K社は、法人向けの自動車リース会社である。K社は、自動車リースを契約している法人を対象に、有料道路の通行料金の支払に利用するETCカードのサービス(以下、ETCサービスという)を提供している。昨今のETCカード(以下、カードという)の利用者増加に伴い、業務及びシステムを改善することにした。
〔現在の業務の概要〕
K社では、法人顧客(以下、顧客という)がETCサービスの契約を締結すると、リース車両1台につきカードを1枚発行する。カード利用者は、有料道路の通行料金の支払手段として、カードを利用することができる。有料道路の事業者(以下、道路事業者という)は、K社のカードを利用した通行料金をK社に請求する。K社は、道路事業者から送られてくる通行記録を基に通行料金を顧客に請求する。現在のETCサービスの契約締結から請求までの業務の概要は、次のとおりである。これらの業務に関連するシステムは、ETCサービス契約システム、リース契約管理システム及びETCサービス請求システムである。
(1)ETCサービス契約締結業務
K社は、顧客からETCサービスの申込書を受領し、契約締結の手続をする。申込書に記載する情報は、リース契約番号、顧客名、願客アルファベット名、住所、電話番号、代表者名及び口座振替に利用する顧客の預金口座情報である。ETCサービス契約システムに、申込書の情報を入力して登録する。リース契約管理システムを利用して、リース契約番号、顧客名、開始日及び満了日などのリース契約の情報とETCサービスの申込内容を照合し、契約を締結する。
(2)カード発行業務
K社は、顧客からカード発行依頼書を受領し、カード発行の手続をする。カード発行依頼書に記載された自動車登録番号から、リース契約管理システムを利用してリース契約とリース車両の情報を確認する。リース車両に対して利用中のカードがないことを台帳で確認し、カードの発行に必要な情報(以下、カード発行情報という)を書面で印刷会社に送付する。カード発行情報は、顧客アルファベット名、自動車登録番号、カードの色やデザインなどのカード種類、カード番号及びカード有効期限年月である。K社では、カードの有効期限を顧客のリース契約満了日の属する月の月末としている。カード発行業務で発行したカードについては、カード発行費の請求対象としている。
(3)カード更新業務
K社は、カードの有効期限の2か月前までに有効期限更新の案内書を顧客に送付する。リース車両を継続利用してカードの有効期限の更新を希望する場合、顧客は、指定する期日までに更新依頼書をK社に送付する。指定する期日までにカードの更新を希望する旨の通知がなく、有効期限を迎えた場合は、カードを解約扱いとする。K社は、更新の希望があったカードについて、カード発行情報を書面で印刷会社に送付する。カード更新業務で発行したカードについては、カード発行費の請求対象としている。
(4)カード再発行業務
K社は、顧客からカード再発行依頼書を受領し、カードの再発行の手続をする。顧客は、カードの再発行を依頼する際、再発行の理由を“紛失”、“カード種類変更”、“磁気不良”及び“破損”の四つから一つ選択しカード再発行依頼書に記載する必要がある。K社は、カード再発行依頼書の確認後、それまで利用していたカードを無効にし、カード発行情報を書面で印刷会社に送付する。再発行の理由が“磁気不良”又は“破損”である場合、カード発行費の請求対象外としている。
(5)請求業務
K社は、毎月、道路事業者から送付される通行記録に基づき、道路事業者に対して通行料金を立替払する。立替払した通行料金、カード発行費及びカード年会費をETCサービス請求システムに登録する。毎月月末にETCサービス請求システムを利用して請求書を発行し、顧客に請求する。カード発行費は、カード1枚につき500円とし、請求の対象となる月に発行したカードの代金を請求する。カード年会費は、現在有効であるカードを対象として、カード発行依頼書に基づいて初回にカードを発行した月に年会費を請求し、その後、1年ごとに請求する。請求書は、請求金額の合計を記載した請求書サマリとカード番号ごとの利用明細を記載した請求書明細から構成される。利用明細には、有料道路のインターチェンジ(以下、ICという)に入った日を利用日として、出入口のIC名、自動車登録番号、出口を通過した時刻(以下、出口時刻という)と通行料金を表示する。請求書サマリの請求
金額欄の例を図1に、請求書明細の請求金額欄の例を図2に示す。
〔システムの改善要望〕
業務部とシステム部から、現在の業務に関わる次のような改善要望が出された。
・リース契約管理システムを利用してリース契約とリース車両の情報を照合する作業を、システムで対応してほしい。
・カード発行業務で、顧客から発行依頼されたリース車両に対して利用中のカードがないことを確認する作業をシステムで対応してほしい。
・カード発行情報をシステムで印刷会社に連携してほしい。
・カード利用者は、いつでもカードを利用することができるが、顧客の営業日以外に有料道路のICに入ったことが分かる帳票(以下、利用日確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。
・カード利用者は、どんな車両でもカードを利用することができるが、発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことが確認できる帳票(以下、利用車両確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。
〔改善後のシステムの内容〕
K社では、システム改善要望を踏まえETCサービス契約システムとETCサービス請求システムを続合したETCサービス管理システム(以下、新システムという)の機能とデータを次のように検討している。新システムの主要なデータを表1に示す。
(1)契約管理機能
顧客から受領したETCサービスの申込書の情報を新システムに入力する。新システムは、リース契約管理システムと連携して、入力した情報からリース契約情報を参照する。申込内容に問題がなければ、ETCサービス契約データにレコードを登録する。
(2)カード発行機能
顧客から受領したカード発行依頼書の情報を新システムに入力する。新システムは、リース契約管理システムと連携して、入力した情報からリース契約情報とリース車両情報を取得する。また、
①カードデータのレコードのうちカード状態が“利用中”であるレコードを対象に、発行依頼されたリース車両に関するチェックを行う。チェック結果に問題がなければ、カードデータにレコードを登録する。その際、カード状態に“利用中”、初回カード発行日及びカード発行日に処理日、発行理由に“新規発行”を設定する。その後、カード発行情報をEDIで印刷会社に連携する。
(3)カード更新機能
新システムで有効期限更新の案内書を発行する。顧客から有効期限の更新を希望された場合、新システムに入力することによって、カード有効期限年月を算出してカードデータにレコードを登録する。その際、カード状態に“利用中”、初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値、カード発行日に処理日、発行理由に“更新発行”を設定する。また、それまで利用していたカードに係るカードデータのレコードのカード状態を“利用中”から“更新済み”に変更する。その後、カード発行情報をEDIで印刷会社に連携する。また、月末に、カードデータのレコードのうち、カード有効期限年月が当月であり、カード状態が“利用中”であるレコードのカード状態を“解約”にし括で変更する。
(4)カード再発行機能
顧客からのカード再発行依頼書の情報を新システムに入力する。新システムは、カード番号を新たに採番してカードデータにレコードを登録する。その際、カード状態に“利用中”、初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値、カード発行日に処理日、発行理由に再発行の理由を設定する。また、それまで利用していたカードに係るカードデータのレコードのカード状態を“利用中”から“無効”に変更する。その後、カード発行情報をEDIで印刷会社に連携する。
(5)請求機能
毎月、道路事業者からEDIで連携される通行記録を新システムに一括で登録し、顧客ごとに通行料金を計算する。また、カード発行費及びカード年会費の請求の対象となるカードデータのレコードを抽出し、それぞれの請求金額を計算する。通行料金、カード発行費及びカード年会費の合計を合計請求金額として請求書を発行する。請求書のフォーマットは、現行業務と同じとする。EDIで連携される通行記録の主要な項目を図3に示す。
(6)ETC利用情報レポート機能
通行記録から利用日確認帳票と利用車両確認帳票に必要なデータを抽出し、帳票を作成して顧客に送付する。利用日確認帳票を顧客に提供するために、ETCサービス契約申込時に、顧客からある情報を提供してもらい、新システムで保有する。