情報セキュリティマネジメント 2018年 春期 午前(科目A) 問22
問題文
バイオメトリクス認証システムの判定しきい値を変化させるとき、FRR(本人拒否率)とFAR(他人受入率)との関係はどれか。
選択肢
ア:FRRとFARは独立している。
イ:FRRを減少させると、FARは減少する。
ウ:FRRを減少させると、FARは増大する。(正解)
エ:FRRを増大させると、FARは増大する。
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FRRとFARのトレードオフ【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
生体認証(生体情報を使った本人認証)の判定は「どれだけ一致すれば本人とみなすか」というしきい値で決まります。FRR(False Rejection Rate:本人拒否率)は正しいユーザを誤って拒否する割合、FAR(False Acceptance Rate:他人受入率)は不正な他人を誤って受け入れる割合を表します。しきい値を「ゆるくする」(許容差を大きくする)と、正しいユーザを拒否する確率が下がりFRRは減少しますが、その分、類似している他人も通ってしまいやすくなりFARは増大します。逆にしきい値を「厳しくする」とFRRは増え、FARは減ります。したがって、選択肢ウ(FRRを減少させると、FARは増大する)が正しいです。
(注)FRR = 正規ユーザが拒否される割合、FAR = 不正者が受け入れられる割合。英語の原語も併記しました。
解法ステップ
- FRR と FAR の意味を確認する
- FRR(False Rejection Rate):本人を拒否する誤りの割合
- FAR(False Acceptance Rate):他人を受け入れる誤りの割合
- しきい値(マッチングの厳しさ)が変わるとどう動くかを考える
- しきい値を「緩める」=合格ラインを下げる → 合格しやすくなる
- しきい値を「厳しくする」=合格ラインを上げる → 合格しにくくなる
- 動きから誤り率の増減を推定する
- 緩める → FRR↓(本人を拒否しにくい)、FAR↑(他人が通りやすい)
- よって「FRRを減らすとFARが増える」が成り立つ
- 選択肢と照らし合わせて正答を決める(ウ)
選択肢別の誤答解説
- ア: FRRとFARは独立している。
→ 誤り。FRRとFARはしきい値の設定によって逆方向に変動する、いわゆるトレードオフの関係にあるため独立ではありません。 - イ: FRRを減少させると、FARは減少する。
→ 誤り。FRRを減らす(緩める)と、正しくない他人も通過しやすくなりFARは増えます。両方が同時に下がるのは一般的な挙動ではありません。 - ウ: FRRを減少させると、FARは増大する。
→ 正答。上記の通り、しきい値を緩めると利便性は上がるが安全性(偽受入)は下がる、典型的なトレードオフです。 - エ: FRRを増大させると、FARは増大する。
→ 誤り。しきい値を厳しくしてFRRが増える(本人が弾かれやすい)場合、逆に他人が通りにくくなるためFARは通常減少します。
よくある誤解
- 「両方を同時に良くできる」はよくある誤解。アルゴリズムやセンサーが改善されれば両方下がることもあるが、単にしきい値を調整するだけでは必ずトレードオフが生じる点を理解しておく必要があります。
- 「しきい値を上げる/下げる」の方向を混同する。上げる=厳しくする=拒否が増える(FRR↑)という基本を押さえておきましょう。
- 結果を数字で見ないで感覚で決める。業務で使うなら、実際のFRR/FARの値や許容範囲(リスク)を定量的に設定することが重要です。
補足コラム
運用現場では、使う場所によって適切なしきい値は変わります。例えば、出勤管理の指紋認証なら利便性を重視してFRR低め(少しFARを許容)にすることが多いです。一方で金庫室や機密データのアクセスならFARを極力下げる(厳しいしきい値)必要があります。
技術的に両者を改善したい場合は、高性能なセンサー、より良いマッチングアルゴリズム、複数の生体(顔+指紋)を組み合わせる多要素生体認証、あるいはパスワードやカードと組み合わせる多要素認証が有効です。評価指標としてROC曲線(受入率と拒否率の関係を示す曲線)やEER(Equal Error Rate:FRRとFARが等しくなる点)を使ってしきい値を決めることもあります。
技術的に両者を改善したい場合は、高性能なセンサー、より良いマッチングアルゴリズム、複数の生体(顔+指紋)を組み合わせる多要素生体認証、あるいはパスワードやカードと組み合わせる多要素認証が有効です。評価指標としてROC曲線(受入率と拒否率の関係を示す曲線)やEER(Equal Error Rate:FRRとFARが等しくなる点)を使ってしきい値を決めることもあります。
FAQ
Q1: どちらがより重大な問題ですか、FRRとFARどちらを優先すべき?
A1: 業務とリスクによります。顧客サービスや打刻など利便性重視ならFRR低減を優先。機密保護や金銭価値が絡む場合はFAR低減(偽受入を防ぐ)を優先します。リスク評価で判断してください。
A1: 業務とリスクによります。顧客サービスや打刻など利便性重視ならFRR低減を優先。機密保護や金銭価値が絡む場合はFAR低減(偽受入を防ぐ)を優先します。リスク評価で判断してください。
Q2: しきい値調整だけで両方とも改善できますか?
A2: 原則としてしきい値調整はトレードオフを生みます。両方改善したければ、機器・アルゴリズム改善や多要素認証の導入が必要です。
A2: 原則としてしきい値調整はトレードオフを生みます。両方改善したければ、機器・アルゴリズム改善や多要素認証の導入が必要です。
Q3: 職場での運用上の注意点は?
A3: 実際の誤認率を測り、許容できるFRR/FARの目標値を規程に明記します。加えて、本人が使えない場合の代替認証手順(ヘルプデスク対応や緊急解除手順)も用意してください。
A3: 実際の誤認率を測り、許容できるFRR/FARの目標値を規程に明記します。加えて、本人が使えない場合の代替認証手順(ヘルプデスク対応や緊急解除手順)も用意してください。
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