システムアーキテクト試験 2025年 午後101


消耗品の集中購買化とそれに伴う業務システムの新規構築に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。

 A市は、近隣市町村との市町村合併を経て広い面積を有する自治体である。職員の多くは本庁舎に勤務しているが、面積の広い自治体であることから、合併前の庁舎を支所として現在も残しているほか、市税事務所、まちづくりセンターなどの数十の施設が地域内に点在している。また、同じ部門でも職員によってふだん勤務する施設が異なる場合がある。
〔消耗品の購買業務の現状と課題〕  物品や委託業務の調達及び契約手続は、A市の条例、規則及び要綱(以下、A市規定類という)で決まっており、調達額が少額である文房具、コピー用紙、乾電池など の消耗品については、各部門が必要なタイミングで直接調達できる。ただし、少額であってもA市規定類に基づき、次に示す手続を行う必要があるので、調達の頻度が高い部門では事務負担が大きくなっている。 ①消耗品調達に係る支出伺の起案を行い、部門長の決裁を得る。 ②調達額が少額の場合、A市の見積合わせの手続にのっとり、複数の事業者から見積りを取得し、最も安価な見積額を提出した事業者を契約先候補として選定する。調達額が一定額以上になる場合は、入札を行い、契約先候補を選定する。 ③選定した事業者との契約に係る起案を行い、部門長及び契約課の決裁を得る。 ④事業者と注文書及び注文請書、又は契約書の取り交わしを行う。 ⑤事業者から物品が納入されたら、検収を行う。 ⑥事業者から請求書を受け取り、請求額などが正しいことを確認する。 ⑦事業者への支払に関する起案を行い、部門長の決裁を得て、請求書とともに支払伝票を会計課に提出する。  事業者への支払関連の事務は会計課で行う必要があり、各部門からの支払伝票が多く回ってくるので、確認と支払手続が相当な事務負担になっている。
〔消耗品の集中購買化の検討〕  A市では、業務改革の取組の一環として、各部門で実施している消耗品の購買に係る業務について、各部門で直接調達せず、A市全体で集中化を目指すことにした。消耗品の集中購買化の目的として、各部門及び会計課の事務負担の軽減に加えて、一括調達による価格の低減と、使用量の適正化も目指す。  消耗品の購買に係る業務の運用を次のように見直すことにした。ただし、調達、契約及び支払手続に関するA市規定類の改正は行わず、当面は従来どおりのルールに基づくことにした。 ・前年度の調達実績に基づき、1年間でどの程度の数量の消耗品を調達するのかを発注予定数量として定め、発注予定数量を指定した単価契約の入札を消耗品の物品ごとに行う。例えば、赤色ボールペン10本セットで650円といった単位当たりの価格を定めて事業者と契約する。なお、予算の都合から契約期間中の発注数の合計数量は発注予定数量を原則超過しないようにし、一方で、実際の発注数が発注予定数量の一定割合を下回る場合は、契約金額の協議を行うことにしている。 ・契約期間は、4月から翌年3月末までの単年度とする。年度始めから物品の発注ができるように、前年度中に総務課がまとめて支出伺の決裁及び入札を行い、物品ごとの仕様、単価、契約先事業者などを確定する。 ・消耗品の調達は、物品ごとに契約を行うと相当数の契約になるので、一つの契約案件の中に複数の物品の単価を設定する複数単価契約とする。例えば“黒色ボールペン10本セット、単価:600円、発注予定数量:500セット”、“赤色ボールペン10本セット、単価:650円、発注予定数量:200セット”といった内容で、契約書上に定める。複数単価契約の入札では、各物品の単価と発注予定数量を乗じた額の総額が最も低い事業者を契約先候補として選定する。 ・複数単価契約の際に、契約期間中に特定の物品の発注数の合計数量が発注予定数量よりも多くなりそうな場合は、契約上の総額を超えない範囲で、物品ごとの発注予定数量の調整ができるようにする。例えば、赤色ボールペンの使用量が想定よりも多い場合に、赤色ボールペンの発注予定数量を増やして、黒色ボールペンの発注予定数量を減らすなどの調整を行う。 ・A市は消耗品が必要になるタイミングで、物品ごとの発注数などを指定した納入指示を事業者に対して行う。 ・事業者はA市からの納入指示に基づき、“納入指示から5営業日以内”といった契約に定められた納入期間内に指定された施設に納入する。なお、納入指示は契約期間中複数回実施されるが、納入はA市規定類に基づき契約期間内に完了させる必要がある。 ・消耗品の各部門への払出しについては、総務課がまとまった数量を納入指示し、総務課に一括納入させて一元的に在庫管理を行い、各部門が必要なタイミングで必要量を持ち出す方式と、各部門が必要なタイミングで納入指示し、事業者が直接各部門の施設に納入する方式を比較検討した。検討した結果、事業者が直接各部門の施設に納入する方式で進めることにした。 ・上記方式に基づき、納入された消耗品の仕様、数量などを各部門で確認し、納入後1週間以内に検収を行う。 ・事業者は毎月初めに、前月の検収実績に基づきA市総務課宛てに請求書を発行する。総務課は、受領した請求書の請求内容を確認し、問題がなければ支払の起案を行い、会計課が支払う。
〔機能要件の整理〕  消耗品の集中購買化を進めるに当たり、各部門が納入指示を行い、それを事業者に通知し、A市と事業者が出荷、納入、検収などのステータス及び実績を確認できる業務システム(以下、管理システムという)の新規構築を検討することにした。管理システムは、A市が契約するクラウドサービス上で運用し、A市とA市の契約先事業者がインターネット経由で共同利用する形態とする。  総務課、会計課及びデジタル推進課のメンバーによるプロジェクトチームを立ち上げ、民間企業向けの購買関連のSaaS、ソフトウェアパッケージなど(以下、購買PKGという)を調査した。調査した結果、購買PKGが一般的に有する主要機能を表1のとおり整理し、それらを参考に、A市として管理システムに求める個別要件を具体的に検討することにした。
表1 購買PKGの主要機能
機能分類機能名機能概要
注文部門向け商品カタログ機能商品の仕様、注文単位、販売単価などの情報を商品カタログとして、検索・参照ができる。
商品カタログ注文機能商品カタログから商品を選択し、数量を指定し、商品を注文できる。
相見積取得及びスポット注文機能商品カタログに登録されていない商品について、複数のサプライヤーに対して一括で相見積依頼を実施し、サプライヤーからの見積回答を確認し、指定するサプライヤーに対して注文できる。
検収結果登録機能商品の納入を確認し、検収結果を登録できる。
購買部門向けワークフロー機能注文の際に、部門長の承認・差戻しができる。
購買ステータス管理機能部門別及び商品別の注文状況の出荷待ち、出荷済、納入済、検収済のステータスを確認できる。
予算管理機能部門ごとの予算を設定できる。実績に基づき予算の消化状況を管理し、予算を超過する場合は、アラートを表示して注文を制限できる。
データ集計機能商品、サプライヤー、年月、部門及びステータス別の合計数量、合計金額を集計できる。
外部システム連携機能会計システム向けに支払に関するデータを出力できる。
サプライヤー情報登録機能サプライヤーの社名、担当者名、担当者連絡先を登録できる。
サプライヤー向け注文請処理機能納入予定日を含めた注文請処理ができる。
出荷登録機能注文商品の出荷状況を登録できる。
注文ステータス管理機能自社宛ての注文商品の出荷待ち、出荷済、納入済、検収済のステータスを確認できる。
帳票出力機能注文請書、納品書をPDFで発行できる。
商品カタログ登録機能商品ごとに仕様、注文単位、販売単価などを設定できる。
商品単価変更機能商品の販売単価の変更ができる。
在庫管理機能商品ごとに注文可能な在庫数を登録し、実績に基づき、在庫数を自動更新する。在庫がなくなったら商品カタログ注文機能からの注文を制限できる。

 購買PKGの主要機能のうち、注文部門向け機能は各部門の担当者に、購買部門向け機能は総務課の担当者に、サプライヤー向け機能は事業者に利用させることにした。  ただし、サプライヤー向けの機能に位置付けられている商品カタログ登録機能と在庫管理機能については、事業者ではなく総務課で利用することができることを、購買PKGを選定する際の条件にした。また、A市の消耗品の購買業務で利用すると業務上支障を来す機能もあるので、特定の機能を利用できないように制限できることも選定条件にした。
〔管理システムに求める個別要件〕  プロジェクトチームの中で購買PKGの利用を検討したところ、A市の集中購買化後の運用を想定した場合に、主要機能に加えて次に示す機能が必要という意見が挙がった。 ・消耗品の各部門への払出し方法に基づき、商品カタログ注文機能を利用して納入指示する際に、注文内容にある指定ができるようにしたい。 ・商品カタログ注文機能について、ある理由で年度末間際の一定期間は、各部門で利用できないようにしたい。 ・在庫管理機能をある用途で利用できるようにしたい。その際、ある状況のときに、物品ごとの在庫数の増減ができるようにしたい。  上記の意見に対して、標準機能又は簡易な設定で満たすことができる購買PKGを選定し、できる限りカスタマイズをしないで対応する方針とした。

設問1

〔消耗品の集中購買化の検討〕について,総務課が事業者から受領した請求書の請求内容を確認する際に,表1のどの機能を利用し、請求金額が何と一致することを確認するのか。表1中の機能名を一つ挙げ,請求金額との一致を確認する金額を25字以内で答えよ。
解説

設問2

〔機能要件の整理〕について,A市の消耗品の購買業務で利用すると業務上支障を来すと判断した機能を表1中の機能名から二つ答えよ。また,業務上支障を来すと判断した理由をそれぞれ25字以内で答えよ。
解説

設問3(1)〔管理システムに求める個別要件〕について答えよ。

納入指示の際に指定ができるようにしたい内容を10字以内で答えよ。
解説

設問3(2)〔管理システムに求める個別要件〕について答えよ。

商品カタログ注文機能について,各部門が年度末間際の一定期間利用できないようにしたい理由を40字以内で答えよ。
解説

設問3(3)〔管理システムに求める個別要件〕について答えよ。

在庫管理機能を利用する用途は何か。30字以内で答えよ。また,どのような状況のときに,物品ごとの在庫数の増減ができるようにしたいか。40字以内で答えよ。
解説
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