情報セキュリティマネジメント 2019年 春期 午前(科目A) 問23
問題文
A氏からB氏に電子メールを送る際のS/MIMEの利用に関する記述のうち、適切なものはどれか。
選択肢
ア:A氏はB氏の公開鍵を用いることなく、B氏だけが閲覧可能な暗号化電子メールを送ることができる。
イ:B氏は受信した電子メールに記載されている内容が事実であることを、公的機関に問い合わせることによって確認できる。
ウ:B氏は受信した電子メールに記載されている内容はA氏が署名したものであり、第三者による改ざんはないことを確認できる。(正解)
エ:万一、マルウェアに感染したファイルを添付して送信した場合にB氏が添付ファイルを開いても、B氏のPCがマルウェアに感染することを防ぐことができる。
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S/MIMEの機能【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
S/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions:メールの暗号化と署名方式)は、電子メールに「電子署名(送信者のなりすまし防止・改ざん検知)」と「暗号化(内容の秘密保持)」の機能を付与します。受信者は送信者の電子署名を自分の受信側で検証することで、「このメールは送信者が署名したものであり、途中で改ざんされていない」ことを確認できます。したがって設問の中で正しいのは ウ の記述です。
ポイントを簡潔にまとめると:
- 電子署名は「送信者が署名したこと」と「改ざんがないこと」を検証できる。
- ただし署名は「本文の内容が事実か」を証明するものではない(署名は事実確認手段ではない)。
- 暗号化は受信者だけが読めるようにするが、暗号化に当たっては送信者が受信者の公開鍵(public key:誰でも使える鍵)を使用する必要がある。
S/MIME、公開鍵(public key)・秘密鍵(private key)、認証局(Certification Authority:証明書を発行する機関)などの用語は、以降でやさしく説明します。
解法ステップ
- S/MIMEが「署名」と「暗号化」のどちらの機能を持つかを確認する。
- 各選択肢が「署名」「暗号化」「第三者による事実確認」「マルウェア防止」のどれに関する記述か分類する。
- S/MIMEの機能と照合し、矛盾がないものを選ぶ。
具体的には:
- 署名により「誰が作ったか(送信者)」と「改ざんがないか」が検証できる → ウ が一致。
- 暗号化は受信者の公開鍵が必要 → アが誤り。
- 証明書や署名は「内容の真偽(事実)」を保証しない → イが誤り。
- S/MIMEはマルウェアの実行を防ぐ仕組みではない → エが誤り。
選択肢別の誤答解説
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ア: 「A氏はB氏の公開鍵を用いることなく、B氏だけが閲覧可能な暗号化電子メールを送ることができる。」
- 暗号化は受信者が復号できることを目的とします。公開鍵暗号方式では、送信者が受信者の公開鍵(public key)で暗号化し、受信者だけが対応する秘密鍵(private key)で復号します。従ってB氏の公開鍵が不要というのは誤りです。
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イ: 「B氏は受信した電子メールに記載されている内容が事実であることを、公的機関に問い合わせることによって確認できる。」
- 電子署名は「そのメッセージが署名者によって作られ、改ざんされていないこと」を示しますが、署名が内容の真偽(事実かどうか)を証明するわけではありません。例えば「請求書の金額が正しいか」は別途照合作業や公的機関の調査が必要です。また、公的機関がメールの内容の事実性を保障する仕組みは通常ありません。
-
ウ: 「B氏は受信した電子メールに記載されている内容はA氏が署名したものであり、第三者による改ざんはないことを確認できる。」
- 電子署名の目的と一致します。署名検証により「署名者がその秘密鍵を持つ者である」こと(と証明書の有効性)が確認でき、ハッシュ値の照合で改ざんの有無を検出できます。
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エ: 「万一、マルウェアに感染したファイルを添付して送信した場合にB氏が添付ファイルを開いても、B氏のPCがマルウェアに感染することを防ぐことができる。」
- S/MIMEは暗号化・署名を提供しますが、添付ファイルを開いたときにマルウェア実行を技術的に阻止する機能はありません。署名付きでもマルウェア付きファイルは実行され得ます。アンチウイルスやサンドボックスなど別の対策が必要です。
よくある誤解
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「署名があれば内容の正当性(事実)まで証明できる」
- 署名は「その時点で署名鍵を持っていた誰かが署名した」ことを示すだけで、内容の真偽は別の手続き(照合や監査)が必要です。
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「暗号化すれば安全だから添付ファイルを安心して開ける」
- 暗号化は盗聴防止のためであり、マルウェアの動作や悪意あるコンテンツの存在は防げません。署名による送信者の確認+ウイルス対策の併用が必要です。
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「公開鍵は誰でも使えるから安全か」
- 公開鍵は公開されますが、その公開鍵が本当に相手のものであるかを証明するのが認証局(CA)による電子証明書です。信頼できるCAからの証明書の確認が重要です。
補足コラム
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電子署名の仕組み(簡単に)
- メッセージ本文からハッシュ関数で要約(ダイジェスト)を作ります。
- 送信者が自分の秘密鍵(private key)でそのハッシュを暗号化すると「電子署名」になります。
- 受信者は送信者の公開鍵(public key)でその署名を復号し、得られたハッシュと受信した本文のハッシュを比べます。両者が一致すれば改ざんされていないと判断します。
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証明書と認証局(CA)
- 証明書は「この公開鍵はこの人(または組織)に属します」という情報を、信頼できる第三者(CA)が保証する電子文書です。社内運用では社内CAを使って社員のメール証明書を配布したり、外部の信頼されたCAから証明書を取得することが一般的です。
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実務での運用イメージ
- 社内でS/MIMEを使う場合、管理部門や情報システム部は社員証明書の発行・失効管理を行います。契約書や重要文書のやり取りに署名を使えば、なりすましや改ざん防止の根拠が残ります。一方、添付ファイルのウイルス対策はメールゲートウェイやエンドポイント保護で別途対策します。
FAQ
Q1: S/MIMEとTLS(メール送信時の暗号化)は何が違うのですか?
A1: TLS(Transport Layer Security:通信路の暗号化)は送受信の通信路を暗号化しますが、中継サーバーが復号できることもあります。S/MIMEはメール本文自体を暗号化するため、中間のメールサーバーが内容を見られません(メッセージ単位の暗号化)。
A1: TLS(Transport Layer Security:通信路の暗号化)は送受信の通信路を暗号化しますが、中継サーバーが復号できることもあります。S/MIMEはメール本文自体を暗号化するため、中間のメールサーバーが内容を見られません(メッセージ単位の暗号化)。
Q2: 署名があればなりすましは完全に防げますか?
A2: 署名に使われた秘密鍵が漏れたり、証明書が不正に発行された場合はなりすましが起こり得ます。秘密鍵の管理と証明書失効リスト(CRL)やオンライン証明書状態プロトコル(OCSP)での確認が重要です。
A2: 署名に使われた秘密鍵が漏れたり、証明書が不正に発行された場合はなりすましが起こり得ます。秘密鍵の管理と証明書失効リスト(CRL)やオンライン証明書状態プロトコル(OCSP)での確認が重要です。
Q3: 署名付きのファイルは安全に開けますか?
A3: 署名は送信者の確認と改ざん検知には役立ちますが、送信者本人が意図せずにマルウェアを送っている場合や、署名付きだが悪意ある内容を含む場合もあります。ウイルススキャンなどの別対策は必須です。
A3: 署名は送信者の確認と改ざん検知には役立ちますが、送信者本人が意図せずにマルウェアを送っている場合や、署名付きだが悪意ある内容を含む場合もあります。ウイルススキャンなどの別対策は必須です。
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