システムアーキテクト試験 2025年 午後103


不動産売買仲介システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。

 K社は不動産会社である。業務で利用している不動産売買仲介システム(以下、現行システムという)の老朽化に伴い、新システムを構築することにした。
〔K社の不動産売買仲介の概要〕  K社は、不動産売買仲介業務として、不動産物件(以下、物件という)の調査、評価、売却希望の顧客(以下、売主という)と購入希望の顧客(以下、買主という)の仲介及び売買契約のサポートをしている。売却と購入の申込みは、電話又はWebサイトで受け付けており、専任の営業担当者が顧客と電話又は電子メール(以下、メールという)で連絡を取り合う。売主は、物件の売買を仲介するようにK社に依頼(以下、媒介依頼という)し、媒介契約を締結する。この媒介契約によって、K社は売主に代わって買主を探し、売買を成立させるための活動を行う。媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、複数社との契約の可否及び売主への営業活動報告の頻度が異なる。K社では、この報告頻度を契約別報告間隔として管理しており、一般媒介契約は20日以内に1回、専任媒介契約は14日以内に1回、専属専任媒介契約は7日以内に1回としている。  K社は、他の不動産会社と物件情報を共有できる不動産情報ネットワークに加盟している。物件情報は、自社のWebサイト(以下、自社サイトという)だけでなく、この不動産情報ネットワークのシステム(以下、不動産情報システムという)にも適切なタイミングで連携し、他の不動産会社と共有している。
〔現在の業務とシステムの概要〕  K社は、現行システムを利用し、売主と買主の顧客情報、媒介契約情報及び物件情報を管理している。また、営業担当者は、電話又はメールでやり取りした内容を折衝履歴情報として登録し、過去のやり取りを確認できるようにしている。現在の主な業務とシステムの概要は、次のとおりである。 (1)媒介依頼  売主から媒介依頼を受けると、カスタマーセンターの担当者が氏名、住所、電話番号、メールアドレス、勤務先などの顧客情報を登録する。また、物件の所在地、マンション又は一戸建てなどの物件の種類、売却理由などを媒介依頼の情報として登録する。  K社では、物件の所在地によって営業担当者が一意に決まっており、新規に媒介依頼があった場合、マネージャが現行システムに登録された媒介依頼の情報を確認し、適切な営業担当者を割り当てる。また、マネージャは、営業担当者ごとの媒介契約数を日々確認し、実績を把握している。営業担当者は、売主に電話又はメールで連絡を取り、詳細な情報を確認して現行システムに登録する。  営業担当者は、まず売主との初回面談を設定し、物件の詳細情報、売却希望価格、売却スケジュール、媒介契約の種類などを確認する。次に、外部の不動産登記情報提供サービスを利用して不動産登記情報を取得し、名義人及び抵当権を確認した上で物件の現地調査を行う。その後、営業担当者は社内の簡易査定システムを利用して簡易な査定を実施し、査定結果を基に売主に売却価格を提案する。売主の承諾を得た後、更に詳細な情報を収集し、外部の査定サービスを利用して正式な査定を実施する。査定結果を現行システムに登録し、査定書を出力して売主にメール及び郵便で送付する。 (2)媒介契約  営業担当者は、現行システムに必要事項を登録し、媒介契約書を作成して売主と媒介契約を締結する。媒介契約締結後、物件の基本情報、販売価格、物件の写真、間取り情報、物件地図などを現行システムに物件情報として登録する。この際、営業担当者は、過去のセールス内容を検索し、魅力的で効果的な紹介文を作成している。物件情報を登録後、売却許可の承認をマネージャに申請する。マネージャは、申請内容を確認し、紹介文にK社として不適切な記載がないかどうかを目視でチェックしている。マネージャの承認後、物件情報を現行システムから自社サイト及び不動産情報システムに連携する。これによって、自社サイトで公開し、不動産情報システムで他の不動産会社と共有する。現行システムでは、媒介契約の状況を物件ステータスとして管理しており、状況に応じて営業担当者が物件ステータスの値を変更している。営業担当者は、各物件の物件ステータスの値から成約率を計算し、確認している。成約率は、過去も含め担当した媒介契約がどれだけ売買契約の締結に至ったかを示し、営業担当者の長期的な業績や成果を評価するのに用いられる。マネージャは、営業担当者ごとに各物件の物件ステータスの値の推移を日々確認し、必要に応じて営業担当者に指示を出している。営業担当者は、物件への問合せ件数、紹介件数、自社サイトへのアクセス件数、類似物件の販売状況などを現行システムに登録し、営業活動報告書として売主へ定期的に報告する。 (3)購入依頼  買主から物件の購入依頼を受けると、カスタマーセンターの担当者が氏名、住所、電話番号、メールアドレス、勤務先などの顧客情報を登録する。また、物件の希望地域、物件の種類、購入検討理由などを購入依頼の情報として登録する。  K社のマネージャは、購入依頼の情報を確認し、適切な営業担当者を割り当てる。営業担当者は、買主に電話又はメールで連絡を取り、詳細な希望条件を確認して現行システムに登録する。その後、希望条件に基づいて適した物件を検索し、提案する。 (4)購入申込み  買主が購入を決定した場合、営業担当者は購入申込みの準備をする。購入申込書を作成し、買主に確認と署名を依頼する。購入申込書を受領後、現行システムに申込内容を登録する。その後、売買契約の締結に向けて売主と買主を仲介し、契約日、価格などの条件を調整する。 (5)売買契約  条件合意後、売主と買主の営業担当者は、必要書類を収集し、現行システムに契約条件などの情報を登録する。その情報を基に、重要事項説明書と売買契約書を作成し、社内の審査部門へ申請する。審査部門の承認後、売買契約手続を調整し、売主と買主が契約書に署名と押印をして契約を締結する。契約締結後、買主から売主へ購入代金を支払い、所有権移転の手続を進める。 (6)仲介手数料 省略。
〔新システムへの要望〕  新システムに対して、利用部門から次のような要望が出された。 ・簡易査定では、現行システムに登録した内容を簡易査定システムに入力している。  正式な査定でも、現行システムに登録した内容を査定サービスに入力している。  さらに、それぞれの査定結果も現行システムに入力しているので、作業の負担を軽減したい。 ・①現在の業務を踏まえ、新規の媒介依頼があった場合にシステムで営業担当者を割り当ててほしい。 ・媒介契約書及び営業活動報告書をメールと郵便で送っているので、売主から一元的に管理しにくいという不満が生じている。売主が一元的に管理できるようにしてほしい。 ・営業担当者は、媒介契約の状況が変わるたびに現行システムで物件ステータスの値を変更している。手動で変更していることによる対応漏れを防止し、作業の負担を軽減したい。 ・物件情報に関する業務において、営業担当者とマネージャの作業の負担を軽減したい。 ・現行システムを照会しながらグループウェアで顧客宛てのメールを作成しているので、入力誤りが発生している。入力誤りを減らし、作業の負担を軽減したい。 ・営業担当者の実績を可視化し、目標管理及び計画立案に活用させたい。また、マネージャが現在の業務で確認している営業担当者ごとの営業活動の状況を効率的に確認できるようにしたい。
〔新システムの方針〕  K社情報システム部のL課長は、現行システムの機能を踏襲しつつ、新システムへの要望を踏まえ、新システム構築の方針を次のように定め内容を検討した。 (1)社内システム及び社外サービスとの連携強化  ・新システムと社内システム及び社外サービスとのデータ連携を自動化する仕組みを導入する。取得した情報を即時に新システムに反映させることによって、手動でのデータ入力の工数を削減し、業務効率の向上を目指す。 (2)AI技術の導入  ・K社の業務ルールに沿ったAIによる文章作成及び校正支援サービスを導入し、物件情報に関する工数の削減効果を検証してから業務への適用を決定する。 (3)売主との接点強化  ・売主との接点を強化するために、売主が取引状況を確認できる売主専用のWebペ(以下、売主マイページという)を作成する。媒介契約を電子契約で実施し、媒介契約書及び媒介契約の情報を売主マイページ上で表示できるようにする。また、営業活動報告書を売主マイページで報告できる機能を追加する。営業担当者が営業活動報告書を作成して送付すると、売主マイページに表示されるようにする。 (4)業務自動化  ・新規の媒介依頼登録時に自動で営業担当者を割り当てる。  ・新システムにメールを送受信できる機能を導入し、顧客とのメールのやり取りを一元管理できるようにする。また、メールでのやり取りを自動で②ある情報として登録し、経緯の追跡に役立てる。  ・営業活動報告書の報告漏れを防ぐために、直近の営業活動報告書の提出日を基に③報告期限までの残日数を算出し、報告期限の3日前時点で営業活動報告書が未報告であった場合、営業担当者ヘアラートを通知する。  ・処理内容に基づいて自動で物件ステータスの値を更新する機能を導入し、対応漏れを防止する。物件ステータスの値を更新した際、必要に応じて自社サイト及び不動産情報システムに情報を連携する。  新システムで検討している物件ステータスを表1に示す。
表1 新システムで検討している物件ステータス
物件ステータスの値説明
物件登録中物件を新規に登録している状態
公開中物件が一般に公開されており、購入希望者が閲覧可能な状態
商談中購入希望者と商談が進行中の状態
購入申込済商談が成立し、売買契約書の準備などの手続が進行中の状態
成約済売主と買主との間で売買契約が締結された状態
決済済売買契約が完了し、買主から売主へ購入資金が支払われた状態
売却済最終的に売主から買主に引き渡され、取引が完了した状態
媒介契約終了成約に至らず媒介契約の契約期間が満了した状態
キャンセル媒介契約が解除された状態

(5)データの可視化  ・営業担当者とマネージャが視覚的にデータを確認できるように、ダッシュボード機能を導入する。営業担当者には、媒介契約数、折衝履歴件数及び成約率を確認できるようにし、マネージャには現在の業務で確認している営業担当者ごとの状況を確認できるようにする。 (6)マスター管理  ・地域マスターを管理し、営業担当者の担当地域を登録する。  ・メールテンプレートマスターを管理し、顧客とメールでやり取りする際のテンプレートとして活用する。

設問1

〔新システムへの要望〕の本文中の下線①について,新システムでどのように営業担当者を割り当てるかを〔新システムの方針〕に基づき40字以内で答えよ。
解説

設問2

〔新システムの方針〕のAI技術の導入について,K社が検証しようとしているのは,物件情報に関して誰が何をすることに関する工数の削減効果か。45字以内で二つ答えよ。
解説

設問3(1)〔新システムの方針〕の業務自動化について答えよ。

物件ステータスの値が“物件登録中”の媒介契約のうち,誰が何をした後に物件ステータスの値が“公開中”となるか。現在の業務内容を踏まえ25字以内で答えよ。
解説

設問3(2)〔新システムの方針〕の業務自動化について答えよ。

本文中の下線②のある情報とは何か。10字以内で答えよ。
解説

設問3(3)〔新システムの方針〕の業務自動化について答えよ。

本文中の下線③に示す,報告期限までの残日数を算出する方法を45字以内で答えよ。
解説

設問4(1)〔新システムの方針〕のデータの可視化について答えよ。

営業担当者のダッシュボードに成約率を表示する際の計算式を表すとしたら、次の式で示すことができる。  担当した媒介契約のうち(a)÷担当した媒介契約数×100 (a)に入れる適切な字句を,表中の物件ステータスの値を用いて35字以内で答えよ。
解説

設問4(2)〔新システムの方針〕のデータの可視化について答えよ。

マネージャのダッシュボードに,マネージャが現在の業務で確認している営業担当者ごとの状況を表示する際の内容を35字以内で答えよ。
解説
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