基本情報技術者 2018年 春期 午前(科目A) 問45
問題文
生体認証システムを導入するときに考慮すべき点として、最も適切なものはどれか。
選択肢
ア:本人のディジタル証明書を、信頼できる第三者機関に発行してもらう。
イ:本人を誤って拒否する確率と他人を誤って許可する確率の双方を勘案して装置を調整する。(正解)
ウ:マルウェア定義ファイルの更新が頻繁な製品を利用することによって、本人を誤って拒否する確率の低下を防ぐ。
エ:容易に推測できないような知識量と本人が覚えられる知識量とのバランスが、認証に必要な知識量の設定として重要となる。
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生体認証システムの調整指標【午前解説】
正解の理由
選択肢のうち、イは生体認証の基本的な評価指標である誤受入率(False Accept Rate:FAR)と誤拒否率(False Reject Rate:FRR)を両方考慮して装置(閾値)を調整することを述べています。生体認証は照合スコアの閾値設定により安全性と利便性がトレードオフするため、片方だけを重視すると運用上重大な問題(不正アクセスや正当利用者の排除)を招きます。したがって、FARとFRRの双方を勘案して運用方針に合わせて調整することが最も適切です。
解法ステップ
- 問題文で問われている対象が「生体認証システムの導入で考慮すべき点」であることを確認する。
- 各選択肢が指す技術領域を分類する(公開鍵基盤/確率的誤認識/マルウェア更新/知識認証)。
- 生体認証固有の評価指標(FAR, FRR, EER)や閾値調整のトレードオフを思い出し、該当する選択肢を選ぶ。
- 残りの選択肢が別分野の問題を述べていないかを検証して除外する。
選択肢別の誤答解説
- ア: 本人のディジタル証明書を第三者に発行してもらうことはPKIに関する説明であり、生体認証の評価や閾値調整には直接関係しません。したがって不適切です。
- イ: 正解。生体認証は誤拒否(FRR)と誤許可(FAR)の両方を見て閾値を調整し、用途に応じたバランスを取る必要があります。
- ウ: マルウェア定義ファイルの更新頻度はアンチマルウェア運用の話であり、生体認証装置の誤拒否率低下に寄与するという記述は誤りです。
- エ: 容易に推測できない知識量と覚えやすさのバランスはパスワードやPINなどの知識認証の設計で重視される点であり、生体認証固有の考慮点ではありません。
よくある誤解
- 「デジタル証明書を発行すれば生体認証は不要」:証明書は公開鍵基盤による認証であり、生体認証の特有の誤認識問題(FAR/FRR)を解決しません。
- 「マルウェア対策の更新頻度が生体認証の誤拒否に直接影響する」:ウイルス定義更新は端末のマルウェア防御に関する話であり、生体照合アルゴリズムのFalse Rejectには直接関係しません。
- 「覚えやすさと推測困難さのバランスは生体認証の話ではない」:エントリで述べられた知識量のバランスはパスワード等の知識認証に関する課題であり、生体認証固有の評価指標とは別物です。
補足コラム
- 用語整理:FAR(False Accept Rate)は他人を誤って許可する確率、FRR(False Reject Rate)は本人を誤って拒否する確率です。一般にスコア閾値をとして、閾値を上げるとFAR↓・FRR↑、下げるとFAR↑・FRR↓となります。
- 評価手法:ROC曲線(Receiver Operating Characteristic)でFARと1−FRRのトレードオフを可視化し、EER(Equal Error Rate)で性能比較を行いますが、運用ではEERだけでなく目的に応じた動作点を選びます。
- 実務注意点:運用環境の多様性(照明、センサー品質、年齢変化)、攻撃対策(リプレイ、偽造)、プライバシー(テンプレート保護、ハッシュ化)を合わせて設計すべきです。多要素認証との組合せが有効なケースが多いです。
FAQ
Q1: FARとFRRのどちらを優先すべきですか?
A1: 運用目的次第です。高セキュリティ領域ならFAR低減(誤許可防止)を優先し、利便性重視ならFRR低減(正当利用者の排除防止)を優先します。多要素認証で両者を補うのが一般的です。
A1: 運用目的次第です。高セキュリティ領域ならFAR低減(誤許可防止)を優先し、利便性重視ならFRR低減(正当利用者の排除防止)を優先します。多要素認証で両者を補うのが一般的です。
Q2: EERが低ければその装置は常に良いですか?
A2: EERは比較指標になりますが、実際の運用点はEER点とは異なることが多いため、運用要件に合わせた閾値選定と現地試験が必要です。
A2: EERは比較指標になりますが、実際の運用点はEER点とは異なることが多いため、運用要件に合わせた閾値選定と現地試験が必要です。
Q3: 生体認証の性能は時間で劣化しますか?
A3: 個人の生体情報の変化(老化、怪我)、センサーの経年劣化、データ分布の変化などにより性能が変わるため、定期的な再評価とチューニングが推奨されます。
A3: 個人の生体情報の変化(老化、怪我)、センサーの経年劣化、データ分布の変化などにより性能が変わるため、定期的な再評価とチューニングが推奨されます。
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