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システムアーキテクト試験 2014年 午後103


勤務管理システムの導入に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。

 D社は、社員数約1,000名の、建築設計を行っている中堅企業である。D社では、内部監査部門が定期的に内部監査を行っており、このたび勤務管理に関する監査が行われた。その指摘を受けて、新しい仕組みの導入を決定した。   〔D社の就業条件〕  D社の就業条件は、次のとおりである。 (1) 就業時間は9時から18時までで、時間外の勤務(以下、残業という)には、残業手当が支給される。残業は事前に届出を行う。 (2) 土曜日、日曜日及び祝日は休日で、休日出勤した場合は代休を取得する。 (3) 休暇種別として、勤続年数に応じて毎年付与される有給休暇、7月~9月に取得できる年間3日間の夏期休暇、及び慶弔時に取得できる特別休暇がある。 (4) 残業時間の上限は、労使協定で、1日7時間、月間45時間、連続する3か月累計120時間、年度累計360時間と定められている。
  〔現在の勤務管理の概要〕  勤務管理に関する項目は、イントラネットを使った時間入力システムと紙の勤務管理表で管理している。勤務管理の概要は、次のとおりである。 (1) 社員は、業務を開始した時刻(以下、開始時刻という)及び業務を終了した時刻(以下、終了時刻という)を入力する。 (2) 残業をする場合は、事前に、事由及び終了予定時刻を記入した残業届出書を提出して、部長が確認印を押す。 (3) 月締めで個人単位に勤務管理表を印刷し、本人印を押した後、部長に提出する。部長は承認印を押して、人事部に提出する。このとき、1か月分の残業届出書を添付する。勤務管理表には、遅刻・直行などの始業区分、早退・直帰などの終業区分、開始時刻、終了時刻及び残業時間の明細が1か月分、日別で印刷されている。  社員は、同時に複数のプロジェクトに参加することがあり、プロジェクト別の損益を管理するために、勤務管理表とは別に、プロジェクト別業務時間を表計算ソフトで管理している。これを月次で回収し、部長が確認している。プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い。  また、夏期休暇の予定実績管理も、部別に表計算ソフトで管理している。
  〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕  内部監査では、内部統制面及び労務管理面から次のような指摘を受けた。
指摘1: 部長が、月次で、勤務管理表、プロジェクト別業務時間及び残業届出書の3種類のデータを確認しているが、データの不一致が発生している。また、平均50名いる部員全員について、全ての日の明細を部長が確認していることに無理がある。
指摘2: 開始時刻及び終了時刻が勤務実態どおりに正しく入力されているかどうかの保証がない。入力された時刻が妥当かどうかを確認する必要がある。
指摘3: プロジェクト別業務時間が時間入力システムと連動しておらず、また、入力を毎日行っていないので、プロジェクトの実工数が正しく把握できていない。このことについて、損益を管理している経理部から精度の向上を求められており、運用の改善が必要である。
指摘4: 夏期休暇は、予定をあらかじめ決めて取得することになっているが、予定を入力しなかったり、予定どおりに休まなかったりする社員が多く、取得率が低迷している。
 これらの指摘を受け、改善案として、勤務管理システムを導入することになり、あるソフトウェアパッケージを選定した。
  〔新システムを用いた勤務管理の概要〕  D社では、選定したソフトウェアパッケージでは不足する機能を追加開発することとし、追加開発を含めたシステム全体を新システムと呼ぶことにした。新システムを用いた勤務管理の概要は、次のとおりである。
(1) 各フロアの出入口にICカードリーダ付き入力端末を設置し、入退室時にICカード付き社員証をタッチして、入室・退室の時刻を記録する。1日の初回入室時刻と最終退室時刻を、翌朝のバッチ処理によって新システムに取り込む。   なお、終業後にフロア内でサークル活動や懇親会を行うことがあるので、最終退室時刻と終了時刻は必ずしも一致しない。
(2) イントラネットを通じて、社員は次の作業を行う。  ① 勤務実績入力:毎日の勤務実績は、原則として翌営業日中に入力する。   ・始業区分として、通常出社、遅刻、直行、出張、又はいずれかの休暇種別を選択して入力する。   ・終業区分として、通常退社、早退、又は直帰を選択して入力する。始業区分が出張又は休暇種別の場合は、終業区分は空白とする。   ・出社を伴わずに終日社外で業務を行う場合には、始業区分を出張として入力し、始業区分を直行、かつ、終業区分を直帰とする入力はしない。   ・休暇以外の日は、開始時刻、終了時刻及び休憩時間を入力する。このとき(1)で記録した初回入室時刻及び最終退室時刻を参照できる。
 ② プロジェクト別業務時間入力:毎日、どのプロジェクトの業務をどれだけ行ったのか、プロジェクト別業務時間を入力する。研修、事務処理など、直接プロジェクトに従事していない時間は、間接業務時間として特別なプロジェクトコードを割り振って入力する。プロジェクト別業務時間の合計は、1日の業務時間と一致させる必要がある。一致しない場合、入力は完了しない。
 ③ 残業予定入力:残業をする場合、事前に事由及び終了予定時刻を入力する。
 ④ 夏期休暇予定入力:夏期休暇の取得予定年月日を3日分入力する。予定が変わった場合は取得予定年月日を変更する。
(3) イントラネットを通じて、部長は次の作業を行う。  ・追加開発で作成された警告一覧を出力し、その内容を精査して部員に確認する。また、必要に応じて入力の訂正を行うよう指導する。警告一覧の詳細は後述する。  ・部員のデータ入力が完了したことを確認し、月締めの入力を行う。
(4) ソフトウェアパッケージにはダウンロード機能があり、データがCSV形式で提供される。ダウンロードする属性項目は、任意に設定が可能であり、D社では、ダウンロードファイルのレイアウトを表1のように設定した。  なお、夏期休暇明細については、予定データは夏期休暇の取得予定年月日から、実績データは毎日の勤務実績から作成する。予定データの予定実績区分には“予定”が、実績データの予定実績区分には“実績”がそれぞれ設定される。
システムアーキテクト試験(平成26年度 午後I 問3 表1)
  〔ダウンロードデータを使用した処理〕  D社では、部ごとにダウンロードを行うよう設定し、部長が自分の部のデータをダウンロードできるようにした。そのダウンロードデータを加工して、次の(1)~(3)の三つの機能を実現することにし、追加開発を行う。これによって、部長が、自分の部の部員の入力の確認を容易に行えるようになる。
 (1) プロジェクト別工数一覧を出力する機能   任意のタイミングで、月間プロジェクト別業務時間明細からプロジェクト別工数一覧を出力する機能を設ける。部長は、適切なプロジェクトコードで入力が行われているかどうかをチェックする。
 (2) 警告一覧を出力する機能   任意のタイミングで各種のチェックを行い、警告一覧を出力する機能を設ける。部長は、次に示す確認項目を指定して警告一覧を出力し、それを参考に、部員に確認したり、残業を削減するようプロジェクトリーダを指導したりする。
  ① 月間業務時間明細の、始業区分及び終業区分が妥当かどうかを確認する。   ② 月間業務時間明細の、開始時刻及び終了時刻が妥当かどうかを確認する。   ③ 月間業務時間明細と残業予定から、残業予定入力が正しく行われているかどうかを確認する。   ④ 月間残業時間集計から、労使協定で規定した残業時間の上限の9割を超えている社員がいないかどうかを確認する。   ⑤ プロジェクト別業務時間の入力が、翌営業日中に行われているかどうかを確認する。   ⑥ 夏期休暇の取得率向上のために、取得予定年月日を3日分入力していない社員がいないかどうかを確認する。
  これらの確認項目について容認される基準を、表2に示す。これらの基準を満たしていない場合に、その内容を警告一覧に出力する。
システムアーキテクト試験(平成26年度 午後I 問3 表2)
 (3) 夏期休暇の取得奨励メールを送信する機能   夏期休暇の取得率向上のために、夏期休暇明細の休暇取得予定日の1週間前に、翌週の夏期休暇を取得するよう奨励するメールを自動的に送信する機能を設ける。   〔内部監査担当者によるレビュー〕  人事部は、新システムの概要について内部監査担当者に説明を行った結果、次の2点について改善を行うよう指摘された。
 (1) 個人のプロジェクト別業務時間は正しく把握できるようになったが、プロジェクト単位に工数の実績を管理するためには、考えているプロジェクト別工数一覧では不十分であり、更なる考慮が必要である。
 (2) 夏期休暇の取得率向上については、取得予定年月日を3日分入力していない社員の確認と取得奨励メールの送信を考えているが、現状を考えるとこれだけでは不十分である。追加の確認をして、ある条件に合致する社員の情報を警告一覧に出力することが必要である。

勤務管理システムの導入に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。

設問1〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕に対する新システムでの対応について、(1),(2)に答えよ。

(1)指摘1に対して,データの管理方法,部長の確認方法について改善するために,新システムで行った対応の内容を、それぞれ30字以内で述べよ。

模範解答

データの管理方法:種類のデータを全て新システムで一元管理する。 部長の確認方法:部長が確認すべきデータだけを警告一覧に出力する。

解説

解答の論理構成

  1. 指摘1の問題点は,
    【問題文】「データの不一致が発生している」「全ての日の明細を部長が確認…無理」が示す二重管理と過大負荷。
  2. 新システムではデータ面で,
    【問題文】「月間業務時間明細」「月間プロジェクト別業務時間明細」「月間残業時間集計」が同一パッケージ内に格納され,「ダウンロード機能」で統一レイアウトを持つため“3種のデータを新システムで一元管理”。
  3. 確認面では,
    【問題文】「警告一覧を出力する機能」「部長が…入力の確認を容易に行えるようになる」から“警告一覧で要確認データのみ抽出”。
  4. 以上より,30字以内で求められた二つの対応内容になる。

誤りやすいポイント

  • 「ICカード打刻」など入力精度の話と混同し,管理方法の回答に入れてしまう
  • 「ダウンロード機能」を直接部長が使う点だけを強調し,警告一覧の存在を忘れる
  • “一元管理”の対象データに「残業予定」を含め忘れる(残業届出書相当の機能)

FAQ

Q: “一元管理”とは具体的に何を指すのですか?
A: 【問題文】が別紙・別システムだった「勤務管理表」「プロジェクト別業務時間」「残業届出書」を,新システム内の「月間業務時間明細」などに統合し,同一データベースで管理することです。
Q: 警告一覧ではどのような項目が抽出されるのですか?
A: 【問題文】表2の①〜⑥に該当しないレコード,および残業上限の9割超過などの重要項目だけが抽出されるため,部長は異常値に集中できます。
Q: ダウンロード機能と警告一覧はどちらが部長確認の主役ですか?
A: 月次の詳細分析にはCSVダウンロードも使いますが,日常的なチェックは「警告一覧を出力する機能」が主役です。

関連キーワード: データ統合, 内部統制, アラートリスト, 残業管理

設問1〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕に対する新システムでの対応について、(1),(2)に答えよ。

(2)指摘2に対して,入力された開始時刻及び終了時刻が妥当かどうかを確認するために,新システムに盛り込んだ機能は何か。その内容を,35字以内で述べよ。

模範解答

ICカードリーダ付き入力端末で,入室,退室の時刻を記録する機能

解説

解答の論理構成

  1. 指摘2は“開始時刻及び終了時刻が勤務実態どおりに正しく入力されているかどうかの保証がない”という課題です。
  2. 新システムでは“各フロアの出入口にICカードリーダ付き入力端末を設置し,入退室時にICカード付き社員証をタッチして,入室・退室の時刻を記録する”ことで物理的事実を取得します。
  3. さらに“1日の初回入室時刻と最終退室時刻を,翌朝のバッチ処理によって新システムに取り込む”ため、人手入力済みの開始時刻・終了時刻と付き合わせて差分チェックが可能になります。
  4. よって「ICカードリーダ付き入力端末で,入室,退室の時刻を記録する機能」が解答となります。

誤りやすいポイント

  • ICカードは“勤怠打刻用の端末”と誤解し、始業・終業を直接置き換えると考えてしまう。実際は入退室ログであり、勤務入力と突合するための裏付けデータです。
  • “バッチ処理で翌朝取り込む”点を見落とし、オンライン即時反映と勘違いする。
  • 指摘2は入力値の妥当性確認がテーマ。残業予定や夏期休暇など他の指摘と混同すると誤答になりやすい。

FAQ

Q: 入室・退室と開始・終了が一致しない場合は誤入力扱いですか?
A: 必ずしも誤入力ではありません。表2②で“30分以上かい離していない”ことを条件に妥当性を判定します。
Q: ICカード打刻だけで勤務時間を確定できない理由は?
A: 終業後の“サークル活動や懇親会”があるため、最終退室が勤務終了を示さないケースがあるからです。勤務の確定には本人入力が必要です。
Q: バッチ処理を翌朝に行うのはなぜ?
A: 全社員の入退室ログをまとめて処理しサーバ負荷を平準化するためです。また、前日分のデータが確定しているタイミングだからです。

関連キーワード: ICカード認証, 勤怠管理, 内部統制, バッチ処理, ログデータ

設問2

表2中の(a)~(f)に入れる適切な字句を答えよ。(e,fは順不同)

模範解答

a:空白 b:直帰 c:当月までの連続する3か月 d:月間プロジェクト別業務時間明細 e:勤務年月日 f:入力年月日

解説

設問2

(1)表2中の(a)~(f)に入れる適切な字句を答えよ。(e,fは順不同)

模範解答

解説

設問3〔内部監査担当者によるレビュー]について,(1),(2)に答えよ。

(1)プロジェクト別工数一覧で考慮すべき点は何か。その内容と理由を,それぞれ30字以内で述べよ。

模範解答

内容:部内だけでなく他部のデータと合わせた一覧を作成すること 理由:プロジェクトは複数の部が関わっているものが多いから

解説

解答の論理構成

  1. 監査側の課題認識
    “プロジェクト単位に工数の実績を管理するためには,考えているプロジェクト別工数一覧では不十分”
    → 現行案は部長専用のダウンロードに基づくため部内データしか載らない。
  2. プロジェクトの特性
    問題文に“プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い。”
    → 一覧を部単位で切ってしまうと、同じプロジェクトの他部工数が欠落。
  3. 必要な改善
    全部門のデータを突き合わせた統合版を作成し、プロジェクト単位で合算表示する。
    これによりプロジェクト収支や負荷状況を正確に把握でき、監査要件を満たす。

誤りやすいポイント

  • 「自部で確認できれば十分」と思い込み、他部工数の欠落による誤集計を見落とす。
  • 工数一覧改善を“表示レイアウト変更”だけと捉え、データ集約プロセスの見直しを忘れる。
  • “複数部”の引用を行わず根拠不十分な解答を書く。

FAQ

Q: なぜ部長に全社データを持たせる必要があるのですか?
A: プロジェクト収支は部門を横断して発生します。“複数の部が関わっている”ため、全社合算しないと正確な実績になりません。
Q: CSVダウンロードは部別設定でも、統合版はどう作成しますか?
A: 全部門分を人事部や情報システム部が定期バッチで集約し、プロジェクトコードでグループ化して再配布する方法が一般的です。
Q: 監査指摘を満たすチェックポイントは他にありますか?
A: プロジェクト損益管理を行う経理部の要件を踏まえ、工数×単価でコスト算出できるよう社員単価も紐付けると効果的です。

関連キーワード: 工数管理, クロス集計, 内部統制, CSV集約, プロジェクト損益

設問3〔内部監査担当者によるレビュー]について,(1),(2)に答えよ。

(2)夏期休暇の取得率向上に関するチェックが不十分と判断したのはなぜか。その理由を35字以内で述べよ。また,それを解決するために警告一覧に出力すべき社員の条件は何か。表1中のファイル名を用いて40字以内で述べよ。

模範解答

判断した理由:休暇取得予定日に休まなかった社員を把握することができないから 社員の条件: ・当年の夏期休暇明細で,過去日付の予定データ件数が実績データ件数より多い社員 ・夏期休暇明細で,予定データの取得予定日が過ぎても,実績データが存在しない社員

解説

解答の論理構成

  1. 問題文の引用
    ・チェック内容は「夏期休暇明細について、当年の予定データが3日分存在する。」(表2⑥)。
    ・内部監査担当者は「取得率向上については…現状を考えるとこれだけでは不十分」と指摘。
  2. 不十分な理由
    予定が入力されていれば基準を満たすが、「取得予定日に休まなかった社員」が検出されない。よって取得率の実態把握ができない。
  3. 追加すべき条件
    「夏期休暇明細」の予定データと実績データを突合し、予定日を過ぎても実績が登録されていない社員を警告一覧に出力する。
  4. 以上より、設問(1)の理由と(2)の条件は次のとおり。
    ・理由:休暇取得予定日に休まなかった社員を把握できないため
    ・条件:夏期休暇明細で予定日経過後も実績がない社員

誤りやすいポイント

  • 表2⑥を「予定と実績の両方を確認している」と誤読しやすい。実際は予定だけ。
  • 「夏期休暇明細」に予定・実績が両方格納される点を見落とし、別ファイルを参照しようとする。
  • 予定日が未来か過去かの判断基準(日付比較)を盛り込まないまま条件を記述してしまう。

FAQ

Q: 「予定実績区分」はどのファイルにあるのですか?
A: 【問題文】の表1によれば「夏期休暇明細」に「社員番号, 予定実績区分, 休暇年月日」が含まれています。
Q: 予定入力済みで実績未入力の社員をいつ検出すれば良いですか?
A: 取得予定日が経過した時点で判定します。予定日より未来の日付は対象外です。
Q: 実績入力を忘れていた場合のフォローは?
A: 警告一覧で検出後、部長が本人に入力漏れか未取得かを確認し、訂正指導または取得奨励を行います。

関連キーワード: 内部統制, 予定実績突合, データダウンロード, 日付比較
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