情報セキュリティマネジメント 2018年 秋期 午前(科目A) 問15
問題文
マルウェアWanna Cryptor (WannaCry)に関する記述として、適切なものはどれか。
選択肢
ア:SMBv1の脆弱性を悪用するなどして感染し、PC内のデータを暗号化してデータの復号のための金銭を要求したり、他のPCに感染を拡大したりする。(正解)
イ:ファイル共有など複数の感染経路を使って大量のPCに感染を拡大し、さらにPC内の電子メールアドレスを収集しながらインターネット経由で感染を拡大する。
ウ:ランダムにIPアドレスを選んでデータベースの脆弱性を悪用した攻撃を行うことによって多数のPCに感染を拡大し、ネットワークトラフィックを増大させる。
エ:利用者が電子メールに添付されたVBScriptファイルを実行すると感染し、PC内のパスワードを攻撃者のWebサイトへ送信したり、マルウェア付きの電子メールを他者へばらまいたりする。
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ランサムウェアWannaCry【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
選択肢アが正しいです。Wanna Cry(別名WannaCryptor、以下「WannaCry」)はランサムウェア(身代金を要求する不正プログラム)で、SMB(Server Message Block:ファイル共有などで使う通信プロトコル)v1の脆弱性を悪用して自己増殖(ワーム:自分で広がるマルウェア)しました。感染するとPC内のファイルを暗号化して復号のための身代金をBitcoinで要求し、ネットワーク経由で他のPCにも感染を広げた点が特徴です。これらの挙動は選択肢アの記述と一致します。
(補足:WannaCryは「EternalBlue」と呼ばれる攻撃コードでMS17-010というWindowsの脆弱性を突き、さらに自己拡散の機能を持っていました。)
解法ステップ
- 問題文から「どんな被害が起きるか」を確認する。暗号化して金銭を要求するならランサムウェアの可能性が高い。
- 次に「感染経路」を見る。SMBv1の脆弱性を使って他PCへ広がる記述があれば、WannaCryの特徴と一致する。
- 他の選択肢と照らし合わせ、メール添付やデータベースの脆弱性、電子メールアドレスの収集などWannaCryの既知の挙動と不一致な点を消去する。
- 一致する要素(暗号化+SMBv1脆弱性+自己拡散)が揃う選択肢を正解とする。
選択肢別の誤答解説
-
ア(正解)
SMBv1の脆弱性を悪用して感染し、ファイルを暗号化して身代金を要求し、ネットワーク上で拡大する──これがWannaCryの典型的な挙動です。 -
イ(誤り)
「ファイル共有など複数の感染経路」とある点は部分的に合いますが、WannaCryが電子メール経由でメールアドレスを収集してインターネット経由で拡大したという記述は事実と異なります。WannaCryは主にSMB脆弱性を使うワーム的な広がりが主で、メールアドレス収集を特徴とはしていません。 -
ウ(誤り)
「ランダムにIPを選んでデータベースの脆弱性を悪用」する攻撃は別のワームやボットネットの挙動に近く、WannaCryの実際の感染手法(SMBv1の脆弱性=EternalBlue)とは異なります。また「ネットワークトラフィックを増大させる」点もDDoS(分散型サービス妨害)攻撃の説明に近い内容です。 -
エ(誤り)
「電子メールの添付VBScriptを実行してパスワードを送信する」タイプは、フィッシングやトロイの木馬(情報窃盗型)の特徴です。WannaCryは主にSMB脆弱性で拡散し、ファイルの暗号化と身代金要求が目的であり、添付スクリプト実行やパスワード送信が主要な手口ではありません。
よくある誤解
-
「ランサムウェアは必ずユーザーが添付ファイルを開くことで感染する」
→ 誤りです。WannaCryはSMBの遠隔実行脆弱性を使ってユーザー操作なしに広がるワームの性質を持っていました。ユーザー操作がなくても感染が広がることを覚えておいてください。 -
「SMBは全部悪いので無条件に止めれば安全」
→ SMBは社内でファイル共有するための重要なプロトコルです。対策は「不要なら無効化」「必要なら最新版適用とアクセス制限」「ネットワーク分離」が現実的です。 -
「同じ攻撃名のマルウェアは全部同じ被害」
→ 例えばNotPetyaは一見ランサムウェアに見えましたが実態はデータ消去(ワイパー)に近く、目的や挙動が異なる場合があります。攻撃の特徴を個別に確認しましょう。
補足コラム
- なぜWannaCryが広がったか:攻撃コード(EternalBlue)はNSA由来の情報流出で公開され、未修正の多数のWindows端末がインターネットに接続されていたため迅速に広がりました。
- 企業や組織での実務対応イメージ:
- まず社内端末が最新のセキュリティパッチ(MS17-010など)を適用しているか確認します。
- SMBv1が不要なら無効化。必要時はSMBのアクセスをファイアウォールで制限。
- 定期的にバックアップを取り、バックアップの復元手順を実運用で確認しておく。
- インシデント発生時はネットワーク切断・関係部署へ通報・外部専門家へ連絡という流れを決めておきます。
FAQ
Q. WannaCryはどのように止められたのですか?
A. 解析者がマルウェア内の「キルスイッチ(特定ドメインの存在確認)」を見つけ、そのドメインを登録したことで拡散が大幅に抑えられました。ただしそれだけでは全ての亜種を止められないので、パッチ適用など根本対策が必要です。
A. 解析者がマルウェア内の「キルスイッチ(特定ドメインの存在確認)」を見つけ、そのドメインを登録したことで拡散が大幅に抑えられました。ただしそれだけでは全ての亜種を止められないので、パッチ適用など根本対策が必要です。
Q. SMBv1って何を意味しますか?
A. SMB(Server Message Block)はファイル共有などで使う通信プロトコルです。SMBv1は古いバージョンで、脆弱性が多く見つかっているため現在は新版(SMBv2/3)への移行やv1の無効化が推奨されています。
A. SMB(Server Message Block)はファイル共有などで使う通信プロトコルです。SMBv1は古いバージョンで、脆弱性が多く見つかっているため現在は新版(SMBv2/3)への移行やv1の無効化が推奨されています。
Q. 身代金を払えばデータは確実に戻りますか?
A. 支払っても必ず復旧する保証はありません。被害拡大を助長する可能性もあるため、まずはバックアップからの復旧とセキュリティ専門家への相談が優先です。
A. 支払っても必ず復旧する保証はありません。被害拡大を助長する可能性もあるため、まずはバックアップからの復旧とセキュリティ専門家への相談が優先です。
関連キーワード: ランサムウェア、SMBv1、EternalBlue、自己増殖ワーム、バックアップ対策

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