ITストラテジスト 2021年 午前2 問02
問題文
情報システムの導入と活用によって生み出されるキャッシュフローの現在価値を計算することによって、投資効果を評価したい。このときに使われる指標はどれか。
選択肢
ア:管理品質向上のために、マネジメント、レポーティング、分析などを支援する。
イ:市場における競争優位やポジショニングを獲得する。
ウ:複数のアプリケーションソフトウェアによって共有される基盤部分を提供する。(正解)
エ:ルーチン化された業務のコスト削減や処理効率向上を図る。
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正味現在価値(NPV)【午前2解説】
正解の理由
設問が問うている指標は「情報システム導入によって生み出されるキャッシュフローの現在価値を計算して投資効果を評価する」ものであり、これは「正味現在価値(NPV)」を指します。NPVは将来のキャッシュフローを割引して現在価値に換算し、初期投資を差し引いた合計値で投資の採否を判断します。提示された選択肢のうち、NPVの考え方に最も直接関連するのは「ルーチン化された業務のコスト削減や処理効率向上を図る。」(選択肢:エ)であり、コスト削減は将来のキャッシュフロー増加(または支出減少)としてNPVに反映されます。
ただし、問題文に付された公式の解答キーでは ウ(「複数のアプリケーションソフトウェアによって共有される基盤部分を提供する。」)が正答とされています。ここに選択肢の文意と設問(NPVを問う)との間に明確な不一致があります。試験問題としては選択肢と設問の対応が成立していないため、以下の通り対応方針を示します。
- 学習・理解の観点では、設問内容(NPV)と各選択肢の意味を照合すると「エ」が妥当です。NPVはキャッシュフロー(例:コスト削減による現金流出の減少)を評価する指標だからです。
- 本番試験で当該問題に遭遇した場合は、配布された解答用紙や試験運営の指示に従ってください。解答キーと齟齬があると感じた場合は、受験後に試験委員会への照会(疑義申立て)を検討してください。
解法ステップ
- 設問が示すキーワードを把握する
- 「キャッシュフロー」「現在価値」「投資効果」などが出ている→資本予算(投資評価)の指標を問う。
- 投資評価指標の代表を頭に浮かべる
- NPV(正味現在価値)、IRR(内部収益率)、回収期間(Payback)など。
- 各選択肢を設問のキーワードに照らして当てはめる
- 「キャッシュフローの現在価値」を直接扱うのはNPV。選択肢の表現が「キャッシュフローの変動(コスト削減等)」を示していれば該当する。
- 結論を出す(本問の理論的正解はエ)
- ただし公式解答が異なる場合は試験運営に従う。
式で表すと、NPVは一般に次のように表されます:
ここで は初期投資(通常負の値)、 は時点 のキャッシュフロー、 は割引率です。判定は NPV>0 なら採算、NPV<0 なら不採算。
選択肢別の誤答解説
- ア: 「管理品質向上のために、マネジメント、レポーティング、分析などを支援する。」
→ これはBIや管理支援の目的を示す記述であり、投資評価指標ではない。NPVは数値的にキャッシュフローを評価する指標のため不適合。 - イ: 「市場における競争優位やポジショニングを獲得する。」
→ 競争戦略上の効果(定性的・戦略的効果)であり、NPVという定量的投資評価指標そのものではない。将来的にキャッシュフローに繋がる可能性はあるが、直接「現在価値を計算する指標」を表す記述ではない。 - ウ: 「複数のアプリケーションソフトウェアによって共有される基盤部分を提供する。」(公式解答キー)
→ これは共通基盤・プラットフォームについての説明で、設問が求める「キャッシュフローの現在価値を計算する指標」とは無関係。したがって文意からは不適切。ただし公式の解答キーでは ウ とされているため、解答用紙に従う必要がある場合がある(下記FAQ参照)。 - エ: 「ルーチン化された業務のコスト削減や処理効率向上を図る。」
→ コスト削減は将来のキャッシュフローを改善(費用減少=キャッシュ流出減)するため、NPVで評価されるキャッシュフローそのものに該当する。したがって本問の設問文に照らすと最も適切な選択肢である。
よくある誤解
- 誤解1: 「NPVは割合(%)で表す指標だ」
→ これはIRRやROIに関する混同。NPVは金額で表す指標(通貨単位)。割合で評価するのはIRRやROI。 - 誤解2: 「コスト削減が分かればNPVは常に正になる」
→ 削減効果を現在価値に割引く際に用いる割引率や初期投資額次第ではNPVは負になることがある。割引率(資本コスト)を考慮することが重要。 - 誤解3: 「NPV=0ならどちらでもよい」
→ NPV=0 は投資が資本コストをちょうど上回るか等価であることを示す。意思決定では他の要因(リスク、戦略的価値)も勘案する。
補足コラム
- 割引率の選び方:割引率は通常、資本コストや期待収益率を基に設定します。過小評価すると将来利益を過大に見積もり、過大評価すると有用な投資を見送る可能性があります。
- 名目値と実質値:物価上昇を考慮する場合、キャッシュフローと割引率は両方とも実質(インフレ調整済)か名目(インフレ込み)で揃える必要があります。
- 補助指標:NPVのほかにIRR、回収期間法、利益率(PI)などを併用すると、投資判断の視点が広がります。特に複数案の優先順位付けではPI(利益率)が役に立つことがあります。
簡単な計算例:
初期投資 1,000 万円、年間キャッシュインフロー 300 万円が5年間続くと仮定、割引率 5% の場合の NPV:
FAQ
- Q1: 本番で解答キーと私の判断が違ったらどうするべきですか?
A1: 本番では配布された解答用紙や試験監督の指示に従ってください。解答キーに齟齬があると感じた場合、試験後に公式窓口へ疑義申立てを行うことができます。学習用には論理的根拠を元に理解を深めておきましょう(本問では「エ」が設問に対応します)。 - Q2: NPVとIRRのどちらを使うべきですか?
A2: 一般にNPVは金額ベースで投資の純益を示し、資本制約や絶対額を重視する場合に有効。IRRは利回りで比較しやすいが、複数の交差するキャッシュフローがある場合は解釈が難しい。実務では両方を併用することが多いです。 - Q3: 小さなコスト削減でもNPVが重要なのはなぜ?
A3: 小さなコスト削減でも累積・割引を考慮すると現在価値で見ると大きな影響を与えることがあります。特に長期間にわたる効果は重要です。
関連キーワード: NPV、正味現在価値、キャッシュフロー、割引率、投資評価、IRR、回収期間、資本予算、割引現在価値、コスト削減

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