情報処理安全確保支援士 2024年 春期 午前2 問05
問題文
送信元IPアドレスがA、送信元ポート番号が80/tcp、宛先IPアドレスがホストに割り振られていない未使用のIPアドレスであるSYN/ACKパケットを大量に観測した場合、推定できる攻撃はどれか。
選択肢
ア:IPアドレスAを攻撃先とするサービス妨害攻撃(正解)
イ:IPアドレスAを攻撃先とするパスワードリスト攻撃
ウ:IPアドレスAを攻撃元とするサービス妨害攻撃
エ:IPアドレスAを攻撃元とするパスワードリスト攻撃
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SYN/ACK反射攻撃【午前2解説】
正解の理由
観測したパケットは「SYN/ACK」で、送信元IPがA、送信元ポートが80、宛先IPが未使用のアドレスになっています。このパターンは「サーバ側(A)がクライアントからのSYNに対して返送したSYN/ACK」であることを示します。もし宛先が未使用アドレスで届いているなら、元のSYNはその未使用アドレスを送信元に偽装して送られており、サーバAが偽装された送信元(未使用IP)へSYN/ACKを大量に返している状態です。つまりAは大量のSYNに応答しており、サービス妨害(SYNフラッド等)を受けている被害者です。よってアの「IPアドレスAを攻撃先とするサービス妨害攻撃」が妥当です。
解法ステップ
- パケット種別を確認:SYN/ACKは「サーバがクライアントのSYNに応答するパケット」。
- IP/ポートの意味を整理:
- 送信元IP=A、送信元ポート=80 → Aがサーバである可能性(HTTP等のサービスが応答している)。
- 宛先が未使用IP → 本来の送信元がその未使用IPとして偽装されている。
- 偽装の結果を推定:攻撃者がAへSYNを送り、そのSYNの送信元を未使用IPに偽装 → Aが未使用IPへSYN/ACKを大量送信する(観測される)。
- 結論:Aがサービス妨害(SYNフラッドなど)の被害者であると推定できる。
選択肢別の誤答解説
- ア(正解): アは上記の通り、Aが大量のSYNに応答している=被害者であり、サービス妨害攻撃である。
- イ: パスワードリスト攻撃(認証試行)は通常TCPで確立されたセッションやアプリ層のログイン試行を伴い、単に大量のSYN/ACKが未使用IPへ向かうという観測からは判断できない。ポート80のSYN/ACKだけで認証攻撃とは言えない。
- ウ: 「Aを攻撃元とするサービス妨害攻撃」は、観測上Aが攻撃を発信している(能動的に他を攻撃)と解釈するものだが、今回のSYN/ACKはAが応答している証拠であり、Aが被害者である方が自然。したがって誤り。
- エ: 「Aを攻撃元とするパスワードリスト攻撃」も同様に、今回の低レベルTCPフラグと宛先未使用IPからは支持されない。
よくある誤解
- 「送信元IPがAだからAが攻撃者だ」
→ TCPのSYN/ACKは応答パケットであることを忘れがち。送信元IPだけで役割(攻撃者/被害者)を即断してはいけません。 - 「宛先が未使用だからパケットは無意味」
→ 宛先が未使用で届くという事実自体が「送信元が偽装されている」証拠になり得ます。ダークネット(未割当アドレス)への観測はバッククラッター解析の基本手法です。 - SYNとSYN/ACKを混同する
→ SYNは接続開始要求(クライアント→サーバ)、SYN/ACKはその応答(サーバ→クライアント)です。役割判定に重要。
補足コラム
- ダークネット/ダークアドレス観測(未割当アドレスに届くトラフィックの観察)は、IP偽装を用いたDDoS(特にSYNフラッド)の「バッククラッター(backscatter)」解析に利用されます。攻撃者が被害者の応答先を偽装すると、その応答の一部が未使用アドレスに届き、攻撃の存在や被害者を推定できます。
- ポート80が送信元になっている点は、Webサーバ等のサービスが攻撃トラフィックに応答していることを示唆します。SYNフラッドではサーバのTCPスタック資源(半開接続テーブル等)が枯渇しやすく、サービス妨害に繋がります。
- 対策例:SYN cookies、接続レート制御、ファイアウォールでの異常トラフィック検出、ISPレベルでのIngressフィルタリング(送信元IP偽装の排除)など。
検出コマンド例(観測点でA発のSYN/ACKを絞る例):
# Aを実際のIPアドレスに置換して使用
tcpdump -n 'src host A and tcp[13] == 0x12'
FAQ
Q. なぜ宛先が未使用だと「偽装」の証拠になるのですか?
A. 通常クライアントのIPは割り当てられた利用者のものです。攻撃者は応答を別の場所に向けさせるために送信元IPを書き換える(偽装する)ことがあり、その結果応答が未割当アドレスに届くことがあります。ダークネットでの受信は「誰かがその未使用アドレスを送信元に使って接続を試みた」ことを示します。
A. 通常クライアントのIPは割り当てられた利用者のものです。攻撃者は応答を別の場所に向けさせるために送信元IPを書き換える(偽装する)ことがあり、その結果応答が未割当アドレスに届くことがあります。ダークネットでの受信は「誰かがその未使用アドレスを送信元に使って接続を試みた」ことを示します。
Q. これは「反射攻撃」とは違いますか?
A. 本問の状況は攻撃者がAへSYNを送っており、Aが偽装された送信元へ応答している(被害者が応答を返している)点で、典型的なSYNフラッドの一種です。広義の反射攻撃は第三者を反射点として被害者に大量トラフィックを送らせる手法(反射器を用いる)ですが、本ケースはAが「応答を返す側」であるため、Aが反射器ではなく被害者となる点に注意してください。実運用では「偽装」「反射」「被害者」の向き(誰が送信元偽装をされ、誰が応答を返しているか)を混同しないことが重要です。
A. 本問の状況は攻撃者がAへSYNを送っており、Aが偽装された送信元へ応答している(被害者が応答を返している)点で、典型的なSYNフラッドの一種です。広義の反射攻撃は第三者を反射点として被害者に大量トラフィックを送らせる手法(反射器を用いる)ですが、本ケースはAが「応答を返す側」であるため、Aが反射器ではなく被害者となる点に注意してください。実運用では「偽装」「反射」「被害者」の向き(誰が送信元偽装をされ、誰が応答を返しているか)を混同しないことが重要です。
関連キーワード: SYNフラッド, バッククラッター, ダークネット観測, IP偽装, SYNクッキー, BCP38, TCPフラグ解析

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