ITパスポート 2010年 春期 問44
問題文
プロジェクトにおける開発予算に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
選択肢
ア:開発計画は総開発予算に基づき作成するものなので、個々の作業ごとの見積りを積算して計画してはならない。
イ:開発予算と実績の差異を監視し、必要に応じて計画変更を行う。(正解)
ウ:開発予算は直接資材調達に対するもので、プロジェクトに参加する社員の人件費は含めない。
エ:類似プロジェクトの有無にかかわらず、ファンクションポイント法を用いて詳細な見積りを行う。
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プロジェクトにおける開発予算に関する記述【ITパスポート 解説】
正解の理由
選択肢の中で最も適切なのは、開発予算と実績の差異を監視し、必要に応じて計画変更を行う、つまりイです。理由は次の通りです。
- プロジェクト予算は「計画(見積)」と「実績(支出・投入)」が必ず差異を生みます。差が出たときに放置すると、最終的に予算超過や納期遅延につながります。したがって差異の監視(モニタリング)と、必要なら計画変更(スコープやスケジュール、追加予算の承認など)を行うことが標準的な管理方法です。
- 実務でも、家計で言えば毎月の支出が予算を超えそうなら節約策を考えるか、必要なら予算を増やす(貯金を取り崩す/収入を増やす)判断をします。プロジェクトも同じで、差異を見て判断・対応することが重要です。
解法ステップ
この種の問題に答える手順を示します。初学者でも使える順序です。
- 各選択肢が「予算の作り方」「監視」「含める費用」「見積り手法」のどれを主張しているか識別する。
- プロジェクト管理の基本原則(見積→予算設定→監視→変更管理)に照らして合致するか確認する。
- 常識で考えて実行可能か(例:人件費を含めない、というのは現実的か)を検証する。
- 最も一般的かつ実務に合う記述を選ぶ。今回は「監視と計画変更」が妥当であるためイを選びます。
選択肢別の誤答解説
ア: 開発計画は総開発予算に基づき作成するものなので、個々の作業ごとの見積りを積算して計画してはならない。
- 誤りです。むしろ「個々の作業ごとの見積りを積算する(ボトムアップ見積り)」が一般的です。個別見積りを積むことで、総額の根拠が明確になります。総額だけで計画を作ると根拠が不明瞭で管理が困難になります。
イ: 開発予算と実績の差異を監視し、必要に応じて計画変更を行う。
- 正しいです。差異管理と変更管理はプロジェクト管理の基本です。差が出たら原因分析して是正措置や計画変更を行います。
ウ: 開発予算は直接資材調達に対するもので、プロジェクトに参加する社員の人件費は含めない。
- 誤りです。プロジェクト予算には通常、直接費(資材・外注費)だけでなく、人件費(作業者の工数×単価)も含まれます。人件費を除く、というのは実務ではありえません。人件費は「人が作業するためのコスト」であり重要な費用項目です。
エ: 類似プロジェクトの有無にかかわらず、ファンクションポイント法を用いて詳細な見積りを行う。
- 誤りです。ファンクションポイント法(Function Point:ソフトウェアの機能量を基に工数を見積る手法)は有効な場合がありますが、常に使うべきではありません。類似プロジェクトデータがあれば類推見積り(トップダウン)や過去実績を活用する方が現実的です。状況に応じて手法を選ぶのが正しい対応です。
よくある誤解
-
「一度作った計画は変更してはいけない」
- 実際はプロジェクトは不確実性が高く、変更や見直しを適切に行うことが成功の鍵です。変更管理(変更の承認プロセス)を通じて正しく扱います。
-
「人件費は固定費だから気にしなくてよい」
- 人件費も工数の増減や外注の発生で変動します。特に延長や手戻りが発生すると総コストに大きく影響します。
-
「見積りは経験だけで十分」
- 経験は重要ですが、根拠のある見積り手法(ボトムアップ、類推、ファンクションポイントなど)を組み合わせて使うと精度が上がります。
補足コラム
差異を評価するための代表的な指標にアーンドバリュー(Earned Value)があります。
- 用語説明:アーンドバリュー(Earned Value:実績に基づく価値評価手法)
- 基本的な式(覚え方):
- (コスト差異 = アーンドバリュー - 実際コスト)
- (スケジュール差異 = アーンドバリュー - 計画価値)
- ここで EV(Earned Value)は「実際に完了した作業に対して計画された価値」、AC(Actual Cost)は「実際にかかったコスト」、PV(Planned Value)は「計画時点の価値」です。
- これにより、「今の時点で予定よりお金がかかっているか」「予定より進んでいるか」を定量的に把握できます。IT初心者には、まず「差が出たら原因を調べ、対処(削減・追加予算・スコープ調整)」する考え方を覚えることを勧めます。
また、見積り手法は状況に応じて使い分けます。
- ボトムアップ(下位の作業を積算)→ 精度高いが手間がかかる。
- トップダウン(類似案件や総額から配分)→ 早いが詳しい根拠が弱い。
- ファンクションポイント法(Function Point:機能の数や複雑さから工数を推定)→ ソフトウェア向けの定量手法。データがある場合に有効。
FAQ
Q1: どれくらいの頻度で予算を監視すればよいですか?
A1: プロジェクトの規模やリスクによりますが、小規模なら週次、中〜大規模なら日次の進捗確認と週次/月次のコスト確認が一般的です。重要なのは「定期的に差異をチェックする習慣」です。
A1: プロジェクトの規模やリスクによりますが、小規模なら週次、中〜大規模なら日次の進捗確認と週次/月次のコスト確認が一般的です。重要なのは「定期的に差異をチェックする習慣」です。
Q2: 予算が足りなくなったらどうするべきですか?
A2: 原因分析→スコープ削減・優先順位見直し・追加予算申請・外注化検討などの選択肢を検討します。何をするにも利害関係者(発注者や上司)の合意が必要です。
A2: 原因分析→スコープ削減・優先順位見直し・追加予算申請・外注化検討などの選択肢を検討します。何をするにも利害関係者(発注者や上司)の合意が必要です。
Q3: ファンクションポイント法はいつ使うべきですか?
A3: ソフトウェア開発で、機能の数や複雑さを定量的に扱いたい場合に有効です。ただし、適用には慣れと基準データが必要です。過去データがある場合は有効に機能します。
A3: ソフトウェア開発で、機能の数や複雑さを定量的に扱いたい場合に有効です。ただし、適用には慣れと基準データが必要です。過去データがある場合は有効に機能します。
Q4: 人件費はどう見積ればよいですか?
A4: 各作業の工数(時間)を見積り、担当者の単価(時間単位のコスト)を掛け合わせます。これが人件費になります。見積りにはバッファ(予備)を設定することも重要です。
A4: 各作業の工数(時間)を見積り、担当者の単価(時間単位のコスト)を掛け合わせます。これが人件費になります。見積りにはバッファ(予備)を設定することも重要です。
関連キーワード: 予算管理、コスト管理、工数見積り、ボトムアップ見積り、アーンドバリュー、ファンクションポイント、変更管理

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