ITパスポート 2011年 春期 問33
問題文
システム開発プロジェクトにおけるクリティカルパスに関する記述のうち、適切なものはどれか。
選択肢
ア:開発の遅延を回復するために要員を追加する場合、クリティカルパス上の作業に影響を与えないように、クリティカルパス上にない作業に対して優先的に追加する。
イ:クリティカルパス上の作業が3日前倒しで完了すると、プロジェクトの完了も必ず3日前倒しとなる。
ウ:クリティカルパス上の作業が遅延すると、プロジェクトの完了も遅延する。(正解)
エ:プロジェクトにおいてクリティカルパスは一つだけ存在する。
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システム開発のクリティカルパスに関する記述【ITパスポート 解説】
正解の理由
プロジェクトスケジュールで「クリティカルパス」とは、全体の工期(プロジェクトの完了までの最短時間)を決める最長の作業経路です。各作業に「余裕(スラック、フロート)」がない場合が多く、ここにある作業が遅れると、プロジェクト全体の完了日も遅れます。したがって、選択肢のうち正しいのは ウ「クリティカルパス上の作業が遅延すると、プロジェクトの完了も遅延する。」です。理由は、クリティカルパス上の作業は余裕時間がほとんど(通常はゼロ)ないため、そこが遅れると代替で挽回できる余地がないからです。
(用語補足)
- クリティカルパス(Critical Path):作業の順序や所要日数から算出される「全体を決める最も長い経路」。
- スラック/フロート(余裕時間):その作業を遅らせてもプロジェクト全体の完了には影響しない余裕の日数。
解法ステップ
- 「クリティカルパス」の定義を確認する:最長経路で、通常余裕がない。
- 各選択肢を「クリティカルパスの定義」に当てはめて検討する。
- クリティカルパス上の作業の遅延→プロジェクト遅延になるか?(定義から〇)
- 早まった場合は必ず同じだけ短縮されるか?(他要因を考慮)
- 要員追加はどの作業に効くか?(効果が出る場所を考える)
- クリティカルパスは一つだけか?(複数ありうる)
- 定義と一般的な事例(並列経路や複数クリティカルパス)を用いて正誤を判断する。
選択肢別の誤答解説
-
ア: 「開発の遅延を回復するために要員を追加する場合、クリティカルパス上の作業に影響を与えないように、クリティカルパス上にない作業に対して優先的に追加する。」
→ 誤り。プロジェクトの完了日を早めたり遅延を回復したいなら、効果があるのはクリティカルパス上の作業を短縮することです。クリティカルパス外の作業に人を追加しても、全体に影響しない(余裕が残っている)ことが多く、遅延回復にならない可能性があります。ただし、要員追加が必ず有効とは限らず、分業できない作業やコミュニケーションコスト増で効果が薄い場合もあります(Brooksの法則など)。 -
イ: 「クリティカルパス上の作業が3日前倒しで完了すると、プロジェクトの完了も必ず3日前倒しとなる。」
→ 誤り。多くの場合はクリティカルパス上の作業を短縮すればプロジェクトも短縮しますが、「必ず」と言い切れません。理由は、プロジェクトには複数のクリティカルパスが存在することや、別の経路(他の作業群)が同じ長さでプロジェクトを決めている場合があるためです。さらに、リソース制約や外部の締め切り、工程の前提条件(たとえば検査や承認待ち)があると、早めても完了日は変わらないことがあります。 -
ウ: 「クリティカルパス上の作業が遅延すると、プロジェクトの完了も遅延する。」
→ 正しい。クリティカルパス上の作業は余裕時間が通常ゼロのため、そこが遅れると全体の最長経路が伸び、結果としてプロジェクト完了日が遅れます。 -
エ: 「プロジェクトにおいてクリティカルパスは一つだけ存在する。」
→ 誤り。クリティカルパスは複数存在することがあります。例えば二つの並列経路が同じ長さで最長になっているとき、両方がクリティカルパスです。どちらか一方だけ短縮しても、もう一方が最長のままだとプロジェクト完了日は変わりません。
よくある誤解
-
クリティカルパスは必ず一つだけあると思い込む
- 実務では複数のクリティカルパスが同時に存在することがよくあります。並列の長い経路が同じ期間ならどちらもクリティカルです。
-
要員を増やせば必ず工期短縮できる
- 要員追加で効果が出るのは、並列化できる作業(分割可能)だけです。分割できない作業やコミュニケーション増で却って非効率になる場合もあります(Brooksの法則)。
-
クリティカルパス上の作業を早めれば、常に同じだけ短縮される
- 他の要因(他のクリティカル経路、検査待ち、外部依存)によっては期待通り短縮されないことがあります。
補足コラム
- クリティカルパスの算出方法(簡単な流れ)
- 作業を洗い出し、依存関係(どの作業が先に必要か)と所要時間を決める。
- 順方向に「最早開始時刻(ES)」「最早終了時刻(EF)」を計算。
- 逆方向に「最遅開始時刻(LS)」「最遅終了時刻(LF)」を計算。
- スラック = LS − ES(または LF − EF)。スラックがゼロの経路がクリティカルパス。
- 用語の英語と覚え方
- クリティカルパス(Critical Path):「最も重要(critical)な経路(path)」と覚えるとよいです。
- スラック/フロート(Slack/Float):余裕(余白)をイメージすると覚えやすいです。
- 実務での対策例
- クリティカルパス上の作業を優先して監視・支援する。
- 複数クリティカルパスがある場合は、どちらも短縮できる施策を検討する。
- リスクが高い工程には事前のバッファ(余裕)を入れることも有効です。
FAQ
Q1: クリティカルパスを短くするにはどうすればよいですか?
A1: 代表的な方法は「クラッシング(crashing:追加コストで作業時間を短縮)」と「ファストトラッキング(fast tracking:並行作業に切り替える)」です。ただしコスト増や品質リスクを伴うため慎重に検討します。
A1: 代表的な方法は「クラッシング(crashing:追加コストで作業時間を短縮)」と「ファストトラッキング(fast tracking:並行作業に切り替える)」です。ただしコスト増や品質リスクを伴うため慎重に検討します。
Q2: クリティカルパスの計算は手計算でできる?ツールは?
A2: 小規模なら手計算や表計算ソフトで可能です。大規模では専用のプロジェクト管理ツール(Microsoft Projectなど)を使うと便利です。
A2: 小規模なら手計算や表計算ソフトで可能です。大規模では専用のプロジェクト管理ツール(Microsoft Projectなど)を使うと便利です。
Q3: 「要員を追加すれば必ず早くなる」のは本当?
A3: いいえ。分割できない作業やコミュニケーションコストが高い場合、効果が薄いか逆効果になることがあります(Brooksの法則:人を追加すると逆に遅くなるケース)。
A3: いいえ。分割できない作業やコミュニケーションコストが高い場合、効果が薄いか逆効果になることがあります(Brooksの法則:人を追加すると逆に遅くなるケース)。
関連キーワード: クリティカルパス、スラック、フロート、CPM、PERT、プロジェクトマネジメント、クラッシング、ファストトラッキング

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