システムアーキテクト試験 2009年 午後1 問02
物流システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
B社は、大手食品メーカX社の関連会社で倉庫業を中心に事業を展開してきたが、総合物流会社を目指し、配送業中心のC社を吸収合併することになった。それに伴い。B社とC社のシステムを統合再構築することになり、システム再構築の企画プロジェクトを立ち上げた。B社情報システム部のD課長がプロジェクトチームのリーダとなり、メンバにはB社及びC社から業務担当の中核となる人材が任命された。
〔B社の現行業務システム概要〕
(1)B社は、関東に2か所あるX社の工場で生産された製品を保管し、X社の顧客である食品卸会社及び量販店に出荷するための仕分・包装を行っている。B社倉庫に入荷する製品の配送及びX社顧客に納品する製品の配送は、X社が手配した車両で行っている。
(2)X社の製品は、冷凍品、冷蔵品。常温品と温度帯別に管理する必要があり、倉庫は温度帯別に複数の保管庫に分かれている。
(3)現行のシステムにおいて、X社とのオーダの授受、保管・荷役などの実送付、請求及び月次決算情報の送付などは、EDIで行っている。
(4)倉庫業務のシステムには、ソフトウェアパッケージを利用しており、主に在庫管理と倉庫作業の実績収集を行っている。倉庫全体の在庫状況は把握できるが、保管庫ごとの在庫は把握できない。
(5)会計システム及び給与計算システムには、X社が利用しているソフトウェアパッケージと同じペンダのソフトウェアパッケージを利用している。会計処理では、仕訳伝票の入力から月次決算までを会計システムで行っている。
(6)現在、X社の物流部門と共同で、倉庫業務に関連する物流コストの管理方式の見直しを進めている。
〔C社の現行業務システム概要〕
(1)C社は、関東圏の食品メーカや食品卸会社を主な荷主とし、荷主の顧客に商品を 配送している。配送は、冷凍品、冷蔵品、常温品を対象とし、温度帯別に対応できる自社保有車で行っている。
(2)荷主から配送オーダを話又はファクシミリで受け、受けたオーダに基づき配車計画を立て、車両及び運転手の手配を行う。
(3)現行の配送連システムは、車両の運行状況の管理を行っており、車両にはすべて、GPS対応車載端末を搭載している。これによって道路混雑時に達回路を指示して納品遅れを回避する効果を上げている。配送実績を収集し、運賃計算を行い、荷主に対して配送料を請求する業務も配送関連システムで行っている。
(4)会計システム及び給与計算システムには、ソフトウェアパッケージを利用している。会計処理では、仕訳伝票の入力から月次決算までを会計システムで行っている。
(5)配送コストは、人件費。燃料費など費目別に月単位で把握している。
〔合併後のビジネス概要〕
合併後のB社は、倉庫事業と配送事業を営む総合物流会社へ変身を図る。倉庫事業においては、C社の顧客である食品メーカや食品卸会社を中心に在庫・保管ビジネスへの拡大を図る。配送事業においては、X社製品の入荷・出荷配送も取り込んでいく予定である。
〔システム再構築の基本方針〕
合併に向けて、プロジェクトチームに示されたシステム再構築の基本方針は、次のとおりである。
(1)B社が利用しているソフトウェアパッケージが倉庫管理システムのほかに配送管理システムも備えていることから、B社が利用しているソフトウェアパッケージを合併後の業務プロセスに適用し、課題と要望を取り込んで新たな業務プロセスとする。
(2)現在X社の物流部門と共同で進めている物流コストの管理方式の見直しを、配送業務領域まで拡大し、その結果を踏まえて物流コスト管理システムにソフトウェアパッケージを利用するか否かを検討する。
〔合併に向けての業務システムへの課題と要望〕
プロジェクトチームは、合併に向けた課題と要望の洗い出しを行った。課題と要望を表に示す。

〔合併後の全体業務構成〕
D課長は、合併後の全体業務構成を理した。合併後の全体業務構成を図に示す。

また、各業務のシステムでの対応方針を、次のように考えた。 (1)倉庫業務(倉庫管理システム) ①在庫管理において、温度帯別管理の強化を基本に在庫管理精度の向上を図る。 ②倉庫作業管理において、棚入れ、ピッキング、仕分、包装、棚卸しの作業指示と作業実績収集を強化する。 ③入荷管理において、荷降しから棚入れの準備までを配送の入荷オーダと連動させる。 ④出荷管理において、車両の運行方面や積載量を考慮して、配送品の積込みを効率よく行えるように、倉庫作業管理での作業指示の時点からシステムで対応できるようにする。 (2)配送業務(配送管理システム) ①配車管理において、配送ルート及び車両1台当たりの積載率の最適化を行う。 ②運行管理において、車両位置管理の機能は、B社が利用しているソフトウェアパッケージにはなく、今後X社からの配送をけ負うことの強みになるので、C社のシステムを組み込むこととする。 ③車両管理において、車両の安全確保を意識した、点検・整備状況の管理を行う。 (3)共通業務 ①トレーサビリティへの対応として、荷主からの入荷から、商品の保管、仕分、包装、配送先への納品まで、倉庫管理システム及び配送管理システムで追跡できるようにする。 ②X社の物流部門と共同で検討している、倉庫業務及び配送業務の活動要素別の原価計算を前提に、物流コスト管理のシステム化を図る。 ③財務管理の一般会計処理へは、会計上の取引発生元の業務システムから、自動仕訳で仕訳データを渡す。 ④受注管理において、荷主からの入荷オーダ、出荷オーダ、配送オーダを一元的 に受け取り、倉庫業務及び配送業務に必要な指示が出せるようにする。 ⑤売上請求管理において、保管料、荷役料、運賃などの計算、売上処理、請求処 理までを、合併後のすべての請求先に対して行う。 ⑥労務管理において、運転手及び倉庫作業者のシフト管理及び勤怠管理を行う。給与計算は、B社で利用しているソフトウェアパッケージに統一する。
物流システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
設問1:表の課題と要望について、(1),(2)に答えよ
(1)配送業務で、車両の有効活用の観点から解決すべき業務課題を二つ挙げよ。また,各課題に対してシステムでどのような対応策が考えられるか。それぞれ40字以内で述べよ。模範解答
①:
業務課題:帰り便の空車の活用
対応策:出荷配送後の車両を入荷配送に回せる最適配送ルート計画をシステムで行う。,
②:
業務課題:積載率の向上, 小口化, 多様化
対応策:納品物の容量と配送先から見て, 最適な積載率になる混載計画をシステムで行う。
解説
解答の論理構成
- 配送業務の課題抽出
- 引用①「納品後の車両が空車で帰るのはもったいない。」
- 引用②「最近の傾向として配送が小口化しており…積載効率を上げる仕組みが必要だ。」
→ それぞれ“帰り便の空車”と“積載率の低下”が核心。
- システム化の方向性
- 帰り便対策:受注情報と車両位置・走行方向をリアルタイム統合し、帰路で引き取り可能な入荷オーダをマッチングするアルゴリズムを配車システムに実装。
- 積載率対策:重量・容積・温度帯をパラメータに、複数荷主オーダを混載して“車両1台当たりの最適積載率”を算定する混載計画機能を追加。
- 40字以内の模範解答例
- 業務課題:帰り便の空車活用
対応策:配送実績と入荷情報から帰路引取を含む最適配車を自動立案する。 - 業務課題:小口化で低下する積載率
対応策:重量・容積・温度帯で混載組合せを計算し最大積載率を確保する。
- 業務課題:帰り便の空車活用
誤りやすいポイント
- 「道路混雑回避」を課題に挙げてしまい、すでにC社システムで対応済みである点を見落とす。
- 帰り便活用を“運行管理”の範疇と誤解し、実際には“配車計画”側で行う最適化であることを外す。
- 積載効率向上を“車両増備”で解決しようと書き、コスト増につながるためミスマッチになる。
FAQ
Q: 運行管理にある「車両位置管理」を使えば帰り便問題は解決しますか?
A: 位置情報は必要条件ですが、受注情報と組み合わせた配車最適化ロジックがないと空車活用は実現しません。
A: 位置情報は必要条件ですが、受注情報と組み合わせた配車最適化ロジックがないと空車活用は実現しません。
Q: 積載率向上は在庫管理で対応できませんか?
A: 在庫管理は倉庫内の数量・鮮度を扱うため、車両への混載計算は配送管理システム側で行うのが適切です。
A: 在庫管理は倉庫内の数量・鮮度を扱うため、車両への混載計算は配送管理システム側で行うのが適切です。
関連キーワード: 配車最適化, 混載計画, 車両稼働率, トレーサビリティ
設問1:表の課題と要望について、(1),(2)に答えよ
(2)温度帯別管理の現状、課題と要望から見て、現状の倉庫管理システムにどのような機能の追加が必要か。15字以内で述べよ。模範解答
保管庫ごとの在庫管理機能
解説
解答の論理構成
- 現状認識
- B社現行システムの制約
「倉庫全体の在庫状況は把握できるが、保管庫ごとの在庫は把握できない。」 - 課題の明文化
「倉庫全体の在庫状況はシステムで把握しているが、保管庫ごとの在庫もシステムで把握できるようにしたい。」
- B社現行システムの制約
- 追加機能の導出
- 保管庫=温度帯別エリアであり、冷凍・冷蔵・常温それぞれの在庫をリアルタイムで把握するにはロケーション(保管庫)単位の残数を管理する必要がある。
- したがって倉庫管理システムに「保管庫ごとの在庫管理機能」を追加すれば、温度帯別管理の強化と在庫精度向上の双方を実現できる。
- 結論
以上より、設問が求める追加機能は「保管庫ごとの在庫管理機能」となる。
誤りやすいポイント
- 温度帯別在庫とロット(鮮度)管理を混同し「ロット別在庫管理」などと書く。
- 作業効率の課題と混線し「ピッキング指示機能」など別の機能を答えてしまう。
- 「保管庫別」「庫内ロケーション別」など原文と異なる語を使い、意図は合っていても減点される。
FAQ
Q: 温度帯別の強化なのに「温度帯別在庫管理」と書いてはダメですか?
A: 原文が求めるのは「保管庫ごとの在庫」なので、表現は「保管庫ごとの在庫管理機能」がベストです。
A: 原文が求めるのは「保管庫ごとの在庫」なので、表現は「保管庫ごとの在庫管理機能」がベストです。
Q: 「ロケーション管理」は解答として認められますか?
A: 問題文の語句とずれる可能性があるため、確実性を優先して原文どおりの表現を用いるのが安全です。
A: 問題文の語句とずれる可能性があるため、確実性を優先して原文どおりの表現を用いるのが安全です。
Q: 既存パッケージ改修と新規開発のどちらが前提ですか?
A: 設問は追加すべき機能の名称を問うものなので、実装方法までは問われていません。
A: 設問は追加すべき機能の名称を問うものなので、実装方法までは問われていません。
関連キーワード: 在庫管理, ロケーション管理, 温度管理, 倉庫システム, 精度向上
設問2
倉庫管理システム及び配送管理システムにおいて、トレーサビリティを一貫して確保するために、システムでどのような対応をすべきか。35字以内で述べよ模範解答
自由記述(トレース対象品に識別子を割り当て,トレース対象品の動きを記録し関連付けることを,適切に記述していれば高得点)
解説
解答の論理構成
- トレーサビリティの要件確認
- 【問題文】「トレーサビリティの確保は今後の必須課題である。荷主からの入荷から…納品まで、トレース対象品を追跡できるようにしたい。」
- 【問題文】「倉庫管理システム及び配送管理システムで追跡できるようにする。」
- 必要なシステム機能を抽出
- 共通キー:倉庫と配送のデータを突合させるため同一の識別子が必要。
- イベント記録:入荷、棚入れ、ピッキング、積込み、納品など工程単位で実績を記録。
- 設問への当てはめ
- 倉庫管理システム側で入荷時に識別子を割り当て、以降の工程で実績を蓄積。
- 配送管理システムへ識別子と実績を受け渡し、納品完了まで追跡。
- 以上より「識別子付与+工程実績の記録・関連付け」が最短で要件を充足します。
誤りやすいポイント
- 識別子の付与だけを書き、実績記録・関連付けに触れない。
- 倉庫側と配送側で別々の番号を採番し、紐付け方法を示さない。
- 「バーコード化」など手段に言及して本質の「一貫識別+履歴管理」が曖昧になる。
FAQ
Q: 既存のバーコードやQRコードを使えば十分ですか?
A: 手段としては有効ですが、設問で問われているのは手段そのものではなく「一貫識別+工程記録」の仕組みです。バーコードはその実現方法の一つに過ぎません。
A: 手段としては有効ですが、設問で問われているのは手段そのものではなく「一貫識別+工程記録」の仕組みです。バーコードはその実現方法の一つに過ぎません。
Q: 工程実績の記録粒度はどの程度が望ましいですか?
A: 少なくとも【問題文】に列挙された「入荷、商品の保管、仕分、包装、配送先への納品」相当の工程ごとに記録することで追跡要求を満たせます。
A: 少なくとも【問題文】に列挙された「入荷、商品の保管、仕分、包装、配送先への納品」相当の工程ごとに記録することで追跡要求を満たせます。
Q: 物流コスト管理との連携は回答に含めるべきですか?
A: 本設問はトレーサビリティ確保に焦点を当てているため、コスト管理への言及は不要です。
A: 本設問はトレーサビリティ確保に焦点を当てているため、コスト管理への言及は不要です。
関連キーワード: トレーサビリティ, 識別コード, 工程実績, データ連携, イベントログ
設問3:D課長が考えたシステムでの対応方針について,(1),(2)に答えよ
(1)運行管理においてC社のシステムを活用することが、今後X社から配送を請け負うことの強みになる理由は何か。30字以内で述べよ。模範解答
X社の要請である,納品時間遅れ解消に対応できるから
解説
解答の論理構成
- 要求事項の確認
- 配送業務の課題として「X社の製品配送を請け負うに当たり、Y社からは道路混雑などによる納品遅れの解消が求められている」と記載されています。
- C社システムの強み
- C社は「車両にはすべて、GPS対応車載端末を搭載」し、「納品遅れを回避する効果」を上げています。
- 対応方針への反映
- D課長は「車両位置管理の機能は…今後X社からの配送をけ負うことの強みになるので、C社のシステムを組み込む」と判断しました。
- まとめ
- したがって「X社の要請=納品遅れ解消」を実現できる点が“強み”であると結論付けられます。
誤りやすいポイント
- 「GPS対応だから強い」とだけ述べ、X社の要求事項を示さない
- 道路混雑回避ではなく積載効率改善など別の要望と混同する
- C社システムを“配車計画”だけと誤認し「車両位置管理」を触れない
FAQ
Q: 車両位置管理と配車計画はどう違いますか?
A: 配車計画は出発前に最適な車両・ルートを決める業務、車両位置管理は走行中に現在位置を把握し状況変化に応じて指示を出す業務です。
A: 配車計画は出発前に最適な車両・ルートを決める業務、車両位置管理は走行中に現在位置を把握し状況変化に応じて指示を出す業務です。
Q: B社パッケージに車両位置管理を追加開発する案は検討しないのですか?
A: 方針②で「車両位置管理の機能は…C社のシステムを組み込む」と決定済みのため、既存の実績ある機能を活用しリスクとコストを抑える狙いがあります。
A: 方針②で「車両位置管理の機能は…C社のシステムを組み込む」と決定済みのため、既存の実績ある機能を活用しリスクとコストを抑える狙いがあります。
Q: 納品遅れ解消の効果を数値で示す必要は?
A: 本設問は理由を問うのみで数値根拠は不要です。納品遅れ解消という機能的適合性を示せば十分です。
A: 本設問は理由を問うのみで数値根拠は不要です。納品遅れ解消という機能的適合性を示せば十分です。
関連キーワード: 運行管理, 車両位置管理, GPS, 配車計画, ルート最適化
設問3:D課長が考えたシステムでの対応方針について,(1),(2)に答えよ
(2)合併後の物流コスト管理システムの構築にたって、システムで重点的に対応すべき機能を二つ挙げ、それぞれ15字以内で述べよ。模範解答
①:活動要素別の原価実績把握
②:活動要素別の原価差異分析
解説
解答の論理構成
- 課題の抽出
- 共通業務の課題では「配送、保管、荷役などの活動業務別の原価実績把握と、活動要素別の原価差異が分析できるようにしたい。」とある。
- ここから「原価実績把握」と「原価差異分析」が必須機能であると確定。
- “活動要素別”という視点
- 対応方針(3)共通業務②で「倉庫業務及び配送業務の活動要素別の原価計算」が挙げられ、粒度は“活動要素別”で統一されている。
- よって機能名にも“活動要素別”を付けることで要件との整合を図る。
- 15字以内への落とし込み
- 必要語を残しつつ「活動要素別の原価実績把握」・「活動要素別の原価差異分析」で15字以内を満たすため、冗長な語を排除。
- 以上より、設問が要求する「重点的に対応すべき二つの機能」は提示の解答となる。
誤りやすいポイント
- 原価管理を「費目別」でまとめてしまい“活動要素別”を落とす。
- 「実績把握」と「差異分析」を同一機能と誤認し、一つしか挙げない。
- “活動業務別”と“活動要素別”を混同し、用語を置き換えてしまう。
FAQ
Q: 「活動要素別」とは具体的に何を指しますか?
A: 倉庫作業や配送作業を「棚入れ」「ピッキング」「運転」など細かな活動単位に分解し、それぞれに直接費・間接費を紐付けて原価計算する粒度を指します。
A: 倉庫作業や配送作業を「棚入れ」「ピッキング」「運転」など細かな活動単位に分解し、それぞれに直接費・間接費を紐付けて原価計算する粒度を指します。
Q: なぜ差異分析が重要なのですか?
A: 実績だけでは改善点が見えません。標準原価と比較した差異を分析することで、作業効率やコスト超過の原因を特定し、改善策を打てるためです。
A: 実績だけでは改善点が見えません。標準原価と比較した差異を分析することで、作業効率やコスト超過の原因を特定し、改善策を打てるためです。
Q: 費目別管理では不十分なのでしょうか?
A: 燃料費や人件費など費目単位では、どの作業がどれだけコストを消費したか把握できません。総合物流会社としての最適化には活動要素別の管理が不可欠です。
A: 燃料費や人件費など費目単位では、どの作業がどれだけコストを消費したか把握できません。総合物流会社としての最適化には活動要素別の管理が不可欠です。
関連キーワード: 活動基準原価計算, 原価実績, 差異分析, コスト最適化
設問4
会計システムに関して、合併後の一般会計処理で、自動仕訳データとして図の“財務管理”に渡すべき会計上の取引が発生している業務は何か。図の“財務管理”と同一レベルの業務名で、三つ挙げよ。模範解答
①:売上請求管理
②:物流コスト管理
③:労務管理
解説
解答の論理構成
- 会計連携の対象を確認
- 共通業務③より引用
「“財務管理の一般会計処理へは、会計上の取引発生元の業務システムから、自動仕訳で仕訳データを渡す。」
したがって“取引発生元”=仕訳が必要な業務を抽出する。
- 共通業務③より引用
- 仕訳が発生する条件を整理
- 売上計上、費用計上、給与計上など金額が確定し、勘定科目を伴うタイミング。
- 各業務の財務インパクトを確認
- 売上請求管理:保管料・荷役料・運賃などの「売上処理」「請求処理」を行うため、売掛金・売上高の仕訳が発生。
- 物流コスト管理:倉庫・配送の各活動原価を集計し「費用計上」を行うため、物流費用・部門別原価の仕訳が発生。
- 労務管理:運転手・作業者の「勤怠管理」結果を給与計算へつなげるため、給与・社会保険料などの仕訳が発生。
これらはいずれも“金額が確定して財務諸表科目に影響する”業務である。
- 他業務が除外される理由
- 受注管理:オーダ受付時点では金銭の増減が未確定。
- 倉庫管理・配送管理:在庫数量・運行状況など物理情報が中心で直接仕訳を起こさない。
よって会計連携対象は「売上請求管理」「物流コスト管理」「労務管理」の三つとなる。
誤りやすいポイント
- 受注管理を選んでしまう
受注時点では売上は未確定。売上が確定するのは“請求”時点であることを見落としがちです。 - 倉庫管理/配送管理を入れてしまう
在庫移動や運行実績は管理会計的には重要ですが、直接仕訳には結び付かない点に注意が必要です。 - “同一レベルの業務名”を無視
図のレイヤを意識せずサブメニュー名(例:運賃計算)を回答すると減点対象になります。
FAQ
Q: 「受注管理」で前受金が発生するケースは考えないのですか?
A: 本問のシナリオでは受注段階で前受金処理を行う旨の記述がなく、決済は「売上請求管理」で確定すると読めます。したがって仕訳発生元は「売上請求管理」と判断します。
A: 本問のシナリオでは受注段階で前受金処理を行う旨の記述がなく、決済は「売上請求管理」で確定すると読めます。したがって仕訳発生元は「売上請求管理」と判断します。
Q: 「物流コスト管理」は費用配賦のための管理会計であって仕訳は不要では?
A: 【問題文】に「活動要素別の原価計算を前提に、物流コスト管理のシステム化を図る。」とあり、原価計算結果は会計帳簿に反映して管理会計仕訳を生成すると解釈できます。
A: 【問題文】に「活動要素別の原価計算を前提に、物流コスト管理のシステム化を図る。」とあり、原価計算結果は会計帳簿に反映して管理会計仕訳を生成すると解釈できます。
Q: 労務管理と給与計算が分かれていますが、どちらが仕訳を渡すのですか?
A: 給与額確定のトリガを持つのは「労務管理」側(勤怠・シフト統合)であり、給与計算パッケージを通じて「労務管理」から仕訳データが生成されると読むのが自然です。
A: 給与額確定のトリガを持つのは「労務管理」側(勤怠・シフト統合)であり、給与計算パッケージを通じて「労務管理」から仕訳データが生成されると読むのが自然です。
関連キーワード: 自動仕訳, 一般会計, 原価計算, 売掛金, 労務費