文に明示されている部分を正しく読み取ること
- 「○○に検索機能があり」とあっても「改ざん検知の仕組みを導入してほしい」とは言っていなければ対象外。
- 問題文の要望と表の機能説明を結びつける訓練が必要
- 何をどの機能で実装するのかを整理し、要望と機能の対応がわかるようにする。
- ペーパレス手続関連は、特に文書の電子署名と改ざん検知に注意
- 実際の運用に即すと、ペーパレス化で重要なポイントになる。
以上の理解を踏まえ、この問題は「申込書入力」「告知手続」が改ざん検知を考慮した設計が必要な機能であると正しく判断できます。
設問2(3):新システムの設計について(1)~(4)に答えよ。
本文中の下線②の不備対応時間の短縮を考慮して設計した新システムの機能を表1中の機能名を用いて全て答えよ。また,考慮した内容を20字以内で述べよ。
模範解答
機能名:申込確認,申込書入力,告知手続,取扱報告書作成
内容:入力内容をチェックすること
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
-
機能名
- 申込確認
- 申込書入力
- 告知手続
- 取扱報告書作成
-
内容(考慮した内容)
- 「入力内容をチェックすること」
-
関連論点
- 不備対応時間の短縮のために「入力内容のチェック」を行い、不備の早期発見・是正を促進
- 入力時のチェックで不備発生を減少させ、責任者の承認時の再修正作業を軽減
2. なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えて論理的説明)
問題文の〔新システムへの要望〕には、
「責任者が書類の記載内容をチェックして不備があった場合,対応に時間が掛かっているので,②その不備対応の時間を短縮したい。」
とあります。
この「不備対応の時間を短縮」という課題を踏まえた新システムの設計として、表1の各機能の説明には以下の記述が確認できます。
これらの「入力時の内容チェック」が、不備を早期に発見し、その場で修正できることにより、責任者によるチェック段階での不備率を低減し、結果として不備対応の時間短縮を実現しています。
3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢
-
誤りやすいポイント
- 不備対応時間の短縮=単に「承認」や「申込書承認」など責任者の承認手続きと誤認してしまうこと。
- 不備対応は「責任者がチェックしてから」ではなく、「入力段階で不備を減らす」ことが効果的。
- 不備対応に関わるのは、顧客や募集人が入力をするフェーズと、責任者がチェックするフェーズ双方の前段階なので、「入力チェックを行う機能」こそ重要。
-
ひっかけの選択肢例
- 「申込書承認」機能のみを選ぶ:承認機能はチェック結果を処理するが、不備自体を減らす仕組みではない。
- 印刷や検索関連の機能:不備対応の時間短縮と直接の関連が薄い。
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
-
入力チェック(バリデーション)は不備対応時間を短縮する基本手段
システム設計で不備対応工数を削減するには、入力段階から誤りや不足を検知し、修正を促す仕組みを設けること。 -
承認・チェック段階の不備対応時間短縮は、前段階の入力チェックの強化で実現可能
手戻り工数減少に繋がるため、単に承認ボタンを設けるだけでなく、入力品質向上の仕組みが重要。 -
問題文の要望と表にある機能説明はセットで理解する
特に不備対応の時間短縮のような「課題解決系」問題では、要望内容を表中の細かい機能説明と対比して照合する習慣をつける。
まとめ
このように「入力内容のチェック」を全体の手続き過程に組み入れることで、不備対応時間の短縮を実現し、要望に対する根本的な解決策となります。問題文の要求理解と表の機能説明を丁寧に読み解くことが本問の攻略の鍵です。
設問2(4):新システムの設計について(1)~(4)に答えよ。
本文中の下線③の要望を考慮して設計した新システムの機能を表1中の機能名を用いて答えよ。また,考慮した内容を25字以内で述べよ。
模範解答
機能名:ペーパレス手続メニュー
内容:次に実施すべき作業メニューだけ活性化すること
解説
1. 模範解答の核心となるキーワードや論点
- 機能名:ペーパレス手続メニュー
- 内容:「次に実施すべき作業メニューだけ活性化すること」
- 論点:
- 手続きが複数段階あるペーパレス手続において、募集人が「手続の順番を把握できる」ように支援する機能
- 次に実施すべき作業のみを画面で明示し、手続きを順序だてて進められるようにすることで、業務の円滑化を実現する
2. なぜその解答になるのか(問題文の引用と論理的説明)
問題文の下線③は以下の要望です。
「手続を円滑に進めるために募集人が手続の順番を把握できるようにしてほしい。」
新システムの表1「ペーパレス手続メニュー」の機能概要には、
と記されており、この機能によって募集人は「次に実施すべき作業」が視覚的に示され、次に何をすればよいかがひと目でわかります。これにより、手続の「順番を把握できる」状態が実現されます。
したがって、勤務する募集人の要望(③)を満たす機能は「ペーパレス手続メニュー」であり、その内容は「次に実施すべき作業メニューだけ活性化させること」です。
3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢
-
複数機能がある中で「順番を把握できる」機能を特定する点の難しさ
新システムは以下のように多機能が設定されており、特に「申込確認」「申込書入力」「告知手続」など、各手続内容に関する機能が独立しています。
これらは個別作業の処理であって、「順序を把握する」=「作業メニューの管理」には直接対応しません。
したがって、「ペーパレス手続メニュー」こそが段階的作業の案内・活性化により順番を明示できる機能であると区別する必要があります。 -
「申込ステータス」や「承認機能」ではないことへの注意
「申込確認」や「申込書承認」は手続きの進捗に関わりますが、募集人が手続きの「順番を把握」する目的には直接対応していません。これらは次のステップの作業や責任者の承認に関するものです。 -
作業の「活性化」の意味を理解すること
単にメニューを表示するだけでなく、「活性化」=次にやるべき操作が選択可能になること。
無関係な作業は非活性=操作不可にし、誤操作や混乱を防ぎます。
4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識
本問題では、「手続きの流れを明示して募集人が混乱しないように」といった利用者視点の要件を具体的な画面制御(活性化の制御)という機能設計に落とし込む点を確認できました。こうした「利用者の利便性を支えるシステム設計」が午後試験で必須の理解です。
設問3(1):実績集計機能について,1),(2)に答えよ。
表1中の下線④は,どのような値を算出すればよいか。表1中の機能概要中の字句を用いて40字以内で述べよ。
模範解答
差払込方法選択日時が当月である申込書データの,払込方法選択日時と申込日時の差
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 払込方法選択日時:申込書の「払込方法選択」機能で完了日時を指す。
- 申込日時:申込書作成時に登録される「申込日付」。
- 手続所要時間と申込書到着所要時間:効率化効果測定に用いる指標。
- 当月に申込手続完了・契約管理システム連携完了:対象期間のデータ抽出条件。
- 差(差分):「払込方法選択日時」と「申込日時」の時間差を算出。
- 40字以内で述べる:簡潔に機能概要の用語を用いて説明する。
解答がそのようになる理由の論理的説明
問題文の【新システムの機能概要】の「実績集計」欄には以下の記述があります。
ここで問題となっているのは下線付きの④「当月に申込手続業務が完了した申込の手続所要時間」と②「当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込到着所要時間」です。
手続所要時間や申込到着所要時間は時間の差(所要時間)を表します。意味するところは、
- 手続所要時間:申込開始から申込手続完了までにかかった時間。
- 申込到着所要時間:申込書作成開始からK社での契約管理システム入力開始までの時間。
これらは、システムの各日時データを基に計算します。
新システムの「申込書作成」機能概要を見ると、
- 申込書作成時に「申込日付」を登録し、「申込日時」を記録。
- 「払込方法選択」完了後、「払込方法選択日時」を登録。
したがって、
- 手続所要時間の計算に用いるのは、申込開始(申込日時)から払込方法選択完了(払込方法選択日時)までの時間差。
つまり、「申込書データの申込日時」と「払込方法選択日時」の差分を算出し、これが当月のデータについて平均計算されるということになります。
この観点から、
差払込方法選択日時が当月である申込書データの,払込方法選択日時と申込日時の差
という解答は、新システム機能の用語と運用に沿った正しい表現となります。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
「手続所要時間」の定義の混乱
- 問題文では「申込書作成開始から申込手続完了まで」を手続所要時間と定義していますが、新システムの機能は「申込日時(作成開始時点)」と「払込方法選択日時(手続完了を示す日時として使える)」を用いて計測します。
- 「申込書入力完了」や「告知手続完了」など複数の工程があるが、それぞれのタイミングを混同しないこと。
-
「申込書到着所要時間」との混同
- 申込書到着所要時間は「申込書到着から契約管理システム入力開始まで」の時間であり、手続所要時間とは計測区間が異なる。
- 問題文の④と②は別の指標のため、それぞれに合った日時を用いること。
-
当月の抽出条件の理解不足
- 集計対象は「当月に払込方法選択日時がある申込書データ」という条件を忘れやすい。
- これにより、データ抽出の対象期間が限定される点に注意。
-
40字以内の文章制限
- 解答に不要な説明を加えすぎると字数オーバーになるので、機能名称を活用して簡潔にまとめる必要がある。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
- 業務システムでは「日時」の記録が重要であり、時間差(所要時間)の算出は効率化効果の代表的な指標である。
- システム機能の名称やデータ項目名を正確に把握し、それらを用いて回答文を簡潔にまとめることが高評価につながる。
- 複数の期間・段階の計測項目が存在する場合は、問題文で定めた定義やシステム設計と照合して正確にイメージをつかむ。
- 月次集計などの集計条件は必ず設問やシステム機能の説明から読み取り、対象データの抽出条件を明確に理解しておくこと。
- 電子化の要望事項によりペーパレス化やステータス管理が導入されるので、これらに伴う日時管理も正しく把握しておこう。
以上を踏まえると、模範解答の通り、「申込書データの払込方法選択日時」と「申込日時」の差を使って所要時間を算出することが、問題文の定義に基づいた最適な対応となります。
設問3(2):実績集計機能について,1),(2)に答えよ。
表中の下線⑤は,どのような値を算出すればよいか。表1中の機能概要中の字句を用いて35字以内で述べよ。
模範解答
連携日時が当月である申込書データの,連携日時と申込日時の差
解説
模範解答の核心となるキーワードや論点
- 「連携日時が当月である申込書データ」
- 「連携日時と申込日時の差」
- 「申込書データの連携日時」「申込日時」
- 新システムでの「申込書データ連携」機能と「実績集計」機能の関係
なぜその解答になるのか(論理的説明)
問題文の【新システムで実装する機能】にある実績集計の箇所から引用すると、
・効率化の効果を計るために、ペーパレス手続の申込書データから
④ 当月に申込手続業務が完了した申込の手続所要時間 と、
② 当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込到着所要時間
を収集し、それぞれの平均を計算して報告する。
この「申込到着所要時間の平均」を算出するときの要件は、
- 「当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込到着所要時間」
という表現に対して、所要時間を算出する期間の開始と終了の指標となる日時が必要です。
表1の「申込書データ連携」機能の説明によると、
したがって、申込書データの「連携日時」が「契約管理システムへの連携完了日時」に該当し、これが期間の「終了日時」となる。
また、「申込日時」は、
から、申込書データの「申込日時」が「申込手続業務開始の日時」のことを指す。
以上より、
「申込到着所要時間」とは「申込書作成日時(申込日時)」から「契約管理システムへの連携完了日時(連携日時)」までの差分時間を指すことがわかる。
さらに、効率化の効果を測るために「連携日時が当月である申込書データ」に限定して算出する必要があるため、
「連携日時が当月である申込書データの、連携日時と申込日時の差」
を算出するのが妥当である、というのが模範解答の内容です。
受験者が誤りやすいポイントやひっかけ
-
「申込書到着所要時間」とは何かの理解不足
「申込書到着所要時間」は現行業務の定義で、問題文には、「申込書作成開始から契約管理システムに申込書が到着し入力されるまでの時間」とあります。新システムでは「契約管理システムに連携した日時」と「申込日時(申込書作成日時)」でこれを表している点を捉えられない受験者が多い。 -
「申込日時」と「連携日時」の混同
何を起点にどの日時を終点に計算するのかがあいまいになると、回答がズレる。特に「申込日時」より前の「提案書作成日時」や「申込確認日時」と混同すると不正解の可能性が高まる。 -
「当月」の適用範囲
「当月に連携が完了した申込書データ」とすることで対象データを絞っているため、「申込日時が当月」や「申込書作成が当月」などと勘違いしやすい。 -
用語や表現の字数制限
35字以内で簡潔に表現する必要があるため、機能概要にある「連携日時」「申込日時」という正式名称を使い、冗長な説明を避けることがポイント。
試験対策として覚えておくべきポイントや知識
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要件と業務定義から時間を特定する力を養うこと
業務のどのタイミングとどのイベントの日時を使って所要時間を算出するか、要件に落とし込めることが重要です。 -
ITシステムでの日時管理のポイント
・申込日時は「作成開始日時」であること
・連携日時は「契約管理システムへデータ転送完了日時」であること -
「当月」「完了したデータ」の条件設定に注意すること
集計対象の絞り込み条件は設問文や機能説明で必ず確認し、間違わないように。 -
字数制限のある記述問題ではシステムの機能名や用語を使って簡潔に述べる
長文は不利なので、正式名称を使ってポイントのみを的確に示しましょう。
以上のポイントを押さえて「申込到着所要時間は、連携日時が当月の申込書データにおいて、連携日時と申込日時の差である」という理解を持つことが、正確かつ簡潔な回答につながります。