応用情報技術者 2017年 秋期 午後 問05
SDN(Software-Defined Networking)を利用したネットワーク設計に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。
T社は、中小企業向けにIaaSを提供する会社である。国内2か所にデータセンタをもち、約100社の顧客にサービスを提供している。T社では、既存のデータセンタが手狭になってきたので、データセンタを新設することになった。
新設するデータセンタ(以下、新データセンタという)では、複数顧客の仮想サーバを一つの物理サーバに配備するマルチテナント方式を採用する。ネットワークについても、ソフトウェアによって仮想的なネットワークを構築する技術であるSDNを用いて、顧客ごとに独立した仮想ネットワークを迅速かつ柔軟に構築することを目指している。T社ネットワークサービス部のS君が、SDNを用いた仮想ネットワークの検証を行うことになった。
〔検証対象の仮想ネットワーク〕
検証対象は、図1に示す二つの顧客のネットワーク構成を想定した仮想ネットワークである。顧客Y、ZのLANともに、同じネットワークアドレス192.168.0.0/24が利用されている。

〔新データセンタの検証環境構築〕
S君は、新データセンタに設置予定の物理L2SW、物理サーバ、SDNコントローラを利用して検証環境を構築した。S君が構築した検証環境の構成を図2に示す。各物理サーバには仮想化ソフトウェアをインストールして、複数の仮想サーバ・FWと一つの仮想L2SWを定義した。仮想サーバや仮想FWは仮想L2SWに接続し、仮想L2SWの1番ポートは物理L2SWに接続する。仮想L2SW及び物理L2SWは、SDNコントローラで定義したルールに従って、イーサネットフレーム内の送信元MACアドレスと宛先MACアドレスに応じて、イーサネットフレームをL2SWのどのポートに転送するかを制御する。

S君は、図1に示す二つの顧客のネットワークを図2の環境で構成するために、各顧客のサーバとFWを表1のように割り当てた。
表1の割当てを行った図2の検証環境において、顧客YのPCから顧客YのAPサーバにアクセスする場合、FWとAPサーバの間を流れるAPサーバ向けイーサネットフレームの送信元MACアドレスはa、宛先MACアドレスはbとなる。
同一顧客のネットワーク内の機器が相互に通信できるように、物理L2SW及び仮想L2SWのネットワーク情報をSDNコントローラに設定した。物理L2SW#1の通信制御テーブルの内容を表2に示す。
新データセンタに設置する物理L2SW及び仮想L2SWは、各ポートから入力されたイーサネットフレームに対して、通信制御テーブルの項番1から順に判定条件の評価を行い、判定条件にマッチしたルールが存在した場合には、アクションに記載された内容に従って処理を行う。
例えば、顧客YのDBサーバからAPサーバ向けのイーサネットフレームが、物理L2SW#1のc番ポートに入力されると、通信制御テーブルの項番dのルールにマッチし、イーサネットフレームが物理L2SW#1の9番ポートに転送される。同様に仮想L2SW#1でも、MACアドレスによる通信制御が行われ、APサーバにイーサネットフレームが届く。
各L2SWにおいてイーサネットフレーム内のMACアドレスを用いた通信制御を行うことによって、顧客Yと顧客ZのサーバのIPアドレスが同一であっても、それぞれの顧客の通信を区別することができる。
〔物理サーバ故障時の検証〕
S君は、物理サーバの故障に備えた仮想サーバの冗長化の検証を行うために、物理サーバ#1の故障時に、物理サーバ#1で動作していたAPサーバを物理サーバ#2に自動的に移動させる設定を行った。物理サーバ#2に移動させたAPサーバは仮想L2SW#2の2番ポートに接続する。
また、①物理サーバ#1が故障して、APサーバの移動を完了した場合に物理L2SW及び仮想L2SWの通信制御テーブルのルールを自動的に変更する設定をSDNコントローラに行った。
S君は、物理L2SW故障時に備えた冗長化や通信速度の検証なども行い、仮想ネットワークの検証作業を完了した。
設問1:
問題文を見る模範解答
a:ccc
b:aaa
解説
解答の論理構成
-
問題文の確認
「顧客YのPCから顧客YのAPサーバにアクセスする場合、FWとAPサーバの間を流れるAPサーバ向けイーサネットフレームの送信元MACアドレスはa、宛先MACアドレスはbとなる。」とあります。
つまり、通信方向は「FW ➜ APサーバ」です。 -
機器ごとのMACアドレスを把握
表1より
・「APサーバ」→「aaa」
・「FW」→「ccc(LAN側)、mmm(WAN側)」
LAN内でAPサーバへフレームを送るのは「FWのLAN側インタフェース」です。 -
送信元MACの決定
フレームを発信するのは「FWのLAN側」。よって送信元は「ccc」。 -
宛先MACの決定
フレームの届け先は「APサーバ」。よって宛先は「aaa」。 -
結論
a=「ccc」、b=「aaa」となります。
誤りやすいポイント
- 「FWのWAN側mmm」を送信元だと思い込む。今回はLAN内通信なので「ccc」が正解です。
- 物理L2SWの転送先ポート番号(表2の8や9)とMACアドレスを混同する。設問はあくまでMACアドレスを問うています。
- 顧客ZのMACアドレス「ddd」「eee」と誤って対応させる。顧客Yの通信である点を見落とさないよう注意が必要です。
FAQ
Q: FWのLAN側とWAN側のどちらのMACを使えばよいのですか?
A: 表1に「FW → ccc(LAN側)、mmm(WAN側)」とあるとおり、同一セグメント内(APサーバと同じ192.168.0.0/24)の通信には「ccc」を使います。
A: 表1に「FW → ccc(LAN側)、mmm(WAN側)」とあるとおり、同一セグメント内(APサーバと同じ192.168.0.0/24)の通信には「ccc」を使います。
Q: ルーティングではなくスイッチングでも宛先MACは変わりませんか?
A: 変わりません。L2SWでの転送は宛先MACに基づいて行われるため、FWから出る時点で宛先MACは「APサーバのaaa」にセットされ、そのまま届きます。
A: 変わりません。L2SWでの転送は宛先MACに基づいて行われるため、FWから出る時点で宛先MACは「APサーバのaaa」にセットされ、そのまま届きます。
Q: 同じネットワークアドレスを複数顧客で使っていて衝突しないのはなぜ?
A: SDNで各L2SWに「MACアドレスごとの転送ルール」を設定し、顧客Yと顧客ZのMAC範囲を分離しているからです。IPが重複していても、MACで分けることで干渉を防いでいます。
A: SDNで各L2SWに「MACアドレスごとの転送ルール」を設定し、顧客Yと顧客ZのMAC範囲を分離しているからです。IPが重複していても、MACで分けることで干渉を防いでいます。
関連キーワード: SDN, MACアドレス、仮想スイッチ、マルチテナント、レイヤ2転送
設問2:
問題文を見る本文中のc、dに入れる適切な数値を答えよ。
模範解答
c:13
d:3
解説
解答の論理構成
-
送信元・宛先MACの確認
- 顧客YのDBサーバは表1「項番2」でMACアドレスが「bbb」、APサーバは表1「項番1」でMACアドレスが「aaa」と示されています。
- よってDBサーバ → APサーバ のフレームは「送信元MAC:bbb」「宛先MAC:aaa」です。
-
物理L2SW#1に入るポート (c の決定)
- DBサーバ(仮想サーバ#9)は物理サーバ#2に載り、最終的に物理L2SW#1へは相互接続用ポート経由で到達します。
- 表2を見ると、DBサーバあて(宛先MACが「bbb」)のフレームはすべて「Forward 13」となっており、逆向きに考えると「bbb」を送信元とするフレームは13番ポートから物理L2SW#1に入ってくることが分かります。
- したがって c=「13」となります。
-
マッチするテーブル項番 (d の決定)
- 表2で「送信元MAC:bbb」「宛先MAC:aaa」に完全一致する行は「項番3」です。
- 従って d=「3」となります。
-
結果
- 問題文の空欄に当てはめると
「物理L2SW#1の13番ポートに入力されると、通信制御テーブルの項番3のルールにマッチし、イーサネットフレームが物理L2SW#1の9番ポートに転送される。」
となり、ネットワークの動作と整合します。
- 問題文の空欄に当てはめると
誤りやすいポイント
- 図だけを頼りに「クロスケーブル=8番ポート」と早合点し、c を「8」としてしまうケース。MACアドレスごとの転送先ポートを示す表2を必ず参照する必要があります。
- 送信元・宛先を取り違えて「項番1(aaa→bbb)」を選択し、d を誤答してしまうミス。フレーム方向を確認しましょう。
- 表2の判定順序(上から順に評価)を見落とし、あいまい条件「送信元MAC:bbb、宛先:any」(項番10)を先に適用してしまう誤解。完全一致の項番3が上位に配置されています。
FAQ
Q: ポート13が“どこに”つながっているか図で分かりづらいのですが?
A: 表2を見ると「bbb」宛のフレームがすべて「Forward 13」となっています。つまりポート13はDBサーバが属するネットワークへの出口(もしくは上位スイッチ)であると読み取れます。図上の物理接続より、MACベースの転送規則を優先して判断してください。
A: 表2を見ると「bbb」宛のフレームがすべて「Forward 13」となっています。つまりポート13はDBサーバが属するネットワークへの出口(もしくは上位スイッチ)であると読み取れます。図上の物理接続より、MACベースの転送規則を優先して判断してください。
Q: 判定条件に “any” がある行は、具体的なMACを指定した行より優先されますか?
A: いいえ。問題文に「項番1から順に判定条件の評価を行い…」とあるため、上位により具体的な条件があればそちらが先に適用されます。
A: いいえ。問題文に「項番1から順に判定条件の評価を行い…」とあるため、上位により具体的な条件があればそちらが先に適用されます。
Q: 送信元・宛先MACが逆でも同じポートを通るのですか?
A: 必ずしも同じではありません。表2で「aaa→bbb」はForward 13、「bbb→aaa」はForward 9です。双方向通信でも経路が対称になるとは限らない点に注意してください。
A: 必ずしも同じではありません。表2で「aaa→bbb」はForward 13、「bbb→aaa」はForward 9です。双方向通信でも経路が対称になるとは限らない点に注意してください。
関連キーワード: MACアドレス、イーサネットフレーム、SDNコントローラ、L2スイッチ
模範解答
e:8
f:13
解説
解答の論理構成
-
初めに、【問題文】の「表2物理L2SW#1の通信制御テーブル」を確認します。
- 項番7 送信元MACアドレス「ddd」 宛先MACアドレス「eee」 アクション「Forward e」
- 項番8 送信元MACアドレス「eee」 宛先MACアドレス「ddd」 アクション「Forward f」
-
次に、通信相手(宛先)のポート番号を推定します。
- 同表には、各MACアドレスごとに「宛先がanyの場合」の転送先ポートが定義されています。
- 項番12 送信元「ddd」 宛先「any」 アクション「Forward 8」
- 項番13 送信元「eee」 宛先「any」 アクション「Forward 13」
これより、 • 「ddd」から出ていくフレームはポート「8」に送れば相手に届く
• 「eee」から出ていくフレームはポート「13」に送れば相手に届く
というトポロジが読み取れます。
-
したがって、
- 「ddd」→「eee」(項番7)は宛先「eee」を収容するポート「8」へ転送するので e = 8
- 「eee」→「ddd」(項番8)は宛先「ddd」を収容するポート「13」へ転送するので f = 13
-
以上より解答は
e:8
f:13
誤りやすいポイント
- 「項番12」「項番13」の “any” ルールを見落とし、図の物理配線からポートを類推してしまう。テーブルが優先です。
- 「送信元ポート」ではなく「宛先を収容するポート」を転送先にする点を混同しやすい。
- 顧客Yと顧客Zで物理ポートを共有している(MACアドレスで分離)ことに気付かず、「ポートは顧客ごとに専有」と思い込む。
FAQ
Q: なぜ “any” ルールを先に見てよいのですか?
A: 【問題文】に「通信制御テーブルの項番1から順に判定条件の評価を行い…」とありますが、宛先が不明な場合に最後にマッチする “any” 行が、当該MACアドレスが属するポートのヒントを与えてくれるためです。
A: 【問題文】に「通信制御テーブルの項番1から順に判定条件の評価を行い…」とありますが、宛先が不明な場合に最後にマッチする “any” 行が、当該MACアドレスが属するポートのヒントを与えてくれるためです。
Q: 物理L2SW#1と物理L2SW#2の接続ポートは8だけのはずでは?
A: SDNでは同一ポートを複数の仮想ネットワークが共有できます。顧客Yの「ccc」と顧客Zの「eee」がともにポート「8」を利用していても、MACアドレスで分離できるため問題ありません。
A: SDNでは同一ポートを複数の仮想ネットワークが共有できます。顧客Yの「ccc」と顧客Zの「eee」がともにポート「8」を利用していても、MACアドレスで分離できるため問題ありません。
Q: “Forward 8, 13” のようにカンマ区切りがある行は何を意味しますか?
A: 同時に複数ポートへ転送(フラッディング)する指示です。ARPや未知宛先フレームを仮想ネットワーク内に拡散する目的で使われています。
A: 同時に複数ポートへ転送(フラッディング)する指示です。ARPや未知宛先フレームを仮想ネットワーク内に拡散する目的で使われています。
関連キーワード: SDN, MACアドレス、レイヤ2スイッチ、通信制御テーブル、マルチテナント
(2)表2中の項番9〜13は、同一顧客内のサーバやFWがイーサネットフレームを用いて通信を行うために必要な情報を収集可能とするためのルールである。顧客Y、ZのサーバやFWが収集する情報とは何か。20字以内で答えよ。
模範解答
サーバやFWのMACアドレス
解説
解答の論理構成
-
表2の項番9〜13を確認すると、いずれも判定条件の宛先MACアドレスがanyになっており、送信元だけがそれぞれ
aaa、bbb、ccc、ddd、eee
と顧客ごとの機器を示しています。アクションには複数ポートへのForwardが指定されています。
これは「未知の宛先に対してフレームを複数ポートへ転送し、宛先機器からの応答を待ってMACアドレスを学習する」標準的なL2SWの“フラッディング”動作と同じです。 -
問題文には
「各L2SWにおいてイーサネットフレーム内のMACアドレスを用いた通信制御を行うことによって、顧客Yと顧客ZのサーバのIPアドレスが同一であっても、それぞれの顧客の通信を区別することができる。」
とあります。つまりL2SWは“MACアドレス”単位で顧客ごとの通信を識別・分離します。よって収集対象もMACアドレスです。 -
また小問は「同一顧客内のサーバやFWがイーサネットフレームを用いて通信を行うために必要な情報を収集可能とするためのルール」と述べており、通信相手を決定するために必要なのは宛先機器のMACアドレスです。
-
以上より、顧客Y・Zの各サーバおよびFWが収集する情報は「サーバやFWのMACアドレス」となります。
誤りやすいポイント
- 「IPアドレスが同じでも区別できる」との記述からIPアドレスと答えてしまう。実際はL2レベルの制御なのでMACアドレスが鍵です。
- 項番9〜13のアクションに複数ポートが書かれているのを「ロードバランシング」と誤解する。本質はフラッディングによるMAC学習です。
- 「収集する情報=ポート番号」と誤答するケース。ポート番号はスイッチが内部で保持するだけで、サーバやFWが収集する対象ではありません。
FAQ
Q: なぜany宛てのルールが必要なのですか?
A: 宛先が未知の場合、スイッチはフレームを複数ポートへフラッディングし、レスポンスを受け取ってMACアドレス‐ポート対応表を学習します。そのための仕組みとしてanyを使った汎用ルールが用意されています。
A: 宛先が未知の場合、スイッチはフレームを複数ポートへフラッディングし、レスポンスを受け取ってMACアドレス‐ポート対応表を学習します。そのための仕組みとしてanyを使った汎用ルールが用意されています。
Q: SDN環境でも通常のL2SWの学習機能は要るのですか?
A: はい。SDNコントローラがポリシーを配布しても、実際のフレーム転送ではL2SWがリアルタイムにMACアドレスを学習・参照する必要があります。表2のようなルールはその補助的役割を担います。
A: はい。SDNコントローラがポリシーを配布しても、実際のフレーム転送ではL2SWがリアルタイムにMACアドレスを学習・参照する必要があります。表2のようなルールはその補助的役割を担います。
Q: この学習が正しく行われないとどんな問題が起きますか?
A: 宛先MACアドレスとポートの対応が不明なままになるため、フレームが常にフラッディングされて帯域を圧迫したり、誤って他顧客のセグメントへ届いてしまうリスクが高まります。
A: 宛先MACアドレスとポートの対応が不明なままになるため、フレームが常にフラッディングされて帯域を圧迫したり、誤って他顧客のセグメントへ届いてしまうリスクが高まります。
関連キーワード: SDN, MACアドレス学習、L2スイッチ、フラッディング、フレーム転送
(1)物理サーバ#1の故障時、物理L2SW#1の通信制御テーブルのルールのうちAPサーバを物理サーバ#2に移動させた場合に適用されなくなるルールはどれか。表2中の項番で全て答えよ。
模範解答
1, 3
解説
解答の導き方
- 表1を見ると、顧客YのAPサーバは「仮想サーバ#1(割当て仮想MACアドレスaaa)」、DBサーバは「仮想サーバ#9(割当て仮想MACアドレスbbb)」である。
- 図2の構成では「仮想L2SW#1」は物理サーバ#1上にあり「仮想サーバ#1」は物理サーバ#1上に接続されている。一方「仮想サーバ#9」は物理サーバ#2上に接続されている(図2中の仮想スイッチと仮想サーバの配置を参照)。したがって初期状態ではAP(aaa) は物理サーバ#1側、DB(bbb) は物理サーバ#2側に存在する。
- 表2のルールと例の読み取り
- 本文の例にある「例えば、顧客YのDBサーバからAPサーバ向けのイーサネットフレームが、物理L2SW#1のc番ポートに入力されると、通信制御テーブルの項番dのルールにマッチし、イーサネットフレームが物理L2SW#1の9番ポートに転送される。」は、図2のリンク構成(物理L2SW#2と物理L2SW#1は8番ポート同士で接続)と表2を照合すると、c = 8, d = 3と特定できます。つまりDB→APのフレームは物理L2SW#1の8番ポートで受け、表2の項番3(送信元bbb、宛先aaa)にマッチして物理L2SW#1の9番ポートへ転送されていたことが分かります。
- 以上から、表2の項番1(aaa → bbb)と項番3(bbb → aaa)は、APとDB間の一対一のやり取り(APが物理サーバ#1側、DBが物理サーバ#2側にいたときのL2SW#1を経由する振る舞い)を直接扱うルールであることが明確です。
- 物理サーバ#1故障・APを物理サーバ#2に移動した場合の影響
- 問題文にある通り、物理サーバ#1が故障したため「物理サーバ#2に移動させたAPサーバは仮想L2SW#2の2番ポートに接続する」となります。つまりAP(aaa) とDB(bbb) はともに物理サーバ#2上の同じ仮想L2SW(仮想L2SW#2)内に存在することになります。
- 「仮想サーバや仮想FWは仮想L2SWに接続し、仮想L2SWの1番ポートは物理L2SWに接続する」という記述から、同一の仮想L2SW内にある仮想サーバ間の通信はその仮想L2SW内で処理され、物理L2SW#1を経由しない(=物理L2SW#1に該当フレームが入ってこない)ことが分かります。
- よって、APとDBの相互通信(表2の項番1:aaa → bbb、項番3:bbb → aaa)に対応するフレームは移動後は物理L2SW#1に到達しなくなり、物理L2SW#1上のこれらのルールは適用されなくなります。
- 他の「aaa」を含むルールについての扱い(なぜ除外されるものとならないか)
- 表2のうち「送信元または宛先にaaaを含む」項番は1, 2, 3, 5, 9です。ここで項番1・3は前述の通りAP⇔DBの直接往復を扱うため確実に適用されなくなります。
- 残る項番2(aaa → ccc)、項番5(ccc → aaa)、項番9(aaa any)は、APとFW(ccc)やその他宛先とのやり取りを扱うルールです。APを物理サーバ#2に移動しても、APとFWのように異なる物理サーバ間の通信や、外部/他顧客方向への通信は物理系の経路やSDNの転送設定によっては依然として物理L2SW#1にフレームが到達する可能性があります(物理L2SW#1と #2間のリンクや、SDNコントローラによる経路設定の影響を受けるため)。したがって「確実に適用されなくなる」と断定できるのは項番1と3に限られます。
以上の論理から、物理サーバ#1の故障でAPサーバを物理サーバ#2に移動させた場合に、物理L2SW#1の通信制御テーブルで適用されなくなるルールは 表2の項番1、3です。
したがって、適用されなくなる項番は1, 3です。
誤りやすいポイント
- 「aaaを含むすべてのルールが適用されなくなる」と早合点すること。重要なのはそのルールが物理L2SW#1に到達するフレームを前提としているかどうかで、APとDBが同一仮想L2SWに移動して初めて「物理L2SW#1に到達しない」と断言できる。
- 物理ポートの死=そのMACがネットワーク全体から消える、とは限らない点を見落とすこと。仮想サーバ移動後も別経路で同じMACに関連するフレームが別のポート経由で来る可能性がある。
- 表2は上から順に評価される(最初にマッチしたルールが適用される)ことを忘れると、具体的にどのルールが実際に使われるかの判断を誤る。
FAQ
Q: 項番9(aaa any)はなぜ回答に入らないのですか?
A: 項番9は「送信元がaaaの任意宛先」を扱うフォールバックの規則ですが、移動後に「必ず物理L2SW#1でまったく使われなくなる」とは断定できません。APが物理サーバ#2へ移動しても、AP発のフレームが物理L2SW#1を経由する経路やケース(他ポートに接続された機器宛て、あるいはSDNの転送設定による経路選択)があり得るため、項番9は「確実に適用されなくなるルール」には含められません。一方で、AP⇔DBだけは同一仮想L2SW内で完結するため確実に物理L2SW#1を経由しなくなります。
A: 項番9は「送信元がaaaの任意宛先」を扱うフォールバックの規則ですが、移動後に「必ず物理L2SW#1でまったく使われなくなる」とは断定できません。APが物理サーバ#2へ移動しても、AP発のフレームが物理L2SW#1を経由する経路やケース(他ポートに接続された機器宛て、あるいはSDNの転送設定による経路選択)があり得るため、項番9は「確実に適用されなくなるルール」には含められません。一方で、AP⇔DBだけは同一仮想L2SW内で完結するため確実に物理L2SW#1を経由しなくなります。
Q: 項番2(aaa→ccc)や項番5(ccc→aaa)もaaaを含むので適用されなくなるのでは?
A: これらはAPとFW間の通信に関するルールです。APとFWが異なる物理サーバに残る限り(今回の移動でAPは物理サーバ#2、FWは物理サーバ#3のまま)、その通信が物理L2SW#1を経由する/しないはネットワーク経路次第であり、表2の項番2・5が「確実に不要になる」とは言えません。AP⇔DBのケースだけは「同一物理サーバかつ同一仮想L2SW内」で完結することが明記されているため、確実に不要となるのです。
A: これらはAPとFW間の通信に関するルールです。APとFWが異なる物理サーバに残る限り(今回の移動でAPは物理サーバ#2、FWは物理サーバ#3のまま)、その通信が物理L2SW#1を経由する/しないはネットワーク経路次第であり、表2の項番2・5が「確実に不要になる」とは言えません。AP⇔DBのケースだけは「同一物理サーバかつ同一仮想L2SW内」で完結することが明記されているため、確実に不要となるのです。
関連キーワード: SDN、仮想L2スイッチ、MACベース転送、フェイルオーバ(冗長化)、マルチテナント
(2)物理サーバ#1の故障時、変更が必要となる物理L2SW#1の通信制御テーブルのルールはどれか。項番9、10、11以外のルールを表2中の項番で答えよ。また、変更後のアクションの内容を表2のアクションの表記に倣って答えよ。
模範解答
項番:5
内容:Forward 13
解説
解答の論理構成
-
初期構成を確認
-
故障時の変化を整理
- 【問題文】には
「物理サーバ#1が故障して、APサーバの移動を完了した場合…物理サーバ#2に移動させたAPサーバは仮想L2SW#2の2番ポートに接続する。」
とあります。 - 仮想L2SWは「仮想L2SWの1番ポートは物理L2SWに接続する」とあるため、
仮想L2SW#2 ―(1番ポート)→ 物理L2SW#2 ―(9番ポート)→ 物理L2SW#1 ―(13番ポート)
という経路でAPサーバ(aaa)が物理L2SW#1に “現れる” ことになります。
すでに「表2」では、DBサーバ(bbb)関連トラフィック用に
「項番 6 送信元 ccc 宛先 bbb Action Forward 13」
が設定されており、13番ポートが物理L2SW#2側へのリンクであることが読み取れます。
- 【問題文】には
-
どのルールを直す必要があるか
- APサーバ宛のフレームで物理L2SW#1を経由するのは「送信元 ccc(FW)→ 宛先 aaa(AP)」だけです。
- これは「表2」項番 5 に該当し、現在のActionは Forward 9 のまま。
- APサーバが13番ポート側に移動したので、Actionを Forward 13 へ変更する必要があります。
-
まとめ
- 変更対象のルール:項番 5
- 変更後のアクション:Forward 13
誤りやすいポイント
- 「項番9,10,11は除外」と指示されているのに加えて、宛先 aaa が含まれる項番 3 に目を取られがちです。
DBサーバ(bbb)→ APサーバ(aaa)の通信はAPが物理サーバ#2へ移動すると 物理L2SW#1を経由しなくなるので、そもそも不要になります。 - 物理L2SW#1と物理L2SW#2の接続ポートを 8番と早合点し、APサーバ宛をForward 8としてしまうミス。
表2でDBサーバ宛がForward 13になっていることから、13番ポートが実際のリンクであると読み取る必要があります。 - MACアドレスの送受信方向を取り違え、送信元 aaa(AP)側のルールに手を入れようとするケース。設問は「FW → AP」の方向であることを忘れないようにしましょう。
FAQ
Q: なぜ項番3(bbb→aaa)の修正は不要なのですか?
A: APとDBの両方が物理サーバ#2配下に集約された結果、その通信は物理L2SW#2内で完結します。物理L2SW#1を経由しないため、項番3自体が参照されなくなります。
A: APとDBの両方が物理サーバ#2配下に集約された結果、その通信は物理L2SW#2内で完結します。物理L2SW#1を経由しないため、項番3自体が参照されなくなります。
Q: “Forward 13” はどのように読み替えればよいのでしょうか?
A: 物理L2SW#1の 13番ポートにフレームを転送する、というSDNコントローラ用のアクション表記です。これによりAPサーバの新しい経路(物理L2SW#2側)へ導かれます。
A: 物理L2SW#1の 13番ポートにフレームを転送する、というSDNコントローラ用のアクション表記です。これによりAPサーバの新しい経路(物理L2SW#2側)へ導かれます。
Q: 項番9,10,11は自動変更されるのですか?
A: はい。【問題文】の「SDNコントローラに…自動的に変更する設定」とあるとおり、汎用(any)ルールはコントローラが動的に書き換えます。設問が除外しているのはそのためです。
A: はい。【問題文】の「SDNコントローラに…自動的に変更する設定」とあるとおり、汎用(any)ルールはコントローラが動的に書き換えます。設問が除外しているのはそのためです。
関連キーワード: SDN, 仮想スイッチ、MACフィルタリング、冗長化、イーサネットフレーム





