システムアーキテクト試験 2024年 午後101


システムの統合に関する記述を読んで設問に答えよ。

 A社は、加工食品の製造・販売を行うメーカーである。 このたび、 乳飲料の製造・販売を行うB社を吸収合併することになった。 合併後も両社はそれぞれの工場で従来どおり製造を継続するが、 業務効率化のため、 システムは一つに統合することにした。   〔A社とB社の品目と工程の概要〕  両社は、仕入先から調達を行う原材料、 中間工程で製造される仕掛品、 最終工程で製造されて得意先へ販売する製品の三つを取り扱っている。 原材料、 仕掛品、 製品のそれぞれに属する品物を品目と呼ぶ。 両社の製造工程は、仕込、 調合、 殺菌、 充填の四つの工程から成り立ち、各工程では一つ以上の原材料又は仕掛品を投入し加工して、一つの仕掛品又は製品を製造する。 一つの仕掛品又は製品は、一つの工程で製造される。 製造の流れを図1に示す。
システムアーキテクト試験(令和6年 午後I 問1 図1)
 A社は、製品を見込生産しており、 製品の製造に数日を要する。 製品は数か月間保管が可能であることから、 在庫管理を行っている。 原材料も在庫管理を行うが、仕掛品は品目によって在庫管理を行うものと行わないものがある。  B社は、製品を受注生産しており、前日に受注した製品を全て当日に製造する。 製品は製造後、直ちに出荷されるので在庫管理を行わない。 また、 仕掛品も製造後、直ちに次の工程に投入されるので在庫管理を行わない。 原材料は表計算ソフトを用いて在庫管理を行っている・   〔A社の業務の概要〕  販売戦略部が策定した製品の販売計画を基に、 数か月先までの製品の生産計画を、日別品目単位に立案する。 その後、 販売実績を加味して、 製造日の2週間前に、生産計画を確定する。  A社では、 販売戦略上、 製品を生産計画で定めた期日までに効率的に製造することが求められている。 翌々週の生産計画に基づいて、 充填、 殺菌、 調合、 仕込の順番で各工程の所要時間を計算し、製品及び仕掛品の製造指示、 並びに仕掛品及び原材料の投入指示を、工程単位に作成する。  各工程の製造指示は、 期日に合わせて製造するためには遅くともいつから当該工程の製造を開始しなければいけないかを考えて、 開始予定日時を決定した上で作成する。 各工程の投入指示は、 製造指示数を基に、 必要となる原材料や仕掛品の数を計算して作成する。各工程の想定所要時間は、製造する数に比例する場合と、 数によらないで一定の時間を要する場合がある。 数に比例する工程は単位当たり所要時間、 一定の時間を要する工程は固定の所要時間が、製造される品目ごとに決まっている。  また、原材料について、 投入指示数と現在の在庫数に基づいて仕入先から調達する数を決定し、 納品日別品目単位の発注数を仕入先に送信する。  製造指示と投入指示に基づいて製造設備に原材料や仕掛品の投入を行い、 仕掛品又は製品を製造する。一つの品目は、 1日に1回まとめて製造する。  各工程の終了後すぐに、 製造担当者が製造実績及び投入実績を登録する。得意先からの受注に基づき製品を出荷する。 製品の製造実績、 出荷実績を基に製品の在庫管理を行う。   〔A社のシステムの概要〕  A社のシステムは、 計画システム、 生産管理システム、 販売管理システム、及びマスター管理システムで構成されている
 (1) 計画システムでは生産計画を管理する。 販売戦略部が策定した製品の販売計画を取り込む。 販売管理システムから販売実績データ及び製品の在庫数を取得し、製品の生産数を決定して生産計画データを作成する。  (2) 生産管理システムでは、 計画システムから翌々週の製品の生産計画データを取得する。 製品の生産数を基に、各工程の所要時間を計算して、 製品及び仕掛品の工程単位の製造データを作成し、 その製造データを基に、 所要量マスターを使って投入品目ごとに投入指示数を決定し、 投入データを作成する。 全てのデータが出そろったら、製造日時などの重なりを調整して製造データ及び投入データの修正を行う。   全ての投入データ作成後に、 集計した投入指示数を原材料の在庫数から減算した結果が、 別途定められた最低在庫数を下回る場合は、仕入先から調達する。 仕入先へは、1日に1回、 A 社で定めた様式の発注書を添付して、 電子メールで送信する。   各工程の製造が終了した時点で、製造担当者がタブレット端末を用いて、 製造データ、投入データの実績を登録する。 これらの実績を用いて、 原材料及び在庫管理が必要な仕掛品について、 在庫データを更新する。製品の製造工程に関する製造データを、 販売管理システムに送信する。 また、 夜間に工場の稼働率などの管理指標値を集計し、 翌日に本社から参照可能にする。  (3) 販売管理システムでは、 製品の受注、出荷、 在庫管理を行う。 出荷データ、 生産管理システムから受信した製品の製造工程に関する製造データで製品の在庫データを更新する。 また、 販売実績データ及び製品の在庫数を計画システムに送信する。  (4) マスター管理システムでは、品目マスターや工程マスターなどに設定が必要なデータを入力し、 各システムに送信する。   A社の生産管理システムの主要なファイルと主な属性を表1に示す。
システムアーキテクト試験(令和6年 午後I 問1 表1)
 品目マスターでは、 原材料、 仕掛品、 製品を区分するために、 品目分類を設定して管理している。 各品目は、 その特性に応じてキログラム、 リットル、 個といった単位-4-〔Page 5〕で管理されており、 生産数、 製造指示数などはその単位で数えた数である。 また、 品目によっては在庫管理を行わないものがあるので、 在庫管理有無フラグを設定して管理している。 工程マスターでは、各工場で、 全ての工程に、 製造品目コード及び工程が一意に決まる工程コードを付与して管理している。
〔B社の業務の概要〕  得意先からの受注に基づき、 翌日の製品の生産予定数と翌日の製造の開始予定時刻及び終了予定時刻を、 品目単位に立案する。 一つの製品を、 1日に複数回製造する場合がある。  翌日の生産予定に基づいた各工程の製造指示を作成する。 また各工程で必要となる原材料や仕掛品の数を計算し、投入指示を作成する。  作成した投入指示を基に、 必要な原材料と数を、 表計算ソフトを用いて集計する。集計した投入指示数を原材料の在庫数から減算した結果が、 別途定められた最低在庫数を下回る場合は、仕入先から調達を行うことにし、 発注書を添付して電子メールで送信する。 発注書の様式は、各仕入先の要望に応じて表計算ソフトを用いて作成しており、複数の様式が存在する。  製造指示に基づき仕掛品又は製品を製造し、 製品は、 製造後に得意先に出荷される。  製造担当者が、 製造現場で製造実績と投入実績を手書きで記録表に記入する。 月次処理で、 製造実績と投入実績の集計表を出力するために、 月末に記録表を参照し、 まとめて生産管理システムに入力しているが、転記ミスの発生が問題視されている。 また、製造担当者の月末の入力作業の負荷が高いこと、 及び本社管理部門で管理指標値が翌月にならないと確認できないことが問題となっている。  
〔B社のシステムの概要〕  B社のシステムは、受注出荷システムと生産管理システムで構成されている。  (1) 受注出荷システムでは、 得意先から EDI を用いて受注データを受信し、得意先ごとの受注データの仕様に合わせたデータ交換プログラムが稼働している。   受注データは、受注出荷システムに蓄積されるとともに、 生産管理システムに送信される。 受注出荷システムでは受注修正、 出荷実績登録、 及びマスターデータの入力を行っている。  (2) 生産管理システムでは、製造指示・投入指示作成、 原材料調達及び製造実績・投入実績入力並びにマスターデータの入力を行っている。 また、 製造実績や投入実績を製造の翌月に集計し、 本社管理部門に帳票として提供している。  
〔システム統合の方針〕  ・B社のシステムは廃止し、 A社のシステムに一本化する。・  ・B社はできるだけ、 A社のシステムをそのまま用いる。 製品の製造については現行どおりとするが、 業務の運用もできるだけA社の運用に合わせる。 どうしても対応できない部分に対してだけ、 改修や追加を行う。  ・B社のマスターは全てA社のマスターに移行する。B社のコードをA社のコードに読み替えるが、 A社で使われていないコードは、新たにコードの割当てを行う。品目マスターの移行では、 ①B 社になかった在庫管理有無フラグには、 ある規則に従って値を設定する。  ・B社の製品を現行どおりに製造できるよう、②ある属性を表1 中の二つのファイルの主キーに追加する。  ・A社の販売管理システムには EDI の機能がないので、 得意先ごとの受注データの仕様に合わせたデータ交換については、 B 社の EDI の機能に必要な修正を加えた上で、統合後の販売管理システムに取り込む。  ・統合後の生産管理システムに、 B 社の得意先からの受注データを基に、翌日の製造データ及び投入データを作成する機能を追加する。  ・B社の原材料調達業務を実施するに当たり、 仕入先に変更点を説明して、 仕入先に業務手続を変更してもらうよう依頼する。  
〔システム稼働後の評価〕  統合したシステムの稼働後、合併前にB社で行っていた業務がどのように変わったかを評価し、 効果を次のようにまとめた。  ・記録表からの転記ミスがなくなり、 正確な数字が把握できるようになった。  ・③ある作業が削減されたことで、製造担当者の作業の負荷が平準化された。  ・本社管理部門における業務の改善が実現できた。

設問1(1)A社の製造データの作成について答えよ。

製造指示及び投入指示を作成する際,充填,殺菌,調合,仕込の順番で作成している理由は二つある。その一つは、後工程で算出された仕掛品の投入指示数に基づいてその仕掛品の製造指示数を決めるからである。もう一つの理由を40字以内で答えよ。
模範解答
製品を期日までに製造するために逆算して各工程の製造開始日時を決めるから
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点整理

  • 「製品を期日までに製造するために逆算」
  • 「各工程の製造開始日時を決める」
  • 「充填→殺菌→調合→仕込の工程逆順」
  • 理由の一つは「後工程の仕掛品の投入指示数に基づいて製造指示数を決定すること」
  • もう一つは「工程の開始予定日時を期日から逆算して決定すること」

2. なぜその解答になるのか

問題文のA社の業務概要にはこう書かれています。
「販売戦略上、製品を生産計画で定めた期日までに効率的に製造することが求められている。
翌々週の生産計画に基づいて、充填、殺菌、調合、仕込の順番で各工程の所要時間を計算し、製造指示を作成する。
各工程の製造指示は、期日に合わせて製造するためには遅くともいつから当該工程製造を開始しなければいけないかを考えて、開始予定日時を決定した上で作成する。」
つまり、製品を納期までに作り上げるためには、最後の工程である「充填」から逆に期間を遡って各工程の製造開始日時を決める必要があるのです。これは「逆算」の工程管理と呼ばれ、納期遅れを防ぎ効率よく生産するための重要な考え方です。
このように工程を後ろから順に処理する理由のひとつは、後工程で必要な仕掛品投入数を基に前工程の製造数を決めること(問題文の1つ目の理由)でした。もう一つは、工程ごとの開始予定日・時間を期日から逆に割り出して、生産計画通りに遅れなく製造を行うためなのです。

3. 受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「製造指示数と投入指示数の連鎖」は明確に1つの理由であり、これを二つ目と間違える受験者は少なくありません。
  • 「工程の所要時間計算」や「前工程からの正順処理」などはあくまで工程内の話であり、「なぜ充填から仕込みの順で処理するか」には直接紐づかないため誤答になりやすいです。
  • 「在庫管理の有無」など業務の細かい内容に混乱して論点をずらしてしまうこともあります。
  • 「単なる工程順序」や「生産数の計算」自体を理由とするのは不正解です。キモは「生産計画の期日に合わせて逆算しながら開始日時を決める」という目標にあります。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

  • 生産管理では工程を最終工程から逆順に処理し、工程開始時刻を逆算するのが基本的な考え方であること。
  • 理由は「納期に合わせて遅れなく各工程を開始し、完成させる」ためであること。
  • 「製造指示数=投入指示数の連鎖」と「逆算による開始時間決定」はセットで整理すること。
  • 工程を順番に処理する計算の流れ(充填→殺菌→…)と、実際の製造は前工程から行うことを混同しない。
  • 40字以内でまとめる練習をし、簡潔に「納期に合わせて逆算して開始日時を決める」というポイントを伝えられるようにする。

以上の理解ができていれば、本問題の狙いを押さえられます。製造管理や生産スケジューリングに関する基本的な知識として、ぜひ身に付けてください。

設問1(2)A社の製造データの作成について答えよ。

製造データを作成する際,各工程の想定所要時間はどのように求めるか。時間計算区分が“比例”又は“一定”のそれぞれについて,表1中の属性と,必要に応じて四則演算子を用いて答えよ。
模範解答
比例:所要時間×製造指示数 一定:所要時間
解説

模範解答の核心キーワードと論点整理

  • 時間計算区分
    工程マスターにある「時間計算区分」は「比例」または「一定」の2タイプがある。
  • 計算方法
    • 「比例」の場合 → 所要時間(単位時間) × 製造指示数
    • 「一定」の場合 → 所要時間(一律の時間)
  • 表1の該当属性
    ファイル名主な属性(下線は主キー)
    工程マスター工場コード, 工程コード, 製造品目コード, 工程名称, 時間計算区分(“比例”, “一定”), 所要時間
  • 製造データの「製造指示数」 属性:
    製造ファイルの中の 製造指示数 が、実際に作る品目の数量を示している。

なぜその解答になるのか(論理的説明)

問題文では、「各工程の想定所要時間について、製造する数に比例する場合と数に関わらず一定の場合がある」と説明しています。
「各工程の想定所要時間は, 製造する数に比例する場合と, 数によらないで一定の時間を要する場合がある。
数に比例する工程は単位当たり所要時間, 一定の時間を要する工程は固定の所要時間が, 製造される品目ごとに決まっている。」
これをシステム上の属性に落とし込むと以下のようになります。
  • 「時間計算区分」が「比例」の場合、工程マスターにある「所要時間」は「単位当たり所要時間」に相当するため、実際のかかる時間は
    所要時間 × 製造指示数
    となる。
  • 「時間計算区分」が「一定」の場合、所要時間は数量に依存せず、一定時間で済むため、
    所要時間
    をそのまま用いる。
これを踏まえて、製造データの製造指示数を使い、工程マスターの属性を参照して計算式を使う必要があります。

受験者が誤りやすいポイントと注意点

  1. 「比例」区分を単に「所要時間」だけで答えてしまうミス
    → 単位時間なので「製造指示数」と掛け算する必要があります。これを省略すると正確な所要時間を求められません。
  2. 「一定」区分でも製造指示数を掛ける誤り
    → 一定時間として決まっているため、数量に関係なくそのまま1つの値を使います。
  3. 「所要時間」の意味を混同すること
    → 「比例」の場合は単位当たりの所要時間、「一定」は固定の所要時間で、同じ「所要時間」という属性名でも意味が異なる点に注意してください。
  4. 「想定所要時間」と「所要時間」の混同
    → 「想定所要時間」は計算の結果得られる値で、「所要時間」はマスターの属性値です。問題文の設計上、「所要時間」は基数として使い、想定所要時間を求めることが理解できるかがポイントです。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 時間計算区分の基本パターンは「比例」と「一定」の2種類であること。
  • 「比例」は単位当たり時間 × 数量で計算することを必ず意識する。
  • 「一定」は数量に関係なく、固定時間として扱う。
  • 工程マスターにある属性「時間計算区分」や「所要時間」は、製造指示数と組み合わせて所要時間を導出する重要なデータである。
  • 実際の計算式が求められているので、四則演算(×)を用いた具体的な計算方法を答えること。

まとめ

時間計算区分計算式説明
比例所要時間 × 製造指示数単位あたりの所要時間 × 製造数
一定所要時間固定の所要時間
この理解は「製造計画や工程管理において、適正な作業時間を算出しスケジューリングを行うための基礎」であり、午後1試験の計画・生産管理分野で重要な知識です。

設問2(1)〔システム統合の方針〕について答えよ。

本文中の下線①で在庫管理有無フラグの値を設定する規則を,30字以内で答えよ。
模範解答
製品と仕掛品は“無”,原材料は“有”に設定する。
解説

模範解答の核心キーワード・論点

  • 在庫管理有無フラグ:品目ごとに在庫管理の有無を示すフラグ
  • 品目分類:「原材料」「仕掛品」「製品」
  • 在庫管理の運用実態の違い:A社とB社の運用の違いに基づく設定
  • 本文の指示:「品目マスターの移行では、B社になかった在庫管理有無フラグには、ある規則に従って値を設定する」

なぜその解答になるのか

本文中のA社の在庫管理の特徴は以下の通りです。
  • A社の業務概要より抜粋
「製品は数か月間保管が可能であることから、在庫管理を行っている。
原材料も在庫管理を行うが、仕掛品は品目によって在庫管理を行うものと行わないものがある。」
また、B社の業務概要では、
「製品は製造後、直ちに出荷されるので在庫管理を行わない。
また、仕掛品も製造後、直ちに次の工程に投入されるので在庫管理を行わない。原材料は表計算ソフトを用いて在庫管理を行っている。」
この違いを踏まえた統合時のルールとして、
「品目マスターの移行では、B社になかった在庫管理有無フラグには、ある規則に従って値を設定する。」
ということで、B社ではフラグがないため、
  • 製品と仕掛品は原則として在庫管理なし("無"に設定)
  • 原材料は在庫管理対象("有"に設定)
となります。これはA社の運用に合わせ統合後のシステムを統一するためです。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「仕掛品は品目によって在庫管理あり」とあるため、すべて仕掛品が「無」で良いのか迷う場合がある
    → B社の仕掛品は在庫管理しない運用なので統合後は基本的に「無」と設定する規則である点がポイント
  • 「製品は在庫管理を行う」としても、B社製品の運用は受注生産で在庫管理しないため、新規設定時は「無」とすることの理解不足
  • 原材料は例外なく「有」とするため、確認を怠ると「無」と誤設定しやすい

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 「在庫管理有無フラグ」は品目ごとに設定される重要な属性であり、統合時は運用に応じた値に統一することが基本
  • 製品・仕掛品・原材料の区分によって在庫管理の有無が異なる
  • 受注生産か見込生産かで在庫管理の要否が変わることがある
  • システム統合においては、異なる運用の統一ルールを見極める問題が出題されやすい

まとめ

品目分類在庫管理有無フラグ設定(統合時)
製品
仕掛品
原材料
これが、B社の品目マスターに在庫管理有無フラグがなかった場合に設定すべき規則です。問題文の記述と業務運用の整合を理解することで正答を導けます。

設問2(2)〔システム統合の方針〕について答えよ。

本文中の下線②で主キーを追加するファイルを二つ答えよ。また、追加が必要になったB社の要件を,30字以内で答えよ。
模範解答
ファイル①:製造 ファイル②:投入 要件:一つの製品を 1 日に複数回製造する場合があるという要件
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 主キーに追加するファイルは「製造」「投入」の2つ。
  • 追加が必要な要件は「一つの製品を1日に複数回製造する場合がある」こと。
  • B社の業務特徴と運用違いによる、複数回製造の管理に対応するため。
  • ファイルの主キーの一意性を保つために、追加属性が必要。

なぜこの解答になるか(問題文の引用を交えて)

1. ファイル対象は「製造」と「投入」

A社の生産管理システムの主要ファイルは以下のとおりです(表1抜粋):
ファイル名主な属性(下線は主キー)
製造工場コード, 製造開始予定年月日, 工程コード, ...
投入工場コード, 製造開始予定年月日, 工程コード, 投入品目コード, ...
このうち、「製造」ファイルは製造指示データのベース、「投入」ファイルは投入指示データのベースであり、それぞれ複数の主キー属性で一意のレコードを管理しています。

2. 「一つの製品を1日に複数回製造」の要件

問題文のB社の業務概要に以下の記述があります。
「一つの製品を、1日に複数回製造する場合がある。」
さらに、システム統合の方針には、
「B社の製品を現行どおりに製造できるよう、ある属性を表1中の二つのファイルの主キーに追加する。」
A社では、製造開始予定年月日と工場コードなどの組み合わせで一つの製造工程が固有に特定できていましたが、B社の業務形態は「1日に複数回製造」するため、同じ工場コード、同じ製造開始予定年月日に複数の製造レコードができる可能性があります。
このため従来のキーでは識別できず、一意性が保てません。つまり、「開始予定日時」あるいは「製造回数」など、同日内の繰り返しを識別できる属性が必要となるのです。

3. 何故「製造」と「投入」ファイルなのか

「投入」ファイルは「製造」の製造開始予定年月日や工程コードなどを主キーに持つため、「製造」ファイルの主キー変更を反映しないと、「投入」のキーも重複してしまう可能性があります。よって両方のファイルに同じ属性を追加する必要があります。

誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  • 「計画システム」や「販売管理システム」のファイルが正解ではないこと
    これらのシステムは生産計画や受注管理などを扱いますが、「複数回製造」によって主キー追加が必要になるのは生産工程に関わる製造関連ファイルです。
  • 単に日付だけ追加すれば良いと思う誤解
    元々「製造開始予定年月日」はキーにありますが、B社の要件では同じ日付に複数回製造するため、時間や回数でさらに区別する必要があります。
  • B社の「製造担当者の実績入力」部分は主キーとは関係が薄い
    実績入力は後処理の話であり、主キー設計とは別の問題です。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • システム統合時に業務運用の違い(例:複数回製造)がある場合、DBの主キー設計が影響を受けること。
  • 製造管理ファイルの主キー設定は「工場コード」「製造開始予定年月日」「工程コード」など複数の項目から構成されることが多い。
  • 同一のキー属性で識別できない要件が発生したら、一意に識別できるよう追加キーが必要。
  • 生産管理系システムで「製造」「投入」ファイルは密接に関連しているため、主キー変更は両方に反映する必要がある。
  • 複数回製造や同日複数工程はよくある業務要件であり、しっかり理解すること。

以上から、模範解答の
ファイル①:製造  
ファイル②:投入  
要件:一つの製品を 1 日に複数回製造する場合があるという要件
は妥当であり、問題文の要件を満たす答えとなっています。

設問2(3)〔システム統合の方針〕について答えよ。

B社が、合併後に続合後のシステムを利用して原材料調達業務を実施するに当たり、仕入先に依頼する業務手続上の変更点は何か。25字以内で答えよ。
模範解答
要件:一つの製品を 1 日に複数回製造する場合があるという要件
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 一つの製品を1日に複数回製造する場合があるというB社の製造要件
  • 統合システムではA社のシステムを基本に使用し、B社特有の業務も可能にする必要がある
  • 原材料調達にあたり、「発注数」や「納品日」の管理方法が変わるため仕入先への依頼が必要
  • 仕入先への業務手続き変更点は、複数回製造に対応した発注タイミングの調整

なぜこの解答になるのか(問題文の記述を引用しながらの説明)

B社はもともと「一つの製品を1日に複数回製造する場合がある」(問題文〔B社の業務の概要〕より)という点が特徴です。これに対し、A社の生産管理システムは、「一つの品目は1日に1回まとめて製造する」という前提で設計されています(A社の業務の概要より)。統合後もB社の製造形態にあわせて「製造指示や投入指示を作成する機能を生産管理システムに追加する」(システム統合の方針より)必要があります。
これに伴い、原材料の調達業務で重要な点は以下の通りです。
  • A社は発注数を「納品日別品目単位」で管理し、1日に1回の発注を行っています。
  • B社は製品を複数回製造する場合があるため、複数の製造開始時刻・終了時刻が存在し、原材料の必要数と納品日の管理が複雑になります。
  • このため、「仕入先に対して、B社の複数回製造にあわせた発注手続きの調整」(例:納品時間帯の分割や発注データの細分化など)を依頼する必要があります。
つまり、仕入先に示す依頼事項の本質は「一つの製品を1日に複数回製造する場合がある」ことにより、従来の1回発注/1回納品の手続きを変更してもらう点です。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの解説

  • 「B社の表計算ソフトによる在庫管理の廃止」や「発注様式の統一」などとの混同:
    これらはシステム統合の一環で変更される事項ですが、仕入先業務手続きの変更点としては「複数回製造に対応した調達手続きの調整」が最も重要です。
  • 「EDI統合による受注データの取り込み」や「マスターコードの統一」:
    これらも統合方針の一部ですが、調達の業務手続きとしては直接関係ありません。
  • 「原材料の在庫数や最低在庫数管理」:
    これは内部のシステム処理の変更であり、仕入先への業務手続きの変更点とは異なります。

試験対策として覚えておくべきポイント

ポイント内容
A社・B社の製造工程の違いA社は「1日1回まとめて製造」、B社は「1日に複数回製造する場合がある」
システム統合時の対応B社の運用をA社のシステムに合わせるため、例外的な機能追加や運用ルールの調整が必要
調達業務の手続変更の要点複数回製造に伴い、仕入先に対して納品タイミングや発注ルールの変更依頼が発生する
問題文の「システム統合の方針」変更点を整理する上で重要な記述:「一つの製品を1日に複数回製造する場合があるという要件」

以上を踏まえ、B社の原材料調達業務で仕入先に依頼する業務手続き上の変更点は、「一つの製品を1日に複数回製造する場合がある」という要件に対応した発注・納品の手続き調整となることが理解できます。

設問3(1)〔システム稼働後の評価〕について答えよ。

本文中の下線③のある作業とは何か。40字以内で答えよ。
模範解答
製造担当者が月末に記録表を参照し,まとめて生産管理システムに入力する作業
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 「製造担当者が月末に記録表を参照し、まとめて生産管理システムに入力する作業」
  • B社の業務における「手書きの製造実績と投入実績の転記作業」
  • 「転記ミスの発生が問題視されている」
  • システム統合後、その作業が削減されたことで作業の負荷が平準化された点

2. なぜその解答になるのか【問題文の引用と論理的説明】

B社では次のように記されています。
「製造担当者が,製造現場で製造実績と投入実績を手書きで記録表に記入する。月次処理で,製造実績と投入実績の集計表を出力するために,月末に記録表を参照し,まとめて生産管理システムに入力しているが,転記ミスの発生が問題視されている。」
これこそが、B社で行っていた「ある作業」に該当します。
統合後は「記録表からの転記ミスがなくなり,正確な数字が把握できるようになった」ことや、「ある作業が削減され、製造担当者の負荷が平準化された」とあるため、この「月末に記録表をまとめて生産管理システムに入力する作業」こそが削減された対象であることが明確です。
したがって、下線③の「ある作業」とは、
「製造担当者が月末に記録表を参照し,まとめて生産管理システムに入力する作業」
と答えるのが適切です。

3. 受験者が誤りやすいポイントと注意点

  • 「手書きの記録表に記入する作業」か「システムへの入力作業」かの区別
    問題文は「記録表に記入」する作業と「システムに入力」する作業を分けて記述しています。本問で問われるのは「月末にまとめて生産管理システムに入力する作業」です。誤って「手書き記入の作業」を答えてしまうと不正解になります。
  • 「転記ミスの原因や発生する工程」ではなく「作業そのもの」を答える
    転記ミスの発生は背景知識として重要ですが、「その原因となっている作業過程」を明確に答えることが重要です。
  • B社の業務に限定すること
    A社の業務と混同しないように注意。A社のシステムは製造実績を製造終了直後に登録し、転記ミスは発生しません。B社のみの特徴です。

4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • 複数企業のシステム統合時に「業務運用や手順が変わる場合がある」ことを理解すること。
  • 業務効率化やミスの削減につながる「作業のIT化・自動化」例として、手書き転記や後工程への遅延入力を減らすことが挙げられる。
  • 「製造実績や投入実績をリアルタイムかつ正確にシステムへ入力すること」が製造現場の品質向上や情報管理の重要ポイントであること。
  • 文中に散らばる業務プロセスの「何が改善されたか」や「どの作業が削減されたか」を正確に読み取る読解力が情報処理試験では不可欠。

まとめ

項目内容
作業の名称製造担当者が月末に記録表を参照し,まとめて生産管理システムに入力する作業
問題文の根拠「B社・・・月末に記録表を参照し,まとめて生産管理システムに入力しているが,転記ミスの発生が問題視されている」
システム統合後の効果「記録表からの転記ミスがなくなり,正確な数字が把握できるようになった」および「ある作業が削減」
受験者が注意すべき点手書き記録作業と入力作業を混同しないこと、B社とA社業務を混同しないこと
本設問は企業統合に伴うシステム統合が業務効率化に結びつく具体例の理解を問うものです。正確に業務フローの記述を読み解き、どの作業が効率化されたのかを区別できるようにしましょう。

設問3(2)〔システム稼働後の評価〕について答えよ。

本社管理部門の業務はどのように改善されたか。その内容を30字以内で答えよ。
模範解答
前日までの実績を反映した管理指標値が参照可能になった。
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 本社管理部門の「管理指標値」
  • 「前日までの実績を反映」
  • 「参照可能になった」ことによる業務改善

解答の根拠となる論理的説明

問題文の「システム稼働後の評価」には以下の記述があります。
・本社管理部門における業務の改善が実現できた。
〔A社のシステムの概要〕
...
夜間に工場の稼働率などの管理指標値を集計し、翌日に本社から参照可能にする。
〔B社の業務の概要〕
... 本社管理部門で管理指標値が翌月にならないと確認できないことが問題となっている。
〔システム統合の方針〕
... 製造担当者がタブレット端末を用いて実績を即時登録し、管理指標値が前日までの実績を基に参照可能となるような仕組みとする。
これらを組み合わせると、合併後にB社の旧来の運用(実績は月末にまとめて入力され、管理指標値の参照も翌月にならないとできない)から、A社のシステムに統合され、毎日(夜間)最新の製造実績を集計し管理指標値を本社で翌日に参照できるようになったことがわかります。
この結果、
  • 本社は「前日までの実績に基づく最新の管理指標値」を速やかに参照可能となり、
  • 業務の迅速な分析・判断ができるようになった
ことが本社管理部門の業務改善の核となっています。
したがって、模範解答の「前日までの実績を反映した管理指標値が参照可能になった」が最適解です。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけ

  • 「製造担当者の作業負荷減少」や「転記ミスの削減」といった改善点は「製造現場」側の改善であり、本社管理部門の業務改善とは異なります。
  • 「製造現場でのリアルタイム入力」や「受注~製造フローの統合」などの業務改善はあくまで背景で、あくまで本問は「本社管理部門における業務改善」が問われている点に注意しましょう。
  • 「在庫管理の効率化」や「調達業務の改善」も部分的には関係しますが、本社管理部門が得る直接的な改善は「管理指標値の早期参照」であるため、時間軸の早さ(前日までの実績が反映される)に注目します。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 情報処理技術者試験の午後問題では、統合やシステム改変後の業務効果を問う設問が多い。
  • 「管理指標値の参照可能時期」が業務改善の一つのキーワードになることが多いため、業務における「データの鮮度」と「参照タイミング」は注目すべきポイント。
  • 組織間統合の場合、異なる文化やシステムの実績管理時期の統一化による、上位組織(本社など)の意思決定迅速化が重要な効果となる。
  • 複数の改善効果を見て、設問で問われている対象(本社か現場かなど)を明確にすることが正答を導くカギとなる。

以上の点を踏まえて、今回の設問では「前日までの実績を反映した管理指標値が参照可能になった」という模範解答が的確であると理解してください。
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