システムアーキテクト試験 2024年 午後102


会員向けサービスに関わるシステム改善に関する次の記述を読んで、 設問に答えよ。

 E社は、カードローン事業を全国に展開する大手消費者金融会社である。 E社は、 カードローンの契約を締結した顧客 (以下、 会員という)に各種サービス (以下、 会員サービスという)を提供している。現在、 会員の利便性向上と業務の効率化を目的として会員サービスに関わる業務及びシステムの改善を進めている。  
〔E社のカードローンの概要〕  E社は、 カードローンの申込みを受け付けると、 審査を行い、 契約を締結してカードを発行している。 会員は、 発行されたカードを利用して、 契約した貸出枠 (以下、 限度額という)の範囲で ATM を通じて資金を借りることができる。 E社では、 ATM での貸付け以外に、 インターネット経由で貸付けの申込みを受け付け、会員の預金口座へ振り込むサービスも提供している。  契約時の限度額は、本人確認書類、 収入証明書、 E 社での借入額及び他社での借入額などの情報を基に決定される。 限度額は、契約中に見直されることがある。 具体的には、転職、転籍又は退職の理由で勤務先の変更があった場合や収入に大きな変動があった場合に、 見直しが行われる。  E社では、貸付けのリスクと会員の情報を正確に評価するために、 会員から提出された収入証明書に有効期限を設け、 その有効期限が到来する3か月前に再提出を依頼している。  会員は、借入残高が0円となる (以下、 完済という) まで、 毎月の返済日 (以下、 約定返済日という)に口座振替で返済する。 実際に口座から引き落としする日 (以下、 実約定日という) は、 約定返済日から金融機関の営業日を基に決定する。 口座から正 常に引き落とすことができたかどうかを金融機関がE社に連携するまでには数営業日掛かる (以下、この期間を口振結果営業日数という)。 また1年に2回まで、事前に決めた月 (以下、 ボーナス月という)に毎月の返済額に上乗せして返済することができる。 会員は、 口座情報、 約定返済日、 毎月の返済額 2回のボーナス月及びボーナス月の上乗せ金額 (以下、 約定条件という)を決め、 契約する。  E 社は、会員の返済計画をサポートするために、 約定条件を柔軟に調整するサービスも提供している。 ただし、 毎月の返済額が利息より少なくならないように、 またボーナス月の変更の際にはボーナス月が1年に3回以上とならないように調整している。  
〔現在の会員サービスと関連システムの概要〕  E社の関連システムは、フロントシステム、 審査システム及び基幹システムである。フロントシステムは、基幹システムと連携しており、 基幹システムで管理している会員情報と契約情報を利用して会員サービスを提供している。 審査システムは、限度額変更などの審査に利用する。  会員情報は、漢字氏名、カナ氏名、生年月日、電話番号、 電話番号ステータス、 メールアドレス、 収入証明書有効期限、 自宅住所及び勤務先情報である。 電話番号ステータスの初期値は、 “正常” としており、電話で会員に連絡した際に電話番号が無効であった場合に、 “無効” に変更している。 契約情報には、 約定条件、 契約商品、限度額、利率、契約ステータスなどが含まれる。 契約ステータスは、 “正常” と “解約" の二つの値があり、 契約ステータスが “解約” の場合は、 フロントシステムを利用できないようにしている。  基幹システムでは、金融機関に口座振替を依頼し、金融機関から口座振替の結果を受領した日に借入残高を更新している。 口振結果営業日数は金融機関によって異なるので、基幹システムの金融機関マスターで管理している。  現在の会員サービスの概要は、次のとおりである。    (1) お知らせサービス   会員は、フロントシステムにログインすることで会員個々人のトップページ(以下、 マイページという) を表示することができる。 マイページには、 会員個々人向けのメッセージ及び各種サービスを利用するためのメニューを表示している。  (2) 各種変更サービス   会員は、フロントシステムを利用して、電話番号、 メールアドレス、 自宅住所、勤務先情報及び約定条件を変更することができる。 各種変更画面に入力された内容をフロントシステムから基幹システムに連携し、 基幹システムは、入力された内容を精査して会員情報と契約情報を変更する。   勤務先情報には、 勤務先名、勤務先住所、勤務先電話番号、 入社年月などが含まれており、勤務先情報を変更する際には、変更する理由(以下、勤務先変更理由という)を確認している。 勤務先変更理由には、転職、転籍、退職、転勤、会社の住所変更又は社名変更がある。 E社では、 勤務先情報の変更で再度審査して限度額を再設定する場合があるので、フロントシステムから基幹システムに連携された勤務先変更理由を事務部門で確認し、勤務先変更理由によっては審査システムに審査を依頼する。   約定条件の変更でボーナス月を変更する場合には、事務部門で変更内容を確認し、ボーナス月の反映日を調整している。  (3) 借入サービス   会員は、フロントシステムを利用して、 金額を指定することで、 口座振替先として登録している口座 (以下、 振替先口座という)に指定した金額を借り入れることができる。 借入画面に入力された金額をフロントシステムから基幹システムに連携し、 基幹システムは、入力された金額と契約情報を精査した上で振替先口座に送金する。  (4) 限度額の変更サービス   会員は、フロントシステムを利用して、 限度額の変更を申し込むことができる。限度額の変更申込画面で、希望する限度額、 年収及び他社借入額を入力し申し込む。申込みを受け付けた事務部門は、必要に応じて審査する。 収入証明書が必要な場合は、会員に収入証明書を郵送で提出するように依頼している。 収入証明書が E社に到着した後、 事務部門が内容を確認し、審査システムに審査を依頼する。 また、 E社では、審査が完了した後に限度額変更に関する書類を会員へ郵送する。 そこで、書類が確実に届くようにするために、 事務部門が会員の現在の住所が変更されていないかどうかを電話で確認している。  (5) 各種情報照会サービス   会員は、 フロントシステムを利用して、 会員情報、 契約情報、 取引明細、返済予定表、 借入残高及び契約変更履歴を確認することができる。 フロントシステムは、基幹システムで管理している情報を取得し、各種情報照会画面にそれらの情報を表示する。 各種情報照会画面には、 実約定日も表示しており、 会員は、次回の口座振替日を確認できる。  (6) 解約サービス会員は、フロントシステムを利用して、 カードローンの契約を解約することができる。 解約画面に入力された内容をフロントシステムから基幹システムに連携し、基幹システムは、契約情報を精査した上で契約ステータスを “解約” に変更する。借入残高がある場合は解約を受け付けない。  (7) 問合せサービス会員は、フロントシステムを利用して、 問合せをすることができる。 事務部門は、問合せの内容を確認し、 会員情報のメールアドレスに電子メールで回答している。  (8) キャンペーンサービスキャンペーンの対象となる会員に事務部門から電話で連絡し、 キャンペーンの内容を説明している。 カードローンを申し込んだ後に会員が電話番号を変更して連絡が取れないこともある。  
〔会員サービスに関わるシステム改善要望〕  関連部署から会員サービスに関わる、 次のようなシステム改善要望が出された。・業務の効率化を目的として、 事務部門が実施している作業をシステムで実施してほしい。  ・各種変更サービスで会員の姓の変更 (以下、氏名変更という)を実施できるようにしてほしい。・フロントシステムで会員が収入証明書を提出できるようにしてほしい。  ・限度額の変更申込時に収入証明書を同時にアップロードできるようにしてほしい。  ・収入証明書の再提出が必要となる会員のマイページにメッセージを表示し、 収入証明書の提出画面に誘導してほしい。  ・すぐに解約できない場合でも、 解約サービスで解約を受け付けられるようにしてほしい。 解約を受け付けた会員に対しては、 キャンペーンは実施しないこととする。解約を受け付けた後、 フロントシステムで解約の取消は受け付けないこととし、 会員情報、 契約情報の変更及び新規の貸付けもフロントシステムではできないようにしてほしい。  ・各種情報照会サービスで、 口座振替に伴う次回の借入残高の更新日を計算して表示してほしい。  ・事務部門からの電話連絡を効率化するために、 対応が必要な会員のマイページにメッセージを表示し、 各種変更画面へ誘導してほしい。  
〔システム改善の方針〕  E社情報システム部のF課長は、システム改善の方針を次のように検討した。  ・各種変更サービスと限度額の変更サービスで事務部門が実施している作業をシステム化する。  ・契約ステータスに “解約予約” の値を追加する。  ・契約ステータスの値の追加に伴い、 会員サービスに関わる精査を基幹システムに追加する。  ・契約ステータスの値が “解約予約” の場合、 ①フロントシステムの一部の会員サービスだけ利用可能とする。  ・氏名変更は、フロントシステムから変更内容を基幹システムに直接連携せず、 フロントシステムで氏名変更を受け付け、本人確認書類を事務部門で確認した後、基幹システムに登録する。  
〔各システムの改善点〕  システム改善要望とシステム改善の方針を踏まえ、 F課長は、 フロントシステムと基幹システムの改善点を、次のように検討した。
 (1) フロントシステムの改善点   ・各種変更画面で約定条件を変更する場合、 ②ボーナス月に関する変更内容をチェックし、 あることを考慮してフロントシステムで反映日を導出し、 基幹システムに連携する。   ・収入証明書をアップロードする機能を追加する。   ・限度額の変更申込画面に、 ある内容を確認するための項目を追加する。 また、 限度額の変更申込時に収入証明書を同時にアップロードする機能を追加する。   ・各種情報照会サービスに口座振替に伴う次回の借入残高の更新日を導出して表示する。   ・③ある条件に該当する会員のマイページにメッセージを表示し、 それぞれ対象の画面へ誘導する。  (2) 基幹システムの改善点   ・勤務先情報の変更時、④ある条件の場合には審査システムと連携する。   ・解約を受け付けた場合、 契約ステータスを “解約予約” に変更する。   ・毎日の夜間のバッチ処理で⑤ある条件の会員の契約ステータスを “解約” に変更する。

設問1

〔会員サービスに関わるシステム改善要望〕について,口座振替に伴う会員の次回の借入残高の更新日を導出する方法を40字以内で答えよ。
模範解答
次回の実約定日に振替先口座がある金融機関の口振結果営業日数を足す。
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点

  • 次回の実約定日
  • 振替先口座がある金融機関
  • 口振結果営業日数
  • 会員の借入残高の更新日
これらが、「次回の借入残高の更新日を導出する方法」における主要なキーワードです。

2. 解答に至る論理的説明

【問題文】には以下の記述があります。
会員は、借入残高が0円となるまで、毎月の返済日に口座振替で返済する。
実際に口座から引き落としする日(実約定日)は、約定返済日から金融機関の営業日を基に決定する。
口座から正常に引き落とすことができたかどうかを金融機関がE社に連携するまでには数営業日かかる(口振結果営業日数)。
基幹システムでは、金融機関に口座振替を依頼し、金融機関から口座振替の結果を受領した日に借入残高を更新している。
口振結果営業日数は金融機関によって異なるので、基幹システムの金融機関マスターで管理している。
この文章から、借入残高は「口座振替の結果を受領した日」に基づいて更新されることがわかります。
具体的に、返済の約定返済日から「実約定日」が決まり、さらに引き落とし結果がE社に連携されるまでに「口振結果営業日数」が要されます。
つまり、借入残高が更新されるのは、「実約定日 + 口振結果営業日数」当日になるのです。
会員に対して次回の借入残高更新日を表示するには、まず「次回の実約定日」を特定し、そこに振替先口座の金融機関ごとに異なる「口振結果営業日数」を足して示す必要があります。
したがって、
次回の実約定日に振替先口座がある金融機関の口振結果営業日数を足す。
が正しい答えとなります。

3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけ

  • 「約定返済日」だけを答える誤り
    約定返済日は会員が設定した返済日ですが、実際の借入残高の更新はそれ以降の「実約定日+口振結果営業日数」なので、ここを混同すると誤答になります。
  • 「実約定日」だけで良いと考える誤り
    実約定日は銀行が実際に口座から引き落とす日ですが、E社が引き落とし結果を受け取って借入残高を更新するまでにさらに数営業日かかるため、実約定日に終わりません。
  • 口振結果営業日数を意識しない誤り
    口振結果営業日数は金融機関ごとに異なり、基幹システムで管理されています。これを無視すると正確な更新日は分からず、サービス品質に影響を及ぼします。

4. 試験対策として覚えておくべきポイント

  • 「約定返済日」「実約定日」「口振結果営業日数」の違いを正確に理解する。
    これらの用語が管理や業務処理でどう使われているかを把握しましょう。
用語意味
約定返済日会員が契約上に設定した返済日
実約定日約定返済日を基に金融機関の営業日に調整された実際の引き落とし日
口振結果営業日数金融機関が引き落とし結果をE社に報告するまでの日数
  • 借入残高の更新は「実約定日 + 口振結果営業日数」であること。
    借入残高は引き落とし成功の確認が完了した日に更新される点を必ず押さえておく。
  • システム設計においては、異なる金融機関ごとの営業日数を考慮し管理する必要があること。
    仕様を忘れると業務エラーや顧客トラブルの原因になるため、必須知識です。

以上のポイントを押さえることで、設問の意図を正確に理解し、正しい回答が導けます。

設問2

〔システム改善の方針〕について,本文中の下線①で,利用可能とした会員サービスを全て答えよ。
模範解答
お知らせサービス,各種情報照会サービス,問合せサービス
解説

1. 模範解答の核心となるキーワードや論点の整理

  • 契約ステータスに "解約予約" を追加し、この状態の会員に対してフロントシステムで利用可能なサービスを限定する。
  • 【問題文】の下線①に該当する箇所:「契約ステータスの値が “解約予約” の場合,<u>フロントシステムの一部の会員サービスだけ利用可能とする。</u>」
  • 模範解答は「お知らせサービス」、「各種情報照会サービス」、「問合せサービス」の3つ。
  • 利用不可となる代表的サービスに「借入サービス」「各種変更サービス」「解約サービス」などがある。

2. なぜこの解答になるのか:問題文の記述を引用しながらの論理的説明

  • 問題文の【システム改善の方針】部分には、契約ステータスに “解約予約” の値を追加すると明記されています。
  • この"解約予約"の状態の会員は、完全に解約になる前の予約段階であり、まだ契約は生きていますが制限がかかります。
  • 「契約ステータスの値が “解約予約” の場合,フロントシステムの一部の会員サービスだけ利用可能とする。」と記載されていることから、
    • 全サービスが利用可能ではなく、限定的に利用できるサービスのみ許可されることが分かります。
  • 次に、「制限されるべきもの」を考慮します。
    → 「借入サービス」や「各種変更サービス」は解約に関連し業務リスクが高いことから制限される傾向にあり、
    → 「解約サービス」も既に解約予約状態であるため利用できません(既に解約手続き中のため)。
  • 具体的に問題文の【現在の会員サービスの概要】を見ると、
    • 「(1) お知らせサービス」:会員個々人のトップページ(マイページ)にメッセージを表示し、利便性向上に使用
    • 「(5) 各種情報照会サービス」:会員情報等を確認できる画面。
    • 「(7) 問合せサービス」:会員が問い合わせ可能で、事務部門がメールで回答できるサービス。
  • これらのサービスは、会員が契約を完全に解約していなくても利用可能であり、制限付き利用に適切です。
  • 模範解答にあるこれら3つのサービスは、解約予約の状態でも継続利用が合理的であるため、
    「お知らせサービス」、「各種情報照会サービス」、「問合せサービス」がフロントシステムで許可されるという結論に至ります。

3. 受験者が誤りやすいポイントやひっかけの選択肢

  • 誤りやすいポイント1:サービスの制限範囲の理解不足
    「解約予約」状態でもすべてのサービスが利用可能と思い込みがち。
    実際は制限が加えられるため、借入や契約内容変更などの重要・影響度の高いサービスは利用できません。
  • 誤りやすいポイント2:借入サービスや各種変更サービスを含める誤認
    借入や約定条件の変更などは契約内容に直接関わり、解約予約中は業務リスク防止のため利用禁止。
    これらを選択肢に含めるのは誤り。
  • 誤りやすいポイント3:「解約サービス」も利用可能と思い込むこと
    既に解約予約の状態にあるため、さらに解約操作は不要かつ不適切である。

4. 試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • 契約ステータスの「解約予約」状態
    • 解約処理の予約段階で、契約はまだ継続中だが利用できるサービスは限定的になる。
    • システムはそれに対応し、影響の大きいサービスの利用を制限しながら細かな情報照会や問い合わせは許可する。
  • 各会員サービスの内容と業務影響度の区別
    • 利用者にとって利便性が高いが、業務リスクの低い「お知らせ」「照会」「問合せ」サービスは利用可能にするのが通常。
    • 一方、変更系(本人情報・契約条件変更)や借入は契約に直接影響するため制限される。
  • 情報処理技術者試験の問題では、問題文内の用語定義、状態管理(ステータス)に基づく処理制限や権限管理に注目すること
    • ステータスの追加による制限範囲やサービス利用可否の明確な記述をよく読み取り、該当箇所を根拠に答える。

参考:問題文より該当部分引用

記述箇所引用内容
システム改善の方針【①】「契約ステータスの値が “解約予約” の場合, フロントシステムの一部の会員サービスだけ利用可能とする。」
【現在の会員サービス概要(1)(5)(7)】(1) お知らせサービス … マイページで個々人向けメッセージ及びサービスメニューを表示
(5) 各種情報照会サービス … 会員情報・契約情報・取引明細等を表示
(7) 問合せサービス … 問合せの内容をメールで回答

まとめ
「解約予約」ステータスでは、業務リスクが高い借入や変更サービスは利用できず、会員が情報を確認し質問できる「お知らせサービス」「各種情報照会サービス」「問合せサービス」のみ利用可にする。これが問題文と業務運用の整合性が取れた適切な解答です。

設問3(1)〔各システムの改善点〕のフロントシステムの改善点について答えよ。

本文中の下線②について,どのようなことを考慮して反映日を導出するのか。40字以内で答えよ。
模範解答
ボーナス月の変更によってボーナス月が1年に3回以上とならないようにすること
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • ボーナス月の変更
  • ボーナス月が年間3回以上にならないように調整
  • 反映日を導出する際の考慮事項

解答根拠の論理的説明

本文の「〔E社のカードローンの概要〕」に次の記述があります。
「約定条件の変更でボーナス月を変更する場合には, 事務部門で変更内容を確認し、 ボーナス月の反映日を調整している。」
また、
「会員は, 口座情報, 約定返済日, 毎月の返済額 2回のボーナス月及びボーナス月の上乗せ金額 (以下, 約定条件という)を決め、契約する。」
さらに、
「ただし, 毎月の返済額が利息より少なくならないように, またボーナス月の変更の際にはボーナス月が1年に3回以上とならないように調整している。」
この記述から、約定条件のうちボーナス月については、
  • 年間に設定できるボーナス月は最大2回だが、変更時に3回以上となってはならない。
  • 変更内容が契約に正しく反映される日(反映日)を調整する必要がある。
したがって、フロントシステムでの約定条件変更(ボーナス月の変更)時には、ボーナス月の回数制限(年間3回未満)が守られているか確認し、その結果を踏まえて反映日を導出する、ということになります。
この点が設問下線②の要件となっています。

受験者が誤りやすいポイント・ひっかけの選択肢

  • ボーナス月の内容の変更ではなく「反映日」そのものに着目しない
    反映日をただ単に計算することと、業務ルール(回数制限)を考慮しながら計算することは違います。単に「反映日を導出する」と書くのは不十分です。
  • 約定条件全体の変更に着目してしまう
    問題はボーナス月に関する「変更内容をチェック」し、反映日を導出すること。ボーナス月の上乗せ金額や毎月の返済額の計算は問われていません。
  • 「利息より少なくならないように」のチェックと混同する
    「毎月の返済額は利息より少なくならないこと」もルールとして存在しますが、ここは「ボーナス月が1年に3回以上とならない」ことに注目する必要があります。

試験対策として覚えておくべきポイント

  1. 業務ルールをシステムで適切に実装するために、制約条件を明確に捉えることが重要
    例:ボーナス月の設定回数に関する制限(2回まで、3回以上禁止など)
  2. 変更手続きで生じる「反映日」の調整は単なる日付計算だけでなく、業務上の制約も反映されることがある
    →システム設計時は業務ルールに基づいたチェック・計算が必要
  3. 本文の記述から抜き出しやすいキーワードは必ず押さえる
    • 「ボーナス月が1年に3回以上とならないように調整する」
    • 「事務部門で変更内容を確認し、ボーナス月の反映日を調整」
  4. 設問の下線部分が示す箇所に注意し、具体的に何を考慮するのか端的に答えること

以上のポイントを押さえることで、本文の制約と改善案の位置付けを理解し、正確に設問に答えられるようになります。

設問3(2)〔各システムの改善点〕のフロントシステムの改善点について答えよ。

限度額の変更申込画面に項目を追加したのは、何を確認するためか。10字以内で答えよ。
模範解答
住所変更の有無
解説

1. 模範解答の核心キーワード・論点整理

  • キーワード:住所変更の有無
  • 論点:限度額変更申込時に事務部門が会員の住所が現在のものかどうか電話で確認している背景と、それをシステムで効率化するために追加項目を設ける必要性。

2. なぜ「住所変更の有無」が正解になるのか

【問題文】の該当箇所に以下の記述があります。
限度額の変更申込画面で、希望する限度額, 年収及び他社借入額を入力し申し込む。申込みを受け付けた事務部門は,必要に応じて審査する。
収入証明書が必要な場合は、会員に収入証明書を郵送で提出するように依頼している。
収入証明書が E社に到着した後, 事務部門が内容を確認し、審査システムに審査を依頼する。
また, E社では,審査が完了した後に限度額変更に関する書類を会員へ郵送する。 そこで,書類が確実に届くようにするために, 事務部門が会員の現在の住所が変更されていないかどうかを電話で確認している。
つまり、限度額変更の書類郵送が正確に届くために、住所が変更されていないかを確認することが業務フローに必須となっています。
この電話による住所確認作業をシステム改善で効率化したいと考え、限度額の変更申込画面に「住所変更の有無」を確認するための項目を追加することが要望されています。
そのため、限度額変更申込画面に住所変更の有無を確認する項目を追加した理由は、事務部門が電話で住所変更を確認する手間を減らし、書類郵送ミスを防ぐためと理解できます。

3. 受験者が誤りやすいポイントと注意点

  • 「収入証明書の提出」や「審査の有無」など他の申込時の確認事項と混同しやすい。
    • 収入証明書は別途アップロード機能などの改善要望で対応されているが、「住所変更の有無の確認」は郵送書類の精度に直接関係し、電話での連絡軽減が目的となるため、こちらは申込画面の追加項目として重要。
  • 「勤務先変更理由」や「氏名変更」など別の情報変更項目と混同しやすいが、問題文中で限度額変更申込画面に追加するのは「住所変更」確認項目であると明記されている。
  • 「郵送連絡の確実性」を目的にしているため、単に「住所」だけでなく「住所変更したかどうか」という状態把握が重要。

4. 試験対策としてのポイント・知識

  • 業務改善として事務部門の電話確認業務をシステムで代替・効率化する場合は、「確認すべき具体的な項目」を明確にすることが重要。
  • 郵送物が確実に会員に届くかどうかは、金融サービスでの重要なリスク要素となる。
  • 申込や契約変更に関する画面に「住所変更の有無」などの確認項目を追加するケースはよくあるため、この種の業務フローの意図を把握しておくこと。
  • 「何を確認するか」を問われる問題では、問題文中に記述された実際の業務を踏まえ、対応が必要な理由をしっかり押さえよう。
システム改善の要点目的
限度額変更申込画面に「住所変更の有無」項目追加書類郵送時の住所確認電話作業の効率化、郵送ミス防止

以上の理由から、本問の正解は「住所変更の有無」となります。

設問3(3)〔各システムの改善点〕のフロントシステムの改善点について答えよ。

本文中の下線③についてマイページにメッセージを表示する条件が二つある。その条件を会員情報の属性を用いて,それぞれ25字以内で答えよ。
模範解答
条件①:電話番号ステータスが“無効”であること 条件②:収入証明書有効期限が3か月以内に到来すること
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

条件番号条件の内容
条件①電話番号ステータスが“無効”であること
条件②収入証明書有効期限が3か月以内に到来すること
この2つの条件が本文中の下線③の「ある条件に該当する会員のマイページにメッセージを表示する」ための条件です。

解答根拠の論理的説明

問題文中の関連部分を引用しながら、なぜ模範解答のように2つの条件になるのかを説明します。

1. 条件①:電話番号ステータスが「無効」であること

問題文の「会員情報」に「電話番号ステータス」があり、その初期値は“正常”で、電話連絡時に電話番号が無効と確認された場合に“無効”に変更されるとあります。
「電話番号ステータスの初期値は, “正常” としており、電話で会員に連絡した際に電話番号が無効であった場合に, “無効” に変更している。」
さらに、キャンペーンサービスでは、連絡が取れない場合があると記述されており、
「カードローンを申し込んだ後に会員が電話番号を変更して連絡が取れないこともある。」
このことから、電話番号が無効の会員に対しては、事務部門が電話連絡の効率化のためにフロントシステムのマイページにメッセージを表示して、変更促進のため「各種変更画面」へ誘導したい意図があります。
つまり、電話番号ステータスが「無効」である会員はマイページに注意喚起のメッセージを表示すべき条件となることが読み取れます。

2. 条件②:収入証明書有効期限が3か月以内に到来すること

収入証明書には有効期限があり、その到来3か月前に再提出を依頼していると明記されています。
「E社では,貸付けのリスクと会員の情報を正確に評価するために, 会員から提出された収入証明書に有効期限を設け, その有効期限が到来する3か月前に再提出を依頼している。」
また、システム改善要望の中にも、
「収入証明書の再提出が必要となる会員のマイページにメッセージを表示し, 収入証明書の提出画面に誘導してほしい。」
と記載されています。
このため、収入証明書の有効期限到来3か月前の会員に対して、フロントシステムのマイページにメッセージ表示を行うことは明確です。

受験者が誤りやすいポイントと注意点

  • 電話番号ステータスの初期値を見落とすこと
    電話番号ステータスの初期値は“正常”なので、これを見落とすと誤って「正常」の場合も対象と考えがちですが、「無効」だけが条件です。
  • 収入証明書有効期限の「3か月前」の意味合い
    単に「収入証明書の有効期限切れ」と勘違いしやすいですが、実際は「有効期限の3か月前から再提出依頼する」ことがポイントです。テキストに明確に「その有効期限が到来する3か月前に再提出を依頼」とあるので、「3か月以内に到来すること」とすることが正確です。
  • 他の属性(姓名変更など)を条件に含めてしまう誤り
    問題文の下線③の箇所は「マイページにメッセージを表示し、それぞれ対象の画面へ誘導する」とありますが、誘導先が異なり、「電話番号」と「収入証明書」に関わるものです。従って、氏名変更などの属性はこの設問の対象外です。

試験対策として覚えておくべきポイント

  • 会員情報の「電話番号ステータス」は「正常」と「無効」があり、電話連絡ができない会員を識別するための重要な属性である。
  • 収入証明書には「有効期限」が設定されており、「有効期限の3か月前」から再提出を依頼する運用ルールがある。
  • システム改善では、事務の負担軽減や会員への周知のために、これら条件に該当する会員のマイページにメッセージ表示と誘導を行うことが重要となる。
  • 試験問題では、このように業務ルール・システム仕様・要望を正確に読み取り、条件を特定する力が問われる。

以上、マイページにメッセージを表示する条件の理解と選択のポイントについて述べました。これらを正確に把握することで、午後1問題のシステム改善課題に対応できるようになります。

設問4(1)〔各システムの改善点〕の基幹システムの改善点について答えよ。

本文中の下線④について,どのような条件の場合に審査システムと連携するか。その条件を25字以内で答えよ。
模範解答
勤務先変更理由が,転職,転籍又は退職の場合
解説

模範解答の核心となるキーワードや論点整理

  • 勤務先変更理由
  • 転職,転籍,退職の場合に審査システムと連携
この問題の焦点は「勤務先情報変更時に基幹システムが審査システムと連携する条件が何か」という点にあります。
「転職」「転籍」「退職」の理由の場合に審査が必要となることがポイントです。

なぜその解答になるのか(問題文引用と論理的説明)

【問題文】の該当部を整理します。
「勤務先情報を変更する際には,変更する理由(勤務先変更理由)を確認している。勤務先変更理由には、
転職,転籍,退職、転勤、会社の住所変更又は社名変更がある。
E社では,勤務先情報の変更で再度審査して限度額を再設定する場合があるので,
フロントシステムから基幹システムに連携された勤務先変更理由を事務部門で確認し、
勤務先変更理由によっては審査システムに審査を依頼する。」
そして【システム改善の方針】では、改善点の一つとして、
「基幹システムの改善点
・勤務先情報の変更時,④ある条件の場合には審査システムと連携する。
【模範解答】ではこの「ある条件」が「勤務先変更理由が,転職,転籍又は退職の場合」とされているのは、上記箇所から「再審査が必要となるケースが限定されているから」です。
つまり、勤務先理由の中で「転職」「転籍」「退職」という本人の雇用環境に根本的な変化がある場合、収入や信用状況に大きな影響が見込まれるため再審査が必須となり、審査システムとの連携が行われます。

受験者が誤りやすいポイントやひっかけ選択肢の理由

  1. 「転勤」「会社の住所変更」なども理由の一つだが、「これらは審査連携対象ではない点」に注意が必要。
    転勤や会社の住所変更は勤務先が変わっても収入や信用状況に大きな影響を与えにくいため、審査連携は不要です。
  2. 「勤務先変更理由」全てが連携対象と誤解しやすい
    問題文は明確に「場合によっては審査」としており、具体的な条件は限定的。
  3. 25字以内の制限で、「転職,転籍又は退職」の3つをすべて挙げないと減点の恐れあり
    全て代表的な理由を網羅することが大切。

試験対策として覚えておくべきポイントや知識

  • 勤務先変更理由のうち、審査が必要となるのは「転職」「転籍」「退職」の3つだけというルールを確実に覚える。
  • 「転勤」や「社名変更」等は勤務先の実態が大きく変わっていないため、再審査の対象外
  • 「再審査」=「審査システムとの連携」と理解し、業務の流れと連動させて把握すること。
  • 制度や業務改善策が問われる問題では、「理由・条件」と「システム連携の必要性」の因果関係を整理して覚えるのが重要。

まとめ(表で整理)

勤務先変更理由審査システム連携の有無理由・ポイント
転職あり収入や信用状況が大きく変化するため
転籍あり同上
退職あり同上
転勤なし会社は同じ、収入変化小
会社の住所変更なし同上
社名変更なし同上

以上が今回の問題の解説です。
このように問題文の「勤務先変更理由」とその背景を正しく理解し、審査連携の条件を把握することが合格への重要ポイントです。

設問4(2)〔各システムの改善点〕の基幹システムの改善点について答えよ。

本文中の下線⑤について、ある条件とはどのような条件か。30字以内で答えよ。
模範解答
契約ステータスが“解約予約”で借入残高が0円であること
解説

模範解答の核心キーワード・論点整理

  • 契約ステータスが「解約予約」であること
  • 借入残高が0円であること
  • 夜間バッチ処理で契約ステータスを「解約」に変更する

解答に至る論理的説明

問題文の「基幹システムの改善点」には以下の記述があります。
・解約を受け付けた場合, 契約ステータスを “解約予約” に変更する。
・毎日の夜間のバッチ処理で⑤ある条件の会員の契約ステータスを “解約” に変更する。
この「ある条件」が何かを問う問題です。
また、解約サービスに関する記述では、
解約画面に入力された内容をフロントシステムから基幹システムに連携し,
基幹システムは,契約情報を精査した上で契約ステータスを “解約” に変更する。借入残高がある場合は解約を受け付けない。
つまり、借入残高が0円でない状態では解約できません。
解約を申し込んだ時点では契約ステータスは「解約予約」となり、借入残高が0円になるまで実際の解約は保留されます。
これらを踏まえ、
  • 夜間バッチ処理は解約予約の契約のうち
  • 借入残高が0円(=完済している)状態の会員を対象として
  • 契約ステータスを「解約」に正式に変更する
という業務フローと考えられます。
したがって、「ある条件」とは「契約ステータスが“解約予約”で借入残高が0円であること」となるのです。

受験者が誤りやすいポイントと注意点

  • 「解約予約」と「解約」の混同
    「解約予約」は解約申し込みを受け付けた状態で、まだ完了していません。
    「解約」は実際に契約解除が完了した状態です。
    この違いを混同しやすいので注意してください。
  • 借入残高の有無の重要性
    借入残高が0でないと解約できない点を見落としがちです。
    与信管理上も、残高が残っている契約は解約不可です。
  • 夜間バッチ処理の意義
    解約登録の更新タイミングを理解しておく必要があります。解約処理は即時反映ではなく、バッチ処理で行うケースがある点がポイントです。

試験対策としての覚えておくべきポイント

ポイント内容
契約ステータスの区分正常、解約予約、解約の3区分があり、それぞれの意味を理解する
解約処理の流れ「解約予約」で申込み受付→借入残高0で夜間バッチにより「解約」へ自動更新
借入残高が0でないと解約不可借入残高が残っている場合は解約できない
システムバッチ処理の役割一括・定時に契約状態を更新するためにバッチ処理が利用されることが多い
これらのポイントを押さえておくことで、本文の業務フローやシステム設計の理解が深まり、午後問題での正解に結び付きます。

以上が、「ある条件」とは何かに関する丁寧な解説です。
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