情報処理安全確保支援士 2015年 春期 午後1 問02
情報漏えいインシデントの調査に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。
L社は、従業員数700名のシステムインテグレータである。L社のネットワーク構成を図1に、主なサーバとその概要を表1に示す。


各サーバは、アクセスログ、操作ログ、ミドルウェアのログ及びアプリケーションプログラムのログをログ管理サーバに送信するとともに、各サーバ上でも直近3か月分のログを保存している。
FWはステートフルパケットインスペクション型であり、NAPT機能を使用している。また、許可した通信、拒否した通信ともにログを取得するように設定し、取得したログは全てログ管理サーバに送信している。FWのフィルタリングルールを表2に示す。

L社ネットワーク上の全てのサーバ、ネットワーク機器及びPCは、NTPサーバと時刻同期を行っている。
L社でのPCに関する環境を図2に示す。

L社のサーバ、ネットワーク及びPCは、IT部が、M部長の下、リーダのNさんを中心に10名で設計、構築、保守・運用を行っている。
L社では、サーバごとに個別の利用者IDをIT部の各従業員に付与しており、サーバの保守・運用時には、その利用者IDを用いてSSHでサーバに接続し、管理者権限に昇格して作業を行う規則になっている。また、IT部ではサーバの保守・運用に使用する利用者ID及びパスワードの情報をPCに保管してはならない規則となっている。
〔情報漏えいインシデント〕
4月23日に、L社が加盟しているセキュリティ情報共有団体からL社に連絡が入った。海外のセキュリティ団体が入手したC&C(Command & Control)サーバの通信履歴の中に、L社に割り当てられているIPアドレスからの通信が含まれていたとのことであった。セキュリティ情報共有団体からは、C&CサーバのIPアドレス及びポート番号、送信元IPアドレス並びにC&Cサーバ側の受信日時の情報が提供された。受信日時は協定世界時(UTC)で4月16日7時13分であった。
〔初期対応〕
M部長から指示を受け、Nさんが確認したところ、送信元IPアドレスは間違いなくL社のものであった。また、①このIPアドレスから当該C&Cサーバへの通信が発生していたことも確認できた。送信日時は日本時間で4月16日16時13分であった。これらの確認結果を基に、セキュリティ情報共有団体に更なる情報提供を依頼したところ、当該C&Cサーバに送信された情報が提供された。その中には、L社のファイル配信サーバのホスト名、IT部のVさんに付与された当該サーバの利用者ID及びパスワードが含まれていた。
Nさんは、調査結果をM部長に報告し、次の緊急対応を実施した。
・ファイル配信サーバ上での当該利用者IDの無効化
・FWによる、当該C&Cサーバへの通信の遮断
NさんはM部長の指示で、漏えい元を特定するために、C&Cサーバへの通信の送信元を調査した。その結果を図3に示す。
Nさんは当該PCをネットワークから切り離した上で、M部長に図3の調査結果を報告した。
〔詳細調査と暫定対応〕
NさんはM部長の指示で、当該PCに対するディジタルフォレンジックスによる調査を、セキュリティ専門会社に依頼した。セキュリティ専門会社による調査報告を図4に示す。
Nさんは、M部長に図4の調査報告を説明した。M部長は、この調査によって明らかになったマルウェアの特徴から、IPアドレスを基にしたFWによる通信の遮断では、C&Cサーバへの通信を完全には遮断できない可能性があることを指摘した。Nさんは、M部長の指摘に基づき、③この調査で明らかになったC&Cサーバへの通信方法を考慮した、新たな遮断方法を検討し、M部長の承認を得た上で実施した。
〔追加調査〕
Nさんは、影響範囲及びマルウェア感染経路を特定するための追加調査を立案し、M部長から実行承認を得た。追加調査の内容を図5に示す。
L社では、AVベンダとの間で、マルウェアの調査及び対応するウイルス定義ファイルの作成を依頼できる契約を結んでいる。Nさんは、図4で報告された3種類のマルウェアについて、対応するウイルス定義ファイルの作成をAVベンダに依頼し、そのウイルス定義ファイルを用いて追加調査1を実施した。その結果、L社内の他のPC及びサーバでは、これらのマルウェアの感染は確認されなかった。
Nさんは、追加調査2として、ファイル配信サーバ上に保存されている操作ログ、アプリケーションプログラムのログ及び配信ファイルのアーカイブを調査した。ファイル配信サーバから3月28日以降に配信されたファイルは、全てNさんがVさんに指示して配信したものであることが確認できた。
Nさんは、追加調査3として、L社内のサーバのうち、Vさんの利用者IDでアクセス可能な全てのサーバ上のアクセスログを調査し、最初のマルウェア感染後にVさんの利用者IDで当該PCからアクセスされたサーバを特定した。当該サーバとして、ファイル配信サーバ以外に、NTPサーバ、DHCPサーバ兼内部DNSサーバ及びプロキシサーバの3台が確認できた。これら3台のサーバ上の操作ログを更に詳細に確認したところ、各サーバに対するVさんの利用者IDでの操作は、全てNさんの指示に基づく保守・運用作業であり、不正な操作が行われた形跡はなかった。これら3台のサーバは、L社ネットワーク構成において重要であり、サービス停止ができないものであった。Nさんは、これらのサーバ上で不正な操作が行われた形跡がなかったこと及びサービス停止ができないことから、⑤これらのサーバ上で実行可能で効果の見込まれる対策を実施した。
Nさんは、追加調査4として、3月1日から28日までにVさんが受け取った電子メールを調査するとともに、Vさんへの聞き取りを実施した。その結果、Vさんが、3月28日に、インターネットファックスサービスを装った電子メールを受け取り、添付ファイルを開いていたことが判明した。AVベンダに調査を依頼した結果、このファイルはダウンローダをインストールすることが分かった。
Nさんは、これらの結果をM部長に報告した。
M部長は、追加調査3について、⑥これら3台のサーバ上のログに対する改ざんの痕跡が残っていないことを確認したか、Nさんに尋ねた。Nさんは、ログの改ざんを想定した調査は行っていなかったことを報告し、ログの再調査を実施した。再調査の結果、これら3台のサーバ上のログに対する改ざんの痕跡は残っていなかった。Nさんは、M部長に再調査の結果を報告した。
M部長は、調査結果を了承し、恒久対応としての再発防止策の立案をNさんに指示した。
設問1:〔初期対応〕について、(1)、(2)に答えよ。
問題文を見る(1)本文中の下線①について、確認の具体的な方法を、30字以内で述べよ。
模範解答
FWのログで当該通信の記録を確認する。
解説
解答の論理構成
- 境界装置である「FW」は、送信元ネットワークアドレス変換後の全アウトバウンド通信を把握できます。
引用:
「FWはステートフルパケットインスペクション型であり、NAPT機能を使用している。」 - さらに「許可した通信、拒否した通信ともにログを取得するように設定」され、そのログは「全てログ管理サーバに送信」されています。
→ 社外C&C宛通信の有無はFWログを検索すれば一元的に確認可能です。 - したがって、下線①「このIPアドレスから当該C&Cサーバへの通信が発生していたことも確認できた」を具体化すると、 FWのログで該当する送信元IP/宛先IP・ポートの記録を照合した、という手順になります。
誤りやすいポイント
- プロキシサーバのアクセスログだけを調べてしまう
(マルウェアが「プロキシサーバを利用せずにC&Cサーバへの接続を試みる」ため、漏れが生じる)。 - 内部サーバやPCのパケットキャプチャを取ろうとする
→ 当時点では過去通信の証跡が残っていない可能性が高く非効率。 - NAT越しのグローバルアドレスとプライベートアドレスの対応を考慮し忘れ、送信元を特定できない。
FAQ
Q: プロキシログではなくFWログを優先した理由は?
A: マルウェアがプロキシを経由せず直接通信する場合があるため、境界で全通信を網羅的に記録するFWログが最も確実です。
A: マルウェアがプロキシを経由せず直接通信する場合があるため、境界で全通信を網羅的に記録するFWログが最も確実です。
Q: ログ管理サーバが故障していたらどうすべき?
A: FW本体にも一定期間ログが残るので、まずはローカル保存分を取得し、早急にログ管理サーバの復旧とバックアップ確保を行います。
A: FW本体にも一定期間ログが残るので、まずはローカル保存分を取得し、早急にログ管理サーバの復旧とバックアップ確保を行います。
Q: 時刻合わせは確認する必要がありますか?
A: はい。L社は「NTPサーバと時刻同期」を行っていますが、実際にログを突き合わせる際はUTC⇔JSTの換算と時刻ずれの有無を点検します。
A: はい。L社は「NTPサーバと時刻同期」を行っていますが、実際にログを突き合わせる際はUTC⇔JSTの換算と時刻ずれの有無を点検します。
関連キーワード: ファイアウォールログ、NAPT, ステートフルインスペクション、syslog, 監査証跡
設問1:〔初期対応〕について、(1)、(2)に答えよ。
問題文を見る模範解答
a:FW
b:プロキシサーバ
c:MACアドレス
解説
解答の論理構成
-
送信元IPアドレスはインターネット側で観測されたグローバルIPです。
【問題文】には「FWはステートフルパケットインスペクション型であり、NAPT機能を使用している」とあります。
NAPT(PAT)では、社内の端末が外部へ出る際にFW自身のグローバルIPに変換されます。したがって当該IPはFWのものとなり、a には「FW」が入ります。 -
FWのログをたどると、HTTP通信を仲介した内部機器が判明します。
【問題文】には「Webブラウザでのインターネットアクセスは、プロキシサーバを使用するよう設定されている」およびFWルール表で「項番4 プロキシサーバ → インターネット HTTP, HTTPS 許可」と記載されています。
つまり社内PCがHTTPで外部と通信する際は必ずプロキシサーバ経由になります。FWログに残る “宛先インターネット / 送信元内部” のHTTPはプロキシサーバしか該当しないため、b は「プロキシサーバ」です。 -
プロキシサーバのログから内部PCのプライベートIPがわかりますが、それだけでは機器を特定できません。
【問題文】のIT資産管理サーバに「MACアドレス」を保管している旨と、DHCPの説明により、DHCPログに記録されたIP ⇔ MAC対応を参照すれば機器を一意に識別できます。
よってDHCPログで突き合わせる情報、すなわち c は「MACアドレス」となります。
誤りやすいポイント
- FWがNATを行っている点を読み落とし、a を「L3SW」や特定サーバと誤答する。
- HTTP通信の経路を考慮せず、b を「L3SW」や「DHCPサーバ」としてしまう。プロキシを通らない通信はFWで直接遮断されることを確認する必要があります。
- DHCPログに残る情報をIPと同列に考え、c に「ホスト名」や「管理番号」を書くミス。DHCPが払い出すのはIP ⇔ MACの対応です。
FAQ
Q: FWのグローバルIPが社内に複数ある場合はどう判断しますか?
A: 問題文にはFWが単一装置として描かれており、外部公開サーバはDMZ内に配置されています。NAPTを行う装置はこのFWだけなので、外部に見えるIPはFW由来と判断できます。
A: 問題文にはFWが単一装置として描かれており、外部公開サーバはDMZ内に配置されています。NAPTを行う装置はこのFWだけなので、外部に見えるIPはFW由来と判断できます。
Q: プロキシサーバを経由しないHTTP通信はありませんか?
A: PCのブラウザ設定が「必ずプロキシを使用」と固定されているため通常はありません。FWルールにもPC → インターネットHTTPの許可が無いので、直接通信は送信元で破棄されます。
A: PCのブラウザ設定が「必ずプロキシを使用」と固定されているため通常はありません。FWルールにもPC → インターネットHTTPの許可が無いので、直接通信は送信元で破棄されます。
Q: DHCPではホスト名も記録できますが、なぜMACアドレスを選ぶのですか?
A: ホスト名は利用者が変更できる場合があり信頼性が相対的に低いため、機器固有で不変なMACアドレスをキーにIT資産管理サーバの情報と突き合わせるのが一般的です。
A: ホスト名は利用者が変更できる場合があり信頼性が相対的に低いため、機器固有で不変なMACアドレスをキーにIT資産管理サーバの情報と突き合わせるのが一般的です。
関連キーワード: NAPT, プロキシログ、DHCPリース、アクセス制御、デジタルフォレンジック
設問2:〔詳細調査と暫定対応〕について、(1)、(2)に答えよ。
問題文を見る(1)図4中の下線②の試みは、L社のPCからでは必ず失敗するが、FWのログには記録されない。その理由を35字以内で述べよ。
模範解答
DNSによる名前解決ができず、TCP/IP接続要求が出ないから
解説
解答の論理構成
- 図4には「マルウェア内にC&CサーバのFQDNが記述され、C&Cサーバへの接続に使用されていた。」とある。すなわち接続先はIPアドレスではなくFQDNで指定される。
- 同じく図4の下線②で示される「プロキシサーバを利用せずにC&Cサーバへの接続を試みる」は、PCから外部FQDNへ直接HTTP通信を出そうとする動作である。
- しかしL社PCのDNSサーバ設定は内部DNSサーバであり、FWの表2には内部DNSサーバやPCからインターネット側へ向かうDNS通信を許可するルールが存在しない。したがって外部FQDNの名前解決は失敗する。
- DNS解決に失敗するとTCPセッション確立に必要なSYNパケットすら生成されないため、FWまでHTTP/HTTPSの通信は到達しない。
- よって「DNSによる名前解決ができず、TCP/IP接続要求が出ないから」という解答になる。
誤りやすいポイント
- 「HTTP通信が失敗=FWで拒否ログが残る」と短絡するミス。実際はDNSフェーズで止まるためFWには全くログが残らない。
- プロキシを使わない=直接IPアドレスで接続すると誤解するケース。問題文はFQDN利用を明記している。
- 「内部DNSが外部問い合わせをフォワードしているかも」と想定する誤読。表2に該当許可が無いことを見落としやすい。
FAQ
Q: PCから内部DNSへ問い合わせはできますよね。なぜそこでNXDOMAINが返るだけでなく失敗になるのですか?
A: 内部DNSサーバは社内ゾーン専用で外部問い合わせを転送できません。転送できない場合は名前解決不能となり、接続処理そのものが打ち切られます。
A: 内部DNSサーバは社内ゾーン専用で外部問い合わせを転送できません。転送できない場合は名前解決不能となり、接続処理そのものが打ち切られます。
Q: FWにDNSクエリの拒否ログも出ないのですか?
A: PC→内部DNSは社内通信なのでFWを通りません。内部DNS→外部への転送はポリシーで遮断されているため外向きパケットが生成されず、FWにも記録されません。
A: PC→内部DNSは社内通信なのでFWを通りません。内部DNS→外部への転送はポリシーで遮断されているため外向きパケットが生成されず、FWにも記録されません。
Q: マルウェアがIPアドレス直書きなら②は成功しますか?
A: はい。DNSを経由せず直接SYNを発行するためFWでHTTP/HTTPSを拒否しない限り通信は成立します。
A: はい。DNSを経由せず直接SYNを発行するためFWでHTTP/HTTPSを拒否しない限り通信は成立します。
関連キーワード: DNS, FQDN, ステルス通信、パケットフィルタリング、デジタルフォレンジックス
設問2:〔詳細調査と暫定対応〕について、(1)、(2)に答えよ。
問題文を見る(2)本文中の下線③について、遮断の具体的な方法を40字以内で述べよ。
模範解答
プロキシサーバでC&Cサーバへの通信のURLをブラックリストに設定する。
解説
解答の論理構成
-
既に実施した対策では「FWによる、当該C&Cサーバへの通信の遮断」を行ったが、 「IPアドレスを基にしたFWによる通信の遮断では、C&Cサーバへの通信を完全には遮断できない可能性」が示唆された。
これはC&C側がIPを変更すれば再接続できてしまうためです。 -
セキュリティ専門会社の報告(図4)で、マルウェアは
「マルウェア内にC&CサーバのFQDNが記述され、C&Cサーバへの接続に使用」し、 さらに接続手順として
「Webブラウザのプロキシ設定を基に、プロキシサーバを利用して接続を試みる」
と明記されています。つまり最終的にプロキシ経由で通信しようとします。 -
そこで、マルウェアが用いる「五つの異なるFQDN」をブラックリストに登録すれば、 IP変更・多重化に影響されずに通信を遮断できます。
この具体策を40字以内でまとめたものが
「プロキシサーバでC&Cサーバへの通信のURLをブラックリストに設定する。」
となります。
誤りやすいポイント
- FWのルール追加で十分と考え、FQDN変動やプロキシ経由通信を見落とす。
- プロキシの「URLフィルタリング」をホワイトリスト型と誤認し、設定方法を逆に書いてしまう。
- マルウェアがまず「プロキシサーバを利用せずに」接続を試みる点ばかりに注目し、既にFWで遮断できている事実を忘れて冗長な回答を書く。
FAQ
Q: IPアドレスでの遮断を強化するだけではなぜ不十分なのですか?
A: FQDNが複数ありIPが頻繁に変わるとFWのブラックリストを都度更新する手間が増え、更新遅れで通信を許してしまう恐れがあります。FQDN単位で遮断すればこの問題を回避できます。
A: FQDNが複数ありIPが頻繁に変わるとFWのブラックリストを都度更新する手間が増え、更新遅れで通信を許してしまう恐れがあります。FQDN単位で遮断すればこの問題を回避できます。
Q: プロキシサーバ側にURLフィルタを入れても直接通信は止められませんか?
A: 直接通信は既にFWが拒否しているので問題ありません。残る経路=プロキシ経由を遮断することで完全遮断となります。
A: 直接通信は既にFWが拒否しているので問題ありません。残る経路=プロキシ経由を遮断することで完全遮断となります。
Q: ホワイトリスト方式ではだめですか?
A: 日常的に多種多様なサイトへアクセスする環境ではホワイトリスト管理が過大な運用負荷となるため、今回のような限定的なブラックリスト方式が適切です。
A: 日常的に多種多様なサイトへアクセスする環境ではホワイトリスト管理が過大な運用負荷となるため、今回のような限定的なブラックリスト方式が適切です。
関連キーワード: URLフィルタリング、ブラックリスト、FQDN, プロキシサーバ、マルウェア通信
設問3:〔追加調査〕について、(1)〜(3)に答えよ。
問題文を見る(1)図5中の下線④の調査は、どのような攻撃を想定したものか。想定した攻撃を30字以内で述べよ。
模範解答
ファイル配信サーバからマルウェアを拡散する攻撃
解説
解答の導き方
- 初期対応で、C&Cサーバに送信された情報に「L社のファイル配信サーバのホスト名、IT部のVさんに付与された当該サーバの利用者ID及びパスワード」が含まれていたことが判明しています。つまり攻撃者は、Vさんとしてファイル配信サーバにログインできる状態だったことになります。
- 表1のファイル配信サーバの概要に「パッチの自動配信及びパッチの強制適用に利用されている。」とあります。つまりこのサーバを用いれば、多数のPCやサーバへ一括でファイルを配布できる機能があることが分かります。
- 図4では「いずれも自ら感染を広げるタイプではない」とあり、マルウェア自身がネットワーク内で自律的に拡散することはありません。しかし、盗まれた認証情報でファイル配信サーバを操作すれば、マルウェア自身が広がらなくても、配信機能を使って社内にマルウェアを広げることができます。
- 以上から、攻撃者が入手したファイル配信サーバの利用者ID及びパスワードを悪用して、当該サーバから悪性ファイルを配信し、社内へマルウェアを広げるおそれがあります。図5の下線④「最初のマルウェア感染後にファイル配信サーバから配信されたファイルの調査」は、こうした配信が行われていないかを確かめるための調査だと解釈できます。
- したがって想定した攻撃は「ファイル配信サーバからマルウェアを拡散する攻撃」です。
誤りやすいポイント
- 「いずれも自ら感染を広げるタイプではない」を見落として、マルウェア自身が社内で自己拡散する攻撃と答えてしまう。自己拡散しないからこそ、配信の仕組みを悪用した拡散を疑う必要があります。
- 図3に、VさんがサーバにアクセスするためのID及びパスワードを当該PCに保管していなかったとあることから、認証情報は漏れていないと考えてしまう。実際には、ファイル配信サーバの利用者ID及びパスワードはC&Cサーバに送信されていました。
- ファイル配信サーバはパッチを配るだけのサーバだと考え、攻撃に使われる可能性を見落とす。パッチの自動配信・強制適用の仕組みは、悪用されれば社内全体へファイルを配布する経路になります。
FAQ
Q: マルウェアが自ら拡散しない場合でも、なぜファイル配信サーバの悪用で感染拡大が起きるのですか?
A: ファイル配信サーバは「パッチの自動配信及びパッチの強制適用に利用されている」ため、一度悪性ファイルを登録すれば、管理下の多数端末へ自動的に配布される可能性があり、マルウェア自身が自己拡散しなくても大規模感染が発生します。
A: ファイル配信サーバは「パッチの自動配信及びパッチの強制適用に利用されている」ため、一度悪性ファイルを登録すれば、管理下の多数端末へ自動的に配布される可能性があり、マルウェア自身が自己拡散しなくても大規模感染が発生します。
Q: 追加調査2で見つけるべき具体的な痕跡は何ですか?
A: 配信ファイルのアーカイブ内容、配信操作ログ(誰がいつ登録・配信したか)、配信ファイルのハッシュと既知のマルウェアの照合、配信時刻と最初の感染時刻の整合などを確認します。
A: 配信ファイルのアーカイブ内容、配信操作ログ(誰がいつ登録・配信したか)、配信ファイルのハッシュと既知のマルウェアの照合、配信時刻と最初の感染時刻の整合などを確認します。
関連キーワード: マルウェア、C&Cサーバ、認証情報窃取、パッチ配信、自動配信
設問3:〔追加調査〕について、(1)〜(3)に答えよ。
問題文を見る(2)本文中の下線⑤について、これら3台のサーバ上で実施すべき対策を20字以内で述べよ。
模範解答
Vさんの利用者IDの無効化
解説
解答の導き方
設問は下線⑤「これらのサーバ上で実行可能で効果の見込まれる対策を実施した」について、サーバ上で実施すべき対策を20字以内で答える問題です。結論は次の筋道で導けます。
- 追加調査3では、最初のマルウェア感染後にVさんの利用者IDで当該PCからアクセスされたサーバとして、ファイル配信サーバ以外に「NTPサーバ、DHCPサーバ兼内部DNSサーバ及びプロキシサーバの3台が確認できた」とあります。つまり、この3台の利用者ID及びパスワードは、マルウェアに感染した当該PCで入力されていたことになります。
- 初期対応で、C&Cサーバに送信された情報に「ファイル配信サーバのホスト名、IT部のVさんに付与された当該サーバの利用者ID及びパスワードが含まれていた」と判明しており、図4では当該PCに「キーロガー」が残っていたとあります。当該PCで入力された認証情報は、実際に窃取されて外部に流出していたわけです。同じPCから入力された3台のサーバのパスワードも、窃取された可能性を否定できません。
- 3台の操作ログを確認した結果では「不正な操作が行われた形跡はなかった」とありますが、形跡がないことは、認証情報が窃取されていないことを意味しません。既に窃取された認証情報は、今後いつでも悪用され得ます。
- これら3台はサービス停止ができないため、サーバを停止して対処することはできません。サービスを止めずに直ちに効果を出す対策として、Vさんの利用者IDを無効化し、そのIDによる認証を防ぐことが有効です。初期対応でファイル配信サーバに対して実施した「ファイル配信サーバ上での当該利用者IDの無効化」と同じ措置です。
以上より、解答は「Vさんの利用者IDの無効化」です。
誤りやすいポイント
- ログに「不正な操作が行われた形跡はなかった」ことだけで安全と判断する。認証情報が窃取されていれば、今後悪用される可能性がある点を見落としやすいです。
- 重要サーバを停止して再構築することを考えてしまう。3台はサービス停止ができないと明記されているので、サーバを動かしたまま実行できる対策を答えます。
- パスワードの変更だけを答えてしまう。本問は、初期対応と同様に、窃取されたおそれのある利用者IDそのものを使えなくする対策を問うています。
FAQ
Q: Vさんの利用者IDを「無効化」する理由は何ですか?
A: 短時間で確実にそのIDによる認証を遮断できるためです。サービス停止が不可のサーバでは、アカウント無効化が即効性かつ業務影響が比較的小さい対策です(初期対応で同様の措置がファイル配信サーバに対して採られています)。
A: 短時間で確実にそのIDによる認証を遮断できるためです。サービス停止が不可のサーバでは、アカウント無効化が即効性かつ業務影響が比較的小さい対策です(初期対応で同様の措置がファイル配信サーバに対して採られています)。
Q: 無効化だけで十分ですか?
A: 無効化は即時対策であり必須ですが、並行して関連するパスワードの変更、権限の見直し、監視の強化など恒久対策を実施する必要があります。
A: 無効化は即時対策であり必須ですが、並行して関連するパスワードの変更、権限の見直し、監視の強化など恒久対策を実施する必要があります。
Q: 不正な操作の形跡がないなら、追加の対策は不要ではありませんか?
A: 形跡がないことは安心材料ですが、ファイル配信サーバの認証情報が実際に窃取されていた以上、3台の認証情報も悪用される前に無効化しておく必要があります。
A: 形跡がないことは安心材料ですが、ファイル配信サーバの認証情報が実際に窃取されていた以上、3台の認証情報も悪用される前に無効化しておく必要があります。
関連キーワード: 認証情報窃取、アカウント無効化、キーロガー、アクセスログ、インシデント対応
設問3:〔追加調査〕について、(1)〜(3)に答えよ。
問題文を見る(3)本文中の下線⑥について、ログの改ざんの痕跡を確認する方法を30字以内で述べよ。
模範解答
ログ管理サーバに保存されているログとの比較
解説
解答の論理構成
-
問題文は、ログが二重に保存されている仕組みを示しています。
――「各サーバは、アクセスログ、操作ログ、ミドルウェアのログ及びアプリケーションプログラムのログをログ管理サーバに送信するとともに、各サーバ上でも直近3か月分のログを保存している。」
この一文から、①サーバ自身のローカルログと②「ログ管理サーバ」に集約された同一内容のログが存在すると分かります。 -
「ログ管理サーバ」は改ざんを受けにくい環境です。
――「syslog受信に必要なポート以外は全て閉じ、リモートからアクセスできないようにしている。」
すなわち、ローカルログより信頼度が高く、改ざん検知の“対照データ”として適切です。 -
M部長の問いは「⑥これら3台のサーバ上のログに対する改ざんの痕跡が残っていないことを確認」でした。
ログ改ざんの有無を調べる最も確実な方法は、信頼できるコピーと突き合わせて整合性を検証することです。ここで使えるコピーが②に当たるログ管理サーバ上のログです。 -
したがって、回答は「ログ管理サーバに保存されているログとの比較」となります。
ローカルログと中央集約ログを照合し差異を抽出することで、改ざんの挿入・削除・変更を検知できます。
誤りやすいポイント
- ハッシュ値や電子署名の話題に飛びつき、問題文に存在しない前提で回答してしまう。
- 「syslogサーバの設定確認」だけを答え、比較という具体的な確認手順を落とす。
- ログ管理サーバ側も改ざんされる可能性を考え過ぎて、設問の想定外の複雑な対策を記述してしまう。
FAQ
Q: ログ管理サーバ側のログが絶対に改ざんされていないと断言できますか?
A: 問題文では「リモートからアクセスできないようにしている」と記載されており、他のログ保存先より改ざんリスクが低い前提で設計されています。試験ではその前提の下で解答します。
A: 問題文では「リモートからアクセスできないようにしている」と記載されており、他のログ保存先より改ざんリスクが低い前提で設計されています。試験ではその前提の下で解答します。
Q: ファイル配信サーバに保存された操作ログとの比較では不十分ですか?
A: 改ざん対象と同一サーバ内のログは信頼性が下がります。隔離された「ログ管理サーバ」のログと照合する方が、改ざん有無を客観的に判定できます。
A: 改ざん対象と同一サーバ内のログは信頼性が下がります。隔離された「ログ管理サーバ」のログと照合する方が、改ざん有無を客観的に判定できます。
Q: 差分をどのように取るのが一般的ですか?
A: 日時・送信元/宛先・操作内容などのキー項目で突き合わせ、欠落行・不一致行を抽出する方法(スクリプトやログ解析ツール利用)が一般的です。
A: 日時・送信元/宛先・操作内容などのキー項目で突き合わせ、欠落行・不一致行を抽出する方法(スクリプトやログ解析ツール利用)が一般的です。
関連キーワード: syslog, ログ改ざん検知、フォレンジック、中央集約ログ、差分比較






