ITパスポート 2011年 春期 問88
問題文
暗号化通信で使用される共通鍵暗号方式に関する記述のうち、適切なものはどれか。
選択肢
ア:暗号化に用いる鍵を第三者に公開しても、第三者は暗号文を復号できない。
イ:公開鍵暗号方式よりも、暗号化処理と復号処理に掛かる計算量は少ない。(正解)
ウ:通信経路で改ざんされた暗号文を復号処理で訂正し、元のデータを復元する機能をもつ。
エ:複数の相手ごとに通信内容を秘密にしたい場合でも、暗号化に用いる鍵は一つである。
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暗号化通信で使用される共通鍵暗号方式に関する記述のうち、適切なものはどれか。【ITパスポート 解説】
正解の理由
共通鍵暗号方式(symmetric-key cipher:同じ鍵で暗号化と復号を行う方式)は、暗号化と復号に使う計算が軽く処理が速い点が特徴です。これは大きなデータを扱うときに有利です。したがって、選択肢の中で計算量が少ないと述べている イ が適切です。
ポイントを平易に言うと:
- 共通鍵暗号は同じ鍵を両側で使うため、複雑な数学的操作が少なく高速です(例:AES(Advanced Encryption Standard:標準的な共通鍵暗号))。
- 一方、公開鍵暗号方式(public-key cryptography:公開鍵と秘密鍵のペアを使う方式)は、大きな数の計算(例:RSA(Rivest–Shamir–Adleman)や楕円曲線暗号 ECC)を使うため処理が重くなりやすいです。
解法ステップ
- 「共通鍵暗号方式とは何か」をまず確認する。→ 同じ鍵で暗号化と復号を行う方式。
- 各選択肢が共通鍵の特徴に合っているかを照らし合わせる。
- 処理速度や鍵の公開/非公開、改ざん検出の有無といったポイントで絞る。
- 公開鍵暗号の特徴(鍵を公開しても復号できない等)や改ざん検出は別の仕組み(MACや署名)であることを思い出す。
この流れで確認すると、計算量が少ないとする イ が残ります。
選択肢別の誤答解説
-
ア: 「暗号化に用いる鍵を第三者に公開しても、第三者は暗号文を復号できない。」
- これは公開鍵暗号方式の説明に近い記述です。公開鍵暗号では「公開鍵(encryption key)」を公開して暗号化し、対応する秘密鍵(decryption key)で復号します。一方、共通鍵暗号は同じ鍵を使うため、その鍵を公開すれば誰でも復号できます。よってアは不適切です。
-
イ: 「公開鍵暗号方式よりも、暗号化処理と復号処理に掛かる計算量は少ない。」
- 正しい。共通鍵暗号はブロックやストリーム単位の単純な演算(置換や置換とXORなど)で高速に処理できます。大きなデータの暗号化に向いています。
-
ウ: 「通信経路で改ざんされた暗号文を復号処理で訂正し、元のデータを復元する機能をもつ。」
- 暗号化そのものには「誤りを訂正して元に戻す」機能は基本的にありません。改ざん(整合性の破壊)は、MAC(Message Authentication Code:改ざん検出用の短い認証タグ)やデジタル署名で検出します。復号で自動的に訂正されるわけではないため誤りです。
-
エ: 「複数の相手ごとに通信内容を秘密にしたい場合でも、暗号化に用いる鍵は一つである。」
- 共通鍵暗号は「同じ鍵を共有する相手同士」で使います。複数の相手ごとに秘密を保ちたいなら、相手ごとに別の共通鍵を用意するか、公開鍵暗号で鍵交換するなどの手段が必要です。鍵を一つだけで全ての相手と安全に通信できるとは限らないので誤りです。
よくある誤解
- 「公開鍵を公開しても復号できないのは共通鍵でも同じ」
- 誤りです。公開鍵暗号は公開鍵と秘密鍵のペアで動きます。共通鍵暗号で鍵を公開すれば誰でも復号できます。
- 「暗号化すれば改ざんも自動的に直る」
- 暗号化は「内容の秘匿」が目的で、改ざん検出や訂正は別の仕組み(MACや誤り訂正コード)です。
- 「速い=安全ではない」
- 共通鍵暗号は処理が速いですが、適切な鍵管理や十分な鍵長があれば安全に使えます。速度と安全性は別の観点です。
補足コラム
- 鍵を安全に共有する問題(鍵配送問題)を回避するため、実務では「ハイブリッド暗号」がよく使われます。ハイブリッド暗号とは、まず公開鍵暗号を使って共通鍵(セッションキー)を安全に交換し、その後大量データの暗号化は速度の速い共通鍵暗号(例:AES)で行う方式です。
例:HTTPS(Webの安全通信)は TLS(Transport Layer Security:通信を安全にするプロトコル)でこの方式を使います。 - 代表的な共通鍵暗号:AES(Advanced Encryption Standard:現在の標準)、過去にはDES(Data Encryption Standard)や3DESが使われました。十分な鍵長(例:AES-128/256)を選ぶことが重要です。
- 改ざん検出にはMAC(Message Authentication Code:メッセージ認証コード)やHMAC(Hash-based MAC)を使います。署名(デジタル署名)は非改ざんかつ送信者認証に使います。
FAQ
Q. 共通鍵を安全に送るにはどうすればよいですか?
A. 安全な方法は公開鍵暗号を使って共通鍵を暗号化して送ること、あるいはDiffie–Hellman(鍵共有プロトコル)などを使って安全に鍵を協議する方法です。実務では公開鍵で保護した後に共通鍵でデータを高速にやり取りします。
A. 安全な方法は公開鍵暗号を使って共通鍵を暗号化して送ること、あるいはDiffie–Hellman(鍵共有プロトコル)などを使って安全に鍵を協議する方法です。実務では公開鍵で保護した後に共通鍵でデータを高速にやり取りします。
Q. 暗号化だけでデータの改ざんを検出できますか?
A. できません。改ざん検出のためにはMACやデジタル署名など別の仕組みが必要です。暗号化は「見られないようにする」ことが主目的です。
A. できません。改ざん検出のためにはMACやデジタル署名など別の仕組みが必要です。暗号化は「見られないようにする」ことが主目的です。
Q. なぜ公開鍵暗号は遅いのですか?
A. 公開鍵暗号は大きな数の指数演算や楕円曲線上の計算など重い数学的処理を行います。計算コストが高いため、大量データの暗号化には向きません。だから公開鍵は鍵交換に使い、共通鍵でデータを暗号化するのが一般的です。
A. 公開鍵暗号は大きな数の指数演算や楕円曲線上の計算など重い数学的処理を行います。計算コストが高いため、大量データの暗号化には向きません。だから公開鍵は鍵交換に使い、共通鍵でデータを暗号化するのが一般的です。
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