システムアーキテクト試験 2023年 午後103


融資保証システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。

 L社は、大手クレジットカード会社である。L社は、融資保証で利用している融資保証システム(以下、現行システムという)の老朽化に伴い、新システムを構築することにした。   〔融資保証の概要〕  L社は、金融機関と提携し、法人顧客(以下、顧客という)に融資保証をしている。融資保証をすることで、顧客から所定の信用保証料(以下、保証料という)を受け取り、万が一、顧客の借入金の返済が滞った場合に、顧客に代わって金融機関に立替払をする。L社が融資保証をすることで、顧客には金融機関から融資枠の拡大や融資を受けやすくなるというメリットがある。融資保証の概要は、次のとおりである。
 (1)申込み   顧客は、事業資金を調達するために、金融機関へ融資の申込みと同時にL社への保証委託を申し込む。L社への保証委託の申込みは、金融機関を通じて行う。  (2)承諾   L社は、顧客の事業内容、経営計画や申込人である顧客代表者の信用情報などを確認し、保証可能と判断した場合は金融機関に保証を承諾する旨を連絡する。  (3)融資   金融機関は、顧客と融資契約を締結し、顧客へ融資を実行する。この際、顧客は、所定の保証料を、金融機関を通じてL社へ支払う。L社は、金融機関と保証約を締結し、顧客と保証委託契約を締結する。  (4)返済   顧客は、返済条件に基づき借入金を金融機関に返済する。  (5)代位弁済   諸事情で顧客の借入金の返済が滞った場合、金融機関からの請求に基づき、L社が借入金残高の全額を顧客に代わって金融機関に立替払をし、その後、顧客はL社に返済する。    それぞれの契約関係の概要を図1に示す。   システムアーキテクト試験(令和5年 午後I 問3 図1)
  〔現在の業務と現行システムの概要〕  L社では、現行システムを利用し、融資保証をしている。金融機関と事前に締結している保証取引基本契約に基づき決められた融資保証の条件を融資保証商品(以下、商品という)として管理している。金融機関からの融資保証の申込みは、金融機関側の都合によりファックス(以下、FAXという)で受け付けている。申込みには、新規申込と契約変更申込の二つの種別(以下、申込種別という)があり、申込種別の単位に異なるFAX番号を設定して、金融機関と申込種別の単位で担当者を割り当てている。また、個人情用情報を外部用機関から取得し、審査に利用している。L社では、全てのシステムで遵守が求められている情報セキュリティ規則で、外部用機関との接続は特定の端末(以下、外信端末という)に限定しており、社内のネットワーク及びシステムとの接続を許可していない。現在の主な業務と現行システムの概要は、次のとおりである。ここで、契約変更申込の業務は省略している。  (1)保証申込業務   L社は、金融機関から顧客の財務諸表、保証委託契約申込書及びその他必要な書類(以下、申込書類という)をFAXで受する。申込対象の商品は、保証委託契約申込書に記載されている。商品ごとに必要な申込書類が異なっており、担当者は必要な申込書類とその内容を業務マニュアルで確認している。申込書類に不備があった場合、FAX送元の金融機関に問い合わせる。不備がなかった場合、現行システムに申込書類の内容を入力し、保証案件として登録する。現行システムは、保証案件の契約状態を管理しており、保証申込の受付時の契約状態を“受付中”にする。  (2)保証審査業務   担当者は、申込書類の記載内容を基に申込人の個人信用情報を外信端末で確認し、確認した内容を現行システムに入力する。また、顧客の売上高、用格付及び商品ごとの保証料の算出に用いる利率から保証料を計算し、現行システムに入力する。審査に必要な内容を現行システムに入力した後、保証審査を決裁者に依頼する。決裁者は、現行システムに入力されている保証案件の内容を確認して審査を行い、保証可能と判断した場合、可決と判定し、契約状態を“実行待ち”にする。保証不可能と判断した場合、否決と判定し、契約状態を“無効”にする。担当者は、契約状態を基に回答書を作成し、金融機関へFAXで送信する。回答書には、判定の結果と保証可能な場合だけ保証料を記載している。  (3)保証料入金及び保証契約書類受領業務   金融機関で顧客に融資が実行された際、顧客が金融機関を通じて保証料を入金する。L社は、保証料が全額入金されていること、及び金融機関から保証契約書類を受領していることを確認し、対応する保証案件の契約状態を“実行中”にする。また、外部信用機関に保証開始の報告をする。  (4)融資残高管理業務   L社は、金融機関から融資残高のデータ(以下、残高データという)を、毎月、第1営業日に受領する。金融機関から送付された残高データを現行システムに取り込み、保証案件ごとに融資残高を更新する。完済された融資があった場合、対応する保証案件の契約状態を“終了”にして、外部用機関に保証完了の報告をする。また、担当者は、必要に応じて現行システムを参照し、融資残高レポートを作成して経営層に報告している。融資残高レポートには、全ての保証案件が代位弁済になった場合にL社が金融機関に支払う金額を記載する。  (5)代位弁済管理業務   金融機関から代位弁済請求書を受領した場合、対応する保証案件の契約状態を“代弁”にする。契約状態が“代弁”となった保証案件は、債権管理システムに登録し、その後の業務を債権管理システムで実施する。  
〔新システムへの要望〕  新システムに対して、利用部門の担当者から次のような要望が出された。  (a)インターネット経由で申込みができるポータルサイトを金融機関に提供したい。ポータルサイトでは、金融機関から審査状況の問合せや保証申込の結果を照会できるようにしたい。ただし、ポータルサイトが利用できない金融機関もあるので、FAXでの受付は継続したい。  (b)FAXで受信した申込書類を電子化し、新システムで参照できるようにしてほしい。また、受信した申込書類を一覧化し、担当者を割り当ててほしい。  (c)申込書類の内容を新システムに入力する業務を効率的にしてほしい。  (d)業務マニュアルを用いて実施している、必要な申込書類がそろっているかどうかのチェックを新システムで行ってほしい。  (e)外部用機関から情報を取得する機能を設けて、新システムで確認できるようにしてほしい。  (f)保証審査業務で必要な保証料を新システムで算出してほしい。  (g)保証審査業務で決裁者が審査する前に、新システムで確認可能な項目を用いて顧客に関する1次審査を行ってほしい。  (h)新システムで作成した回答書をFAXで金融機関に送付してほしい。  (i)保証申込業務と保証審査業務の作業の進捗状況が分かるようにしてほしい。  (j)金融機関からの保証料の入金を入金データとして新システムに取り込み、保証案件と突合してほしい。また、保証料が全額入金されたことが分かるようにしてほしい。  (k)保証可能と判断した後に、ある条件を満たした場合、新システムで契約状態を“実行中”に変更してほしい。  (l)融資残高レポートを新システムから出力してほしい。  
〔新システムの方針〕  L社情報システム部のM課長は、次のような新システム構築の方針を立てた。①新システムへの要望のうち、一部の要望は、ある理由から新システムへの実装はL社として不適合と判断し、見送ることで利用部門と合意した。  ・保証申込業務と保証審査業務の作業の進捗状況の可視化を目的として、保証案件に申込状態を設けて、管理する。  ・保証料が全額入金されたことを管理するために、保証案件に入金状態を設ける。  ・保証契約書類を金融機関から受領したことを管理するために、保証案件に書類受領状態を設ける。  ・FAXで受信した情報を電子化するFAXサーバを導入する。FAXサーバからは、ヘッダー情報として送信日時、送信元FAX番号、受日時及び受情FAX番号、明細情報として申込書類イメージデータを取得する。  ・申込書類の内容を新システムに入力する業務の効率化を目的として、OCRを導入しFAXで受信した申込書類イメージデータを読み取る。  
〔新システムの設計〕  新システムへの要望と方針を踏まえ、M課長は、新システムの設計を次のように検討している。新システムの主な機能概要を表1に示す。
システムアーキテクト試験(令和5年 午後I 問3 表1)

設問1

本文中の下線①について、見送ることにした要望を〔新システムへの要望〕中の(a)~(l)で答えよ。また、見送ることにした理由を40字以内で答え
模範解答
要望:(e) 理由:情報セキュリティ規則で外部信用機関との接続は外信端末に限定しているから
解説

模範解答の核心キーワードと論点整理

  • 要望:(e) 「外部用機関から情報を取得する機能を設けて、新システムで確認できるようにしてほしい。」
  • 理由:情報セキュリティ規則で、外部信用機関との接続は外信端末に限定しているため、新システムと接続不可
  • 論点:情報セキュリティ規則の厳守とシステム連携制限

なぜこの解答になるのか(問題文の記述の引用と論理的説明)

設問は、「新システムへの要望のうち、ある理由により実装が不適合と判断され見送ることにした要望はどれか」、およびその理由を問うものです。
要望一覧から、見送ったものは(新システムの方針にある)「ある理由から不適合と判断し見送ることにした」要望とされています。

問題文の記述から、重要な鍵となる部分は以下です。
「L社では、全てのシステムで遵守が求められている情報セキュリティ規則で、外部用機関との接続は特定の端末(外信端末)に限定しており、社内のネットワーク及びシステムとの接続を許可していない。」
これは非常に重要な制約です。情報セキュリティ上、外部信用情報の取得は「外信端末」を通じて行い、社内の他システム(現行システムや新システム含む)との直接的なデータ連携や通信はできません。

一方、新システムへの要望(e)は、下記のように記載されています。
(e)外部用機関から情報を取得する機能を設けて、新システムで確認できるようにしてほしい。

つまり、この要望は「新システムが直接、外部信用機関から情報を取得し、画面等で確認できる機能を持つこと」を求めています。しかし、情報セキュリティ規則により外部用機関との接続は外信端末に限定され、新システムは外信端末経由での情報取得や直接接続が許されていません。

したがって、要望(e)の実装は情報セキュリティ規則に抵触し、現状は不適合なため見送られたと判断できます。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  • 他の要望と混同しやすい点
    要望(a)はポータルサイトによる申込機能の拡充であり、要望(e)は外部信用情報の取得機能です。
    どちらも「新しいシステム機能」であり、似ているため誤選択されやすいですが、(a)は許容されている点を理解しましょう。
  • 情報セキュリティ規則の具体的な制約の見落とし
    「外部用機関との接続は外信端末に限定し社内ネットワークとの接続不可」という記述を正確に把握していないと、(e)の実装が可能と思い込んでしまう恐れがあります。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント詳細
外部接続とセキュリティ業務システムが外部信用情報機関等と接続する場合、情報セキュリティ規則やネットワーク構成の制約を受けることが多い。外部端末を経由し、直接システムへの接続は不可となるケースがある。
システム実装の適否判断要望をそのまま実装できるとは限らない。法規制やセキュリティ規則、運用ルールで不可能な項目は「見送り」とされることがある。
要望の違いの正確な理解新システムへの要望は似た内容でも区別が重要。(例:ポータルサイト申込み対応と外部信用情報取得機能は別物)
情報処理技術者試験では文章中の制約を丁寧に読み取り、正確に条件を把握することが重要

以上を押さえておくことで、要望の実現可否を判断する問題に対応しやすくなります。

設問2

FAX受管理機能について、表1中の(a)~(d)に入れる適切な字句を答えよ。(a,b と c,dの組合せは順不同)
模範解答
a:送信元FAX番号 b:金融機関 c:受信FAX番号 d:申込種別
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理

  • **FAXサーバから取得する「ヘッダー情報」**として、「送信日時、送信元FAX番号、受日時、受信FAX番号」がある。
  • 「送信元FAX番号」から、送信元の金融機関を特定する。
  • 「受信FAX番号」を解析して、どの**申込種別(新規申込、契約変更申込)**のFAX番号かを判断し、担当者を割り当てる。
  • これらの情報を基にFAX受信管理機能は担当者割当や一覧表示を行う。

2. 解答が導かれる論理的説明

問題文の新システムに関する記述からの引用を踏まえます。
  • FAX受信管理の機能として「FAXサーバから取得したヘダー情報(送信日時、送信元FAX番号、受日時、受信FAX番号)」を利用し、
  • 「FAXサーバからは、ヘダー情報として送信日時、送信元FAX番号、受日時及び受信FAX番号を取得する。」
  • また、「申込種別の単位に異なるFAX番号を設定して、金融機関と申込種別の単位で担当者を割り当てている」ことが現状として示されています。
これにより、
  • 送信元FAX番号(a)は、申込みを送ってきた金融機関を特定し(b)、
  • 受信FAX番号(c)は、FAXを受け付けたFAX番号であり、この番号によってどの申込種別(新規申込か契約変更申込か)か(d)が判断される、
という関係になります。
つまり、
項目意味・役割
a:送信元FAX番号申込みを送信してきた「金融機関」を示す
b:金融機関申込みを行う取引先の組織名(送信元に該当)
c:受信FAX番号受信側のFAX番号(申込種別を判別する受付番号として機能)
d:申込種別新規申込か契約変更申込か、FAX番号で区別されている項目
この構造により、FAX受信管理機能が受信FAXの送受信情報から担当者割当を行い、申込み情報を効率的に処理できるようになります。

3. 受験者が誤りやすいポイントと理由

  • 「送信元FAX番号」と「金融機関」の区別があいまいになりやすい。
    「送信元FAX番号」は番号そのもの、「金融機関」は組織(社名等)を指します。
    送信元FAX番号はあくまで「金融機関を特定するための情報」である点を押さえましょう。
  • 「受信FAX番号」と「申込種別」が逆になる誤認
    受信FAX番号は申込種別ごとに異なる番号を割り当てているので、受信FAX番号 → 申込種別という関係が正しいですが、
    「申込種別をもとに受信FAX番号を特定」と誤解すると逆になります。
  • どちらもFAX番号という表現につられて「送信元・受信元」の区別を誤る。
    位置的イメージ(送る側・受ける側のFAX番号)が大事です。

4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • FAX受信時のヘッダ情報には「送信日時」「送信元FAX番号」「受日時」「受信FAX番号」があることを押さえる。
  • 「送信元FAX番号=申込み元の金融機関を特定するためのキー」になっている。
  • 「受信FAX番号=申込種別ごとに異なる番号が設定されている」ため、受信した番号で申込種別や担当者割当が可能。
  • 顧客や取引先からの申込みや情報を受ける際は、「送信元」と「受信先」の番号を混同しないこと。
  • 新システム構築や設計の問題では、「現状の業務ルールをどのようにシステム設計に反映するか」がよく問われるため、問題文中の「現行の業務の運用ルール」に注意して読むこと。

空欄模範解答解説まとめ
(a)送信元FAX番号申込み元金融機関を特定するために必要なファックス番号
(b)金融機関申込みを行う取引先組織名
(c)受信FAX番号送付先のFAX番号、申込種別ごとに異なる番号が設定されている
(d)申込種別新規申込か契約変更申込かなどFAX番号で判別される区分
以上を覚えておけば、本問のようなFAX関連のシステム設計問題でミスを減らすことができます。

設問3

実行管理機能において、ある条件がそろった場合に保証案件の契約状態を“実行中”に変更している。その条件を設定している機能を表1中の機能名から全て答えよ。
模範解答
保証料管理,書類管理
解説

1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 「実行管理機能」で契約状態を「実行中」に変更する条件は複数の状態を満たすこと。
  • その条件とは、「保証料が全額入金済」かつ「保証契約書類を受領済」であること。
  • これらの状態を管理している機能は「保証料管理」と「書類管理」。
  • よって、実行管理機能はこれらの機能が管理する状態を基に契約状態を更新している。

2. なぜその解答になるのか(問題文の引用を交えた論理的説明)

新システムの設計概要(表1より)で、「実行管理」機能は以下のとおり説明されています:
・契約状態が「実行待ち」の保証案件のうち、ある条件がそろった保証案件について契約状態を「実行中」に変更する。
しかし、この「ある条件」の詳細は直接示されていません。条件の要素を探るため、関連する機能の説明を確認します。
まず、重要なのは「保証契約の実行」は、以下の状態を満たす必要があることが、要望および方針の中で示されています:
  • 保証料が全額入金されていること
    → 新システムへの要望(j)に対応し、
    「保証料が全額入金されたことを管理するために、保証案件に入金状態を設ける。」とM課長の方針で記述
    → 「保証料管理」機能は
    ・保証料の入金データと保証案件を突合し、保証料が全額入金されている場合、入金状態を「入金済」に更新する。
  • 保証契約書類を金融機関から受領していること
    → 方針で
    「保証契約書類を金融機関から受領したことを管理するために、書類受領状態を設ける。」と明記
    → 「書類管理」機能は
    ・保証契約書類を金融機関から受領した際、当該保証案件の書類受領状態を「受領済」に更新する。
この両方は保証契約を実行状態に遷移させる前提条件として重要です。
したがって、「実行管理」機能はこの2つの状態「入金済」と「受領済」という状態を内包する「保証料管理」と「書類管理」の結果を受けて、契約状態を「実行中」へ変更するわけです。
以上が【問題文】に基づく根拠となり、模範解答として「保証料管理,書類管理」が正解となる理由です。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの注意点

ひっかけ1:単に「実行管理」機能だけと思う誤り

問題では「実行管理機能において…契約状態を“実行中”に変更している」とありますが、実際に条件設定を「実行管理」機能だけで完全に行っているのではなく、条件となる入金状況や書類受領状況の管理は別の機能で担っています。これらの機能(「保証料管理」「書類管理」)が条件を設定し状態管理を行って初めて「実行管理」が契約状態を変更できます。

ひっかけ2:関連する他の機能(例:「保証案件管理」、「保証料管理」のみ)を単独で選ぶ誤り

「保証料管理」は保証料入金を管理しますが、書類管理まで含まれず、片方だけ選ぶのは不完全です。同様に「書類管理」だけ選ぶのも局所的すぎます。両者をセットで捉える必要があります。

ひっかけ3:ファンクション名の読み違い

例えば「保証案件管理」や「審査管理」など強そうな名前が出ると、それが「実行中」に関係すると誤認しやすいが、それらは別の段階の処理機能であり実行開始の条件設定とは異なります。

4. 試験対策として覚えるべきポイント・知識

ポイント内容説明
実行中状態に進むための条件保証料の全額入金と保証契約書類の受領の2点を満たすことが重要。
状態管理は分かりやすく役割分担入金・書類状況は各専門機能が管理し、実行管理はそれをトリガーに変更する。
機能名で判断はせず、機能概要を確認設問では機能名だけでなく概要をよく読み、具体的な責務を把握することが重要。
要望と方針文を利用する新システムの要望と方針の記述は問題の答えの根拠となるため確実に理解する。

以上の論点を押さえることで、過去問の類似問題に対応できるだけでなく、ITシステム構築や業務設計の理解も深まります。

設問4(1)融資残高管理機能について答えよ。

融資残高がゼロになった保証案件の一覧を出力した帳票の利用目的を、業務的観点から25字以内で答えよ。
模範解答
外部信用機関に保証完了の報告をするため
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 「融資残高がゼロになった保証案件の一覧を帳票に出力する」
  • 「契約状態を『終了』に更新する」
  • 「外部信用機関に保証完了の報告をする」
  • 業務的観点での「保証完了の報告」目的

なぜこの解答になるのか(論理的説明)

問題文の「融資残高管理業務」内の記述に次の内容があります。
・金融機関から送付された残高データで、契約状態が「実行中」の保証案件の融資残高を更新する。
・融資残高がゼロになった保証案件の契約状態を「終了」に更新する。
・融資残高がゼロになった保証案件の一覧を帳票に出力する。
・融資残高レポートを出力する。
さらに、現行システムの説明部分に、
完済された融資があった場合、対応する保証案件の契約状態を“終了”にして、外部用機関に保証完了の報告をする。
という文が存在します。
このことから、 融資残高がゼロつまり顧客の借入が完済された保証案件について、その完了(保証契約の終了)を外部の信用機関に報告するために該当案件の一覧を帳票にまとめる運用がなされていることがわかります。
したがって、帳票の利用目的は「外部信用機関に保証完了の報告をするため」と結論づけられます。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • **「融資残高がゼロ=融資が完済=契約終了」**の理解が不十分なこと
    → 融資残高がゼロは保証の必要がなくなった状態であり、「代位弁済」や「実行中」とは異なる契約状態です。
  • 帳票の「利用目的」として、残高管理や経営報告を誤って選ぶ場合
    → 「経営層への報告」や「社内管理」などの選択肢は別で、今回は「外部信用機関への報告」が目的です。
  • 保証料入金確認や代位弁済処理などの別業務と混同すること
    → 問題文の融資残高管理業務内の「保証完了報告」を正確に押さえることが必要です。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
「融資残高ゼロ」時の業務処理契約状態を「終了」に変更し、保証完了とみなす
完済保証案件の扱い外部信用機関に保証完了の報告を必ず行うこと
帳票利用目的の理解業務プロセス上の意図(外部報告、契約管理など)を意識する
契約状態の種類「受付中」「実行中」「終了」「代弁」など状態の意味を正確に理解する
類似用語の区別代位弁済と完済終了の違いを明確に区別できるようにする
これらのポイントを押さえておくことで、業務理解を伴った適切な解答が可能となります。

まとめ

  • 問題文は「融資残高がゼロになった保証案件一覧」の帳票利用目的を問うている。
  • 完済案件は契約状態「終了」となり、「外部信用機関に保証完了の報告をするため」に帳票を出力する。
  • 紛らわしい契約状態や他業務と区別し、「保証完了の報告」が正答となる。
  • 試験では業務フローや契約状態の意味を正確に把握し、帳票等の利用目的を業務視点で考えることが重要。
この理解が合格に向けた効果的な知識として有効です。

設問4(2)融資残高管理機能について答えよ。

融資残高レポートに記載する“L社が金融機関に支払う金額”を求める方法を、契約状態を用いて35字以内で答えよ。
模範解答
保証案件の契約状態が“実行中”である融資残高を合計する。
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 契約状態:特に「実行中」の保証案件を対象とすること
  • 融資残高:融資残高の合計を求めること
  • L社が金融機関に支払う金額=顧客の借入金返済が滞った際にL社が立替える可能性のある金額
  • 対象の保証案件を区別する条件として契約状態の利用

解答の根拠と論理的説明

問題の融資保証システムは、L社が保証した融資のうち、顧客が返済しきれなかった場合に立替払う仕組みです。この「万が一の支払い金額」を融資残高を基に想定し、レポートに記載する必要があります。

「契約状態"実行中"」の意味

【問題文】融資残高管理業務の説明に以下の記述があります。
・L社は、金融機関から融資残高のデータを毎月受領し、現行システムに取り込み、保証案件ごとに融資残高を更新する。
・完済された融資があった場合、対応する保証案件の契約状態を「終了」にする。
・融資残高レポートには、全ての保証案件が代位弁済になった場合にL社が金融機関に支払う金額を記載する。
また、新システムの設計では、
機能名内容
融資残高管理契約状態が「実行中」の保証案件の融資残高を更新
融資残高がゼロになった保証案件は契約状態を「終了」に更新
融資残高レポートを出力
このことから、「実行中」の契約状態は、顧客がまだ返済中の融資保証案件を指し、L社の保証責任が継続している案件を表します。つまり、L社が代位弁済せざるを得ない可能性がある案件です。

レポートに記載する「L社が金融機関に支払う金額」の意味

融資残高レポートに記載されるのは、
  • 顧客が返済できない場合にL社が立替払うべき金額の推計
  • したがって、支払い義務が生じる可能性のある融資残高の合計
となります。

まとめ

  • 「契約状態が“実行中”」の案件の融資残高の合計額を集計すれば、
  • L社が金融機関に支払わなければならない潜在的金額が算出できるので、
  • 融資残高レポートに記載する金額はこれにあたる。

誤りやすいポイントと注意点

  1. 「代弁」や「終了」の契約状態の融資残高を含めない
 - 「代弁」はすでにL社が立替払を行った案件であり、残高の実態は別管理の債権管理に移っているケースが多いので、レポートに含めない。
 - 「終了」は完済済みで残高がゼロの案件なので、支払い義務は無い。
  1. 全ての保証案件の残高合計を含める誤り
 - 保証案件のうち、実際に返済中のものだけを対象としている点に注意。
  1. 申込み段階や審査中の契約状態の案件を含めてしまう誤り
 - まだ融資が実行されていない段階の案件は、返済残高が存在しないため含めない。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • システム管理では「契約状態」の利用が重要で、案件ごとの状態に応じて処理や集計対象が変わる。
  • 融資保証のような金融系業務では、返済中の融資残高がL社のリスク負担額(代位弁済可能額)として扱われる。
  • 状態管理は「実行中」「終了」「代弁」等の状態を正しく理解し、対象範囲を明確に切り分けること。
  • 問題文中の「契約状態」や「申込状態」の意味内容を丁寧に読み取り、設問で問われている指示と対応させる習慣をつけること。

以上のポイントを押さえることで、「融資残高レポートに記載すべきL社の支払額」は「保証案件の契約状態が“実行中”である融資残高の合計」と即答でき、正答率が上がります。

設問5

新システムへの要望を実現するために新システムで新たに商品ごとに管理しなければならない内容を、30字以内で全て答えよ。
模範解答
申込書類のチェックのルールと保証料の算出に用いる利率
解説

解説:新システムで商品ごとに管理すべき内容について


1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 申込書類のチェックのルール
  • 保証料の算出に用いる利率
これら2点が、新システムで「商品ごと」に管理する必要がある内容です。

2. なぜこの解答になるのか(問題文の記述を基に説明)

問題文によると、L社は金融機関と締結した保証取引基本契約に基づき、融資保証の条件を「融資保証商品(商品)」として管理しています。商品ごとに融資保証の条件が異なっており、
  • 「申込書類ごとに必要な書類が異なる」ため、
  • 「商品ごとに必要な申込書類のチェックのルール」
  • 「保証料算出に用いる利率が商品ごとに異なる」
ことが明記されています。
具体的には、次の記述が根拠となります。

申込書類のチェックルール関連

「商品ごとに必要な申込書類が異なっており、担当者は必要な申込書類とその内容を業務マニュアルで確認している。」
(新システムの要望d)
>「業務マニュアルを用いて実施している、必要な申込書類がそろっているかどうかのチェックを新システムで行ってほしい。」
(新システム設計・保証案件管理の機能)
>「申込書類のチェックのルールに基づいて書類がそろっているかをチェックする。」
これらから、「申込書類のチェックルール」は商品ごとに異なるため、商品情報として管理する必要があります。

保証料算出に用いる利率関連

保証料の計算には「顧客の売上高」「与信格付」及び「商品ごとの保証料の算出に用いる利率」から算出する旨が記載されています。
(新システム設計・保証案件管理の機能)
>「審査に必要な情報が登録された後、保証料を算出する。」
この保証料の算出に関わる「利率」は商品ごとに異なるため、商品管理で保持すべき情報です。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけやすい選択肢

  • 「必要な申込書類の種類」だけを答えてしまう
    →「申込書類の種類」は商品ごとに異なりますが、システムで管理するのはそれら書類の整合性を判定する「チェックルール」そのものである点が重要です。単に「必要書類」だけではなく「チェックのルール」まで含めて管理する必要があります。
  • 「保証料を算出する係数や計算式」と答えず「保証料の金額」など固定値と誤解する
    →保証料は顧客情報等で変動するため、商品ごとに異なる利率(計算に用いる尺度)を管理し、算出処理を行うのが正解です。
  • 「申込状態」「契約状態」など、保証案件単位の状態管理を答えてしまう
    →申込状態や契約状態は「保証案件」ごとの管理項目であり、「商品」ごとに管理するものではありません。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
商品ごとの管理項目申込書類のチェックルール、保証料計算に用いる利率
業務マニュアルの役割業務マニュアルに記載の「チェックルール」をシステムに取り込む
保証料の算出に必要な情報利率(商品ごとに異なる)、顧客情報、格付などを合わせて算出
状態管理と商品管理の区別状態管理は保証案件単位、チェックルールや利率は商品単位で管理

以上より、本問題の正解は
申込書類のチェックのルールと保証料の算出に用いる利率
となります。これは商品ごとに異なる重要な管理情報であり、新システムで商品情報に組み込むべき項目です。
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